700 大狂乱 ミミ大戦 sage 2008/04/18(金) 16:25:17 ID:4dwM8FWG
701 大狂乱 ミミ大戦 sage 2008/04/18(金) 16:27:09 ID:4dwM8FWG
702 大狂乱 ミミ大戦 sage 2008/04/18(金) 16:28:28 ID:4dwM8FWG
703 大狂乱 ミミ大戦 sage 2008/04/18(金) 16:29:21 ID:4dwM8FWG
704 大狂乱 ミミ大戦 sage 2008/04/18(金) 16:29:58 ID:4dwM8FWG

大狂乱 ミミ大戦


 男は咄嗟に飛行魔法を行使して側方に向かって一息に飛び出す。
 そして寸前まで彼のいた空間を巨大な金属製の剣が切り裂き、床石に深く突き刺さる。
 硬度な床を容易く破壊するこの剣は単なるエッジウェポン(刃物)ではなく魔力で補強されて強力な威力を内包していた。
 その殺傷力、当たれば即死は免れない。
 男はさらに飛行魔法を用いて距離をとりながら、手のデバイスの補助で防御障壁を展開する。
 そうすれば追撃の魔力弾が雨の如く無数に襲い掛かってきた。
 男は必死に身体から魔力を振り絞ってこの攻撃を防ぎ、凌ぎきろうと踏ん張る。
 もしも膝を屈して倒れれば先の剣にかかり絶命は必至。
 だが胸に宿る“夢”の為に男は死ぬ訳にはいかなかった。
 魔力弾の攻撃が止み、煙が濛々と立ち込める中で男はなんとか立っていた。
 彼は敵の攻撃を防ぎきったのだ。
 そうすると、今度は自分の番だと言わんばかりに目の前の敵にデバイスを向けて攻撃用の魔法術式を展開する。
 彼の目の前には無数の敵、遥か昔に作られた魔道兵器である傀儡兵が群がっている。
 何の躊躇いも無く錬鉄をも穿つ高速射出の魔力弾を発射、AAAランクの実力に見合った威力を持つそれは一発の撃ち漏らしも無く命中した。
 高い貫通性の魔力の光は何体もの傀儡兵を貫き、その金属製ボディを単なる鉄屑へと変えていく。
 数十発の砲火を終えた男は敵の状態を極小規模のサーチ魔法を敷いて探知、脅威が行動不能になったのを確認する。


「ふう……これで粗方はカタがついたか……」


 男は数時間以上に及ぶ激戦を終えると、溜息交じりの言葉を漏らした。
 そして手のデバイスを肩に担いでようやく息を整える時間を作る。
 ここは朽ち果てた石造りの古代遺跡、立ち塞がる敵は太古の鉄兜。
 男は“あるモノ”を得る為にこの遺跡の置く深くを目指す冒険者であった。
 それからしばしの休憩をとって男は探索を再開した。
 調べた情報が確かなら彼の目指す“モノ”は遺跡の奥深くに眠っている筈である。
 確実かつ慎重にだが早急にトラップを解除しつつ奥へ奥へと進んでいく。
 正に命がけのアドベンチャー、恐怖と高揚が入り混じる冒険だった。
 そして遂に終着点がやって来る。


「ここか……」


 遺跡の最深部、そこは玉座の間とでも言えば良いのか。
 美しい装飾を施された広大な広間で、ある種の威厳を持っていた。
 だが男にはこれに見惚れている暇は無かった、彼はただ真っ直ぐに目的の“モノ”へと足を進める。
 数多の財宝に埋もれて“ソレ”はあった。
 男は他の輝く財宝になど目もくれずに一直線に“ソレ”を手に取った。
 これこそ彼が数十年の時を掛けて捜し求めた楽園への扉、神の恵みとでも言うべき至高の宝。


「やっと……やっと手に入れたぞ!! これで世界は俺のモノだあああぁぁっ!!!!!」


 望み続けたモノを手に入れ、男は狂喜して声を上げた。
 さながら獣の咆哮とでも形容すべきその叫びを聞くものは誰もいなかった。





「平和やねぇ」


 機動六課の部隊長執務室で、はやてはそう言いながら湯気の立つ湯飲みを傾ける。
 熱くて渋いお茶(断じて砂糖など入ってはいない)は心地良い清涼感と温もりで喉を潤してくれた。
 ここ最近は取り立てた事件も無く、世は事も無く平和な時を謳歌している。
 ずっとこんな時が続けば良いと思いながらはやてはズズと緑茶の味わいを楽しんだ。
 だが世界はこんな筈じゃない事ばかりだった。
 次の瞬間にはけたたましい通信が入って彼女の平穏な時間を塗り潰す。


