[57] A happy new year sage 2008/01/01(火) 23:31:48 ID:4GurUIbF
[58] A happy new year sage 2008/01/01(火) 23:32:36 ID:4GurUIbF
[59] A happy new year sage 2008/01/01(火) 23:34:03 ID:4GurUIbF
[60] A happy new year sage 2008/01/01(火) 23:35:24 ID:4GurUIbF
[61] A happy new year sage 2008/01/01(火) 23:36:50 ID:4GurUIbF
[62] A happy new year sage 2008/01/01(火) 23:38:00 ID:4GurUIbF
[63] A happy new year sage 2008/01/01(火) 23:38:58 ID:4GurUIbF
[64] A happy new year sage 2008/01/01(火) 23:40:13 ID:4GurUIbF
[65] A happy new year sage 2008/01/01(火) 23:41:30 ID:4GurUIbF

 クロノにとって、人生二十六回目の新年が近づいていた。
 年が変わる瞬間というのを子供の頃には一年で最大のイベントのように思っていたものだが、さすがに
これだけ回数を重ねると感慨もへったくれも無くなる。
 特に提督になってからは、書類と格闘して気づかぬ間に二十四時を過ぎていたということもあった。
 だが、今年の新年だけは特別な意味があった。
 今年という年は、フェイトという女性を生涯の伴侶に選んだ年であった。そんな人生にとって特別な年
の終わりは、やはり彼女と一緒にゆったりと寄り添って、過ぎ去りし年に思いをはせたい。
 しかし提督という重職に就いている以上、休暇の自由は利きにくい。既にだいぶ前から、年末は航海に
出ておりミッドチルダに不在なことが確定していた。
 なんとかならないかと手は尽くしてみたクロノだが、無理なものは無理と分かるとあっさり引き下がっ
た。
 けれどもそれは、フェイトと年末を過ごすことを諦めたわけではない。ちゃんと別の抜け道を考えてお
いたからである。

