王都騎士団【愛の言葉】
初出スレ:三章240〜248
属性:主従色ほぼ皆無
「いつもと違うことをしてみるか」
そう言って、ニンマリと笑ったデュラハムに、ファムレイユは嫌な予感を隠せなかった。
おおよそ、デュラハムがこんな顔をする時は、きまって良からぬ事を企んでいるからだ。
勿論、デュラハムにしてみれば、別段悪巧みでも何でも無いのだが、ファムレイユとの認識の違いは、付き合い始めて三年が経過した今も、微妙にズレたまま。
それに気付いていながら、互いに修正しようとしないのは、結局の所、二人にとっては、大した問題では無いのだろう。
デュラハムの手がファムレイユの背を撫でる。
優しい愛撫にゆっくりと吐息を漏らしたファムレイユは、デュラハムの首筋にすがりついた。
「デュー……あの」
「ン?」
先ほどから、デュラハムはファムレイユに、それ以上の刺激を与えようとはしない。
繋がるまでは、いつも通りの情事だったのだが、普段よりも時間を掛けた愛撫のあと、ファムレイユの中に自身を埋めたデュラハムは、ファムレイユを抱き起こすと、それ以上動くでもなく、ひたすらにファムレイユを撫でていた。
時折、瞼や鼻先に唇を落とす以外は、唇にすら触れようともしない。
普段ならば――言葉は悪いが――快楽を得ようと、ファムレイユを気遣いながらも事を進めようとするのに、だ。
「いつもと違うって……」
「ん、そゆこと」
ファムレイユの背骨に指を這わすデュラハムは、ニンマリと笑ったまま。
その僅かな刺激にも、ファムレイユは体を震わせるが、デュラハムは気にすることなく、首筋まで滑らせた手を、またゆっくりと下へと下ろした。
「いつもいつも時間がねぇからって、こうやって抱き合う事もなかったろ? たまには、こう言うのも良いんじゃねぇかと思ってよ」
「んっ……」
腰に下りた手がくすぐったい。
更に強くすがりついたファムレイユの胸が、デュラハムの厚い胸板に押し当てられて、形を変えた。
今まで数え切れないほど、ファムレイユはデュラハムと共に夜を過ごして来た。
けれど、これほどまでに緩やかな時間は、ファムレイユの記憶には殆ど無い。
むしろ回数ばかりが記憶に残り、今日も恐らく、最低でも三回は、デュラハムは欲望を吐き出そうとするだろう、と、そう考えていたのだが。
腰をなぞるデュラハムの手がファムレイユの太腿へと下りる。
そのまま足を持ち上げられるのかと思いきや、デュラハムはまた再び、なぞる手を腰へと滑らせた。
「デ、デュー……」
「ん?」
「……あんまり……撫でないで」
体の中に感じるデュラハムの熱は、未だしっかりとした質量を保っている。
なのに、普段と違うデュラハムの動きは、確実にファムレイユの熱を煽っている。
「嫌か?」
「違う、けど……」
「なら良いじゃねえか」
ファムレイユの頬に唇を落とし――それも、酷く優しい、軽く触れる程度のキスだ――、デュラハムは身動きもせずに、ファムレイユを撫で続ける。
その眼差しは、楽しんでいると言うよりも、慈しんでいるそれに近い。
これもまた、普段とは違うデュラハムの表情である。
「……ずるい」
ポツリ、と。こぼれた言葉は無意識だった。
聞き取れなかったらしいデュラハムが手の動きを止めたが、ファムレイユは、今度ははっきりと、自分の意志で同じ言葉を繰り返した。
「ずるい」
「何がだよ」
唇を尖らせたファムレイユに、デュラハムは眉尻を下げて笑う。
「デューばかり……触るのが」
口にしてしまえば、自身の不満が自覚出来て、自分でも思わぬことを望んでいたと知ったファムレイユは、何となく目を合わせ辛くなり、デュラハムの肩に顔を埋めた。
色事に身も心も溺れてしまった時などは、自分でも意外な事を口走ってしまったりするのだが、今はまだ、理性が勝っている。
それでも、己の中にある欲望に、戸惑いながらも口にする事で、少しだけ何かが軽くなったような気がした。
「じゃ、お前さんも触れば良い。遠慮すんな」
軽い口調のデュラハムは、ファムレイユの頭をぽんぽんと叩くと、両手をファムレイユの背中で組んだ。
