[261]LOVELY BURST<sage>2007/07/05(木) 13:32:07 ID:1zULrhkc
[262]LOVELY BURST<sage>2007/07/05(木) 13:33:02 ID:1zULrhkc
[263]LOVELY BURST<sage>2007/07/05(木) 13:36:27 ID:1zULrhkc

「首都郊外にガジェット反応、4…いえ5箇所、こんな同時に?!」
「レリック目当て?…いや、前みたいにウチの戦力計りに、とかも考えられるなぁ…」
ふむぅ、と指揮官席につきながら、『どちらに転がっても結果を出せる』戦術を構築するはやて。
「なんにせよ潰さないかん事には間違いあらへんし、久しぶりのスターズライトニングともにフル出動。
ザフィーラもでてもらおか。2型の航空戦力が多い所は――」
矢継ぎ早に指示を出す。最適な人材を最適な場所に送るための支持は過剰といえるぐらい緻密で丁度いい。

制作の都合上カットされるてるとしても、だ。

「部隊長、隊長たちから通信!救助要請です!」
「なんでやねんッ!!」
どんな事態になれば隊舎にいるはずの出撃前の人間から救助要請が来るのか。
「映像きます」
司令室の画面にでかでかと映し出されたソレは、まさに悪夢であった。

その響き轟雷の如く、拘束力は某司書長のバインドの非ではない。
歴戦の勇者たちや古代ベルカの騎士たち、新進気鋭のフォワード陣を単騎で戦闘行動を不能にまで追いやっているのは
「ぶぇえええええええええええええええん、ひっ、ひぐ、ぶぁあああああああああああああああああん」
ヴィヴィオのマジ泣きであった。
いつもなら聞き分けのある好い子なのだがタイミングが圧倒的に悪かった。
ガジェット反応が感知される数分前の出来事だ。
偶然揃った前線メンバー全員を相手に楽しそうに遊んでいたヴィヴィオは
ついうっかり足を滑らせデスクの角に額をぶつけ、仰け反ったところで見事にぶっ倒れ後頭部強打。
痛みで全力転がってしまい先ほど頭をぶつけたデスクの脚にに今度は小指を蹴りこんだ。
あまりに壮絶な光景にメンバー一同無言。
痛みのあまり沈黙を保っていたヴィヴィオは警報発令とともに爆雷の如く泣き声を響かせ始めた。
ママ二人の服を子供とは思えない――ある意味子供ゆえの力で握り締め、離そうとしない。
必死になだめようとする周囲の苦労も虚しく、というか目にも耳にも入らない状態なのだろう。
これがスカリエッティの罠なら恐ろしいまでに用意周到である。

この時はガチではクラナガン最後の日になってしまうかもしれない、と後にはやては語ったという。

「んな、あほな…」
正直、これはない。
とりあえずなのはとフェイトを残し、他のメンバーで迎撃に当たろうかとも思ったが
ぶっちゃけ子供の世話などしたこともないはやてにはこの状況を好転させる自信が皆無だった。
(ヴィータもリインも最初から聞き分けのええ娘らやったしなぁ…)
わりと現実逃避しかけるはやてさん(19・年齢=彼氏いない暦)。
(まぁ敵に狙われてるヴィヴィオ一人にするんは危ないし、信用できへん人間つけるんも危険や。
子供に武装した人間何人もつけて怖がらんわけないやろし、今の状況じゃ逆効果。
もしもメンバーズ相手がきても守りきれる力があるといいんやけどなぁ…
もちろんヴィヴィオが泣き止まんかったら意味ないんやけど。
完全に信用が置け、一級の防衛力があって子供の世話任せられるような人間…
なんて都合のいい人、おるわけないよなぁ…ほんまどないしよ)
わりと八方塞なはやてにルキノの無常な声が更なる変化を告げる。
「八神部隊長、来客です!高い地位の方らしく受付の子がかなり対応に困ってます!!」
「こっちは緊急事態や!終わるまで待ってもらうか用件聞いて帰しぃ!」
ぐだぐだな状況にぶち切れてらっしゃるはやてさん(19・前科持ち)。
「あ、でもお友達の方みたいですよ」
お偉いさんで、お友達。
その人物を思い浮かべる。強張ってた顔に笑顔が宿る。
「命令変更や。ふん縛ってでもにがすんやないで!」
彼こそこの混沌とした状況を納める、唯一の存在であった。