『部隊長! 事件です!!』

「なんやシャーリー、今良いところやったのに」

『って、お茶飲んでるだけじゃないですか!?』

「今が一番お茶が美味しいところなんよ。まあ冗談はさて置いて、もしかしてガジェットでも出たんか?」

『いえ、陸士108部隊からの救援要請です。どうもロストロギア所持の違法魔道師の逮捕に手間取っているようで‥』

「陸士108ってゲンヤさんのとこやん、相手はどれだけの規模なんや? もしかして大規模な犯罪組織なん?」


 はやての質問にシャーリーは突然何ともいえない顔をする。
 そして言葉を濁しながら答え始めた。


『いえ、それがどうも相手は一人のようです……』

「一人? たった一人に手こずっとるんか!? いったいどんなヤツなん?」

『それが聞いても要領を得ない答えしか返ってこないんです……“ミミ”がどうとか“仮面”がどうとか』

「“ミミ”? “仮面”? なんか意味分からへんなぁ。ともかく救援要請には応えなあかんね。前線メンバーに出動準備!」

『了解です』


 こうして起動六課はミッドチルダ全体を騒がす珍事に首を突っ込む事になる。





 六課所属のヘリパイロット、ヴァイス・グランセニックの操縦するヘリに揺られて前線メンバーが事件現場に到着する。
 都市部中央の一角に不時着したヘリ後部ハッチから飛び出した面々はデバイスとバリアジャケットを展開して散開し付近を警戒。


「敵は魔道師一人。でも油断しないで、ロストロギアを所持していてどんな力を持っているか分からないんだから」

「「「「はい!!!!」」」」


 フォワードメンバーはなのはの言葉に威勢の良い返事を返す。
 即座に事件現場を捜索しながら索敵を続ける六課面々、現場は所々が破壊され戦闘の激しさを物語っている。
 そこには無数の武装局員が倒れており、全員が全員意識を失っていた。
 そしてそんな彼らに聞き慣れた人の声がかけられた。


「皆さ〜ん、無事ですかぁ〜?」


 それはブリッツキャリバーで駆けてくるスバルの姉ギンガである、だが彼女はいつもと明らかに違っていた。
 主に頭の上についている“ソレ”とか。


「スバル〜」

「ギン姉! ってギン姉、なんなのソレ?」

「聞いてよスバル! コレはあいつが……あいつがぁ〜」


 ギンガは涙ながらにそう言うとスバルに抱きつく。
 彼女にはそれは可愛い“犬のミミとシッポ”が付いていたのだ。
 それらはまるで生きた動物に一部のようにフヨフヨと動いている。


「ギンガさん……なにつけてるんですか?」

「痛っ! ちょ……乱暴に触らないでぇ」

「へ? これ本物!?」


 ティアナの乱暴な接触にギンガは痛そうに顔を歪めた。
 触れたその感触は正に本物のミミとシッポである。
 人間に使い魔のようなミミとシッポは付く、あまりの事態に思考が追いつかない。
 そして遂に“彼”がその場に現れた。


「にゃ〜っはっはっはっは〜♪ また新しい獲物が来たにゃ〜!」


 全員の視線が声の先に向く。
 するとそこには凄まじい“変態”がいた。


「きゃあぁっ!」

「ひぃっ!」

「キモッ!」

「へ、変態ぃぃぃ!」

「うげぇ……」

「悪夢だ……」


 男を見た一堂は様々な反応を示すがその中に好意的なものは皆無である。
 なにせ彼と来たら……
 190センチは軽く超えるだろう長身に、猛々しく隆起した筋骨隆々たる筋肉美。
 そしてその身体を覆うのは真っ赤なマントに股間のビキニパンツのみという変態性抜群のファッション。
 ぴっちぴちの黒いビキニパンツを盛り上げる股間の狂気(誤字に非ず)はもはや放送コード禁止レベルの犯罪臭を漂わせている。
 そして汗にテカル五体の筋肉ときたら、全盛期のアーノルド・シュワルツェネッ○ーも真っ青の凄まじい肉質。
 羽織るマントの赤は目に痛いくらいの鮮やかさで、健康的な肌の色を毒々しく映えさせている。
 そして何よりも頭に被ったそれが凄まじかった。
 男は頭に仮面を被っていた。
 それは目元から頭頂まで覆うパーティー衣装のそれに酷似していたがある一点を以って壮絶な異常性をかもし出していた。
 そう、それは“猫のミミ”だった。


