欲望という名の音楽：狂気と騒乱の世紀が生んだジャズ

目次

はじめに

第1章　ジャズと戦後の原風景
ジャズとセックスは手を取って歩みゆく
ビ・バップとGIベイビー
横浜の雑居ビルで記録された「地下室の手記」
日本のビ・バップの2人の先駆者―守安祥太郎と秋吉敏子

第2章　みんなクスリが好きだった―背徳のBGMとしてのジャズ
ジャズとドラッグはどこで出会ったのか
クスリと音楽をめぐる幻想と真実
売春のBGMとしてのジャズ
「セックス」という名の音楽
非常時における「快楽」と「不道徳」の行方
ニューオーリンズに落ちた売春婦の哀歌
歌詞から浮かび上がる「WASP対非WASP」の構図

第3章　戦後芸能の光と影―クレージーキャッツと美空ひばり
戦後エンターテイメントの二卵性双生児
クレージーキャッツと高度成長時代
ジャズと「反社」と芸能界
美空ひばりの戦後―アメリカに背を向けた天才シンガー
日本初のコミック・バンドと美空ひばり
山口組三代目と美空ひばり、その宿命的関係
美空ひばりはなぜ日本語でスタンダードを歌ったのか

第4章　ならず者たちの庇護のもとで―ギャングが育てた音楽
「狂騒の20年代」のシカゴとジャズ
ピアニストが見た「ジャズの偉大なパトロン」
黒人を志願したユダヤ人ジャズマン
悪徳政治家の懐で生まれたジャズ
ジャズと原爆―カンザスシティ～ヒロシマ・ナガサキ
カンザスシティとニューヨークをつないだ男

第5章　栄光と頽廃のシンガー、フランク・シナトラ
「ザ・ヴォイス」と呼ばれた男がジャズにもたらしたもの
『ゴッドファーザー』で描かれたシナトラの虚構と真実
「200人を殺した男」とフランク・シナトラ
セレブリティたちの闇のネットワーク
「ボサ・ノヴァの神」としてのフランク・シナトラ

第6章　迫害の歴史の果てに―ユダヤ人と黒人の連帯と共闘
ビル・エヴァンスはユダヤ人か、あるいはユダヤ人とは誰か
「幻想の黒人」のイメージを身にまとったユダヤ人
「スウィングの王」と「史上最強のジャズ・レーベル」のオーナー
「黒人性」と「ユダヤ性」のハイブリッド・ミュージック
『ポーギーとベス』に表現された「音楽の坩堝」
3人のユダヤ人と最高のジャズ・シンガーを生み出した名曲

おわりに
主要参考文献一覧

ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」の音を聴く (星海社新書)

目次

はじめに

第1章　1950～1960年代、ニューヨークの青春
ハービー、トニー、ロンの青青の時代
若いエネルギーが爆発した『フォア＆モア』
独創的なトニー、頼れるロン
アコースティックは水彩画。エレクトリックは点描画
『エンピリアン・アイルズ』のフレディ・ハバード
黄金のクインテット
ウェインとコルトレーン、デビュー前の邂逅
王道のジャズ『イントロデューシング・ウェイン・ショーター』
若きコルトレーンの代表作『ブルー・トレイン』
モダン・ジャズを象徴する『サキソフォン・コロッサス』
貧しさとの闘いでもあったレジェンドたちの青春
ビリー・ホリディ「奇妙な果実」のリアル
マイルスとコルトレーン、黄金コンビの『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』
最高峰のトランペット奏者、クリフォード・ブラウン
『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』の奇跡
ビル・エヴァンスが29歳で参加した『カインド・オブ・ブルー』
ジャズ・シーンでは白人がマイノリティ
マッコイ・ターナーとコルトレーンの蜜月時代
『ザ・リアル・マッコイ』で演奏を確立？