それっきり、動こうともしない様子に、ファムレイユは暫し沈黙し。けれど、口にしたからには、何もしないのも妙だと思い直して、そっとデュラハムの背に手を回した。
筋肉質なデュラハムの体は、間もなく四十を迎えると言うのに、無駄な贅肉はない。
同じ筋肉でも、男と女というだけで、こんなにも違うのか……と、そんなことを考えながら、ファムレイユはゆるゆるとデュラハムの背を撫でた。
顔を傾ければ、デュラハムはファムレイユの動きに目を細め、何処か楽しそうに唇を弧に描いている。
その顔が何だか憎らしくて、かぷりとデュラハムの首筋に噛みついてみる。
一瞬、デュラハムは眉を動かしたが、やはり口元の笑みは変わらず。
ファムレイユが甘噛みを繰り返すと、デュラハムの口から吐息が漏れた。
「成る程な」
「何がです?」
「お前さんが鳴く理由が、何となく分かった」
一瞬、殴り倒してやろうかと思った。
が、それも今更。
喉の奥で笑うデュラハムに、軽い睨みを利かせて、ファムレイユは唇をゆっくりと滑らせた。
首筋から喉。喉仏を通り、鎖骨へと、薄く開いた唇から舌を覗かせ、優しく舐める。
反対側の首筋までをつぅとなぞると、胎内の熱がひくついた。
「美味いか?」
「何でそう言う事を訊くんですか、貴方は」
目線だけで見下ろすデュラハムの言葉に、ファムレイユは鼻先に皺を寄せる。
けれどデュラハムは、片口角を引き上げると、ファムレイユを抱く腕に力を込めた。
「俺は、ファムを美味いと思ってるから」
さらりと返されれば言葉も無く、ファムレイユは唇を尖らせた。
「こう言う行為、食うとか食われるとか言うけど、本当だな」
再び、背中を撫で始めたデュラハムは、ファムレイユの首筋に唇を寄せながら、ぽつりと呟く。
その言葉は、普段、ファムレイユが情交に対して持っていた感想だったので、何処か可笑しくもあり、ファムレイユは目を細めて小さく笑った。
「私、もっと前から気付いてましたよ」
「何で言わねえんだ?」
「態々言う事でも無いじゃないですか」
忍び笑うファムレイユに、デュラハムは動きを止めて少しばかり閉口したが、直ぐに苦笑混じりの笑みを浮かべ、ファムレイユの背中をなぞり始めた。
背骨を押すように、二本の指が窪みを伝う。
同じように、ファムレイユもデュラハムの背をなぞろうとするが、それよりも先に淡い刺激が全身を巡り、身を震わせる。
こんなにも丁寧に背中を刺激された事など無くて、意外なほどに敏感になった背中は、デュラハムが小さく爪を立てるだけでも、快感を呼び起こす。
知らず吐息を漏らしたファムレイユは、デュラハムの背を撫でるのを諦めて、目の前にあるデュラハムの耳に舌を伸ばした。
耳の裏から、耳たぶをなぞり、いつもデュラハムがするように、ぱくりと耳たぶを口にくわえる。
唇で軽く引っ張って、複雑な形を示す軟骨を舌先でなぞれば、デュラハムの口からくっ、と、うめき声にも似た声が漏れる。
それに気を良くした訳でもないが、ファムレイユは舌先を尖らせると、ちろちろと丹念にデュラハムの耳を舐めた。
「ちょっと、タンマ」
「ヤです」
「ずりぃ」
くすぐったいのか、感じているのか、微妙な所ではあるが、何かしらの刺激にはなっているのだろう。
笑みを浮かべながら制止を掛けるデュラハムに耳を貸さず、ファムレイユは手を首筋に添えると、反対側の耳元を指先でなぞった。
妙な征服感が胸の内に起こっている。
デュラハムの顔を伺い見れば、目を眇めて熱い吐息を漏らしている。
けれどその左手は、ファムレイユの背を上下に撫で、右手は密着させたままの胸元に伸ばそうとでもしているのか、脇をやわやわとさすって来る。
「意外だな」
「何がですか?」
「お前さんも、結構いじめっ子って事だよ」
「日頃のお返しです」
耳元から唇を離し、デュラハムの顔を覗き込む。
僅かに離れた隙間を縫って、デュラハムの右手はファムレイユの胸を覆ったが、それ以上動かす事もせずに、デュラハムはこつんと、ファムレイユの額に己の額をくっつけた。
「そんなにいじめてるか?」
「いじめてます」
問いかけに答えれば、デュラハムの顔が僅かに苦笑の色を帯びる。
密やかに笑い合い、触れるだけのキスを何度も交わして、また抱き合う。
胸を覆う手は身動き一つもしないが、暖かな温度に、心臓を掴まれているような錯覚に陥る。
無精髭の生えた顎に唇を這わせ、時折やんわりと歯を立てる。
舌を伸ばせば、ざらりとした感触が舌を刺し、それもまた、言い知れぬ快感へと繋がっていく。
愛しいと、素直に感じる。
「ファム」
名前を呼ばれ、顎に唇を押し当てたまま、視線を上げると、デュラハムが顔を傾けて、その唇を己の唇ですくい取った。
開かれた唇から舌が差し込まれ、僅かに煙草の味が滲む。
いつもと変わらぬキスの筈なのに、絡め取られた舌は普段よりも敏感で、きゅう、と下半身に力が籠もった。
いつしか、心臓を掴むデュラハムの手は、胸の頂を優しく撫で始めていて、全身が熱に包まれていく。
指先で固くなった頂を摘まれ、ファムレイユは思わず唇を離した。
「や……っ……」
想像以上の刺激に困惑するが、デュラハムの手は休まない。
「ちょ……ま、待って」
「駄目だ」
制止の言葉を掛けようとしても、デュラハムの唇が再び迫り、残る言葉は声にも出来ず、デュラハムの口に吸い込まれる。
繋がったまま、律動もなく愛撫を受け続けた体は、普段よりもずっと過敏になっているらしく、触れられた訳でもないのに体の奥から蜜が滲み出るのを、ファムレイユは口づけを交わしながら感じていた。
背後に回された手は、尚も優しく背筋をなぞる。
その指先が腰に下りたかと思うと、するりと脇腹を伝って、右の胸もデュラハムの手の中に収められた。
やんわりと揉みしだかれるその刺激は、飽くまで優しく、常ならば物足りないと感じるほどなのに、不思議と充足感に包まれる。
何故か泣きたくなったファムレイユは、呼吸の隙間に僅かに顎を引く。
デュラハムはそれ以上迫ることをせず、ペロリと己の唇を舐めて、ファムレイユを見下ろした。
「っ……ふ、……う」
見下ろす眼差しは変わらない。
言葉も無く見下ろされて、普段ならば多少なりとも何を考えているのか気になる筈なのに。
愛されている。
何故かそう、断言出来る。
「う……うぅっ」
「ちょ、え……どうした?」
愛しい、と。愛されている、と。
紛れもなく感じたファムレイユの目から、熱い雫がこぼれ落ちる。
突然泣き出したファムレイユに、当然ならがデュラハムは目を丸くし、訳が分からず当惑しているようだった。
「ふぇ……っ……す、すみま、せ……」
ファムレイユとて、泣きたくて泣いている訳ではない。
けれど、止めようとしても止められないのが、現状で。
日頃、感情を押し込める節があるだけに、一度緩んだ涙腺は、簡単には元に戻りそうもない。
「いや、謝るな。謝られたら、俺が悪いことしたみてぇじゃねぇか。……それとも、俺が何かしたか?」
ぼたぼたと涙をこぼすファムレイユの頬を、両手で拭いながら、困り顔のデュラハムが問いかける。
そうではない、と首を振ろうとしたファムレイユだったが、デュラハムの手の暖かさにそれも出来ず、すん、と鼻を鳴らした。
「ちが、ます」
しゃくりあげるファムレイユは、上手く言葉に出来ない。
しかしデュラハムは、それを承知しているかのように、うん、と小さく頷いた。
「ただ、わた……すご…っ…幸せだなって」
デュラハムと出会い、騎士を志し、直接言葉を交わせるばかりか、こうして共に過ごせる時間を得られた。
考えてみれば、ファムレイユの初恋は、十六年前から始まっていたのだ。
本人に、初恋の自覚があるかどうかは別として、ファムレイユが騎士を志すきっかけとなった騎士は、常に彼女の心の中に居た。
その相手を、愛し、愛される、その喜びが、こんな形で表になるなど、三年前までは予想も出来なかったことだ。
否、つい数刻前、デュラハムが部屋を訪れた時すらも、そんなことは露ほども予感していなかった。
