魔法少女リリカルなのはA's++

[75]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/11/17(金) 01:36:50 ID:Bh+SpvA9
[76]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/11/17(金) 01:37:43 ID:Bh+SpvA9
[77]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/11/17(金) 01:38:44 ID:Bh+SpvA9
[78]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/11/17(金) 01:39:31 ID:Bh+SpvA9
[79]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/11/17(金) 01:40:13 ID:Bh+SpvA9
[80]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/11/17(金) 01:41:06 ID:Bh+SpvA9
[81]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/11/17(金) 01:41:58 ID:Bh+SpvA9
[82]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/11/17(金) 01:42:41 ID:Bh+SpvA9

「なんてことしてくれたんだ!これじゃあ計画が…」
『こっちは情報が漏れる前に始末するだけだ。お前が手を打つつもりがないならな』
「そ、そんな……」
『それだけなら切るぞ』
「わ、わかった!だからちょっと待って!!5分後にまたかける」

ユーノは携帯端末の電源を切ると、下唇を噛んで眉間にしわを寄せた。本局で普段の職務をしながらアースラの通信を
傍受していたユーノはほんの数分前に驚愕の事実を知った。
それはミッドチルダで強盗を行った二人組みが逮捕され、その二人には黒い首輪がはめられているというものだった。
サイオンに確認すると、案の定捕らえたスクライア一族を利用したと言われた。
それを聞いた瞬間怒りと憎しみでユーノは携帯を壊しそうになった。
あまつさえ魔法を使えない状態にしている自分の家族を犯罪行為に加担させたのだ。
しかし同時に、取引をしていることで彼らと対等になっていると少しでも気を緩めた自分にも責任がある、とユーノは思った。
人質の身の安全は保障されると言う安易な考えが生んだミスだ。
ユーノに計画を立てさせておいてそれを破綻させるようなことをするサイオンの理不尽さには頭にきたが
結局ユーノに残された選択肢は一つ、二人をアースラから脱出させることだった。
「どうするんだよ。怪しまれないでアースラから逃がすなんてはっきり言って無理だよ」
エリオが司書長室のソファに腰をかけたまま言った。
ユーノは頭をフル回転させてこれからのことを考えた。エリオの言うとおり、ユーノ達がアースラに侵入することは容易だが
脱走の手引きをすればユーノ達の裏切りはすぐに明るみに出る。
今のアースラにはなのはとフェイトも乗っていて逃げ切ること自体難しいだろう。
たとえ逃げ切ってもクロノ達のことだ。全力でユーノを追いかけてくる。
サイオン達の存在も知られ、一族の身に危険が及ぶかもしれない。
(いや…危険な賭けだけど、逆にそれでいくか…)
突然ユーノにある考えがひらめいた。計画発動が一週間後の予定だったため準備が不十分な点もあったが、
今はこれしかできそうにない。
「エリオ!」
ユーノはソファに座っているエリオの前に立った。
「な…なに?」
切羽詰ったユーノの声にエリオはびくっとした。
「君の力を借りたい」
ユーノは真剣な目でエリオを見つめた。6年ぶりにあった幼馴染。不幸な再会を果たし、
お互いいっぱいいっぱいで昔を懐かしむことすら出来ていない。
今のエリオは昔とは違い多少精神的に強くなっているような気がしたが、ユーノはこの事件には極力関わらせたくなかった。
しかし、今の状況を打破するにはどうしてもエリオの力が必要だった。
自分の無力さにユーノはこぶしを握り締めた。
「そう言ってくれるのを、僕は待ってたんだけどな」
ソファから立ち上がりながらエリオは言った。
「それで、何をするつもり?」
青い瞳がユーノをじっと見つめた。その意志を感じ取ったユーノはゆっくりと頷く。
「…全ての計画を前倒しにする。まずはあいつに連絡し直さなきゃならないから、内容も含めてよく聞いておいて」
ユーノはそう言うと携帯のボタンを押した。

