653 Mago di blu senza fine Act.5‐1 sage 2008/03/07(金) 16:02:42 ID:xOxBlUle
654 Mago di blu senza fine Act.5‐2 sage 2008/03/07(金) 16:03:57 ID:xOxBlUle
655 Mago di blu senza fine Act.5‐3 sage 2008/03/07(金) 16:04:33 ID:xOxBlUle

「搬送の用意はまだ整わないのか?」
「それが、管理局の魔導師の襲撃にあって」
「言い訳はいい。それよりも『アレ』を使う用意をしろ」

 なにやら部屋の外ではいろいろと揉めているらしい。
「あーあ、バッカみたい」
 突然の自体に慌てふためいている状況に対して、呆れた風に呟きながら彼女はシャワーを浴び続けていた。
 目の前にある鏡に写った自分の肢体に見とれながら、シャンプーの泡に包まれていた純白の髪を洗い流す。
 乳房も尻も極端に突出しているわけではないが、均整のとれたボディラインが雑誌のグラビアモデルをやっていてもおかしくないと思わせるだろう。
 街を歩けば声を掛けてくる男は吐いて捨てるほど出てくると自他共に認めるほどの美しさだ。
 しかし、彼女にとってそんなことは塵芥のように価値の無いものだった。いや、この世界の何もかもがつまらないものだった……。
 今この武装組織に協力してやっているのも、彼女にとっては単なる『退屈しのぎ』にすぎない。魔力が高かったからなし崩し的に幹部の待遇を与えてくれているだけの話だ。
「そういえば、せっかくシャワーあびたのに、汗かいちゃうカナ」
 シャワールームを出て、これと言った特徴の無い白いスキニータイプのロングパンツに黒の長袖を着る。
 ファッションなんかにも大して興味を持てないゆえに、結局動きやすいからと言う理由で服を選ぶと言う、顔のわりに女らしさが欠けている自分を笑う。
 後はベッドの傍に置いておいた待機状態のデバイスを取る。特に飾り気の無い銀のブレスレットだ。
 このデバイスは元々自分の物ではない。7年ほど前に戦った魔導師を殺して奪い取ったものだ。戦闘形態はハンドガンとアサルトナイフの二形態を取る。
 元々はインテリジェントでAIが組み込まれていたが、別の人間に従うわけが無いから外して破壊済みだ。
「あーあ、あの時見たくときめきたいわぁ……」
 ブレスレットの内側にはかつての持ち主の名が掘り込まれていた。『Tiida Lanster』と……。
 あの男との戦いは面白かった。殺すか殺されるか、喰うか喰われるか、自分が生きている事を実感することが出来た最初で最後の死闘。
 また、あれを味わいたい。そう思うたびに興奮して陰部を幾度となく濡らし、不毛な自慰にふける夜は一度や二度ではなかった……
「管理局の魔導師ってどんな奴なんだろう」
 どの道大した魔導師でなくとも暇つぶしにはなるだろうと思い立って、適当な場所に空間の座標をあわせて桜色の魔力光で輝く転移魔法陣を構築した。
 金色の弾丸が量産機人を次々と撃ち抜く光景に、アルバトロス・レヴェントンは閉口していた。
 おそらく、フェイトが行使しているのは自身が習得している中で最も威力の低い魔法だ。
 それだけでこの程度の相手ならば簡単にあしらう事が出来る。本局がやたらと祀り上げたがるだけはあると内心納得していた。
 無論、アルバトロスの方も黙って見ているわけではない。それに乱されることの無いように自分のペースを保ちながら量産機人を撃破していく。
 今、彼らがいるのは地下にあるだだっ広いホールであった。敵の数はここにいるだけでも100体は下らないだろう。
(ハラオウン。こいつらは相手にするだけ無駄だ。指令を出している装置を叩く)
 量産機人3体を薙ぎ払いつつフェイトに念話を送る。
(でも、それってどこに?)
(さあな。だから二手に分かれて探し出す。得策とは言えないが、君なら一人でも充分戦えるだろ? 魔王の嫁さん?)
 更に襲い掛かってきた機人を足蹴にしながら、念話で皮肉気な冗談を飛ばしてみた。
(ま、魔王の嫁ってなんですか!?)
(高町なのはと君が自他共に認める同性愛者(レズビアン)だって聞いた覚えがあるんだが?)
「ち、違いますーーーー! 私もなのはも至って普通です! なのははユーノとれっきとした恋人同士ですッ!」
 フェイトは念話の内容に思わず取り乱し、叫び声をあげながら大鎌に変形させたバルディッシュを振り回していた……。
「レヴェントンさん! 作戦が終わったらその噂の発信源を教えてもらいますからね!」
「ああ、適当なこと言って悪かった」
 アルバトロスは槍を構え、懐からカードを4枚取り出した。
「ここの奴らを一掃する! 俺の魔法が発動したら一気に左の通路を抜けてくれ」
