552 名前:肌触れ合うも多少の縁[sage] 投稿日:2008/09/10(水) 20:42:14 ID:x4aZa3Mm
553 名前:肌触れ合うも多少の縁[sage] 投稿日:2008/09/10(水) 20:43:10 ID:x4aZa3Mm
554 名前:肌触れ合うも多少の縁[sage] 投稿日:2008/09/10(水) 20:43:55 ID:x4aZa3Mm
555 名前:肌触れ合うも多少の縁[sage] 投稿日:2008/09/10(水) 20:45:17 ID:x4aZa3Mm
556 名前:肌触れ合うも多少の縁[sage] 投稿日:2008/09/10(水) 20:47:03 ID:x4aZa3Mm

 ソープナンバーズの休憩室では、今日も戦闘機人姉妹の元気な声が響いていた。

「ん? ノーヴェなに持ってるんスか?」
「な、なんでもねえよ。あっち行けってば。……こらっ! 見るなっつってんだろっ!」
「ほほう、映画のチケットッスか。しかも二枚。誰といつ行くんスか?」
「そ、それはだなぁ……。ディエチとだよ! 今度の休みに行こうって決めてて……」
「ディエチならその日はお客さんとデートのはずッスけど?」
「ま、間違えたセインだセイン!」
「ノーヴェはこう言ってるッスけど、本当ッスか?」

 話を振られたセインは、飲んでいたピーチジュースを口から離して答えた。

「いんや。私ノーヴェと休み被ってないし、ノーヴェが映画行くなんて今初めて聞いたけど」
「くっ……。別に誰と映画に行こうがウェンディには関係ないだろ!」

 開き直るノーヴェの鼻の頭を、ウェンディは楽しそうに小突く。ノーヴェは邪険に振り払うが、その程
度で追求を止めるウェンディではない。

「ふふ〜ん。そろそろ白状した方がいいッスよ。陸士隊隊長さんと一緒に行くって」
「なっ、なんで分かる!?」

 怒鳴ったノーヴェが我に返って口を押さえるも、もう遅すぎた。

「いや〜、だってあのお客さん来た時はたいていノーヴェを指名して朝までコースだし、ノーヴェはノー
ヴェですごく嬉しそうな顔してプレイルーム行くんスから」
「嬉しそうな顔なんてしてねえ!」
「映画見に行った後は、レストランからホテルのコースとかッスか? それとも先方の家族にご紹介?い
やあ、次にあのお客さんが来たらお義兄さんって呼ばないといけないかもしれないッスね」
「黙れ、あたしだって知ってんだぞ! お前が最近陸士隊の兄ちゃんとデートしてんのは!」
「別にカルタスさんとは二回食事に誘われただけッスよ?」
「そういうのをデートだってんだよ!」

 やいのやいのとじゃれ合う妹達を特に止めようとも思わずジュースをすすっていたセインだったが、少々
いぶかしむことがあった。

(……あたしって、馴染みのお客さんいないよね)

 デートに誘われるとまでは行かなくても、名前を覚えて二回に一回は指名される客というのが、こうい
う商売をやってれば出来るものである。
 だがセインがこれまで相手してきた相手を思い出しても、自分にはそういう客の心当たりが無かった。
たいていの客は一度きり。
 セインだけ客の付きが悪いというわけではないだろう。各姉妹の売り上げは、高額な特殊プレイを専門
にしているドゥーエやクアットロを除けばほぼ同じぐらいのはずだ。

(なんでだろ? 接客のコツとかによるのかな)

 自分の客に対する態度を思い返してみるが、落ち度があったとは思えない。
 多少言葉使いが馴れ馴れしかったかもしれないが、それも愛嬌のうち。だいたいこんな場所で堅苦しい
しゃべり方をする方が客も嫌だろう。

(分かんないなあ……)

 首を捻れど答えは出ない。こうなれば誰か身近な相手に訊くしかないと思うセインだったが、そこでは
たと適任者がいないことに気づいた。
 ウーノは、店の拡張工事に伴う土建屋との交渉で不在。
 メガネは論外。間違いなく、散々からかわれておもちゃにされるだけだろう。
 トーレとチンクなら親身になって相談に乗ってくれるだろうが、だからといって具体的な解決策が出て
くるかといえば、二人の姉の性格からしてそうでもなさそうである。トーレもチンクも接客で愛想を言う
のは苦手らしく、時たまウーノに注意を受けていたりする。
 妹達に訊くのは、姉の沽券に関わりそうで嫌だった。ただでさえ妹達の誰からも尊敬されていないのだ
から「あたし馴染みのお客さんいないんだけどどうすればいい?」などと訊ねて株を落とすのは避けたい。
 ドクターは新型接客ガジェットの開発中とやらで、研究室に籠りっぱなし。研究に熱中している時のス
カリエッティは邪魔をされると激しく不機嫌になるので、相談してもまともに答えてくれないだろう。

(となると、あとはドゥーエ姉か)