 ミッドチルダでの新年は一つだが、無数の次元世界にはその数だけ新年があるのだ。



      A happy new year



 地球は海鳴市のとある神社境内。深夜のこの時刻、いつもなら深沈と静まりかえって神秘さより不気味
さを漂わせている場所も、一年の今日だけは賑やかとなる。
 賽銭箱の前からずらりと並んだ多数の人々。それ以外にも、焚き火に手をかざしながら蜜柑を食べたり、
屋台を冷やかしたりしている人もいる。全員を合わせれば、三桁に到達するだろう。
 その人ごみの中を、クロノは両手に紙コップを持って歩いていた。紙コップには液体がなみなみと注が
れており、零さないよう注意しながら列の一角を目指す。
 そこにいるのは、手に息を吐きかけながら夜空を見上げている一人の美女。星座でも探しているのか、
クロノが隣に立っても気づかない。
「フェイト」
 声をかけて、ようやくその顔が空から降りてきた。その目の前に、紙コップを一つ差し出してやる。
「ほら、甘酒」
「ありがとう」
 嬉しそうに笑って、フェイトはさっそくコップに口をつけた。クロノも自分の分をすする。
「飲酒運転大丈夫?」
「配ってた人は、アルコール分は無いと言っていた。そういう作り方もあるらしい。なんでも麹を使わず
に……」
 しばらく、その人が言ってたことの受け売りで甘酒の造り方についてしゃべるクロノ。
 フェイトは相槌を打ちながら、さらに二、三口飲む。
「……甘酒ってこんな味だったかな?」
「さあ、僕もよく覚えてないな。前に飲んだのは、最後の初詣の時だったから……いつだったかな」
「私が海鳴の家を出た年だと思うよ。みんな一緒に来た時」
「あの時か……」
 ハラオウン、高町、八神、月村などの数家族が勢ぞろいしたので総勢数十名の大所帯になり、またそれ
が粒よりの美女多数なため周囲から注目されまくって、男連中は微妙に恥ずかしかったのを思い出した。
「今回は二人だけだね。母さん達もくればよかったのに」
 リンディとアルフは、寒いので昼になってから行くと言って留守番している。どちらかというと、寒さ
よりもクロノとフェイトが二人きりになれるようにと気をきかせてくれたためのような気もする。
 前回のことを思い出しつつ、注目といえば今の自分達もそうだなとクロノは思った。
 フェイトの美貌は常から道行く人を振り返らせるレベルのものであるが、今回は顔よりも服に理由があ
る。
 闇夜のわずかな光源でもはっきりと目立つ真紅の振袖。金糸と白糸を織り交ぜ、裾には白い牡丹の花を
あしらった豪奢な着物。流れるように長い髪は結い上げられ、足元も足袋に雪駄と完全に服装と合わせて
ある。
 日が昇ってからならともかく、二年参りを振袖で来る人は少ない。フェイトの姿はこれだけの群衆の中
でも大いに目立っており、あの外人さんすげーという遠慮のない声も何度か聞こえた。
(僕も、もっと違う服装してこればよかった)
 今クロノが着ているコート等はフェイトに見立ててもらった趣味のいいものだが、さすがに振袖と並べ
ば位負けする。
 かといって、スーツというのもなにかが違う。男の和服と言えば羽織袴になるのだろうが、それもだい
ぶ間違っている気もする。
(強いて選ぶなら……提督服とかか?)
 あれこれ考えているうちに、クロノの紙コップは空になってしまっていた。フェイトの方はと目をやれ
ば、両手で抱え込ようにしてちびちびとやっている。まだ半分も減っていない。味よりも、紙コップを通
して伝わる温かさを楽しんでいるようである。
 とはいえ甘酒もだんだん冷めてくるだろうし、手の平は温まっても手の甲は風に晒されたままである。
時折、手を擦り合わせている。
 その様子を見ていたクロノは、ポケットのホッカイロをしばらく握り締めてから手を出した。
「フェイト、手を出して」
「うん?」
 小首を傾げながら、フェイトが素直に片手を出してくる。そのほっそりとした手を、クロノは自分の手
で包んでやった。
 氷というほどではないがひやりと冷たいフェイトの手を、擦るのではなく体温を伝えるようにじっと触
れあわせる。
「み、見てる人いるよ」
「…………」
 フェイトの手が冷たそうだなと思い、半ば反射的にやってしまったのでだんだん恥ずかしくなってくる
クロノ。他人が見たら、人目をはばからず手を握っていちゃついているバカップルだろう。
「……お年玉代わりということにしてくれ」
 フェイトというより自分に言い聞かせるように、ずれた言い訳を口にする。
「もう貰う側じゃなくてあげる側なんだけどなあ」
「……嫌か?」
「ううん、反対側もお願いしていい?」
「ああ」
 甘酒を持ち替えて、逆の手を出してくる。そちらも細い指から手首までを覆ってやる。
「お年玉っていえば、エリオとキャロにもあげようとおもってるんだけど、いくらぐらいがいいかな」
「あの二人なら現金よりプレゼントがいいだろ」
「どうして?」
「金をもらっても、貯金するだけになる気がする。小遣いぐらいならともかく、大金は使い方がまだよく
分からないだろう。小さい時の君もそうだった」
「クロノは今でもお金を貯めっぱなしだけどね。預金通帳、すごい額になってるよ」
「結婚資金と養育費に使わせてもらうさ」
 ぽつぽつと語り合う間も、手は繋がったままである。クロノの手が冷えてくると、甘酒を飲み終えたフェ
イトが逆に暖めてくれる。
 周囲の目も、いつの間にか気にならなくなった。開き直った心境になったのか、それともフェイトの手
が暖かくてそんなことどうでもよくなったのか。
 そうしているうちに、周囲の様子が変化した。
 少しずつしゃべり声が減っていき、みんな携帯や時計を出している。クロノとフェイトも、秒単位まで
合わせた時計を見た。
 ゆっくりとも早くとも思える速度で、秒針が進んでいく。
「今年も、あと一分だね」
 フェイトが、もたれかかるようにくっついてくる。クロノも、肩を抱いてやる。
 そして、三本の針が頂点で重なった。
 クロノが腕を解き、フェイトの身体が離れる。
 二人はちょっとだけ見つめ合って、同時に頭を下げた。
「「あけましておめでとうございます」」


