[453] A crossroads of Fate END3 前編 sage 2008/01/29(火) 04:38:48 ID:g/34HxAn
[454] A crossroads of Fate END3 前編 sage 2008/01/29(火) 04:39:29 ID:g/34HxAn
[455] A crossroads of Fate END3 前編 sage 2008/01/29(火) 04:40:05 ID:g/34HxAn
[456] A crossroads of Fate END3 前編 sage 2008/01/29(火) 04:40:38 ID:g/34HxAn
[457] A crossroads of Fate END3 前編 sage 2008/01/29(火) 04:41:13 ID:g/34HxAn
[458] A crossroads of Fate END3 前編 sage 2008/01/29(火) 04:43:16 ID:g/34HxAn
[459] A crossroads of Fate END3 前編 sage 2008/01/29(火) 04:43:49 ID:g/34HxAn

「…………………」
一人、自室でぼんやりと寝転んでいる。
「どうするかなぁ………」
そんな呑気に言ってる場合でないとわかっている。
のた打ち回って悩み苦しむべきなのだ。
なのはのことを、勝手に諦めたのは自分だ。
そうさせる原因を作ったのはなのはだとしても、やはり、悪いのは、
「僕しか、いないよなぁ。」
少なくとも、フェイトやなのはが悪いと言うような男にはなりたくない。
フェイトの告白を受け入れたのだって、彼自身の意思だ。
意思と呼べるほど、強いものでなかったにせよ。
今だって、どちらの想いを受け入れるべきなのか悩んでいる。
どちらかを選べば、どちらかの想いは拒絶されざるを得ない。
両方を選ぶなんて、あまりにも彼女達を馬鹿にした話だ。
そうならば、どちらかを傷付けなくてはならない。
好きな人から振られるという、とても大きな傷を。
「なのはは、ずっと僕のことを好きでいてくれたんだ………」
だというのに、彼女に対して酷い誤解をしていたことになる。
責められても仕方がないし、むしろそうされるべきだと思う。
だけれども、確かになのはのことが好きだが、それだけで、罪悪感だけを理由にするのは間違っている。
余りにも身勝手すぎる。
フェイトのことを、ずっと優しかった彼女のことを何も考えてはいない。
それは放棄だ。
どちらの思いも受け止められないから、安易な理由で逃げようとしているだけだ。
「フェイト、か………」
あの時、告白されるまでは友達だったはずなのに。
気付いたら、誰よりも、好きだったはずのなのはよりも近くにいて。
欠点だって、逆にいいところだってよく知っている。
恋人になってからは、もっと近くに寄り添って。
下らないことで笑い合ったり、喧嘩したり。
フェイトと過ごしてきた、思い出がある。
簡単に振り捨てることの出来ない存在だ。
結局、今になって迷っていると言うのは自分の弱さ以外の何物でもない。
「弱さ………か。」
そっと手の携帯に触れる。
……これも、弱さだろうか?
「電話……してみようかな。フェイトに。」
何故だか、無性に彼女に会いたい。
その感情の正体なんてわからない。
けれど、きっと。
それに従ってもいい、と思う。
どうせ考えてもわからないなら、感情の赴くままに行動したっていいだろう。
そっと、フェイトの番号を呼び出し、発信しようと指をボタンにそっと乗せる。
「……………………」
そのまま、ぎゅっと強くボタンを押し込む。
しばらく、コール音が響く。
フェイトにしては、出るのが異様に遅い。
恐らく、寝ているか、もしくは仕事が忙しいのだろう。
「やっぱり、弱さ…………なのかもな。」
ユーノは、どこか寂しげな表情で、通話を切ろうとする。
そうだ、やっぱり、自分ひとりでどうにかするべきなのだ。

