復讐鬼・なのは陵辱編��
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nano69_264 2010年08月23日(月) 22:34:11履歴
214 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:35:22 ID:afA2e1G6 [2/12]
215 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:36:22 ID:afA2e1G6 [3/12]
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223 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:44:03 ID:afA2e1G6 [11/12]
「ん……」
深い深い闇の底。
そこにも差し込む光があり、少女を覚醒へと導く。
「あれ？ わたし……」
目を開いたなのはだったが、周囲にあるのはただの虚空のみ。
本当に、物質というものが何一つとしてなのはの目に映ることがない。
目を開けていないと言われたのなら、それを信じてしまっても不思議ではないだろう。
「ようやく目覚めたか。もっとも限界を越えて魔力を放出したことを思えば早く目覚めた方かもしれんな」
「あ……」
朦朧としていた頭に、意識を失う前の光景が少しずつ蘇っていく。
自分は、男に全ての力を込めて挑み……敗れたのだった。
「みんなは！ アースラのみんなはどうしたの？」
「ふん。こんな状況でも、まずは仲間の心配か。見上げたものだな」
「え？」
そこでようやくなのはは、自分の置かれた状況を認識する。
魔力を全て振り絞り、空を飛ぶことさえ叶わなくなり落ちたはずの自分。
だが、その身は未だに空中にあり、足が地面に触れる感覚はない。
「ひっ！」
では何が自分を支えているのか。
その答えは、自らの姿を見てすぐに導き出される。
「や、やだ！ なにこれ！ 離して！ 離してよ！」
それは身体中に絡みつく触手の数々。
自分が両手両足は大きく広げさせられ、空中に貼り付けられていることに気がついたなのはは叫びながら、暴れようとする。
「無駄だ。今のお前には抗うことはできん」
「こ、こんな……気持ち悪い！」
バリアジャケットこそ無傷に等しかったが、魔力を全て使い切り、相棒は相変わらず胸元でペンダントの形状のまま。
男の言葉通り、なのはの力では魔物の拘束を解くことは不可能であり、ささやかな抵抗は魔物を喜ばせるだけだった。
「そう邪険にするものではないぞ？ その魔物はお前の命の恩人なのだからな」
「っ……！」
手足に触れる、生温かさがそれを証明する。
暗闇に落ちていく前の最後の意識で……なのはは確かにその感触を手足に感じていた。
落下して落ちていくはずの身体は、すんでのところで魔物の触手に絡め取られていたのだった。
皮肉な形で、なのはは未だに彼女が愛した空にその身をとどめていた。
「良かったではないか。まだ、落ちてはいないぞ？」
「ふざけないで！」
なのはの誓いを小馬鹿にし、あざ笑うような男の言葉に怒気を含んだ声で答える。
魔力は枯渇し当分戻らないだろうが、体力は幾分戻っている。
男を正面から見据えるなのはの瞳には意思の強い光が未だに消えずに宿り続けている。
「ここはどこなの？ アースラのみんなは？ それから……っ！」
「質問を欲張るな。慌てずとも一つずつ答えてやる」」
男はなのはの言葉を遮ると、ゆっくりと手を中空に翳す。
それを合図に、まるでなのは達を囲むかのように球形に周囲が輝きだしていく。
「この範囲が我の作った結界だ。今我らは結界の中にいる」
結界と呼ぶには広すぎる範囲。
その隔たりを示す光は、霞むほどに遠かった。
「結界？ なんのために？」
「忘れたのか？ 我の復讐は……まだ終わってはいないのだぞ？」
「……っ！」
なのはの脳裏に、男に犯された記憶が蘇る。
真っ向勝負の敗北の衝撃が強すぎたこともあり、遠くに消えかけた記憶だが忘れることなどできるはずもなかった。
「我なりの配慮なのだぞ？ 他の者に今は見えないようにしてやろうと言うのだ」
「『今は』ね……。どうせどこかで記録はしているんでしょ」
フェイトやはやてのときもそうだった。
処女を奪われたときも含め、いずれその様子はあの幹部に届けられることは想像に難くはなかった。
だが、男の言葉に安堵するものがあったことも事実だった。
他の人に見えないようにする……。それはつまり、アースラクルーの無事を証明するものだった。
「好きにするといいよ。どうせ抵抗もできないし」
男の目的を思い出し、身体中に巻きつく触手の感覚が恐怖を呼び声が震える。
それでも、なのはは気丈な眼差しで男を睨んでいた。
「そんなに怯えるな。まだ、お前を魔物にくれてやるつもりはない。まだ、な」