第2章　引き継がれるジャズの遺伝子
ヴィレッジ・ヴァンガードで自分を売り込んだキース・ジャレット
キース・ジャレットとチック・コリアの共存
『マイルス・デイヴィス・アット・フィルモア』の聴き所
奇跡的なソロ・ピアノ作『ザ・ケルン・コンサート』
ジャズを新しいフェイズに誘った『ビッチェズ・ブリュー』
ジョージ・ベンソンは10代でピッツバーグからニューヨークへ
若きベンソンが黄金のクインテットと渡り合った『マイルス・イン・ザ・スカイ』
フェンダー・ローズの登場
ベンソンの新境地だった『アビイ・ロード』
ゲイリー・バートンの楽屋に押し掛けたパット・メセニー
『アメリカン・ガレージ』『トラヴェルズ』パット・メセニー・グループの哀愁

第3章　ロックの洗礼
フュージョンの波
日本で大ブームになったラリー・カールトンとリー・リトナー
メセニー、ブレッカー、ジャコを起用した『シャドウズ・アンド・ライト』
ウェザー・リポートの黄金時代はジャコ・パストリアスの青春期
『ジャコ・パストリアスの肖像』の衝撃
青春のまま永眠したジャコ
世界一のベーシスト
ロックを経由したマイケル・ブッカーの『ヘヴィ・メタル・ビ・バップ』
ビッグバンドで身につけたコブのある演奏
ウィントン・マルサリスのバラード集『スターダスト』
ブランフォードとケニー・カークランドの青春
ジャズ・シーンから生まれたスティング・バンド
『ブリンギング・オン・ザ・ナイト』のグルーヴ

第4章　レジェンドが欲した青の時代のエネルギー
優れたミュージシャンとの出会いが自分をレベルアップ
偉大な音楽家が持つマジック
ジョン・スコフィールドが忘れられないデトロイトのギグ
『スター・ピープル』の火を噴くようなギター
ダリル・ジョーンズは19歳で『デコイ』に参加
マーカス・ミラー、20代のフェアリーテイル
27歳のマーカスが60歳のマイルスをプロデュースした『TUTU』
マイク・スターン27歳の”デブの時間”
「パーティーに行ったら、帰ることも忘れるな」

第5章　新しいジャズを生む才能たち
ジョシュア・レッドマン、上原ひろみ、エクスペランサ・スポルティング
ジョシュア・レッドマン、20代の課題
若き日のジョシュアの集大成『ビヨンド』
毎アルバム異なるアプローチの上原ひろみ
ひろみがチック・コリアとジャズをやった『デュエット』
ノーベル平和賞コンサートでのパフォーマンス
『ラジオ・ミュージック・ソサエティ』はシンガーが2人いるよう

読者のためのレコードガイド
フォア＆モア　

マイ・ファニー・ヴァレンタイン　

セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン　

テイキン・オフ　

エンピリアン・アイルズ　

イントロデューシング・ウェイン・ショーター　

ブルー・トレイン　

サキソフォン・コロッサス　

テナー・マッドネス　

ヴィレッジ・ヴァンガードの夜　

奇妙な果実　

リラクシン　

クッキン　

ラウンド・アバウト・ミッドナイト　

ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン　

カインド・オブ・ブルー　

バラード　

インプレッションズ　

至上の愛　

リーチング・フォース　

バラードとブルースの夜　

ザ・リアル・マッコイ　

マイルス・デイヴィス・アット・フィルモア　

サムホエア・ビフォー　

フェイシング・ユー　

ザ・ケルン・コンサート　

ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス　

ビッチェズ・ブリュー　

マイルス・イン・ザ・スカイ　

アビイ・ロード　

アメリカン・ガレージ　

トラヴェルズ　

80/81

夜の彷徨　

キャプテン・フィンガーズ　

シャドウズ・アンド・ライト　

ジャコ・パストリアスの肖像　

ヘヴィー・ウェザー　

ヘヴィ・メタル・ビ・バップ　

スターダスト　

ブリング・オン・ザ・ナイト　

スター・ピープル　

デコイ　

TUTU　

マイルス！マイルス！マイルス！ライヴ・イン・ジャパン　

ビヨンド　

デュエット　

ラジオ・ミュージック・ソサイエティ　

おわりに
参考文献

『M/D　上---マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究』(河出文庫)