『さっきから忙しいって言っているんですけれど?仕事の邪魔は遠慮してくださいって…!』
と、その瞬間、ユーノは叱責された。
彼が聞きたかった、その声で。
「あ、その……ごめん。今切るね……」
『………え?ユーノ?………ちょっと待って!切らないで!!』
慌てたように、フェイトは大声で叫ぶ。
当然、ユーノにも大声で聞こえる。
電話を切ろうと耳を離していたのが、せめてもの救いだった。
『あ、あのその………ごめんね、ユーノ。』
「いやまぁ、忙しいならいいんだ。そこまで大した用じゃないし………」
さっき、忙しいと怒鳴られたのは、しっかりとユーノの頭に刻み込まれている。
…でも、声が少しでも聞けてよかった気がする。
『……えっと、全然忙しくないよ?』
「いやでも、さっきそう言ってたよね?』
『ううん、全然違うよ。さっきまでしつこく電話してきてた人がいたから……』
「そ、そっか。でも仕事中じゃ?」
『あ、……じ、実はそれも嘘なんだ。……ところで、何の用かな?』
嘘かどうか非常に怪しいが、フェイトが言っているのだ。
とりあえず、信用することにしよう。
『えっと、デートの日程の確認はもう終わったし……うーん……お仕事の話かな?それとも』
「いや、フェイトに会いたいって思って……」
『……………………………』
「変なことで電話してごめん……って、フェイト?」
『あ、あの。ユーノ?もう一度確認していいかな?……………何の用?』
「だから……フェイトに会いたかったから、暇か聞こうと思ったんだけど。」
『………………………』
こんな照れ臭い台詞、何回も言わせないで欲しい。
しかも、先程からフェイトは無言だ。
恐らく、そんな用事で電話してきたのかと呆れているのだろう。
もはや、無言すら恥ずかしい。
「あ、あははは。変なこと言ってごめん!も、もう切るよ。」
『ちょっと待ってユーノ!忙しくない!ちっとも全然忙しくないよ!今どこにいるの?家?』
「家だけど……その、無理して来なくても。」
『無理じゃないよ。……………うん、全然平気。今、行くからね!』
一方的に、通話を切られる。
ユーノはしばらく呆然としていたが、気付いたように立ち上がる。
「……外で、話そうかな。」
ちょうど、外には満天の星空が広がっている。





それから五分後。
「さて、とりあえず外に行く準備は……」
ガンガンガンガンガンガン!!
轟音が、玄関から響く。
「……なんでいつもドアを叩くかなぁ?」
苦笑しながら、ドアを開くと、そこには。
満面の笑みを浮かべた、フェイトがいる。
「………………………」
「ユーノ、来たよ!……なんで無言なの?」
「………………………」
「ユーノ!ユーノ!!」
肩を揺さぶられ、はっと気が付く。
「あ、ごめん。ちょっと考え事しててさ。」
「……ドア開きながら考え事?器用だね、ユーノ。」
「…拗ねるなよ。」
「拗ねてないよ。ただ、恋人が来たのに声も掛けないユーノに驚いてるだけ。」
頬を膨らませ、そっぽを向いてしまう。
それすらも、可愛らしいと思う。
さっき、嬉しそうな顔をしたフェイトを見た瞬間に、わかったのだ。
自分の、一番大切な人は、幸せにしたい人は、フェイトであると。
悩みが、すっと消えていく。
こんな簡単に解決するのだったら、森からの帰りにでも会っておけばよかったのかもしれない。
自然と、彼女の手を取る。
「……ユーノ?」
「ちょっと話したいことがあるから、ついてきてくれないか?」

近所の公園まで、二人で手を繋ぎながら歩く。
不思議と、会話もないが、居心地が悪いわけではない。
むしろ、心が穏やかになっていくようだ。
公園の入り口から、そっとベンチまで歩いていく。
いつかのような、ベンチしかない公園ではなく、滑り台や、ジャングルジムなどの遊具もあった。
「……何か飲む?」
「じゃあ、コーヒーがいいな。あの、ユーノが前に美味しいって言ってたの。」
「わかった。じゃ、ちょっと買ってくるよ。」
何を話すべきだろうか。
とりあえずは、なのはに告白されたことでも話すべきだろう。
けれど、いきなりそんなことを言われたら、不安に思うに違いない。
まぁ、その後で誤解を解いてやればいいだけの話なのだが。
自販機に、硬貨を入れ、缶コーヒーのボタンを続けて二回押す。
当然、出てきたものは同じコーヒーだ。
それを両手に持って、ベンチへと戻っていく。