 二番目の姉のことを、セインはよく知らない。セインの稼動前にはスカリエッティのラボを出ており、
戻ってきたのはごくごく最近である。その間何をしていたのか訊ねても「ボケ老人どもの介護してたのよ」
と心底嫌そうな顔で吐き捨てるだけなので、詳しくは知らない。
 しかし一緒に暮らすようになって日が浅いとはいえ、トーレやチンクをからかっている姿やあのクアッ
トロが完全に信服しているとこからして、性格にだいぶ癖があることは知れている。正しいアドバイスが
もらえるかは、一抹の不安があった。
 ドゥーエに訊くよりも今晩ウーノが帰ってきてからにしようかとも思ったセインだが、結局はまだ言い
合いをしている妹二人を残して、休憩室のさらに奥の部屋へと足を運んだ。




          肌触れ合うも多少の縁




 ナンバーズの間では「事務所」と呼ばれている、プレイルームとは違う意味での仕事部屋。帳簿つけを
やっているウーノ以外はめったに入る者がいない部屋でもある。
 ローションやバスタオルなどにかかった経費などの資料が収まったロッカーの間で、二番の姉はガジェッ
トに持たせる店の看板のレイアウトをしていた。本来はウーノの仕事だが、彼女がいないので代理として
指名されたらしい。
 ひたすらかったるそうな様子でマウスを動かしているドゥーエに、セインは声をかける。

「ドゥーエ姉、ちょっと相談したいことがあるんだけどさ……」

 かくかくしかじかと疑問を打ち明けると、黙って聞いていたドゥーエはさほど意外なことを聞いたとい
う顔も見せずに口を開いた。

「あら、あなたやっぱり馴染みのお客さんいなかったのね」
「やっぱりって……あたしそんな風に見られてたの?」
「まあね。言葉で説明するよりデータで見せた方がいいかしら。ちょっとこれを見て」

 ドゥーエは椅子をずらして、セインにもパソコン画面が見えるようにする。
 ウーノ程ではないにせよ流暢な手つきでパネルを叩くドゥーエの指が、フォルダの中から一つの表を呼
び出した。

「これは客の嗜好調査用に、十回以上来店したお客さんがどんなプレイをどれだけしたかをまとめた表よ」
「こういうのまずいんじゃない? 本名までばっちり出してるし。最近、個人情報保護がどうたらってう
るさいけど……」
「そんなこと言い出したら、風俗店事態が違法よ。だいたいこんなもの、他所に漏らさず警察にばれなかっ
たら、情報を保管しようが改竄しようがいいのよ」

 なんか、この姉の性格が一発で知れる一言だった。さすがはクアットロが尊敬しているだけはある。相
談したことを早くも後悔し始めたセインだった。
 その間にもドゥーエは表を色々と操作し、最終的には三人の客のプレイ内容だけが画面に表示された。

「これってあの……」
「三変態よ」

 三変態。
 身も蓋もないドゥーエの呼び方から知れるように、この三人はやたらとマニアックなプレイを要求して
くることが多く、姉妹の間でたいへん評判は悪い。「こいつらが無限書庫司書長や提督やってる管理局な
んて、潰れちゃった方が世のため人のため私たちのためよねえ。あ〜あ、ドクターがまた管理局転覆計画
とか立ててくれないかしら」とはクアットロの言葉である。

「そんなに悪い人達にも見えないけどなぁ。回数は多いけど、あたしはそんなにすごいプレイをされたこ
とないし」
「そこがまさに問題なのよ」
「え?」
「いいかしら。ここ最近三人があなたを指名した前後のプレイを出すと、こうなるわけ」

 再びドゥーエの指が動いて、表の一部分だけを画面に表示した。


『クアットロ→SMプレイ  ドゥーエ→マタニティプレイ  セイン→ノーマルプレイ
 トーレ→体操着プレイ  チンク→メイドプレイ』

『セッテ→アナルプレイ  トーレ→アナルプレイ  セイン→ノーマルプレイ
 オットー&ディード→アナルプレイ  ウェンディ→アナルプレイ』

『ディエチ→バター犬プレイ  ノーヴェ→プロレスプレイ  セイン→ノーマルプレイ
 ドゥーエ→教師プレイ  ウーノ→ウォータープレイ』

「この意味、分かるかしら?」
「あたしだけ、マニアックなことされてない……?」
「つまりね、あなたは言うなればお粥なのよ」
「お、お粥ぅ!?」

 脈絡の無い例えに驚くセインの顔に、びしりと指が突きつけられる。

「豪勢な料理を食べまくって胃もたれした人間がたまーに朝食のメニューにして、ああ久しぶりに食べる
とシンプルで美味しいな、けど二回連続は飽きるから明日はまた焼肉にしよう。……そんな感じのポジショ
ンなのよ、あなたは。一言でまとめると、華が無い」
「ちょ、ちょっとドゥーエ姉、それはひどいんじゃ……」
「でもあなたすごく地味でしょ」
「どこが!?」
「胸も尻も小さめ。かといって貧乳系としてはオットーに遠く及ばない。ロリというには背が高すぎる。
元気な性格にしても、ノーヴェやウェンディと比べたらインパクトが足りない。とにかく何もかもが中途
半端」