                 *

「それじゃあエイミィ、まずは事件の経緯の確認から始めてくれ」
クロノが艦長席から指示を下し、艦内の局員も資料を片手にモニターを見た。
「了解。ミッドチルダ時間午後6時12分45秒、クラナガン北西地区の宝石店にて強盗事件が発生。
都警が事件にあたるも武装集団の射撃に近寄ることができず、逃走を許す。
犯行集団の人数は10人。逃走には最大時速1050キロをマークする二人乗りの高速艇SH-3000を6台を使用。
5台の高速艇を取り逃がすも偶然ミッドチルダに居合わせた八神はやてとヴォルケンリッターが逃走中の一台を中破。
その後北西地区を逃走する2人を捕獲。残りの8人は現在も逃走中。予備と思われる高速艇一台は回収済み」
そこまで言いながらもエイミィは手をすばやく動かしながらデータをモニターに表示していく。
「逃走中の方は捕まえられそうか?」
「武装局員の追跡は全て振り切られ、衛星カメラと追尾魔法のどちらも追いきれませんでした」
ランディが衛星カメラの映像を映し出す。
クロノが腕を組んでやれやれと溜息をついた。
「おそらくすでに転移されただろうな。最新兵器を使う手口といい僕達が追っているやつらと見て
間違いはなさそうだ」
「はい。クラナガンの周囲200キロの転移ポートを確認したところ、事件発生から20分後に
南西170キロ地点にて半径3キロの転移ポートの出現を確認。UNKNOWNのL級船と思われます」
「やっぱり私たちも出た方がよかったのかな…」
「そうだね」
アレックスの報告を聞いたなのはが小さく嘆き、隣にいたフェイトも頷いた。
「いや、君達でも捕まえられたかどうか。相手は逃げ足だけは一級品だからな」
クロノが少し落ち込む二人を見て言った。今回はたまたまはやて達が事件発生地点近くの不動産屋にいたことで
なんとか2名捕らえることができたが、もしいなかったら十中八九逃げられていただろう。
管理局側でもっと早いマシンを用意したいところだったが、最新のものは非常に高い。
今追っているやつらはそれらをどこかしらで入手し、惜しげもなく犯罪に使っていた。
盗品との話も出ているがまだ事実確認はできていなかった。
過去の犯行のどれもが高価な最新機種や兵器を使っているので、もしかしたら金銭目的ではないのでは、
というのがクロノの見方だ。今回は犯行メンバーを拘束したとあって、事件解決も時間の問題のように感じる。
「被害状況はどうだ?」
「死者、負傷者ともにゼロ。店内と高速艇の不時着で街に多少の損壊はあったものの、大した被害にはなってないみたい」
「今回は過去の事例と比べて一番被害が小さいとの報告も来ています。魔法の行使がなかったこと、
兵器の使用が最小限であり全て威嚇であったことが要因のようです」
アレックスの報告に艦内の局員から驚きや賞賛、安堵の声が漏れた。
今までミッドチルダ内の警察が手も足もでなかった強盗集団のメンバーを捕まえた上、被害を最小限にしたのだ。
今回の件でアースラの評価はかなり上がるだろう。
皆の顔が明るむ中、クロノだけは渋い顔をしていた。
(何故今回だけは魔法を使わなかったんだ?使う必要が全くなかった…ということも考えられるか)
どんな些細なことでも気にかけるようにしているクロノにはどうもそのことが気になった。
執務官としての長年の経験からか違和感を覚える。
「それで、捕らえた二人はどうしてる?」
どうも心に引っかかるものを感じたクロノはエイミィに尋ねた。
そういえばシグナムが転送前に首輪がどうとか言っていた気がする。
「ついさっき転送されてきて尋問室に移したとこ。なんか変な首輪をしてるけどスキャン結果じゃ危険物反応は出なかったみたい。
一応外させるように指示は出しておいたよ。尋問は30分後」
「そうか。尋問には僕も立ち会うと言っておいてくれ」
「え?あ、了解」
普通は艦長がわざわざ立ち会う必要もないことなのでエイミィは少し驚いたが、事件の大きさを考えると
クロノが自ら事件の一番近い場所に立ちたいと思うのも当然かと思い一人納得した。
(なにか嫌な予感がするな…)
クロノは眉をひそめてモニターのデータを見つめた。