「はい、コーヒー。…これでいいのか?飲み慣れてないとあんまり……」
「いいよ。今日はこれが飲みたいから。」
ベンチに腰掛けたフェイトに、そっと缶コーヒーを渡す。
今度は、ユーノはフェイトの隣にそっと座る。
「あ、あのさ……ユーノがわたしに会いたいって連絡するの…初めてじゃないかな?」
「…まぁ、そうかも。」
確かに、会いたいと連絡してくるのはフェイトの方からだ。
ユーノがフェイトに連絡するときと言えば、仕事の話か、日程の確認のみだった。
「それにしても、そんなに急がなくてもよかったのに。」
「急ぐよ……だって、ユーノのお願いだもん。」
えへへ、と照れ笑いをしながら、コーヒーを少し飲んで、苦そうな顔をする。
やはり、無理しているのだ。
そんなフェイトを、微笑ましげにユーノは見つめる。
「ちょっと、話がしたくてさ。」
「話?」
「うん、ちょっと言いにくいことなんだけどさ。」
軽く、深呼吸。
自分の答えなんて、もう決まっているだろう?
ならば、迷うことなどない。
「実は、今日………なのはに告白されたんだ。」
「………………………え?」
「それで、僕も君も気付かなかったらしいけど、なのはは僕のことを恋人だと思ってたらしくて……」
「え?何?ユーノの夢の話?」
さっぱりわけがわからない、という顔をするフェイト。
まぁ、当然だろう。
「言っとくけど、僕はフェイトと別れる気はないからな。」
「それは、わたしだってユーノと別れる気なんて……………ひょっとして、さっきの話、本当なの?」
「君にこんな嘘ついて、どんなメリットがあるって言うんだよ。」
「…そっか。じゃあユーノ、もちろんその場ですぐ振ったよね!?それが普通だよね?ね?」
そっと、隣に座るユーノの手を取る。
微かに、手を震わせながら。
「いや、でもさ。小学生の頃から好きだったって言われたもんだから即答できなくて。」
「なにそれ!?」
「なにそれって…前に君に言ったと思うけど、なのはに昔、告白みたいなことされたことあったんだよ。」
不機嫌そうな表情のフェイトは、コーヒーをすする。
「それが、本当に告白だったってこと?」
「うん。話によるとそうらしいんだ。いきなりそんなことを言われたもんだから、すぐには答えを出せなくて……」
すぐどころか、さっきまで、フェイトに会うまで、ずっと迷っていたのだ。
自分の想いが、自分でわからなかったから。
けれど、今ではそれが嘘のように、はっきりとわかる。
「そんなこと言うなら、わたしだって!昔からユーノのこと、好きだったよ!!」
「………………………え?」
「あ。」
フェイトは、しまった、という表情になり、誤魔化すように笑う。
「え、えへへへへへへへ……」
「ちょっとこの話、中断しようか。聞きたいこと、あるし。」
「な、なんのことかな?」
「昔から、っていつからの話?」
「えっと、三ヶ月?」
「へー、そう。じゃ、フェイトが昔からユーノは優しかったって言ってたのは、三ヶ月前には僕は優しくなかったってことだったのか。」
「違うよ!」
ちょっとからかうと、必死になって否定するフェイト。
そんな姿でさえ、愛しいと思ってしまう。
……もう、末期かもしれない。