「……わたしに言わせれば、魔物もあなたも何も変わらないけどね」
精一杯の強がりではあったが、なのはの声には微かに安堵の色が含まれていた。
人外の魔物のなのはへの行為に一定の歯止めが約束されていることは、いくらかでもなのはの心に希望の火を点す。
「負けない。心が折れない限り……人は負けないんだから」
劣勢のときに男に言い放った言葉をなのはは繰り返す。
戦いに敗れた今、なのはに残されたのは誰もが認めるその強い意志だけだった。
それが折れない限り、男が仲間に手を下すことはない。
（どうせ……もう汚れた身体だしね）
皮肉なことに、最初のときよりも自分の身体を自由にさせて仲間を守ることに抵抗がなくなっている。
だが植え付けられた陵辱への徹底的な嫌悪感が、精神的な抵抗の意識を強くする。
「ふふふ。いい目だ。それを快楽で曇らせるときをずっと待っていた」
それはアルカンシェルを撃たせるために、先延ばしにした瞬間だった。
あの一撃をしのぎきった以上……男に残された目的は、もはやそれだけになっている。
「お前も待っていたのではないか？ 親友のように快楽をその身に刻まれるのを」
「……っ！ いい加減にしないと怒るよ？」
「ふふふふ。存分に怒るといい。最後まで怒っていられたのなら、お前の勝ちだ」
「負けないから！ 絶対に！」
もはや、勝ち負けの意味などあるのかさえも分からない。
それでも、敗れたなのはにとって意地を示せる機会はここしかなかった。
「やむを得なかったとはいえ、お前に性行為への嫌悪感をここまで植え付けてしまった責任は我にある」
責任、という言葉を口にしながらも男は薄笑いを浮かべていた。
その嫌悪感を越え、淫らになのはを堕とす。ある意味では男にとってはこれから行うことは復讐であると同時にゲームだった。
ゲームである以上……ルールを設ける必要がある。
「その嫌悪感をしっかりと快楽で上書きすることによって責任を取るとしよう」
「いらないよ、そんな責任！」
「まあ、そう言うな。お前にとってもそれ程悪い話ではないぞ」
「何をどうしたらそういう考えになるのよ」
男の話を無視したい気持ちはあった。
だが、それをしたらおそらく身体を拘束する触手が一斉に蠢きだす。
その時間を少しでも遅らせるために、なのはは耳をそむけることはできない。
「まずはそのバリアジャケットが消滅するまでは、我はここから動かぬことを約束しよう」
「……そうしたければすればいいよ」
素っ気無く言い放ったつもりのなのはだったが、より声に安堵の色が強くなったことは明らかだった。
バリアジャケットが無事な限りは、アースラの仲間たちの無事は約束される。
その上、、嫌悪と苦痛しかなかった挿入がないことも、先ほどの男の言葉とあわせればそれを約束されたようなものだった。
「魔物にはバリアジャケットを引き裂く力は無い。消滅の手段は分かるな？」
「……だから、勝手にすればいいって言ってるでしょ」
「そうさせてもらおう。ではそろそろ始めるぞ？」
性行為への嫌悪感が、親友たちの痴態で芽生えていた快楽への不安を上回っていた。
あんなものが気持ちいいはずがない。
そういった刺激に無垢なままの身でありながら、なのははそう信じて疑わない。
「……っ！」
ついに蠢きだした触手に、なのははきつく口を閉ざす。
それは男を喜ばせるような声をあげないため。
そして……。
「なるほど。しっかりと友の痴態は目に焼き付けているのだな」
「……」
挑発には乗らない、とばかりになのはは無言で男を睨む。
怖いのは、自分の意思を無視して快楽へ抗えなくされること。
フェイトやはやてが、有無を言わせず快楽の地獄へと誘われたきっかけを防ぐことが、まずなのはにすべきことだった。
なのはを拘束している魔物の最大の武器とも言うべき触手から噴出すやはり催淫効果のある成分。
それを防ぐためには、この口を開くわけにはいかないのだ。
「そうだな。ならばそれもお前が望むまでは使用を禁止しよう」
男が指を鳴らすと魔物の触手が、なのはの顔から離れていく。
その分、身体に巻きつく量が増えたので単純に喜ぶわけにはいかないが、なのはの表情に幾分余裕が戻る。
「どういうつもり？」
「何。これも責任を取る一環だ。媚薬成分のせいで、と思っているようでは快楽への嫌悪を抱いたままだろうからな」
楽しげに笑う男をなのはは睨みつける。
だが、減らず口を叩くようなことはしない。
わずかでも自分が有利になる要素を自分から手放すような真似はするべきではなかった。
「それに、お前の愛らしくも淫らな声を聞けぬのは寂しいからな」
「……そんな声、絶対にあげない」
短くではあるが、なのはは男の言葉に答える。
開いた口に触手が飛び込んでくることは、欠片も疑っていなかった。
手段はどうあれ……男はなのは達との約束を違えたことはない。
言葉の信頼度は、なのは達をここに送り込み、厄介払いして高笑いしたあの幹部よりもはるかに高かった。