お賽銭、お参り、お神酒、おみくじに絵馬。締めには無料で配っていた蜜柑を焚き火の側で食べて、初
詣でやることを一通り終えた二人は家路についた。
 長距離は歩きにくいフェイトのために車で来ており、当然ハンドルを握るのもクロノである。
 夜道を慎重に運転するクロノに、フェイトが声をかけてきた。
「クロノ、姫始めって知ってる?」
「いや、知らない。日本の言葉かい?」
「うん、その、日本の言い伝えで、お正月に、え、エッチなことしたカップルは一年間うまくいくけど、
しなかったら別れちゃうって、はやてが言ってて」
 そのとおりだとすれば、単身赴任者や海外出張者はことごとく破局の危機に晒されていることになる。
もっとも情報源が情報源なだけに、いたずらで歪曲して伝えられた可能性が高いが。
「あ、あくまで言い伝えだし、してくれなくても私とクロノが別れることなんてありえないし、クロノが
したくないって言うならしなくていいけど…………できたらしたいなぁって、思ってて……」
 どんどんトーンが小さくなっていき、それにつれてちょっとずつ俯いていくフェイト。自分から誘うと
いうのが恥ずかしいのだろう。
(ベッドの上では、平気で口にしたりするのにな)
 とはいえ、クロノも姫始め云々を聞かなくても、帰ったらフェイトとそういうことをしたいとは思って
いた。
 休暇はもうすぐ終わりであり、時差を考えると昼前には海鳴を立たねばならない。次の休暇はだいぶ先
になるので、その前にフェイトと睦みあう時間は欲しかった。
 車を止めて、まだ口の中でもごもごと呟いてるフェイトの頭を撫でてやる。
「あ……」
 言葉を使わなくても意思は通じ、俯いていたフェイトが顔を上げる。
 しばらく無言でクロノは手を動かし続けた。頭の天辺から髪を梳くように変化したその手を、フェイト
は黙って嬉しそうに受け入れた。