「むー……じゃ、言うけど。その、わたしもいつからってのは、正確にわからなくて……」
「そっか。じゃあ、そのきっかけでもいいけど。」
「それは、あの卒業式の日、だと思う。……それまで、ユーノのことは恩人だとは思ってたけど、そんなに話さなかったし。」
確かに、自分もあの日まではフェイトのことを知り合い程度にしか思ってなかったと思う。
「あ、恩人って言うのはね、その……全部の始まりだったから。」
「始まり?」
「そうだよ。わたしがその時、幸せに暮らしてたのも、今こうやって幸せなのも、ユーノのおかげ。」
言葉の通り、フェイトは幸せそうに微笑む。
掴まれた手から、幸せな気持ちが伝わってくるようだ。
「ユーノがなのはに会ってなかったら、全部全部、なくなってたから。だから、ユーノのおかげなんだ。勿論、なのはにも感謝してるけど。」
「それはわかったけど……それにしても、あの日になんか言ったっけ?僕。」
あの日は確か、フェイトと互いになのはのことが好きだと言って、それから協力しようという話になったはずだ。
どこに好きになるきっかけがあるというのだろうか。
「うん。その……わたしがなのはを好きでもいいって、そう言ってくれたよね?」
「そりゃ言ったけどさ。」
「……ねぇ、ユーノ。あの日、なんでわたしは落ち込んでたか、知ってる?」
「知らないよ。だって、聞いてないし。」
「うん。実はね、ユーノに会うちょっと前、なのはに聞いてみたんだ。『女の子同士が付き合うのってどう思う?』って。」
「ええええええええ!?」
いくらなんでも、直球過ぎる。
しかし、それでもフェイトの感情に気付かなかったなのはの鈍さは相当だろう。
「あはは、それでね、こう言われたんだ。『変だと思うな』って。……だから、わたしはなのはを好きでいちゃいけないのかなって、そう思ったんだ。」
なのはの返答は、今考えれば当たり前だ。
自分がユーノと、つまり男の子と付き合っているのに、そんなことを聞かれればそう答えるのも当然だ。
「だから、嬉しかったんだ。わたしのそのままを受け入れてくれたことが、そうでもいいって言ってくれたのが。」
「それだけ?」
「まぁ、言っちゃえば、そうかな。その時に、ユーノの近くにいてもいいのかなって、そう思ったのがきっかけ。」
「ひょっとして、さ。何回も会うことにしたのとか、それが理由?」
「…うん。せっかく受け入れられたのに、それを手放したく、なかったんだ。」
そうだとするならば、彼女のあの日の告白は。
「まぁ、きっかけはそれかな。それからは、いつの間にか、優しいユーノのことを好きになってて……。」
「………そういえば、あの喫茶店の話云々ってのは?」
「あれは、わたしがユーノに告白しようって思ったきっかけ。それまでは、ユーノのために、背中を押してあげるつもりだったんだけどね。」
なのはとの関係からの逃避ではなく、フェイト自身の選択だったのだ。
自分は、フェイトも諦めるならいいか、という逃げの気持ちだったのに。
「ずっと、ユーノが悩んでるの見てきて、それなのに…わたしはそのユーノから、『報われて欲しい』とか言われて。」
「……………」
「だから、思ったんだ。わたしが、ユーノを幸せにしたいって。手伝いじゃ、もう嫌だって。」
自分は、相当鈍感らしい。なのはのことを、鈍いという資格さえあるのかどうか。
なのはの気持ちにも気付かず、隣でずっと支えてくれていたフェイトの想いを無視していたのだ。
「わたしの話はこれだけ。……そんな隠すようなことでもないんだけど、恥ずかしくて。」
照れ隠しに、コーヒーをフェイトは一気飲みする。
「………苦っ……」
「ぷっ……あははははははは!」
「わ、笑わないでよ……」
「……ごめんごめん。でも、そうだったんだ。…全然、わからなかったよ。」
「それはそうだよ。わかんないようにしてたんだから。」
そうなると、なのは関連の愚痴も、すべて演技だったのか。
女というものは実に恐ろしい。
「でも、これでもうユーノに隠し事はしてないよ。……多分。」
「多分?……ああ、そういえば、本当にフェイトは今暇なのか?」
「そんなことより!……話は終わってないよね?」
にっこり、とフェイトは笑い、その手ががっしりとユーノの腕を掴む。
手ではなく、腕を。
「それで、ユーノはどうするのかな?」
「どうって……」
「なのはに告白されたんでしょ!?忘れたとは言わせないよ!」