「わたし……、デューが、好きで……っ……本当に、幸せで……」
頬を拭う手に自身の手を添え、ファムレイユは声を絞り出す。
ともすれば嗚咽に変わりそうなその言葉に、デュラハムの目は、ますます見開かれた。
「だから……デューも、っ……そう、想ってくれてるんだ、って……っ。……そう思ったら……何か……っ……」
「分かった」
声を詰まらせるファムレイユに、デュラハムは親指の腹で涙を拭い、鼻先がくっつくほどに顔を近付けた。
「うん、俺も好きだ。泣かせて悪いって思うぐらい好きだし、泣いてくれて有り難うって思うぐらい好きだ」
「ふ……ぅ…っ」
至近距離なのに、水の膜はデュラハムの表情をぼやかせる。
けれど、淡々と紡がれる言葉は、ファムレイユの胸の内に、すとんと収まった。
まるで、欠けていたピースがハマるかのように。
瞼を伏せるファムレイユの目から、熱い雫がこぼれたが。それは滲みを形作ることなく、デュラハムの手によって払われた。
「愛してる」
「……ん」
「愛してる?」
「……うん」
告白に理解を。
問いかけには肯定を。
小さく頷くファムレイユに、デュラハムは穏やかに目を細めた。
「あい、してる……」
それは恐らく、ファムレイユが初めて口にする言葉で。
笑みを浮かべたデュラハムは、その言葉を紡いだ唇に、優しく己の唇を重ねた。
「一つ、提案があんだけど」
「……っ……?」
ファムレイユが落ち着くのを待って、頬に、唇に、瞼に、キスの雨を降らせていたデュラハムが顔を上げた。
まだ僅かに横隔膜を痙攣させながらも、ファムレイユはデュラハムを見上げた。
「家、買わないか?」
「家……ですか?」
「そう。俺と、お前さんとで住む、家」
何の話をしているのだろう、と、ファムレイユは首を傾げる。
けれど。
「それって……あの……」
「こんな時に言い出す話でも無いだろうって苦情はパスな。今思いついたから」
「……っ……」
騎士団の隊長職以下、副隊長補佐までの役職を持つ面々は、各個人に私室が与えられている。
基本的には、そこが生活のスペースとなり、家を持っている者は数少ない。
強いて挙げるならば家庭を持つ者だが、言い換えれば、家庭がなければ家を持つ必要もないと言うことになる。極論ではあるが。
しかし、それが騎士団員や関係者の間では通説と言うか、ほぼ不文律にもなっているのも事実。
深読みなどしなくても、意図することは分かると言う物である。
「本当は、もっと別な文句も考えてたんだが」
「……例えば?」
「嫁に来い、とか。結婚しよう、とか」
それもそれで、どうかと思うが。
思わずこぼれた笑みは、ファムレイユの表情を明るくする。
その姿にデュラハムは少しばかり眉を寄せたが、直ぐに気持ちを切り替えたか、くっと喉の奥で笑いをこぼした。
「まあ、家を持ったら持ったで、大変だろうが。お前さんと、三人四人で暮らすにゃ、ここじゃ手狭だからな」
「三人……四人?」
ニヤリ、と口角を上げた笑みを見せたデュラハムに、ファムレイユは笑いを収める。
しかし、言葉の意味を理解するより早く、デュラハムはファムレイユを抱きしめて、ベッドに倒れ込んだ。
「ひゃっ…!」
「子どもは二人。嫌か?」
「っ……ヤじゃ、ないですけど……気が早くありませんか?」
繋がったまま、体を起こしたデュラハムは、ファムレイユの体に手を伸ばす。
穏やかになっていた筈の体の熱は、それでもしっかりと感覚を残していて、ファムレイユは甘い声を上げそうになったが、息を飲んで、それを堪えた。
「そうか?」
「そうです。それに私、まだ返事してませんよ?」
徐々に熱を帯びる吐息に言葉を乗せる。
途端、デュラハムの動きがはたりと止まった。
案外、押しには弱いのかも知れない。
「そう言や、そうか」
「そうです」
思案含みの顔付きになったデュラハムに、ファムレイユは笑いかける。
両腕を伸ばし、先ほど、デュラハムが自分にしてくれたように、両の頬を包み込むと、デュラハムは少し苦笑して、ファムレイユに顔を近付けた。
「俺と、生涯を共にしてくれないか?」