 答えを待たずにアルバトロスは『ティフォーネ』の石突に付けられたコアのスリットに4枚のカードを投下させる。
『4Cards Charge!』
 カードは淡い水色の光を発しながら槍に魔力を蓄積させた。
『Blast Vortex』
 アルバトロスを中心に気流が変わる。否、集束していく。
 集束した空気が烈風となって槍を取り巻き、やがては気流の渦を形成していく。
「行けぇ!」
 大きく振りかざした槍の動きに合わせて放たれた渦は量産機人に向かって行くに連れて周囲の空気を巻き込み、息をすることすらままならない空間を烈風が傍若無人に暴れ狂う。
 風が止んで気付いた時、そこにはスクラップに成り果てた量産機人の残骸だけが残っていた。
 そして、槍を杖代わりにかろうじて立っていると言った様子で、アルバトロスが息を荒げていた。
「なにやってる!? 早く行け!」
 フェイトが呆然と自分を見ていることに気付いたアルバトロスが叫ぶ。
「だけど、レヴェントンさんが……」
「俺の事は心配ない、いつもの事だ」
 アルバトロスはそう言って正面の通路を走り去ってしまった。
 フェイトもこれ以上ここにいても無意味と割り切って、先ほどの話どおりに左側の通路へと抜けて行く。
 願わくば自分の側に量産型の指令装置があって欲しい。
 おそらく、アルバトロスのランクが低い理由は絶対的な魔力量の少なさが原因だ。
 故に消耗を極力抑えて戦うしかないのだ。先ほどのシチュエーションでも本当なら自分がやるべきだった。
 しかし、フェイトには広範囲攻撃魔法は持ち得なかった。あったとしても地下の空間を破壊しないで敵だけにダメージを与える事は難しい。
 魔力で空気の流れを操る『風』の魔法だからこそ出来た芸当だった。威力の制御が困難で下手な性質変化よりも高等技術だと聞く。
 自分の技術に於ける向き不向きは今さら嘆いても始まらない。それより今は出来る事をやるだけだ。
 出来る事なら指令装置の破壊と幹部の鎮圧、両方とも自分で決着をつければ、アルバトロスもスバル達にも負担をかけずに事を運べる。
 そう確信してフェイトは急いだ。しかし、フェイトは気付かない。その時点で自身が的外れな考え違いを起こしている事に……
『マスター・レヴェントン。本当に良いのですか?』
 狭い通路を走る中で、ティフォーネが問いかけてくる。
 今は狭い通路にいることから、先ほどまでのグレイヴの姿ではなく、片手で振り回す事に適した鍔のない両刃のショートソードに変形していた。
「何がだ?」
 アルバトロスは鬱陶しげに答えると、ティフォーネは更に言葉を続けた。
『白をきるなら言わせて貰います。いい加減、同業者を疑うのは止めて下さい。あんな芝居を打ってまで、どうして相手を試そうとするんです。
 前マスターはあなたにそんな事をさせたくて、魔法を教えたわけでも私を託したのでもないはずです!』
「じゃあ、俺がどれだけ他の魔導師から見下されているかも知っているだろう?
 俺もジャルパも、何度裏切られて見捨てられそうになったと思ってる?
 今回の事だって、上の奴らはせいぜい俺たちをエースの引き立て役か、捨て駒同然にしか見て無いからだろ? ランクって物差だけでな」
 そう吐き捨てた主の手の中で、ティフォーネは心底心配していた。
 何も否定は出来ない。所詮時空管理局は、高いランクの魔力を持った容姿の美しい女ならば、重犯罪者でもえこ贔屓して祀り上げるような組織だと、昔の主が呟いていたのを思い出す。
 当の本人もそれに当てはまったから、逆にそう言う扱いを受けるのが嫌になったと聞いていた。
 物思いにふけっている間にも、アルバトロスがグラディウスに変形した自身を振り回して量産機人を斬り伏せていく。
 そして、通路を出た先の広間で『そいつ』は待ち構えていた。
「なんだ……こいつは?」
『照合データなし、解析不能です』
「言われなくても分かっている」
 赤黒い表皮に背中から突起のついた4本の節足が生えていて、顔の部分には複数の目がこちらを睨み付け、口は牙だらけで糸をひいた粘液をたらしている。
 あえて言えば人間とクモを混合させた、子供向けの実写ヒーロー番組に出てくる悪役の着ぐるみだろうか?
 しかし、少なくともこれは撮影なんかではなく、紛れも無い現実だ。そして、戦うしかない事も自明の理であった。
「ティフォーネ、カードはあと何枚だ?」
『8枚です。「ブラスト・ヴォルテクス」2発分ですね』
「微妙な数だ……」
 再びティフォーネを槍形態(グレイヴ)に戻し、アルバトロスは油断なく構えた。

 続く



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目次:Mago di blu senza fine
著者:三浦

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