Private aide after days  〜飲み込んで僕のS2U〜

[286]176 ◆iJ.78YNgfE <sage> 2006/05/21(日) 22:42:15 ID:70nKy7Zb
[287]176 ◆iJ.78YNgfE <sage> 2006/05/21(日) 22:43:18 ID:70nKy7Zb
[288]176 ◆iJ.78YNgfE <sage> 2006/05/21(日) 22:44:16 ID:70nKy7Zb

 ベッドの上で毛布が蠢いている。
 隆起がせわしなく動くたび苦悶のようなくぐもった声が漏れ出る。
 唐突に毛布の端から手が飛び出した。枕やベッドの淵をおぼつかない手つきで握ろうとする様子はどこか助けを求めて彷徨うみたいだ。
 すぐにもう一つ手が飛び出してきた。指の間に自身の指を絡めて毛布の中へ引きずり込んでいく。子供を迎えに来たというよりは人攫いに来たような強引な手つき。
 毛布から消え入りそうな声が聞こえた。布団の蠢きが少しだけ大きく、激しくなる。
 まぐわう男女にとってもはや毛布は余計な温室だった。盛り始めてしまえば互いの体温で寒さなどどうでもよくなる。
 不機嫌そうに右手が毛布をベッドから払い落した。
 露になる裸体の二人。自分より幾分か背の高い女を組み敷いて年下の男は乳房にかぶりつく。
 十二分に発育した胸は制服で見るより大きく見える。着痩せしているのか錯覚のなのか。
 どの道今は関係ないことだが。
 途切れ途切れの嬌声。羞恥心が抵抗しているのか女は声を聞かせまいと胸の刺激を懸命に堪える。無論、男にはそれがおもしろくない。
 今まであえて静止させていたそこをいきなり抽送させる。ゆっくりではない大きく、速く――。
 強襲に流石の女も悲鳴を上げた。痛覚が言わせる痛みではない。快楽の声。
 すかさず開いた口に男は舌を捻じ込む。男の奇襲戦法は女をすぐに陥落させていった。
 下も上もぐちゃぐちゃになって絡み合うオスとメス。夜はまだ始まったばかりだというのに。若さに歯止めというものは本当にないらしい。
 ただ、男にとってはまだまだ不満だった。
 なぜなら――

 どんなに腰を動かしても然るべき場所に何の感触も快楽もないのだから。


Private aide after days  〜飲み込んで僕のS2U〜

1 その後の二人


『Boss,power charge completion』
『Stinger can launch any time』
 野太い声で男が宣言。続けて女の凛とした声が響いた時、化け物の巨腕は光の蛇によって中空へ跳ね上げられていた。 
 不細工な獣が耳障りな雄たけび上げる。頭が痛い。
 叫ぶなと言っても聞く耳は持たないだろう。どうせもうまともなおつむなどないだろうし。
 ロストロギアに取り込まれた哀れな末路。既に人を失い欲望か、本能のままに動き続ける姿はなんとも愚か。
 はたして本来はどういう使命を持って生まれたものだったのか。人の役に立つためのものならば同情するしかないだろう。
 だがどの道こうなってしまえば
「敵だ」
 牛の図体ぐらいはあろう尾の一撃をかわしクロノはひらりと背中へと飛び乗る。サーカスのような鮮やかな身のこなしから彼お得意の必殺が放たれる。
『Break impulse』
 暴力的な共振が鱗で覆われた背中を弾け飛ばす。さらに一撃クロノは杖を両手で持って押しこんだ。
『Stinger brade slash down』
 煌く閃光と共に肉を焼き切る青刃。邪魔者を片付けた向こうには赤黒い半球が顔を出していた。
「犯罪者言えど見殺しにするわけにはいかないからな」
 魔力を乗せた拳が容易く殻を砕く。そのまま粘液の海に浮かぶ魔導師を片腕で引きすりだした。
「転送頼む」
 薄緑色の粘液を撒き散らしながら魔導師の姿は空中からアースラへと一瞬で転送される。
 あんな姿で送られては職員達もいい顔はしないだろうがのんきに洗濯している暇はない。
「こちらクロノ、目標の捕獲は不可と判断。破壊許可を」
『おっけー! もう許可はとっくに取ってるよ。決めちゃってクロノ君!』
 まったく執務官を無視して話を進めておくとは上等だ。
 用意周到すぎる管制官にクロノは心の中で礼を言う。すでに愛杖は敵を消滅させるための準備を始めていた。
「いくぞS2U! あいつを丁重に葬ってやれ」 
『Okay,Boss. Coffin open』
『Braze energy charge』
 二重奏が奏でるは盛大な葬儀へのシンフォニー。こんな奴には少々もったいない気もするがロストロギアならではの大サービスとしゃれ込もう。
「蒼き棺よ! 彼の者を極寒の庭園へ送呈せん!」
 海のような蒼が相手を包みこむ。すぐさまそれは白く氷結し氷の球体へ。
「紅き棺よ! 彼の者を灼熱の庭園へ送呈せん!」
 氷球に突き立てられた杖から熱線の奔流が迸る。
「リアクターバースト!」
 内から溢れる光が電球のように氷を輝かす。炎は暴れのた打ち回り敵を喰らい尽くしていく。
 棺の中で上がり続ける圧力と温度。極限に達する二色の嵐。
 臨界を越え爆砕する最後まで醜き塊は断末魔さえ許されなかった。