「冷静に考えると、いきなりいっても迷惑じゃないかな…」
久々の休日。無限書庫も切羽詰った依頼はなく、学会のほうも今日は特に用事がない珍しい日。
偶然ぽっかり出来た空白の時間にふとなのは達の様子を見に行こうという考えが浮かんだ。
思い立ったが吉日、とばかりにまずは一旦海鳴に飛び翠屋で大量のケーキを購入。
なのはの家族やアルフやエイミィさんやその子供達と顔をあわせ、そのまま首都へ。
そこから電車で揺られてやっとここまでたどり着いたわけだが…
「しまったなぁ…忙しくて会えなかったらここまでの道のりとお土産全部が無駄になっちゃうよ」
いきなり行って驚かそう、と寝ぼけ頭で思ったのだが失敗だったか。
まぁ、なのはたちが働いてる場所を見れるだけでもいいかな、とポジティブに思考をシフトさせ、
機動六課来客窓口に足を運ぶ。
と、そこで気付く。わりと空気がバタバタしてる。
本気でタイミング悪かったかな…しかたない、お土産だけ置いて帰ろう。
「えっと、自分はこういうものです。、八神部隊長か高町教導官、テスタロッサ・ハラオウン執務官への取次ぎは可能でしょうか?」
「申し訳ございません、今現在少々立て込んでおりまして…」
とそこまで言って感じのよさそうな受付嬢は目を見開いた。視線の先に有るのは僕の管理局での身分証。
自分の事ながらはあまり自覚がないのだが結構偉いらしい。最近ようやく慣れてきた要人への対応に苦笑するしかない。
前にクロノに会いに行ったときも
「セールスの兄さんだと思ったら管理局でもかなり上位の地位にいるスクライア司書長じゃないか、ごきげんよう」
等とからかわれたものだ。いつか何らかの手段で報復せねば。
「失礼しました、唯今八神部隊長と通信を繋げます」
受付上の横に空間モニターが浮かび、妙に笑顔なはやての顔が映し出された。
「やぁはやて。休暇が取れたから、ちょっと様子見に来てみたんだけど、お邪魔だったかな?」
「いやいや、グッタイミンや。これはもう神のお導きに違いあらへん」
はい?
「休暇のところ申し訳ないんやけど、ちょーーーーっとお願いがあるんよ。ユーノくんなら簡単に出来ることやから、な」
妙に迫力のある言葉と笑顔に、頷く以外に道はなかった。


「ねぇティア、ガラガラって赤ちゃんあやす時に使うものじゃなかった?」
「っさい!やってみなきゃわかんないでしょうが!」
「エ、エリオくん、どうしよう、どうしたらいいのかな?」
「ど、どうっていわれても…どうしよう?」
代絶賛混乱中のフォワード陣。いままで過酷な訓練を乗り越えて来た4人だが、こんな状況は想定外だ。
周りの守護騎士達、果てには隊長たちまでかつてない泣き方を見せるヴィヴィオに戸惑っている。
場の混乱がピークに達した時、扉が開き一人の救世主がこの地に足を踏み入れた。
救世主の姿は小さなイタチのような姿をしていた。


うう、もう僕もいい年なのに…
そう思いながらもあのはやての笑顔を思い出すと…ていうと語弊がありすぎるが、間違いじゃない。
久しぶりの変身でも体が覚えていたのか違和感も特にない。
広い部屋とはいえかなりの人数が集まっていて気圧される。
しかし躊躇なくその泣き声の中心に向かっていく。今の僕はこのわけわかんない状況を打開する勇者なのだ。
昔馴染みの人たちは僕の姿を見て、驚いたり安心したり様々な反応を見せる。
なのはとフェイトのすそを掴むその小さな女の子の肩に飛び乗り、

涙を舐めとる。この味は嘘をついてる味、かどうかは判らなかった。

その行為で僕の存在に気付いた少女。ここからが勝負だ。
物珍しげに僕を見つめてくる少女の視線を感じながらそばにあったデスクの上に移動。
見るがいい、僕の全力全開!!

両拳を頬の下に添え、首に多少角度をつけ、とどめはウインク!キュイ、と可愛らしい声も忘れずに。
これぞ必殺『近接魅了魔法ラブリーバースト』。効果は死ぬ。僕が。

顔馴染みが一斉に噴出す。そりゃもう二十歳間近の男がこんな動作をしたら噴出さずにはいられないだろう。
僕の正体を知らない新人たちは普通に可愛いとか思っているのだろうが、出来るなら見ないで欲しい。
とはいえ作戦は成功した。
少女はなのはとフェイトの服を掴んでいた手を離し、顔はすっかり興味しんしん。
とてとてと近寄ってるとふぁーとその色違いの両眼をらんらんと輝かせてこちらをのぞきこんでくる。
『皆は今のうちに出動を!ここは僕に任せて』
目の前の少女以外全員に聞こえるよう念話を飛ばす。
『あ、ありがとうユーノ…いってくるよ…くふ』
『さすがユーノくん、ここぞと言う時頼りになるね。ぷ』
念話なのに声を震わせている。そこまでか。そこまで可笑しかったか。可笑しいだろうなぁ。
笑いをこらえた表情でこっそりと部屋を出てく前線メンバー達。お前等あとでミテヤガレ。もっと凄いの見せてヤル。
自分でもちょっと間違ってると知りつつ暗い情念を燃やす。
しかし僕にはまだ仕事が残っている。
目の前の彼女をなのはたちが帰ってくるまで釘付けにしておくという任務が!
ふふ、忘れかけていたエンターテイナー魂に火がついたゼ。


その後、あまりに楽しませすぎた僕をヴィヴィオが離さなくなったという事件もあったが、
なのはがもっていたリアルスケールユーノくん人形により脱出に成功。
隊舎で晩御飯をご馳走になって帰宅した。
疲れたけど有意義な休暇だった。明日からまた頑張ろう。

後日、『もっと凄いの』をみた隊員たちが悶絶のあまり床をのた打ち回ることとなったが無害です。


著者:ユーノマニア

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