ちみたん(1レス保守物語.3)

初出スレ:男主女従三章96

属性:


「お客さん?誰?母さんの友達?」
「教授さんよ」
――ああ、おっさんか。
雪はつまらなそうに唇をツンと突き出した。
教授は雪の父親と親交が深く、昔から家族ぐるみの付き合いをしている。
小洒落たスーツとシルバーの髪がトレードマークの老紳士で、雪にとっては実の叔父のように気安い人である。
(可愛いがってくれても小遣いはくれないんだよな。おっさんはよー)
心中で毒を吐く雪をよそに母親は楽しそうに話し続けた。
「ねえ、だから帰りにマドレーヌ買って来てもらいたいのよ」
近所の商店街にはかなり有名なケーキ屋がある。そこのマドレーヌが雪家のお茶受けの定番なのだ。
「僕もう家に着くから無理。寒いし直帰るからね」
「えー?しょうがないわねえ」
「切るよ、切からね」
雪は強引に通話を終わらせた。もう道の先に自宅が見えている。
ご近所からプチベルサイユ宮殿と囁かれる巨大な敷地の白亜の御殿だ。
我が家ながら、見る度にその派手な外観に「手狭な日本で何してんの。馬鹿じゃない」と脱力してしまう。
門をくぐってから玄関まで広い庭を歩く雪は、ふと視線を感じて屋敷を見上げた。
二階の窓に人影が見えたが、すぐにかき消えてしまう。



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シリーズ物 ちみたん(1レス保守物語)  ちみたん(1レス保守物語.2)
2009年03月05日(木) 11:43:38 Modified by ID:LmHO/U8O4w




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