目次

　プロローグ　菊池成孔　3

　凡例　19

第1章マイルス・デューイ・デイヴィス三世誕生（1926‐1944）　23

　第1講　マイルス・デイヴィスの二〇世紀　25

　　　　　東京大学のマイルス・デイヴィス
　　　　　家系図のなかのジャズ・ミュージシャン
　　　　　魔術の三元素
　　　　　マイルスの近代性と更新主義
　　　　　マイルスの歴史がジャズの歴史、なのか？
　　　　　自家中毒としての「マイルス・マジック」
　　　　　見て見ぬふりをされるということ
　　　　　ナルシストは背が低く、半裸になる
　　　　　必読の二冊
　　　　　　クインシー・トループ『マイルス・デイビス自叙伝（Ⅰ・Ⅱ）』（中山康樹訳、宝島社、1999）

　　　　　　ジョン・スウェッド『マイルス・デイヴィスの生涯』（丸山京子訳、シンコーミュージック・エンターテイメント、2004年）

　　　　　浮世離れしたデイヴィス一家
　　　　　「愛くるしい少年」の日々
　　　　　父に褒められたい
　　　　　美しく、おしゃれで、無理解な母

　第2講　イースト・セントルイスのセンチメント　61

　　　　　マイルス少年のラジオ・デイズ
　　　　　お菓子のヴァリエーション
　　　　　白人音楽と黒人音楽の差異
　　　　　「白人がかかるとスイッチを切った」
　　　　　ブルースが血のなかに入ってきた
　　　　　「ナスティ」への反感と憧れ
　　　　　「先生、僕は綿花なんか摘んでないです」
　　　　　人生を変えた必殺の一撃
　　　　　1944年のあの夜のフィーリング
　　　　　ビ・バップの最前線ニューヨークへ

　Sketches of Miles:01
　マイルス、ティーンエイジャー時代のポップス１０選　大谷能生　89

　Sketches of Miles:02
　「どの10年を使うつもりだ？」”50年代ニューヨーク映画”としてのマイルス自伝映画　菊池成孔　97

第2章ニューヨークの速度とビ・バップ（1945‐1955）　105

　第3講　都市/速度/スウィーツ　107

　　　　　最初の、甘いドラッグ
　　　　　「ジュリアード入学」の盲点
　　　　　ふたりのジュリアード出身者
　　　　　夜ごとの聖地詣
　　　　　ビ・バップとのアンビヴァレンス
　　　　　ポピュラー音楽史上のビッグ・バン
　　　　　突然変異した「ジャム・セッション」
　　　　　バード、宇宙を喰い殺す
　　　　　黒い破綻者たちによる「天才集団」
　　　　　金ズル
　　　　　芸術で生計を立てる、というセンス
　　　　　不適応者のあがき
　　　　　カンザス・リフと近代和声の交配
　　　　　ブルースとヒンデミットを脳内シャッフルする
　　　　　奇跡のキメラ、その「マイルス的」両義性

　第4講　パリのリュクスと青春の高揚/失望　145

　　　　　初めてのオリジナル曲
　　　　　バードをパクり、パクられる
　　　　　ソウルメイト、ギル・エヴァンス登場
　　　　　クロード・ソーンヒルとクールの萌芽
　　　　　ギルのアート・コミューンと九重奏団
　　　　　「ノネット」という新発明の絶妙
　　　　　「全部バップの逆で行こう」とばかりに
　　　　　『クールの誕生』の誕生
　　　　　初めての海外、初めてのパリ
　　　　　失意の凱旋と、変革のトランペット
　　　　　パリ仕様の特殊なビ・バップ
　　　　　黒人ジャズメンたちの天国
　　　　　名士マイルス、パリと決別する直感
　　　　　お坊ちゃん、初めてのナスティ時代
　　　　　中級ジャンキーの冴えない感じ
　　　　　セントルイスのコールド・ターキー
　　　　　通過儀礼のコントロール
　　　　　不良コスプレと天賦のエレガンス
　　　　　ケンカ・セッションとメディア・アート
　　　　　オン・マイクになったテクノロジスト