―――同時刻、アースラ艦内尋問室



尋問室は尋問を行う部屋と、それを監視する部屋に分かれていて、その二つはマジックミラーで区切られている。
監視する側からだけ尋問される人間が見えるようになっていた。
「これはどうやって取るんだ?」
尋問を行う部屋の中で、局員が拘束具つきの椅子に座らされていた二人の男に尋ねた。
部屋の外には同僚が一人監視役として待機している。
拘束されている二人には黒い首輪がはめられており、赤いレンズがギョロギョロと周りを見ていた。
艦内に入るための転移装置にはスキャン機能がついているので危険物は入ってこないようにはなっているが、
なんともおぞましい首輪に局員は嫌な気分になった。
「そもそもなんなんだこれは」
「…………」
局員の質問に二人は顔を俯かせるだけだった。諦めているのは捕まったからなのだろうが、
その顔は全てに絶望しているかのようにも見えた。
局員は無言を続ける二人に溜息を吐いて、机の上においてあった箱を開けた。
「まぁ命令が出ているし、多少強引にでも外させてもらう」
「うわあああああああ!!来るな!!や、やめろ!!!!」
工具を取り出し近づいてきた局員に気付き、男の一人はガチャガチャと手や足をじたばたさせ首を振って抵抗した。
あまりの激しさに拘束具で肉が切れ、手首から血が流れた。
「な、なんなんだよ…」
異様なその様子に局員はさすがにたじろいだ。
危険物じゃないはずなのに、この取り乱しよう。
何かヤバイと思った瞬間、部屋に備え付けられているスピーカーから声が聞こえてきた。
『首輪はいいからひとまず部屋を出ろ』
「え?」
突然の同僚の指示に局員は首をひねらせた。マジックミラーがあるので姿は見えないがたしかに仲間の声だ。
『いいから早く!』
「あ、ああ…」
なにか新しい指示が上から出たのかもしれない。
30分後には尋問が始まるが、焦る気持ちを抑え局員は暗証番号を入力して部屋の外に出た。
「あ…」
部屋を出て同僚に声をかけようとした瞬間、息を呑んだ。
黒服で、目出し帽をかぶった男が同僚の首元にナイフを突きつけていたのだ。
「動くな。後ろを向いて手を頭の上に回せ」
ボイスチェンジャー特有の耳に残る声で黒服の男が指示してきた。
突然のことで思考が停止したが、怯える表情の同僚と目が合い、言うことを聞かなければならないことだけは理解した。
言うとおりにすると、陰に潜んでいたもう一人の男に手錠をかけられ、近くの格子に繋がれた。
「暗証番号を言え」
「な…752199」
それを聞くと手錠をかけた男は部屋の中へと入り、捕らえられていた二人を連れ出した。
「お前達は…?」
助けられた二人は黒い覆面の男に聞いた。自分達は捨て駒であり仲間が助けに来るはずなどないと思っていたからだ。
そもそも本当の仲間は捕虜の身であり、自由に動くことすら出来ない。
「詳しいことはあとで話します。今はここを出ることだけを考えましょう」
黒服の男はそこだけ耳元で本来の声で話しかけてきた。聞いた事のある声。
一族では知らないものはいないほど優秀と有名だったあの少年の声だ。
男は一時は死も覚悟していたが、管理局を裏切ってまで助けようとしてくれるその少年の行動に涙が出そうになった。
「これからどうする気だ。この艦からは逃げられないぞ」
ナイフを突きつけられている局員が黒服の男に言った。
「回収した高速艇の場所を教えろ。嘘はなしだ」
グッとナイフが首元に押し付けられる。もちろん刃がないほうであったが、そのひんやりとした感触は
局員に大きな恐怖を与えた。
「…この部屋を出て右に進み突き当りを左に曲がれば正面に格納庫がある。そこだ」
「ごめんなさい」
優しい声が聞こえた瞬間、布で口を塞がれ局員は気を失った。布には催眠効果のある薬剤がしみこませてあった。
手錠でつながれた方の局員にも同じように口を塞がれる。
「よし、早くここから出よう!」
一族の男の一人が黒服の二人に促した。
「ちょっと待ってください」
そう言うと黒服の一人がポケットから端末を取り出し、いくつかの入力を行う。
そのディスプレイ上には文字列が高速でスクロールしていたが、中央の枠の中でカウントダウンが行われていた。
「残り120秒」
覆面の二人がお互いを見て頷いた。

                 *

尋問が始まる15分前、エイミィ達は今回の事件のデータ整理に当たっていた。
「犯人は特定できた?」
手を動かしつつもエイミィがランディに聞いた。
「過去に犯罪暦のある人間に該当者はいませんね。多次元の人間まで洗うとなると本局にアクセスする必要があります」
「あ、そっか。あたしの権限が必要だもんね。ちょっと待ってて」
エイミィがコンソールを操作して、ランディのモニターに通信準備の画面を出す。
「ミッドチルダの一般民にも検索をかけますか?」
「そうね。念のためにお願い」
「了解」
アレックスはエイミィの指示通りに検索を開始する。
そうして他の局員も情報系統の作業を続け、数分の沈黙が降りた。

「…あれ?」
ふいにランディが眉をしかめて声を出した。
「なんかあった?ランディ」
それを聞いたエイミィが作業を中断してランディに尋ねる。
「あ、その、本局との通信がつながら…」
そう言った瞬間、

ウィーー!!ウィーー!!

アースラ艦内にけたたましいサイレンが鳴り響く。作業していた人間が一斉に顔を上げた。
「何事だ!!」
突然のエマージェンシーコールに艦長席からクロノが降りてきた。
「ちょっと!なんか変なことした?」
「な、なにもしてませんって!!」
高速でタイピングして状況を確認しながら叫ぶエイミィにランディは慌てて弁解した。
「え…なによこれ…」
画面を開いたエイミィは絶句した。アースラのシステムに通常ではあり得ないほどの負荷がかかっている。
「な…これは…!!!」
コマンドを打ち込みアクセス状況を閲覧したアレックスが叫んだ。
「艦長!アースラのシステムがハッキングを受けています!!!」
「なんだって!?」
クロノはその報告を聞いて驚いた。航行中の艦がハッキングを受けるなど聞いた事がない。
電波の通信なら遮断することが容易だし、元々制限は厳しい。
「どこからだ!」
クロノがそう言った瞬間モニターにリンク状況が映し出される。
中央のメインシステムに、赤いラインが何十本も繋げられていた。
「艦内すべてのコンピュータからです!」
「!?」
アレックスの報告にクロノは目を見開いた。

次回へ続く

変更を余儀なくされつつもついに始まったユーノの計画。
相次ぐ混乱の中、少女達が目にするものとは…?

次回 第十三話 「運命の対峙」

前へ 次へ
目次:魔法少女リリカルなのはA's++
著者:396

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます