復讐鬼・なのは陵辱編��編集する

最終更新： nano69_264 nano69_264 2010年08月23日(月) 22:29:33履歴

34 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/09(水) 04:27:06 ID:c37N1ap6 [4/6]
35 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/09(水) 04:27:55 ID:c37N1ap6 [5/6]
アースラの出航から間もなく一月が経とうとしていた。

「分かっていたことだけ……今日も成果はなし、ね」

一日の業務報告の〆は、ここに来てから定番となってしまったリンディのため息だった。

出向いた場所には、ロストロギアの影も形もなかった。
あるのは、一面の荒野。

「あの岩の全部を砕いて調べますか？」

そして、空中を浮遊する巨大な石の数々。
本当にただそれだけだった。

「それもいいかもしれないな。調査としては他にやることもないし」
「ねえ。そうすればアースラも飛行しやすくなるだろうし」

エイミィとクロノのやり取りもいつものキレがない。
ブリッジにもやや重苦しい雰囲気が漂っていた。
調査するものがないというのに……アースラの乗務員の疲労は徐々に蓄積されている。

その理由の一つに、浮遊する巨石のためにアースラが必要な航路を確保できないことがあった。
移動の範囲を拡大させるには、乗務員が自分の足でその場まで出向く必要となる。
日一日と伸びていく移動距離は、少しずつ確実にクルーの体力と魔力を奪っていった。

「ストレス解消にもなるんじゃないの？　主砲を一発どかーんっとやったら爽快でしょ？」
「否定はしないけどね。ただ……そのエネルギーも、無駄にはできないからなぁ」
「だよねぇ……」

クロノとエイミィが揃ってため息をつく。

「今日も補給はなし？」
「はい。それどころか、一切の連絡がつきません」
「そう……」

ため息に、リンディのものも重ねあわされる。

「あの豚めぇ。最初からこのつもりだったのね」
「そういう手際だけは、管理局で上り詰めただけのことはあると、逆に感心するよ」

最初の１０日間は通常の任務と何も変わらなかった。
元々ロストロギアの調査の大半は空振りばかりということもあり、連絡を受ける側も成果があがらないことを気にした様子もなかった。
ところが、１０日を経過したところでアースラからの信号は全て管理局に届かなくなる。

『コードは消滅しています』

しばらく生きていた通信の受信機能から、エイミィが必死に集めた情報から分かったことはたった一つ。
アースラは、事故により墜落扱い。
所属コードを抹消されているというものだった。
抗議や訂正の通信は一切届けられることはなく。
いつしか、通信そのものが完全に途絶えてしまった。

「時空そのものが繋がらないね。妨害は、この世界と繋ごうとする世界の両方からあるみたい」

通信が途絶えたのは、完全に世界のリンクがカットされてしまったことの証。
時空を越えて行き来する旗艦であることが災いした。
気がつけば、アースラはこの時空に閉じ込められてしまっていた。

「ごめんなさいね。本当ならば、こちらの通信が届かなくなった時点でここから離脱するべきだったんだけど」

そこで退避していればまだ、時空は繋がっていたのだ。
艦長として犯してはならないミスをリンディは犯していたことになる。

「仕方ないさ。誰だって……ここで、何もせずに帰れるはずがない」
「そうですよ。だって、最初からわたし達がここに来た目的はロストロギアじゃないんですから」

だが、その判断を責める者はこの場には誰一人としていない。
ありもしないであろうロストロギアよりも、ここに手がかりが確実にあるであろう仲間の手がかり。
それを目の前にして、何の成果もあげられずに撤収するなどということはできるはずもなかった。

その判断を責める者はこの場には誰一人としていない。
ありもしないであろうロストロギアよりも、ここに手がかりが確実にあるであろう仲間の手がかり。
それを目の前にして、何の成果もあげられずに撤収するなどということはできるはずもなかった。

「エイミィ。時空干渉への妨害は……この世界からの妨害をカットすれば解除できるよな？」
「うん。任せておいて。ただ……ちょっとその際のエネルギーが不安だから、極力温存しないとね」
「分かったわ。そこは、艦長であるわたしの腕の見せ所ね」

時空跳躍に必要とされるエネルギーは膨大だ。
補給が望めない状況では、今あるエネルギーを無駄にするわけにはいかない。

だが、その分目的は分かりやすくなる。
時空転移を邪魔しているのが誰であるかは明白だ。
その相手を倒すこと。それはアースラが旅立った最大の目的であり何のためらいもない。

「では、ここからは管理局の業務を一切停止。捜索の手をロストロギアから行方不明者に回します」
「うん！　そうこなくっちゃ！」

探索に出ていた最後の一人であるなのはがタイミングよく帰艦する。

「艦長！　残念ながらロストロギアの手がかりはありませんでした！」

任務を果たせなかったというのに、なのはは嬉しそうに……胸を張って報告を行っていた。

「ですが……」

笑顔をもう隠す必要もない。
純粋に嬉しいことを告げればいいのだから。

「明らかに、この世界にあるべきものとは異質の魔力反応を発見しました！」
「本当か！」
「さすがなのはちゃん！　ナイスだわ！」

響き渡るなのはの声に、一気に艦内が沸き返る。
孤立に沈んでいた気持ちも……真の目的の達成への手がかりに高揚していく。

「では、早速そのポイントへのルートを計算……」
「そんなの必要ないよ。そんなに離れてないし……まっすぐに向かおう」

コンソールに手を伸ばそうとするエイミィを、なのはは笑顔で止めていた。

「え？　でも、障害物を砕いて進むにはエネルギーが……」
「はぁ……。止めても無駄か」

今日何度目になるか分からないクロノのため息だった。
だが、その色は呆れたものであり暗い雰囲気を一切含んでいない。
長年の付き合いだ。なのはの考えていることなど、お見通しだった。