　Sketches of Miles:03
　ヴァ―ノンの女前（マイルス・ファッション鼎談・前半）　高村是州×菊池成孔×大谷能生　195

　　　　　マイルスとファッション／ジャズとファッション
　　　　　セントルイスで目立ったマイルス
　　　　　両親のおしゃれに憧れた
　　　　　ニューヨーク上京と、独立心の目覚め
　　　　　メジャー移籍後、マイルス・イメージの確立
　　　　　写真ではわからない全身像

第3章メジャー・デビュー、帝王の完成（1956‐1965）　225

　第5講　メジャー・デビューとオリジナル・クインテット　227

　　　　　マイルスと我々の近さと遠さ
　　　　　チンピラを脱し、メインストリームへ
　　　　　メロディ・ラインという輪郭線
　　　　　比較伝記学の試み
　　　　　オリジナル・クインテットと天才コルトレーン
　　　　　スカウトマンとしてのマイルス
　　　　　二日で四枚。怒涛の「マラソン・セッション」
　　　　　創世記の終焉と「大衆バップ」の興隆
　　　　　モダン・ジャズの我が世の春
　　　　　金と労力をめぐるポリティクス
　　　　　だって「スター」なんだから
　　　　　甘く危険な、キラー・チューン
　　　　　「クール・マイルス」の全面開花
　　　　　ハーマン・ミュートのなまめかしさ
　　　　　サイボーグ、あるいは接続された裸体
　　　　　喪失した「声」、獲得した「声」
　　　　　ロール・モデルは誰だ
　　　　　シナトラは、元祖「ウィスパー系」

　第6講　アンビヴァレント・アメリカの一九五〇年代　269

　　　　　マイルスの音源を使わないマイルス研究の成果
　　　　　ポップスは駄菓子である
　　　　　「帝国」のソーダ・ファウンテン
　　　　　「モンド」と「レイス」のオモチャ箱
　　　　　超前衛としての「モダン・デザイン」
　　　　　口ずさめそうで、口ずさめないメロディ
　　　　　「モーダリティ」の萌芽
　　　　　同居するふたつのシステム
　　　　　世界の両端を抱え込む
　　　　　「死刑台」とマイルスの映画観
　　　　　全能ヒステリアとドメスティック・ヴァイオレンス
　　　　　パステル・デカダンスの極点へ
　　　　　王子の小宇宙
　　　　　ブラック＆ホワイト偏差値
　　　　　10万枚売れたジャズ・アルバム
　　　　　可処分所得と美学の相克
　　　　　キャリアの頂点をめぐる神学問答
　　　　　折り返し地点の奇跡
　　　　　どこまで秘密を隠しおおせるか
　　　　　ハーフ・オープンという秘術
　　　　　ガーシュイン、異形のワールド・ミュージックとしての
　　　　　搾取された「歌」を奪還せよ
　　　　　ハサミ師テオ・マセロ登場

　Sketches of Miles:04
　神々のモーダリティ
　ジョン・コルトレーンとセロニアス・モンク／ラヴィ・シャンカール、マイルス・デイヴィス／ジミ・ヘンドリックス、そして少々のジョージ・ハリスン　菊池成孔　319