 家の灯りは消えており、残る二人の家族は寝入っていた。起こさないように足音を殺しながら、クロノ
の部屋に移動する。
 主不在だった部屋の中は、当然の如く冷え切っている。暖房は入れたが、時間が少々かかる。
 早く暖まり合いたくて、クロノはフェイトを抱き寄せた。
「ん……」
 自然に唇が重なる。
 今年最初のキスは、ただ唇をくっつけあうだけのキス。擦り合わせることすらせず、じっと相手の唇を
感じる。寒気で乾いているが、それでもなお柔らかいフェイトの唇。
「これも、ファーストキスになるのかな」
「さぁ……」
 もっとキスをしたいが、厚着が邪魔していくら強く抱きしめあっても体温が伝わってこない。
 抱擁を解き、上着を脱ぐ。フェイトも髪留めを外した。
「一人じゃ出来ないから、帯だけほどいて」
 それだけは手伝ってやり、クロノは自分の服を手早く脱いだ。
 フェイトは着方が複雑な着物だけに、脱ぐのにも時間がかかってまだ一枚も脱げていない。しかし遅い
のは、恥ずかしさから来る躊躇いもあるのだろう。なにしろ、クロノがじっと見ているのだ。
 しかし悪いと思いつつも、クロノはフェイトから目が離せない。幾枚もの着物の下からフェイトの裸身
が現れる過程の一部始終を目にしたい。
 ずいぶん長い時間をかけ、ついに最後の一枚、振袖よりなお赤い緋色の肌襦袢のみとなる。少しの躊躇
があって、肌襦袢がすとんと足元に落ちた。
 一瞬で、紅が白に変わる。
 けっして不健康さは感じさせない、輝くように白い肌。金髪と紅瞳以外にいっさい邪魔な色がない裸体
は、どこまでも続く雪原を連想させる。
「……下着、つけてなかったのか」
「うん……。和服の時は、つけないのが正しいって」
 胸の頂点と股間を隠してフェイトが答え、そのまま近づいてくる。
 優しく抱きとめたクロノはそっとベッドに寝かせ、もう一度唇を重ねる。
 今度は、舌を差し込む深いキス。拒まれることなく口の中に入っていき、フェイトの舌が出迎えてくれ
た。
「ん……ぁん……」
 合わさった唇から、声と小さな水音が漏れる。
 フェイトの口の中で絡めあうだけでなく、逆にクロノの口内にも招き入れる。歯茎や舌の裏側が舐めら
れて官能が刺激され、ぞくりとする。
 キスが終わってもそのまま頬や首筋に舌を移して舐めあい、指までしゃぶってようやく二人は止まった。
「はあっ……はふぅ……」
 本番が終わったかのように荒い呼吸のフェイト。少し身体を持ち上げたクロノは、フェイトの胸に視線
を落とす。
 たっぷりとした大きさに、仰向けになっても崩れない弾力と張りを兼ね備えた美乳。乳房に比べて、乳
首は小さめで可憐なのもクロノの好みである。
 数え切れないほど目にしたというのに、その度にクロノを魅了して止まない。愛でた回数は、ひょっと
したら秘所よりも多いかもしれない。
「あんまり……見ないで」
 頬の朱色を増しながら、フェイトが身悶えする。
 もっと秘められた場所まで見たことのある関係だというのに、今だにこうして恥ずかしがることが多い。
その恥じらいがたまらない。
 胸の形をなぞるように、クロノは愛撫を始める。
 羽毛でも詰まっているかのように柔らかい乳房の表面を、少しだけ押しながらゆっくりと撫で回す。
 一周すると、胸の形が少し変わる程度の強さで揉む。かすかに張りが出始めれば、軽く捏ねていく。
「ふはぁ……あっ」
 フェイトの甘い吐息。徐々に出来あがりつつある。
 いつもならここで一気に強くして乱れさせるか、逆に弱くして焦らすかするところだが、今日は素直に
ちょっとずつ強さを上げていく。年の初めぐらい、意地悪せずに愛情たっぷりに抱いてやりたい。
 色づいた突起に軽く触れて、次はここだと教えてやる。フェイトの心の準備が出来てから、頭を下げて
吸いついた。
 肌の色合いが違うところを少し舐めてから、舌先で転がす。濡れてほんの少し柔らかくなった乳首を、
指で挟んで引っ張る。
「あん……いいよ、クロノ」
 そろそろ下に移ろうかと考えていると、クロノの股間にひやりと巻きついたものがあった。
「熱くて、硬いね……」
 フェイトの指が、クロノの張り詰めた陰茎に絡んでいた。握りがいつもと逆手になっているが、それで
も器用にフェイトはしごいてくる。
 陰茎の表面に浮き出た血管を愛おしむようになぞり、小指がそっと鈴口から入ってくる。親指や人差し
指より細い分だけ奥まで届くが、きつくなりすぎないように細心の注意を払っているのが指遣いで伝わる。
おかげで指の冷たさに萎えることなく、硬さが増していく。
 クロノもフェイトの秘裂を左右にくつろげ、指を入れてつぶつぶとした触覚の壁に触れる。軽く擦るだ
けで、奥から愛液が湧き出てきた。
 あくまで準備段階の愛撫であり最後まで行かないことが分かっているので、構えることなく快感に身体
を委ねられる。いつもの電流が走りぬけるような快感もいいが、こういうのもしっとりと気持ちいい。
 しかし浅瀬で水遊びしているようなものであり、溺れるには深さが足りない。
「そろそろ、しようか」
「……うん」
 クロノはフェイトの秘所から指を抜いたが、フェイトは握ったまま導いてくる。入り口にひたり、とくっ
つかせてから、手が離れる。
「…………来て、クロノ」
つぷり、と亀頭が潤った膣に入っていく。
 奥まで到達する前に、クロノは腰を引く。突くのではなく、ゆっくりと愛液をかき出すように動きなが
ら少しずつ深めていく。
 完全に入りきると、クロノはそこで腰を止めてフェイトの膣を味わった。いつものように強く締めつけ
るのではなく、包み込むようにしてくる。だが熱さだけはとんでもなく、そのまま肉棒が溶けてしまいそ
うなぐらいだ。
「クロノの、太くて、硬くて、すごくいい……」
 うっとりと、フェイトが独り言のように呟く。それを合図に、クロノは動き出す。
 突くよりも、陰茎の表皮で擦るようにするのを重視した動き。前後する速度もそこまで速くはない。
 下が緩やかな分、上でもクロノは混ざりたくなる。
「フェイト、舌出して」
 二人で舌だけ伸ばして、空中で絡め合う。男根と膣よりも、舌同士が激しく融合する。
 そうしながら、脂肪の少ないしなやかな脇腹を指でなぞってやるクロノ。
 フェイトもキスをやめて、耳たぶに優しく歯を立ててくる。
 直接的な性感帯への刺激ではないが、その分こういうゆったりとした交わりにはちょうどいい。
「もっと強く動いてもいいんだよ」
「今ぐらいがちょうどなんだが、君は?」
「私も、これぐらいでいいかな。こういうのも、クロノが私の中に溶けてくるみたいで、気持ちいいから」
 肌の相性が合った者同士が相手のことを思いやって動けば、当然のように終わりは同時になる。
「私の中で、くふっ……震えてるよ」
「フェイトも、どんどん締めつけてきて、ん……凄くうねってる。イキそうなのか」
「う、ん……一緒にイって、クロ……ノ」
 頷き、クロノは小刻みに、だが強くフェイトを貫く。フェイトも腰を揺らして動きを合わせる。
 強く抱きしめられ、足が腰に絡んだ。そのまま出して欲しいというフェイトの意思の体現。
 最後に一際強く子宮口に押しつけて、クロノは放った。
 きゅっと肉壁が締まり、フェイトの足と手に力が篭められる。肌が完全に密着した。
「ふぁ、ああああん!!」
 喘ぐフェイトの口に、もう一度キスする。そうして口から足の先までフェイトと一つになる快感に、ク
ロノは静かに浸った。