 * * *

 転送ポートから一仕事終えた執務官が姿を現す。乱れ一つない魔導服は演習でもしてきたかのようにまっさらしている。それだけで彼にとって今の任務は大したことのない物だった事が窺えた。
「ご苦労様クロノ。流石我が息子、相変わらずの無駄のない仕事振り」
「いつも通り、当然のことをしたまでだよ」
 労いと賞賛の言葉を受けながらクロノはブリッジを下り一番下で陣取る管制官の傍らに立つ。
 彼に気づいているのかいないのか管制官は忙しくコンソールの上で指先を躍らせていた。
「エイミィ……確かに仕事が円滑に進められるのは僕としても非常にありがたい。だけど執務官の僕が命じるまではあまり行き過ぎた行動は控えてくれないか」
 執務官補佐といえど上司の意見に従わずに自分の考えで先行されるのは補佐としての仕事から少々逸脱していると思える。
 万事解決に済んだとしてもやはり決まりは守らなければいけないだろう。道徳的にそれはとても重要なことだ。
 多分他の人間ならこれをいい仕事だ、とか何とか言って目を瞑ってくれるのだろう。だがクロノにとってはとてもじゃないが目を逸らすことも瞑ることも出来ない。正さなければ、と思うのは根っからの気質故である。
「聞いてるのか?」
「聞いてるよ〜」
 何の感情もない返事が返ってきた。忙しない指先は相変わらずだし目線は常にモニターを凝視。
「エイミィ……君なぁ……」
 こっちが真剣に仕事の話をしているというのにそれを無視するとは。礼儀というものを彼女は忘れているらしい。
 カチンと頭にきてクロノはエイミィの肩を掴もうと手を伸ばした。なにがなんでも面と向かわせてやる意志の現れである。
「僕をなんだと」
「はい、終わったよ」
 肩の代わりにクロノの手には軟質な感触が握らされた。唐突に掴まされたエイミィの反撃。にやっと笑って彼女は得意気に人差し指を立てる。
「取りあえず最低限の要点は入れておいたから後何か必要な事項とかあったら遠慮なく言ってね」
 『事件No.GD96963456-D35754 報告書』という活字に一瞬あっけに取られるもクロノはそれが何の事件について記された報告書なのかすぐに理解した。
「本当に君って奴は……」
 あまりの仕事の速さにほとんど呆れ顔になりながら報告書をめくる。眼球が右から左へこれまた恐ろしい速さで動いていく。
 平均六秒のラップタイムをたたき出してクロノはさらに顔に呆けさせた。
「ど〜お? 何か要点はありますか、クロノ執務官」
 アクセント強めに彼女は鼻高々。さらには立てていた人差し指の隣に中指が寄り添う始末。
 ため息と共に左手が額に当てられた。悔しいがクロノの望むものは一切存在しない。文句なし、値打ちがつきそうなくらい完璧な報告書だ。
「……最初から僕を黙らせるつもりだったんだろ、これは」
「さて、どうかな〜。でもまぁ、これでお仕事は終っ了!」
 イスから勢いよくエイミィは立ち上がる。両手を頭の上で思い切り伸ばして滞り気味の血流を気持ちよく巡らせる。そして少々強張り気味の肩に自分の若さを疑いながらクロノに向き直った。
「んじゃ食堂にでも行ってお茶しよっ、クロノ君」
「い、いやエ、エイミィ……」
「ガールフレンドの誘いは断らな〜い」
 後ろ襟を掴まれてずるずると執務官が引きずられていく。悪いことをしたわけでもないのにこの扱いは動物にでもなった気分だ。
 艦橋を出て行く二人の姿をこの場にいた局員達は皆微笑ましい視線で見送った。
 もちろん母親であるこの人だってそれは相違ない。
「清く正しい男女交際しなさいね。いってらっしゃ〜い」
 白ハンカチをフリフリしながら息子の成長にリンディは何度も頷いていた。
 天国のあなた。息子はまた一歩大人の階段を登りました。少し寂しいものもありますが母としてとても満足です。
 なんてしみじみ思って白濁した緑茶を飲んで一息。
「やっぱり新しい旦那探そうかしら」
 いや、ほんとにあんたはいいから。

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目次:Private aide after days 〜飲み込んで僕のS2U〜
著者:176

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