「ふふふふ。気の強い声だな。だが、これから先、お前があげる声は嬌声だけになる。やれ！」
男の合図に、ついに魔物の触手が本格的に動きを開始する。
バリアジャケットの上からとはいえ、初めて……なのはに快楽を与えるための刺激が送り込まれていく。
「ぅ……っく……ふぅ……ぅう……」
蠢く触手の姿は、お世辞にも気味のいいものではない。
それが自分の身体の上でともなれば尚更で、より嫌悪の気持ちをなのはは強くする。
「ふぅ……う、くぅ……動かないで、気持ち……悪い……でしょ、ぁ……」
くすぐったさはイヤでも感じるようで身をよじる動きはたまに見られる。
人外の動きで与えられるそれは、半ば強制的に快楽に変換されるものであり、多くの少女がその餌食になるのにさしたる時間はかからなかった。
（意思も強いか。その意思に嫌悪の鎧を纏っている以上、少し時間がかかるかもしれぬな）
「あぅ……く、あぁ……ん……っくぅ……ふぅ……ん……っ」
思いのほかの抵抗を見せる獲物に、魔物は身体を這い回らせる触手の数を増やし続けていく。
魔物にはバリアジャケットの加護をすり抜けるほどの力は無い。
太股や、すでにむき出しにされている秘所を刺激するには向かない服装であることもなのはに優位に働いていることは確かだった。
「……っ！」
それでも……触手が敏感な箇所に触れれば、微かに反応が変わる瞬間がある。
魔物はその箇所を的確に把握しながら、根気よくなのはの牙城を崩していこうとする。
魔物に焦りはない。なぜなら……その動きにはルールの範囲内であるのに、禁じられた動きがあるのだ。
「そうだな。そろそろ良かろう」
魔物からの合図に、男は深々と頷く。
今まで刺激が与えられなかったのが不思議な箇所があった。
「……っ！」
それが、男の命令だったことをなのはは初めて知る。
膨らみだし、バリアジャケットを微かに押し上げる小山の上にあった触手がついに蠢きだす。
「や、な、何……やだ！ そんなにしないでよっ！」
魔物もそこをただ覆っていたわけではなかった。
形や大きさを、バリアジャケットとブラと言う二つの障害を越えてしっかりと把握。
年頃の成長過程真っ只中の乳房に、その谷間を強調させるかのように巻き付いていく。
「ほう。なかなかの光景だな」
「み、見ないで！ こんなの、変だよ！ おかしいんじゃないの？」
熟練の緊縛師でも服の上からではこうはいかないことだろう。
締め上げられ、その存在を無理やりに誇示させられた胸は男や魔物には欲情を、なのはには羞恥心を呼び覚ます。
「ふぁ……っく、あぁ……ん、っく……はぅ……あぁ……っく」
触手が蠢くと、膨らみが形を変えていく。
まだ小ぶりではあるが張りのある乳房は、触手が沈み込むとすぐに押し返して元に戻ろうとする。
持ち主と同じく、それは陵辱への抵抗を表しているかのようだった。
「ひっ！ や、吸わないで！ あ、んぅ、くぁ……ひぅ！」
触手の先端がすぼまり、人間の唇のように膨らみに次々と吸い付いていく。
バリアジャケットと、ブラに守られたその先端は未だにみつけられていない。
それでも布越しとはいえ強く吸われ、その下にキスマークの代わりに初めての刺激を刻まれていく。
「はぁ、あ、んぅ……ふぅ、くぅ……っはぁ……あぁ、ふぁ……んっ」
「どうした？ 息が荒くなってきたぞ？」
「そんな……こと、ない。ん……気持ち悪い、だけ、だよ……」
実際に嫌悪が未だになのはを支配している。
だからこそ、時に産まれる嫌悪と異なる感覚があることを強く自覚してしまう。
「こんなの、いくらしても、ん、ぅ……無駄だよ、ぅ」
その正体を感じながらも、否定するために自らを弄ぶ魔物からなのはは目を逸らさない。
触手のおぞましい姿と動きを焼き付けることによって、身体の内側から産まれようとしている感覚を嫌悪で塗り固めて外に出さないようにする。
「こんなことしても、何も……ないもんっ」
「いつまでそのような口を聞けるか楽しませてもらおうか」
「ずっとだよ……っ！ 気味悪いよ。離してよ……っ！」
男を睨みながら、なのはは無駄と知りながらも触手を振りほどこうともがく。
手足を激しくばたつかせているつもりなのだろうが、動かせる範囲は極めて狭い。
バリアジャケットのスカートがはためくことさえもない小さな抵抗に過ぎなかった。
「一応、その魔物はお前の命の恩人なのだぞ？ 恩人に向かって酷い言いようだな」
「そんなの関係ないよ！ 誰も助けてなんて頼んでないじゃない！」
「まあ、お前の気持ちは分からないでもない。異形に拘束され悔しく気持ち悪いであろう」
「分かってるなら、離させてよ！」
強い口調で男に挑むなのはに、男はほくそ笑む。
「ふむ……そうだな。そろそろその口から、我や魔物を罵倒する以外の声を聞くのも悪くないか」
「っく！ 魔物じゃなくっても、負けないから！」
魔物の触手では成果が上がらないので、男がなのはの相手をする。
話の流れからして、なのはがそう考えたのも仕方がないだろう。