どうもなにも、さっき答えたではないか。
「だから、さっき……」
そこで、思い直す。
自分が最初にフェイトと付き合おうと思ったのは、なのはへの逃避からだった。
フェイトもそうだと思っていたから、それでよかった。
けれど、今は違う。
フェイトは、自分の未来を選択したのだ。
フェイト自身の意思で。
ならば、今自分の答えは、関係の継続ではない。
もう一度、今度は自分から。
フェイトとの未来を、その手で選択するのだ。
誰でもない、自分の意思で。
「フェイト。」
「…………なに?」
ちょっと不機嫌そうに、フェイトは返答する。
ユーノは、ちょっと苦笑すると、飲んでいなかったコーヒーを一気に飲み干し、ベンチから立ち上がる。
「フェイト!大好きだ!!!」
「え?」
「だから、僕と恋人、続けてくれますか?」
脳が茹だっている気がする。
ああ、それに、大好きなんて自分から言ったのも初めてかもしれない。
最初はキョトンとしていたフェイトだが、次第にとろけるような笑顔に変わる。
「ううん、やだよ。」
「え!?」
すっとフェイトも立ち上がり、ユーノの瞳を、じっと見つめる。
その、赤い瞳で。
「そ、そうか。ま、まぁ……仕方ないよな。すぐになのはに返事できなかったのは僕なんだし……」
仕方がない、そう思いつつも、心が泣きそうだ。
けれど、フェイトに振られたからって、なのはの告白を受け入れるつもりもなかった。
落ち込むユーノに、フェイトは笑顔で、そっと囁く。
「恋人じゃなくて、わたしを…フェイト・テスタロッサ・スクライアにしてくれないかな?」
「何を言ってるんだ?フェイトは最初からフェイト……」
ちょっと待て。
なんだスクライアって。
自分の部族名だが、どうして彼女が名乗ってる?
いやもう、答えなんて一つしかない。
「こ、断るわけ、ないだろ!そんなの……。でも、今すぐには出来ないぞ。」
「ふふ、わかってるよ。……顔真っ赤にして、ユーノ、可愛いよ?」
「あーもう!とりあえず、話ってそれだけだから!」
そんなユーノを、フェイトはぎゅっと抱きしめる。
強く、それでいて優しく。
「ね、ユーノ。なのはに返事するの、いつ?」
「いつって……明日だけど。」
「そっか、じゃあ、わたしもついて行っていいかな?」

意外な、彼女の申し出。
連れて行くべきなのだろうか。
なのはは振られて、それですぐに諦めてくれるのだろうか。
諦めてくれるのだとすれば、ユーノ一人で行ったほうがいいに決まっている。
けれど、その言葉を受け入れないのだとするならば、駄目押しの意味でフェイトにいてもらったほうがいい。
勿論、なのはを傷付けることになってしまう。
でも、それでも。
きっと彼女は、諦めてくれないと思うから。
「…わかった。いいよ。」
今、幸せにしたいのは、なのはではなく、フェイトだ。
なら、フェイトのために、なのはを傷付けよう。
そんなこと、酷いことだというのはわかっている。
でも、そうしなくては誰も前に進めない。
「なのはには、悪いとは思う。けど……僕が愛してるのは、フェイトだから。」
ユーノも、フェイトを抱きしめ返す。
「……うん、わたしも、ユーノを愛してる。」
空には、無数の星が瞬いている。
きっと、同じくらい多くの幸福だって、この世界に溢れている。






翌日、食堂にて。
「……なんで、あの後、家に帰したの?泊めるのが普通だよね?」
「いや、そんな常識知らないよ。」
不機嫌そうなフェイトと、いつも通りの表情のユーノがのんびりとしていた。
「はぁ……まぁいいけどね。どっちみち、No.98は道具がないと出来ないし。」
「……………頼むから、なのはの前でそんなこと言うなよ?」
はぁ、と溜息をつきながらユーノは呆れたように言う。
そんなことを言ってしまえば、こじれなくてもいい話までこじれてしまう。
早く決着がつくようにフェイトを連れて来たというのに、まるで逆効果になる。
「そのくらい、わかってるよ。」
「本当かなぁ……」
フェイトにとっても、なのはは親友なのだ。
だから、まさかそんなことを言わないだろう。しかも、自分というブレーキまでいるのだから、尚更だ。
「……ね、ユーノ。本当に、いいの?」
「いいのって、何が?」
「だから、本当になのはを振るの?」
黙って彼は頷く。
決めたのだから、もう迷う必要はない。
迷う気持ちもない。
ただ、なのはを大事と思う、恋愛感情とはまた違う感情もある。
どうやら、今日はそれに嘘をつく必要もありそうだ。
心だけは、しっかり覚悟を決めておく。
「そっか。…………時間、そろそろだね。」
「―――ああ。」
今は、過去を振り返る必要も、迷う必要もない。
ただ、フェイトの笑顔のために。
―なのはの笑顔を、泣き顔に変えるだけのことだ。











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目次:A crossroads of Fate
著者:39-362

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