「変態ですぅ、もの凄い変態ですぅ〜」


 リインがあまりの恐怖にガチガチ震えながら男を指差す。
 だが男はまるで誇らしいように胸を張ってマントを翻した。


「俺は変態などと言う名前ではないにゃ〜、我が名は“ミミ仮面”! 全世界を愛しきミミで埋め尽くす仮面の紳士だにゃ〜」


 六課メンバー一同は、あまりの狂いきった言葉の暴力に唖然とする他なかった。
 “何言ってんだこの変態?” 場の空気はそんな感じだ。
 だがなんとか冷静さを取り戻してデバイスを構えた、六課はこの程度の変態には屈さないのである。
 先陣を切ってなのはが投降を呼びかけた。


「と、ともかく……武装を解除して所持しているロストロギアを渡して投降して下さい」

「ロストロギアを渡せ〜? それは無理だにゃ〜、コレ(頭の仮面を指差しながら)は俺の意思で外すか、俺が気を失うかでもしない限り取れないんだにゃ〜」

「じゃあ取ってください! それと何か服を着てください、お願いですから!!」

「なんだ? お前はこの肉体美が分からんのかにゃ?」

「分かりません! むしろ分かりたくありません!!」


 不屈のエース・オブ・エース、もはや涙目である。
 いくら歴戦の魔道師といえども年頃の乙女に半裸の変態マッチョの相手はいささか荷が重いというものだろう。
 それは19年というなのはの人生経験上はじめて見た正真正銘の真の変態だった。
 いい加減にこのド変態を見るのが耐えられなくなったのか、なのはを差し置いてシグナムとヴィータの古代ベルカ騎士二人が勇み出る。
 構えた剣と破壊槌に魔力を、瞳に裂帛の気迫を込めてミミ仮面を名乗る狂人を睨み付けた。


「てめえのイカレタ話はどうだって良い!」

「大人しくさっさとお縄についてもらおうか!」


 最高の戦闘力を持つベルカの騎士が二人、有象無象の敵ならば例え相手が千を越える軍勢とて蹴散らす猛者である。
 どうやってもたった一人の敵に遅れを訳のない状況、だがそれで油断する二人ではない。
 歴戦の戦士二人、闘志五体に満ちて微塵も隙は無かった。
 だがこの変態ときたら……


「ふむふむ〜、ポニテのボインちゃんと三つ編みロリっ子……申し分ない素材だにゃ〜」


 仮面についた猫ヒゲを撫でながらミミ仮面なる変態はしみじみといった風情でそう呟いた。
 緊張感の無いその姿にシグナムとヴィータはいい加減に頭にきた。


「ボ、ボインちゃん!?」

「てめえ! 誰がロリだっ!!!」


 もはや説得は不可能と察した二人は実力行使を敢行、魔力を込めたデバイスを振りかざしてミミ仮面に迫る。
 そして遂に変態は自分が得た“力”を解放した。


「二人ともダメです! その男は……」

「もう遅いにゃ〜、喰らえい!! ミミ光線!!!!」


 ギンガの制止も間に合わずミミ仮面は奇怪な技名と共に仮面の目の部分から怪光線を発射した。
 金色の閃光はシグナムとヴィータに正確に狙いを定めて飛来、彼女達に迫る。
 だが古強者たるベルカの騎士にぬかりは無い、デバイスの高速補助を得て即座に防御魔法パンツァーシルトを展開して防ぐ。
 だがその怪光線は防御障壁を霧の如くすり抜けた。


「うわああぁっ!」

「ぐああぁっ!!」


 防御も虚しく攻撃を受けるシグナムとヴィータ、眩い閃光と濛々たる煙が二人を包み込む。
 敵の攻撃に被弾した副隊長二人に一同が駆け寄った。


「大丈夫? って、うわ! なにソレ!?」

「いったい……これは……」


 駆け寄ったなのはとフェイトは唖然とした、なにせシグナムとヴィータの頭の上には……


「な、なんだコレは!?」

「頭になんか付いてるにょ〜!!」


 シグナムとヴィータの頭の上には、それはそれは可愛らしい“猫のミミ”が付いていた。
 その光景を見て変態マッチョは全身の筋肉をビクボク震わせながら狂喜乱舞する。


「にゃ〜っはっはっはっは〜!! これがロストロギア“獣王の宣告”の力、対称に任意で動物性を付加する力だにゃ〜♪」


 後の世に“ミミ大戦”と呼ばれる事件が、今ここに始まった。


続く。



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目次:大狂乱 ミミ大戦
著者:ザ・シガー
 

このページへのコメント

ユーノ&クロノとケモ耳談義できそう。

0
Posted by 三下 2010年05月15日(土) 15:56:21 返信

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