バリアジャケットの消滅までは動かない……その約束を反故にされることは、なのはが男に一矢を報いたことになる。
さらに……自分の初めてをあんな形で奪った相手へならば嫌悪をより強くできる。
そして、未だ性的に未熟ななのはにしてみれば手足が二本である男の方がくみし易いと思うのも無理からないことだった。
「いいのだな？」
「何度も言わせないで！ いいから離させてよ！」
「確認はしたぞ。後悔はするなよ？」
男はため息をつくと、魔物に目配せする。
「あ……」
拘束が緩み、自分を陵辱していた触手が離れていく。
身体を絶え間なく襲っていたくすぐったさや、その先の感触が一斉に引いていく状況に、なのはの表情に安堵の色が浮かぶ。
「え……っ！？」
だが、その表情はすぐに凍りつく。
身体を支えていた要の触手までもが、次々と離れていく。
「う、嘘！ ちょっと、なにこれ！」
「なんだ？ お前の希望通りではないか」
男はなのはから距離を置いた中空から、その様子を見たまま動く気配がない。
やがて、なのはを支えるのは両手に絡みついた２本の触手だけとなる。
「や、やだ！ 待って！」
魔力を使い果たし、相棒は休眠状態。
あれ程自由に駆けた空に、なのはは自分だけの力で身を置くことができない。
触手が全てその身体から離れた瞬間……。
なのはの身体は重力に導かれ、ただひたすら落花していくことになる。
「きゃっ！ ほ、本気なの！？」
左腕が解放され残すは右手だけとなり、なのはは大きくバランスを崩す。
その際に見た、地面は遥かな眼下。
男が結界の範囲を光らせたせいで、おおよその距離が計れてしまうだけに恐怖感が増してしまう。
「お願い。待って！ だって、わたしは今、飛べない……」
「知っている。だが、離せと言ったのはお前だ。わざわざいいのかどうか確認はしたではないか」
「でも、でも……っ！」
男は言葉を決して違えない。
だが、その言葉の捉え方はときになのはの考えをまるで反映しない……それは分かっていたはずだった。
悔やむなのはに、薄笑いを浮かべながら、男は魔物に命令をくだす。
「やれ」
「嘘！ やぁあああああああああああああああああああ！！」
ついに最後の支えが離された。
解放された手でどうにか触手の先端を掴もうとするが、無情にもその手は空を切る。
「きゃぁああああああああああああああ！」
当たり前のように飛んでいた空。
空を駆ける、という言葉が相応しいほど自由に飛んでいた空。
だが今はその空は何の質感もなく、なのはを受け止めてはくれない。
「ダメ！ どうして、こんな簡単な魔法が……っ！」
術式を展開しようとするが、本当に空になっている魔力ではそれさえも意味がない。
自由落下の感覚にもある程度慣れてしまっていることもなのはにとっては悲劇だった。
飛び降り自殺者の多くが地面にたどり着く前に気を失い、苦しまずに死ぬというがなのはにはそれさえも許されない。
狂いそうになりながらも、意識はしっかりと迫る地面を感じてしまう。
「やだ、やだ、やだぁあああああああ！」
このまま死ねばこれ以上の陵辱を受けないで済む。
だが、自分が死んでしまっては、男の魔の手が仲間に及ぶかもしれない。
本来ならば、なのはの頭に去来すべきことも全て飛んでしまっている。
ただ、ひたすら……激突への恐怖だけがなのはを支配していた。
「助けて……っ、助けてよ！ フェイトちゃん、はやてちゃん……っ！」
助けを求めた相手が、決して自分を助けないことに気がつき絶望する。
彼女たちだけではない。
今は……誰もなのはを助けてくれる人はいないのだ。
「誰でもいいから、たすけ……っ」
それでも、呟くような声で助けを求めるなのはに、意外なところから助けが訪れる。
「あ……っ」
激突の直前に、魔法により落下速度が弱められたのであろう。
腕に絡みついた魔物の触手が、ほとんどなのはに衝撃を与えずにその身体を激突から救う。
「どうした？ 助けて欲しいのではなかったのか？ お前の望みを叶えたつもりだが？」
頭上から、薄ら笑いを浮かべた男の声が響く。
（あ……）
落下の際に思わず助けを求めた自らの声を思い出し、なのはは頬を染め唇を噛み締める。
男に対して、はじめて見せてしまったなのはの弱み。それがなのはを徐々に追い詰めていく足がかりとなる。
心まで折れる絶望に……少女はついに足を踏み入れたのだった。
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目次：復讐鬼
著者：マルチマックス
215 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:36:22 ID:afA2e1G6 [3/12]
216 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:37:19 ID:afA2e1G6 [4/12]
217 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:38:04 ID:afA2e1G6 [5/12]