　　　　　第ゼロ者
　　　　　第一～三者
　　　　　第四～五者（それ以後）
　　　　　第六者

　第7講　“都市音楽”から“汎都市音楽”へ　337

　　　　　『カインド・オブ・ブルー』について
　　　　　大きなる空白とマイルス主義
　　　　　シルエットで誰かはわかるだろ
　　　　　上空から世界を見下ろす
　　　　　「美による支配」という美徳
　　　　　政治性皆無の「侵略と統治」
　　　　　原モーダリティと現モーダリティの共鳴
　　　　　世界の音楽王としての「オレ」
　　　　　権威主義者たちのヒステリー
　　　　　「調教」された観客たち
　　　　　50年代のSM感覚とモダン・ジャズ
　　　　　「マイルス・ファッション」という課題
　　　　　「リュクスでありながら個性的」
　　　　　バードランド殴打事件
　　　　　「60年代の一拍前」の白雪姫
　　　　　革命的なディケイドは実在しない
　　　　　「いま、世界がひとつになっている」の誕生
　　　　　ビートルズ・インフレーションの打撃
　　　　　ボサノヴァ上陸という危機
　　　　　<<イパネマの娘>>のチャート・アクション
　　　　　ティーン・ポップスの切り札登場
　　　　　ビートルズVS.モータウン
　　　　　カーネギー・ホールへの道
　　　　　マックス・ローチ座り込み事件
　　　　　「社会」や「政治」は避けられない
　　　　　父の死以前、父の死以降
　　　　　生涯の失敗作『クワイエット・ナイト』
　　　　　ことはきわめて複合的なのだ
　　　　　天使の羽を拾い集めるかのように
　　　　　もうひとつの失敗作

　第8講　レヴォリューション/モード・チェンジ　395

　　　　　マイルスとオーネットのシンメトリー
　　　　　執拗なオーネット・ストーカー
　　　　　ビートルズがフリー・ジャズを肥大化した
　　　　　無茶な愛ほど燃え上がる
　　　　　アコースティック・ジャズ最後のムーヴメント
　　　　　アウトサイダー・アートとしてのアイラー
　　　　　革命＝破壊される眼前
　　　　　ドルフィーの「未来」と、ひとりの「転向者」
　　　　　抑圧された転移
　　　　　オーネットはプアなビートルズだった
　　　　　遅延された革命、すなわちモード・チェンジ
　　　　　革命が「モード」になるという逆説
　　　　　「モード革命」と自己撞着
　　　　　ロスの風は（マイルスにさえ）さわやか
　　　　　生け贄、ジョージ・コールマン
　　　　　ジャズ・バーでの繰り言
　　　　　研究機関としての第二期黄金クインテット
　　　　　ビートルズ旋風を隠蔽
　　　　　ジャズ史上最大最長のモード・チェンジ
　　　　　「ビ・バップを旋律として捉える」水平感覚
　　　　　モーダリティは途方もなく拡大する
　　　　　垂直性と、水平性の抑圧
　　　　　水面下で行われる「価値の交換」
　　　　　モーダリティの増殖性と爆発力
　　　　　リズムにおけるモード・チェンジの説明
　　　　　「基準値と変換値が混在する」こと
　　　　　全方位に張りめぐらされた「価値の交換」
　　　　　加速する「音楽オタク」
　　　　　焦燥感と、外部の圧力

　Sketches of Miles:05
　「純ジャズ理論史」は「マイルス理論史」たりうるか？
　楽曲分析の解説に代えて　菊池成孔　455

　Sketches of Miles:06―楽曲分析<<Solar>>
　リディアン・クロマティック・コンセプトによる<<Solar>>のアナライズ　分析・採譜＝布施明仁

　Sketches of Miles:07―楽曲分析<<Solar>>
　チャーリー・パーカーの語法とマイルス　分析・採譜＝濱瀬元彦　　　　

文庫版あとがき鼎談
マイルスは20年たってから聴け・１　中山康樹×菊池成孔×大谷能生　501

　ヒップポップとマイルスの黒さ
　マイルスのスタイル
　マイルスはテクノに合う
　ロボット／サイボーグ化
　『M／D』

寄稿者プロフィール　526

　高村是州
　布施明仁
　濱瀬元彦
　中山康樹

失敗の研究