 反論したいセインだったが、言われたことを思い返してみればけっこう当てはまっている。
 身体にめりはりがあるとは言い難いし、騒がしい妹達と比べてみれば自分の性格を薄い気がした。あの
二人が無駄に濃いという気もしたが。

「……そんなにあたし駄目な女?」
「そういうわけじゃないわよ」

 多少テンション落としたドゥーエはいつもの理知的な顔に戻り、突きつけていた指をくるくる回しなが
ら言った。

「世間見回したら、顔も性格も十分に上玉の部類ね。だけどここは風俗店。所詮は一晩だけの付き合いな
んだから、身体や性格にぱっと分かる特徴がある方が人気あって当然よ。外見は無理として、あなた何か
はっきりとした特徴を身につけないと」
「特徴、特徴…………そうだ! ディープダイバー使って手とか頭だけ壁から出して奉仕するのはどう?」
「部屋に入ったら生首が壁から生えてる店にあなた行きたい?」
「…………無理だね。えーっと、えーっと、だったら……」

 何かないかと悩むセインに、今度はにやにやと表情を崩したドゥーエがまたキーボードを叩く。今度も
何かデータを見せてくれるのかと思ったら、単純にシャットダウンしただけだった。
 モニターの電源も切って椅子から立ち上がるドゥーエ。けっこう小柄なのでセインよりも背は低いが、
下から見上げてくる視線になにやら良からぬものを感じて無意識に一歩下がるセイン。
 どこかで見た眼だと思ったら、クアットロが悪だくみをしている時の眼にたいそう似ていた。
 やや戸惑っているセインの様子にますます笑みを深めながら、ドゥーエは口を開いた。

「手っ取り早いのは、エッチなことする時のテクニックかしらね。男なんて単純馬鹿ばっかりなんだから、
気持ちよかったらまた指名しようって気になるわ。そうして何回もしてるうちに、あなたの良さに気づい
て馴染みのお客になってくれると思うわよ。…………だからね、個別レッスンしてあ・げ・る」

 個別レッスンってなに、と聞き返す暇さえ与えられず、頭と腰に回った手によりセインの身体は強引に
引き寄せられる。

「!? んんっ!?」

 一瞬で口が塞がれ、舌が入ってくる。反射的にセインは舌を引っ込めるが狭い口腔の中に逃げ場がある
はずがなく、あっという間に追い詰められて舌が犯される。
 身体の中でも特に神経の集まっている部位同士が、くっついてはぬめり合う。
 絡まったまま今度はドゥーエの口の中に引っ張り込まれたかと思うと、歯を立てられさっき以上に巧み
な刺激を受ける。
 最後にぺろりと唇を舐め、突き出たままひくひくと動いている震える舌を押し戻されてようやくドゥー
エのキスは終わった。

「どうかしら。キスだけでもこれだけ気持ちよくなれるでしょ」
「あ……」

 まだぼんやりしているセインの頭だったが、身体の方はしっかり反応しており乳首が軽く勃っていた。
頬にも血が上ってるのが、自分でも分かる。

「ちゃんと感じたみたいね。じゃあ次はもっと直接的なとこいくわよ」
「ちょっ、そこはっ!? な、なんでいきなりお尻からなのさーーー!!!!」



          ※



 ノーヴェとウェンディと入れ替わりで休憩室に入ったトーレの耳に、壁の向こうのかすれ声が聞こえて
きた。

『あ……うぅ……もうお尻、勘弁してよぉ……』
「あれは、セインの声ですね」

 一緒に休憩時間となったセッテにも聞こえたのらしい。いつもの無表情のまま奥の扉に眼を向ける。

「何かあったのでしょうか」
「気にするな。すぐ……かどうかは分からないが、そのうち開放されるはずだ」

 今現在、事務所にいるはずの人物が誰なのか思い出したトーレには、だいたいの見当がついた。姉の悪
癖に小さくため息をつく。

「そういえばセッテ、お前はドゥーエと親しくしているか?」
「いえ、帰還された時に軽く挨拶した程度ですが」
「ならいいが、ドゥーエには気をつけろ。あれは機会を見つけると、妹だろうがノンケだろうが構わず食っ
て暇つぶしをする癖がある」
「のんけ、とは何でしょうか?」
「分からないならいい。とにかく、ドゥーエと二人きりになるのは極力避けることだ」
「了解しました」
(お前まで陥落されてクアットロのようになったら大変だからな……)

 妹の中では一番眼をかけているセッテに心の中でだけつけ加え、トーレは冷蔵庫から出したスポーツド
リンクに口をつけた。
 そのままセッテと二人、特に会話するでもなく椅子に腰掛け身体を休め、やがて休憩時間の終わりを迎
える。
 二人が部屋を出る時にも、奥から聞こえてくる声は止まなかった。


          続く


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目次:肌触れ合うも多少の縁ソープ・ナンバーズ
著者:サイヒ

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