218 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:38:57 ID:afA2e1G6 [6/12]
219 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:39:57 ID:afA2e1G6 [7/12]
220 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:40:41 ID:afA2e1G6 [8/12]
221 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:42:02 ID:afA2e1G6 [9/12]
222 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:43:09 ID:afA2e1G6 [10/12]
223 名前：復讐鬼・なのは陵辱編�� [sage] 投稿日：2010/06/14(月) 00:44:03 ID:afA2e1G6 [11/12]
「ん……」
深い深い闇の底。
そこにも差し込む光があり、少女を覚醒へと導く。
「あれ？ わたし……」
目を開いたなのはだったが、周囲にあるのはただの虚空のみ。
本当に、物質というものが何一つとしてなのはの目に映ることがない。
目を開けていないと言われたのなら、それを信じてしまっても不思議ではないだろう。
「ようやく目覚めたか。もっとも限界を越えて魔力を放出したことを思えば早く目覚めた方かもしれんな」
「あ……」
朦朧としていた頭に、意識を失う前の光景が少しずつ蘇っていく。
自分は、男に全ての力を込めて挑み……敗れたのだった。
「みんなは！ アースラのみんなはどうしたの？」
「ふん。こんな状況でも、まずは仲間の心配か。見上げたものだな」
「え？」
そこでようやくなのはは、自分の置かれた状況を認識する。
魔力を全て振り絞り、空を飛ぶことさえ叶わなくなり落ちたはずの自分。
だが、その身は未だに空中にあり、足が地面に触れる感覚はない。
「ひっ！」
では何が自分を支えているのか。
その答えは、自らの姿を見てすぐに導き出される。
「や、やだ！ なにこれ！ 離して！ 離してよ！」
それは身体中に絡みつく触手の数々。
自分が両手両足は大きく広げさせられ、空中に貼り付けられていることに気がついたなのはは叫びながら、暴れようとする。
「無駄だ。今のお前には抗うことはできん」
「こ、こんな……気持ち悪い！」
バリアジャケットこそ無傷に等しかったが、魔力を全て使い切り、相棒は相変わらず胸元でペンダントの形状のまま。
男の言葉通り、なのはの力では魔物の拘束を解くことは不可能であり、ささやかな抵抗は魔物を喜ばせるだけだった。
「そう邪険にするものではないぞ？ その魔物はお前の命の恩人なのだからな」
「っ……！」
手足に触れる、生温かさがそれを証明する。
暗闇に落ちていく前の最後の意識で……なのはは確かにその感触を手足に感じていた。
落下して落ちていくはずの身体は、すんでのところで魔物の触手に絡め取られていたのだった。
皮肉な形で、なのはは未だに彼女が愛した空にその身をとどめていた。
「良かったではないか。まだ、落ちてはいないぞ？」
「ふざけないで！」
なのはの誓いを小馬鹿にし、あざ笑うような男の言葉に怒気を含んだ声で答える。
魔力は枯渇し当分戻らないだろうが、体力は幾分戻っている。
男を正面から見据えるなのはの瞳には意思の強い光が未だに消えずに宿り続けている。
「ここはどこなの？ アースラのみんなは？ それから……っ！」
「質問を欲張るな。慌てずとも一つずつ答えてやる」」
男はなのはの言葉を遮ると、ゆっくりと手を中空に翳す。
それを合図に、まるでなのは達を囲むかのように球形に周囲が輝きだしていく。
「この範囲が我の作った結界だ。今我らは結界の中にいる」
結界と呼ぶには広すぎる範囲。
その隔たりを示す光は、霞むほどに遠かった。
「結界？ なんのために？」
「忘れたのか？ 我の復讐は……まだ終わってはいないのだぞ？」
「……っ！」
なのはの脳裏に、男に犯された記憶が蘇る。
真っ向勝負の敗北の衝撃が強すぎたこともあり、遠くに消えかけた記憶だが忘れることなどできるはずもなかった。
「我なりの配慮なのだぞ？ 他の者に今は見えないようにしてやろうと言うのだ」
「『今は』ね……。どうせどこかで記録はしているんでしょ」
フェイトやはやてのときもそうだった。
処女を奪われたときも含め、いずれその様子はあの幹部に届けられることは想像に難くはなかった。
だが、男の言葉に安堵するものがあったことも事実だった。
他の人に見えないようにする……。それはつまり、アースラクルーの無事を証明するものだった。