その眼差しは、何処までも真っ直ぐで、子どもの頃に見た、あの騎士の眼差しと、今も変わることがない。
喜んで、と。
呟いた声は、口づけによって、二人の間に密やかに仕舞われた。
何かを確かめるように唇を重ね、舌を絡める。
デュラハムの手が、ファムレイユの額に掛かる髪を掻きあげ、より深く、より強く、唇が重ねられる。
同時に、ゆっくりと胎内を擦り始めた熱に、ファムレイユはくぐもった声を上げた。
押し付けるように体の奥に擦り付けられるデュラハム自身に、閉じた瞼の裏で火花が散る。
呼吸が出来ない苦しさと、じりじりと焦がされる欲望に、全身が熱を帯びてくる。
絡め合う舌は酷く熱くて、なのに、絡めても絡めてもまだ足りない。
貪るような口づけは、ぴちゃぴちゃと濡れた音を響かせる。
デュラハムの手が、再びファムレイユの体をなぞり始める。
首筋から肩を通り、ゆっくりと胸を掴まれる。
ほんの僅かな刺激にも、体の奥が溶け出しそうな快感を覚え、密着させた秘所からは蜜が溢れる。
ぶつけられる欲望は、いつものような激しさは無いのに、それ以上の快感で。
もっと欲しいと切望する心のままに、ファムレイユは腰を浮かせて、デュラハムにすがりついた。
それが合図になったようで、ぬちゃりと淫らな音がする。
半ばまで引き抜かれた肉棒が、再びファムレイユの胎内に埋められ、最奥にぶつけられたその衝撃は、ファムレイユの目を見開かせた。
声にならない小さな悲鳴が口を吐く。
弾みで離れた唇ははくはくと、水辺に揚げられた魚のように震えるが、デュラハムの動きは更に勢いを増した。
「ひっ、あ…あああっ!」
体を起こしたデュラハムに痛いほどに両の胸を掴まれ、体の奥をえぐり出されるような動きで、律動が繰り返された。
固く尖った頂を指で摘まれ、ぐりぐりとこね回される。
同時に、僅かに引かれた欲望は、強い衝撃を伴って、体の奥の奥にまでぶつけられる。
その度に、悲鳴にも似た鳴き声を上げて、ファムレイユはすがりつく手に力を込めた。
自分自身の体なのに、別物になってしまったかのようで。
頭も体もぐちゃぐちゃに溶けて無くなりそうなのに、けれど、それが不思議な充足感にすり替わる。
気付けば自ら足を開き、デュラハムの動きに合わせて腰を動かす。
普段ならば、それこそ三度目の情交でなければしないようなことなのだが、そんな事を考える余裕もない。
「ファム…っ」
掠れた声で名前を呼ばれる、それだけで、もう幸せで、嬉しくて。
笑みを浮かべたファムレイユは、知らず涙を溢しながら、何度も何度もデュラハムの名を呼んだ。
膝を持ち上げられ、勢い良く抜かれた肉棒が、全身を擦るように埋められる。
突き上げられる律動で、溢れる蜜が太腿を汚し、ぐちゅぐちゅと籠もった音が絶え間なく響く。
「や、あっ、デュー! …っ、やあああっ!」
頭の中が真っ白になっても、デュラハムの動きは止まらなくて、一瞬気を失ったファムレイユだったが、それも直ぐに快感によって現実に引き戻される。
「やぅ…ら、あ、らめぇっ! も、ああっ!」
呂律の回らない口がだらしなく開かれ、意味を成さない声だけが、ファムレイユの喉を震わせる。
そんなファムレイユの姿に限界を感じたのか、デュラハムは持ち上げた膝をファムレイユの胸に押し付けて、今までに無い強さで、ファムレイユの体を突き上げた。
「ファム……愛してる…っ」
「あぁぁっ、んあ、あい、して…っ…!」
愛している。
譫言のように互いの口からこぼれる、その言葉の意味を全身で感じるファムレイユは、デュラハムの声と熱に、再び全身を震わせて。
体の奥に吐き出された、デュラハムの欲望の熱に、緩やかに気を失った。
数ヶ月後。
王都の、住宅地の一角に設けられた新居に、王都の守護を担う王都騎士団が住んでいる、と噂されたが。
周りに住む住民からは、年の離れた仲の良い夫婦が住んでいる、との認識で。
噂のほどは、定かではない。
2011年03月21日(月) 22:52:06 Modified by ID:w6wuzP1wCA