「うん！　砕くだけなら……ちょっと頑張っちゃうよ？」

レイジングハートを構えなおすと、なのははとびっきりの笑みを浮かべる。
可憐なはずなのに……その無邪気な笑みにクロノの背中が少し寒くなる。

「できれば個人の魔力も温存して欲しいんだけどな……」
「いいわ。でも、カートリッジの使用は禁止ね？」
「了解！」

リンディの言葉に、なのはは嬉々として外へと飛び出していく。

「盛大に祝砲を打ち上げましょう！　なのはさん、お願い！」
「分かってます！　じゃあ！　いっくよ〜〜〜！」

桜色の魔力光が、レイジングハートの先端に収束していく。

「うわぁ……容赦無しだね、なのはちゃん」
「今日も全力全開か……」

高出力の砲撃魔法など、この時空に来てから一度も放っていない。
なのは自身も……強烈なストレスを溜め込んでいたらしく、その威力は相当なものだった。

「シュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ト！！」

放たれた光の奔流が浮遊する岩を全て砕き、目的地への道を開いていく。
アースラの新たな船出。
それは、仲間を救うためだけの船出であり、乗務員の士気はこれ以上ないほど高いものだった。

「では出航。なのはさんのみつけてくれたポイントから捜索を開始します！」

何の障害物もなくなった空間をアースラは進んでいく。

だが、なのはのみつけた手がかりさえも……男が仕向けた罠。
その先に広がる絶望に……まだ、このときは誰も気がついていなかった。

「ふぅ……やっぱり数の暴力は怖いね」
「まったくだ」

目的をフェイト達の捜索に絞った頃から、アースラは突如魔物の襲撃を受けるようになった。
襲い掛かってくるのは、なのは達が以前……男の復讐の原因となる出来事で倒した魔物ばかり。
一体一体の戦闘力は高くはないが、無限とも思える数は侮れなく油断のできない戦いが続いていた。

「でも……少しずつ近づいているってことだよね」

魔物を蹴散らしながら、アースラは徐々に歩を進めていた。
進むに連れて、魔物の攻撃が激しくなっている事実がなのはにその主の存在が近づいていることを感じさせていた。

「だといいんだけどな」

前向きななのはとは違い、クロノはあまりよくない予感に囚われていた。
なのはの発見した手がかりにたどり着いた途端に始まった魔物の攻撃。
それは、そこにたどり着いたこと自体が男の罠であることを示しているのだが……。

（罠にしては……温すぎる）

罠というものは、仕掛ける以上一定の成果をあげないと意味がない。
それなのに、男は姿を現さず現れるのはその下僕である魔物ばかり。
この魔物では……一般戦闘員はともかくよほどうまくやらない限りは、なのはを倒せないことは男も分かっているはずだ。

だが、魔物は数こそ多いものの、愚直に特攻を繰り返してくるだけ。
真っ向勝負である以上、なのはとの相性は最悪と言ってよく、とても倒しに来ているとは思えなかった。

「少しずつだけど負傷者も増えている。油断はしないでいこう」
「うん。でも……大丈夫。みんなも合わせてレベルアップしてるもん」

魔物の攻撃が強くなっている。それは間違いない。
日に日に負傷者が増え、致命的ではないもののアースラの戦闘力は徐々に低下させられている。

（ＲＰＧじゃないんだから。弱い魔物から、どんどん強く……なんてルールはあるはずがないんだ）

勇者が周囲にスライムしかいない街で産まれ、徐々に強い魔物とレベルアップと共に挑んでいく。
そんなに世界が都合がいいはずはないのだ。

（となると、意図的に魔物を少しずつ強くしてぶつけているわけだが……）

まるで、こちらの戦力を測るように。
だとすると、フェイトやはやてからある程度の情報を得ているはずなのに、慎重すぎるくらいだ。
なのはの言うと通りに、個々の戦闘力は高まっていくが、それをわずかに上回る形で負傷者が増えている。
そのバランスがあまりに絶妙すぎる違和感をクロノは拭い去れない。

「それに、わたしが……絶対に誰も死なせないよ」
「ああ、そうだな」
「じゃあね。わたしは、医療チームの手伝いに行くね」

なのはの言葉に笑顔で応じてから、クロノは気がつく。
覚えていた違和感の正体。
これだけの魔物に襲われたにも関わらず……乗務員には負傷者はともかく、死者は一人も出ていないのだ。
非殺傷設定のデバイスを持つ相手ならばともかく、ろくに知恵もなさそうな魔物相手にそうなることが天文学的な確率だった。

（殺さない意味は……？）

かいがいしく負傷者の手当てに走るなのはを眺めながらクロノは考えをめぐらす。
男の意図に、クロノだけが少しずつではあるが確実に迫ってはいた。
だが……それにたどり着くには、時間が足りない。
男の罠は、徐々に完成のときを迎えようとしていた。

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目次：復讐鬼
著者：マルチマックス
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