「好きにするといいよ。どうせ抵抗もできないし」
男の目的を思い出し、身体中に巻きつく触手の感覚が恐怖を呼び声が震える。
それでも、なのはは気丈な眼差しで男を睨んでいた。
「そんなに怯えるな。まだ、お前を魔物にくれてやるつもりはない。まだ、な」
「……わたしに言わせれば、魔物もあなたも何も変わらないけどね」
精一杯の強がりではあったが、なのはの声には微かに安堵の色が含まれていた。
人外の魔物のなのはへの行為に一定の歯止めが約束されていることは、いくらかでもなのはの心に希望の火を点す。
「負けない。心が折れない限り……人は負けないんだから」
劣勢のときに男に言い放った言葉をなのはは繰り返す。
戦いに敗れた今、なのはに残されたのは誰もが認めるその強い意志だけだった。
それが折れない限り、男が仲間に手を下すことはない。
（どうせ……もう汚れた身体だしね）
皮肉なことに、最初のときよりも自分の身体を自由にさせて仲間を守ることに抵抗がなくなっている。
だが植え付けられた陵辱への徹底的な嫌悪感が、精神的な抵抗の意識を強くする。
「ふふふ。いい目だ。それを快楽で曇らせるときをずっと待っていた」
それはアルカンシェルを撃たせるために、先延ばしにした瞬間だった。
あの一撃をしのぎきった以上……男に残された目的は、もはやそれだけになっている。
「お前も待っていたのではないか？ 親友のように快楽をその身に刻まれるのを」
「……っ！ いい加減にしないと怒るよ？」
「ふふふふ。存分に怒るといい。最後まで怒っていられたのなら、お前の勝ちだ」
「負けないから！ 絶対に！」
もはや、勝ち負けの意味などあるのかさえも分からない。
それでも、敗れたなのはにとって意地を示せる機会はここしかなかった。
「やむを得なかったとはいえ、お前に性行為への嫌悪感をここまで植え付けてしまった責任は我にある」
責任、という言葉を口にしながらも男は薄笑いを浮かべていた。
その嫌悪感を越え、淫らになのはを堕とす。ある意味では男にとってはこれから行うことは復讐であると同時にゲームだった。
ゲームである以上……ルールを設ける必要がある。
「その嫌悪感をしっかりと快楽で上書きすることによって責任を取るとしよう」
「いらないよ、そんな責任！」
「まあ、そう言うな。お前にとってもそれ程悪い話ではないぞ」
「何をどうしたらそういう考えになるのよ」
男の話を無視したい気持ちはあった。
だが、それをしたらおそらく身体を拘束する触手が一斉に蠢きだす。
その時間を少しでも遅らせるために、なのはは耳をそむけることはできない。
「まずはそのバリアジャケットが消滅するまでは、我はここから動かぬことを約束しよう」
「……そうしたければすればいいよ」
素っ気無く言い放ったつもりのなのはだったが、より声に安堵の色が強くなったことは明らかだった。
バリアジャケットが無事な限りは、アースラの仲間たちの無事は約束される。
その上、、嫌悪と苦痛しかなかった挿入がないことも、先ほどの男の言葉とあわせればそれを約束されたようなものだった。
「魔物にはバリアジャケットを引き裂く力は無い。消滅の手段は分かるな？」
「……だから、勝手にすればいいって言ってるでしょ」
「そうさせてもらおう。ではそろそろ始めるぞ？」
性行為への嫌悪感が、親友たちの痴態で芽生えていた快楽への不安を上回っていた。
あんなものが気持ちいいはずがない。
そういった刺激に無垢なままの身でありながら、なのははそう信じて疑わない。
「……っ！」
ついに蠢きだした触手に、なのははきつく口を閉ざす。
それは男を喜ばせるような声をあげないため。
そして……。
「なるほど。しっかりと友の痴態は目に焼き付けているのだな」
「……」
挑発には乗らない、とばかりになのはは無言で男を睨む。
怖いのは、自分の意思を無視して快楽へ抗えなくされること。
フェイトやはやてが、有無を言わせず快楽の地獄へと誘われたきっかけを防ぐことが、まずなのはにすべきことだった。
なのはを拘束している魔物の最大の武器とも言うべき触手から噴出すやはり催淫効果のある成分。
それを防ぐためには、この口を開くわけにはいかないのだ。
「そうだな。ならばそれもお前が望むまでは使用を禁止しよう」
男が指を鳴らすと魔物の触手が、なのはの顔から離れていく。
その分、身体に巻きつく量が増えたので単純に喜ぶわけにはいかないが、なのはの表情に幾分余裕が戻る。
「どういうつもり？」
「何。これも責任を取る一環だ。媚薬成分のせいで、と思っているようでは快楽への嫌悪を抱いたままだろうからな」
楽しげに笑う男をなのはは睨みつける。
だが、減らず口を叩くようなことはしない。
わずかでも自分が有利になる要素を自分から手放すような真似はするべきではなかった。
「それに、お前の愛らしくも淫らな声を聞けぬのは寂しいからな」
「……そんな声、絶対にあげない」
短くではあるが、なのはは男の言葉に答える。