 元旦早朝、クロノはシャワーを浴びて昨夜の残滓を洗い落としていた。
 フェイトと一緒に入りたかったのだが、既にリンディもアルフも起きており、見つかれば正月ぐらいは
いちゃつくのをやめなさいと説教をくらいかねない。
 軽く頭と身体を洗い風呂を出てタオルで水気を拭いていると、鏡に映る自分の首に妙なものがある。
 首筋の左側面にぽつんとあるのは、赤い鬱血痕。指で触れると小さく鈍痛がする。誰がつけたかは、考
えるまでもない。
 昨夜は本格的な性交は一回だけで終わりにし、後は眠るまで戯れ合っていたのだが、その時にフェイト
はクロノの首筋にキスマークをつけたがっていた。目立つからやめてくれと阻止したはずだが、寝た後に
こっそりやったと見える。
「……新年早々、困ったことをしてくれるな」
 消えないと分かりつつ指で擦りながら、ぼやくクロノ。
 しかし恋人と過ごした最初の年越し記念、ということでいいのかもしれない。
 あとで一言だけ言っておけばいいかと自分を納得させ、クロノは服を着て風呂場を出た。
 居間に入ると、家族みんな勢揃いしていた。真っ先にクロノの姿を見つけたアルフが怒鳴ってくる。
「クロノ遅い!」
 フローリングの床に冬季限定で設置された炬燵の上には、昨日一家全員で作った豪華なおせちと蜜柑を
積み上げた笊。そしてアルフの前にだけ置かれた松坂産の骨つき牛肉。アルフへのフェイトからのお年玉
である。クロノが来るまでお預けをくっていたらしい。
「これでみんな揃ったし、いただきま……」
「駄目だよアルフ。先に挨拶しなきゃ」
 待ちかねたと肉にかぶりつこうとしたアルフの手を、フェイトがぺしりと叩いて止める。アルフが一瞬
不服そうな顔をするが、黙って従った。
「それじゃあ、クロノはそこでフェイトはその隣。アルフはそこね」
 一家四人、炬燵から出て家長の指示で床に丸く正座する。
「それじゃあ……せーの」
 リンディの音頭で、一斉に深々と頭を下げた。
「「「「新年明けましておめでとうございます」」」」

 新しい年が、始まる。



       終わり





       おまけ

「ユーノ君、姫始めって知ってる?」
「ああ、日本のご飯のことだよね」
「えっ?」
「普通の白ご飯のことを姫飯って言うだろ。正月明けに餅とかおこわを食べるのをやめて、ご飯を主食に
戻す日のことを姫初めって呼ぶんだよ」
「…………」
「繕い物を始める日だったり、乗馬を始める日もそう呼んだかな」
「…………ユーノ君は物知りだね」
「まあ、なのはの言ってる意味の方も知ってるけど。……こういうことだよね」
「あんっ……」
「僕もしたいしする気だけど、もうちょっとだけこうして膝枕しててもらっていいかな?」
「うん。……ユーノ君、今年もよろしく」
「それ、さっきも言ったよ?」
「それでも、何回も言いたいから」
「そっか。……今年もよろしく、なのは」



「…………なんであたしは新年早々、一人寂しく仕事してるんかなぁ。なのはちゃんは今頃ユーノ君とよ
ろしくやってて。フェイトちゃんも日本でクロノ君と一緒に初詣行けたらしいのに……。なんであたしだ
けこんな…………。やめとこ。嫌になるだけや」
「八神、邪魔するぞ」
「げ、ゲンヤさん!? どうしたんですか。たしかゲンヤさんもお仕事ちゃいましたっけ?」
「今は大休止中だ。お前も仕事だってギンガから聞いたから、ほれ、陣中見舞いだ」
「あ、これって……」
「お前の故郷のゾーニとかいう料理だろ。うちも元々はあそこの出身だから、正月にはこれ食う習慣になっ
てんだ。食堂借りて作ったんだが……どうだ?」
「…………しょっぱいです」
「そ、そうか? うちではこれが普通なんだが」
「いえ、しょっぱいのはゲンヤさんのせいやありません。すごくおいしいです。…………ありがとうござ
います」


      今度こそ終わり


著者:サイヒ

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