開いた口に触手が飛び込んでくることは、欠片も疑っていなかった。
手段はどうあれ……男はなのは達との約束を違えたことはない。
言葉の信頼度は、なのは達をここに送り込み、厄介払いして高笑いしたあの幹部よりもはるかに高かった。
「ふふふふ。気の強い声だな。だが、これから先、お前があげる声は嬌声だけになる。やれ！」
男の合図に、ついに魔物の触手が本格的に動きを開始する。
バリアジャケットの上からとはいえ、初めて……なのはに快楽を与えるための刺激が送り込まれていく。
「ぅ……っく……ふぅ……ぅう……」
蠢く触手の姿は、お世辞にも気味のいいものではない。
それが自分の身体の上でともなれば尚更で、より嫌悪の気持ちをなのはは強くする。
「ふぅ……う、くぅ……動かないで、気持ち……悪い……でしょ、ぁ……」
くすぐったさはイヤでも感じるようで身をよじる動きはたまに見られる。
人外の動きで与えられるそれは、半ば強制的に快楽に変換されるものであり、多くの少女がその餌食になるのにさしたる時間はかからなかった。
（意思も強いか。その意思に嫌悪の鎧を纏っている以上、少し時間がかかるかもしれぬな）
「あぅ……く、あぁ……ん……っくぅ……ふぅ……ん……っ」
思いのほかの抵抗を見せる獲物に、魔物は身体を這い回らせる触手の数を増やし続けていく。
魔物にはバリアジャケットの加護をすり抜けるほどの力は無い。
太股や、すでにむき出しにされている秘所を刺激するには向かない服装であることもなのはに優位に働いていることは確かだった。
「……っ！」
それでも……触手が敏感な箇所に触れれば、微かに反応が変わる瞬間がある。
魔物はその箇所を的確に把握しながら、根気よくなのはの牙城を崩していこうとする。
魔物に焦りはない。なぜなら……その動きにはルールの範囲内であるのに、禁じられた動きがあるのだ。
「そうだな。そろそろ良かろう」
魔物からの合図に、男は深々と頷く。
今まで刺激が与えられなかったのが不思議な箇所があった。
「……っ！」
それが、男の命令だったことをなのはは初めて知る。
膨らみだし、バリアジャケットを微かに押し上げる小山の上にあった触手がついに蠢きだす。
「や、な、何……やだ！ そんなにしないでよっ！」
魔物もそこをただ覆っていたわけではなかった。
形や大きさを、バリアジャケットとブラと言う二つの障害を越えてしっかりと把握。
年頃の成長過程真っ只中の乳房に、その谷間を強調させるかのように巻き付いていく。
「ほう。なかなかの光景だな」
「み、見ないで！ こんなの、変だよ！ おかしいんじゃないの？」
熟練の緊縛師でも服の上からではこうはいかないことだろう。
締め上げられ、その存在を無理やりに誇示させられた胸は男や魔物には欲情を、なのはには羞恥心を呼び覚ます。
「ふぁ……っく、あぁ……ん、っく……はぅ……あぁ……っく」
触手が蠢くと、膨らみが形を変えていく。
まだ小ぶりではあるが張りのある乳房は、触手が沈み込むとすぐに押し返して元に戻ろうとする。
持ち主と同じく、それは陵辱への抵抗を表しているかのようだった。
「ひっ！ や、吸わないで！ あ、んぅ、くぁ……ひぅ！」
触手の先端がすぼまり、人間の唇のように膨らみに次々と吸い付いていく。
バリアジャケットと、ブラに守られたその先端は未だにみつけられていない。
それでも布越しとはいえ強く吸われ、その下にキスマークの代わりに初めての刺激を刻まれていく。
「はぁ、あ、んぅ……ふぅ、くぅ……っはぁ……あぁ、ふぁ……んっ」
「どうした？ 息が荒くなってきたぞ？」
「そんな……こと、ない。ん……気持ち悪い、だけ、だよ……」
実際に嫌悪が未だになのはを支配している。
だからこそ、時に産まれる嫌悪と異なる感覚があることを強く自覚してしまう。
「こんなの、いくらしても、ん、ぅ……無駄だよ、ぅ」
その正体を感じながらも、否定するために自らを弄ぶ魔物からなのはは目を逸らさない。
触手のおぞましい姿と動きを焼き付けることによって、身体の内側から産まれようとしている感覚を嫌悪で塗り固めて外に出さないようにする。
「こんなことしても、何も……ないもんっ」
「いつまでそのような口を聞けるか楽しませてもらおうか」
「ずっとだよ……っ！ 気味悪いよ。離してよ……っ！」
男を睨みながら、なのはは無駄と知りながらも触手を振りほどこうともがく。
手足を激しくばたつかせているつもりなのだろうが、動かせる範囲は極めて狭い。
バリアジャケットのスカートがはためくことさえもない小さな抵抗に過ぎなかった。
「一応、その魔物はお前の命の恩人なのだぞ？ 恩人に向かって酷い言いようだな」
「そんなの関係ないよ！ 誰も助けてなんて頼んでないじゃない！」
「まあ、お前の気持ちは分からないでもない。異形に拘束され悔しく気持ち悪いであろう」
「分かってるなら、離させてよ！」
強い口調で男に挑むなのはに、男はほくそ笑む。
「ふむ……そうだな。そろそろその口から、我や魔物を罵倒する以外の声を聞くのも悪くないか」
「っく！ 魔物じゃなくっても、負けないから！」
魔物の触手では成果が上がらないので、男がなのはの相手をする。
話の流れからして、なのはがそう考えたのも仕方がないだろう。
バリアジャケットの消滅までは動かない……その約束を反故にされることは、なのはが男に一矢を報いたことになる。
さらに……自分の初めてをあんな形で奪った相手へならば嫌悪をより強くできる。
そして、未だ性的に未熟ななのはにしてみれば手足が二本である男の方がくみし易いと思うのも無理からないことだった。
「いいのだな？」
「何度も言わせないで！ いいから離させてよ！」
「確認はしたぞ。後悔はするなよ？」
男はため息をつくと、魔物に目配せする。
「あ……」
拘束が緩み、自分を陵辱していた触手が離れていく。
身体を絶え間なく襲っていたくすぐったさや、その先の感触が一斉に引いていく状況に、なのはの表情に安堵の色が浮かぶ。
「え……っ！？」
だが、その表情はすぐに凍りつく。
身体を支えていた要の触手までもが、次々と離れていく。
「う、嘘！ ちょっと、なにこれ！」
「なんだ？ お前の希望通りではないか」
男はなのはから距離を置いた中空から、その様子を見たまま動く気配がない。
やがて、なのはを支えるのは両手に絡みついた２本の触手だけとなる。
「や、やだ！ 待って！」
魔力を使い果たし、相棒は休眠状態。
あれ程自由に駆けた空に、なのはは自分だけの力で身を置くことができない。
触手が全てその身体から離れた瞬間……。
なのはの身体は重力に導かれ、ただひたすら落花していくことになる。
「きゃっ！ ほ、本気なの！？」
左腕が解放され残すは右手だけとなり、なのはは大きくバランスを崩す。
その際に見た、地面は遥かな眼下。
男が結界の範囲を光らせたせいで、おおよその距離が計れてしまうだけに恐怖感が増してしまう。
「お願い。待って！ だって、わたしは今、飛べない……」
「知っている。だが、離せと言ったのはお前だ。わざわざいいのかどうか確認はしたではないか」
「でも、でも……っ！」
男は言葉を決して違えない。
だが、その言葉の捉え方はときになのはの考えをまるで反映しない……それは分かっていたはずだった。
悔やむなのはに、薄笑いを浮かべながら、男は魔物に命令をくだす。
「やれ」
「嘘！ やぁあああああああああああああああああああ！！」
ついに最後の支えが離された。
解放された手でどうにか触手の先端を掴もうとするが、無情にもその手は空を切る。
「きゃぁああああああああああああああ！」
当たり前のように飛んでいた空。
空を駆ける、という言葉が相応しいほど自由に飛んでいた空。
だが今はその空は何の質感もなく、なのはを受け止めてはくれない。
「ダメ！ どうして、こんな簡単な魔法が……っ！」
術式を展開しようとするが、本当に空になっている魔力ではそれさえも意味がない。
自由落下の感覚にもある程度慣れてしまっていることもなのはにとっては悲劇だった。
飛び降り自殺者の多くが地面にたどり着く前に気を失い、苦しまずに死ぬというがなのはにはそれさえも許されない。
狂いそうになりながらも、意識はしっかりと迫る地面を感じてしまう。
「やだ、やだ、やだぁあああああああ！」
このまま死ねばこれ以上の陵辱を受けないで済む。
だが、自分が死んでしまっては、男の魔の手が仲間に及ぶかもしれない。
本来ならば、なのはの頭に去来すべきことも全て飛んでしまっている。
ただ、ひたすら……激突への恐怖だけがなのはを支配していた。
「助けて……っ、助けてよ！ フェイトちゃん、はやてちゃん……っ！」
助けを求めた相手が、決して自分を助けないことに気がつき絶望する。
彼女たちだけではない。
今は……誰もなのはを助けてくれる人はいないのだ。
「誰でもいいから、たすけ……っ」
それでも、呟くような声で助けを求めるなのはに、意外なところから助けが訪れる。
「あ……っ」
激突の直前に、魔法により落下速度が弱められたのであろう。
腕に絡みついた魔物の触手が、ほとんどなのはに衝撃を与えずにその身体を激突から救う。
「どうした？ 助けて欲しいのではなかったのか？ お前の望みを叶えたつもりだが？」
頭上から、薄ら笑いを浮かべた男の声が響く。
（あ……）
落下の際に思わず助けを求めた自らの声を思い出し、なのはは頬を染め唇を噛み締める。
男に対して、はじめて見せてしまったなのはの弱み。それがなのはを徐々に追い詰めていく足がかりとなる。
心まで折れる絶望に……少女はついに足を踏み入れたのだった。
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目次：復讐鬼
著者：マルチマックス
- カテゴリ：
- 漫画/アニメ
- 魔法少女リリカルなのは
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