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やまぬJR西不信 尼崎脱線事故から1年半

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20061104/mng...

 乗客と運転士百七人が死亡、五百人以上の負傷者を出した尼崎JR脱線事故。一年半が過ぎ、賠償問題の動きも出始めた。だが、遺族や負傷者らのJR西日本に対する「不信」は根深い。一方、安全性の確立もまだ道半ばだ。 

  (大阪編集部・黒谷正人)

 ◎埋まらぬ溝

 「一年半という期間は、まだまだ苦しみが癒えない時間なのかと感じる。安全性向上をあらゆる手段を使ってやりたい」

 JR西の山崎正夫社長は十月二十六日に開かれた会見で、遺族に対して万全の対応を取り、事故の再発防止に努めていくことを強調した。

 だが、社長の言葉とは裏腹に、遺族らの不信は高まっている。

 十月十五日。事故の犠牲となった男性と長年同居していた女性が「遺族として扱ってもらえなかった」と、JR西への恨みを書いた遺書を残し、後追い自殺した。

 事故の遺族からは「百八人目の犠牲」の声も漏れた。

 六月には、事故で引責辞任した同社幹部三人が関連会社に再就職したことが表面化した。

 「事故責任の自覚は安全への取り組みの根本。引責の意味を問いたい」。組織の論理を優先するJR西に、遺族らは抗議した。

 しかし、JR西は「必要な人事」の一点張り。遺族や負傷者と、JR西との溝が埋まる気配はない。

 ◎共通の土台で

 JR西は、研究機関「安全研究所」を設けたほか、事故車両などを展示する施設も来年三月に大阪府吹田市に開設する計画で、事故防止への決意をのぞかせる。

 昨年九月から取り組んでいる「事故の芽」報告は月平均四百件に上る。ささいなミスも再発防止に生かそうという取り組みだ。だが、この報告を安全性向上に生かす機能が不十分だと国土交通省から指摘されており、安全確立は途上だ。

 4・25ネットワークは「遺族には安全を求める権利、責務がある」として、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が来年二月にもまとめる最終報告に向けて、意見聴取への参加を熱望している。

 負傷者の手記の記録集出版を進める兵庫県西宮市の小椋聡さん(37)は、こう言う。

 「この事故は何だったのか、みんなが消化できていない。被害者、加害者が共通の土台で考えていかなければ」

 ◎2本立て提案

 「通常の一、二割増で補償させてほしい」

 賠償交渉も動きだした。JR西側は一切公表しないが、既に複数の遺族が賠償に合意している。ある遺族は「大きな区切りに」と、合意したことを公表した。だが、まだ交渉の緒にも就いていない遺族が多い。

 そんな中、多くの遺族らが集まる「4・25ネットワーク」は「避けて通れない問題」として、統一的な枠組みをまとめた。逸失利益などの個別賠償とともに、性別や年齢などに関係なく一律的な賠償も求めるという「二本立て」の提案だ。

 「単なる交通事故ではない。無防備に信頼を置いていた電車が招いた大惨事」。公共交通機関の社会的な責務と、再発防止につながる賠償の意味も込めたたたき台だ。「自動車事故の賠償など、従来の例にとらわれない」と、同ネット世話人の一人、浅野弥三一さん(64)。だがJR西は「従来の枠組みの範囲で」との姿勢を崩さない。

 ◎負傷者の連帯

 負傷者への対応も課題だ。地元のNPO法人などは十月二十九日、兵庫県内でシンポジウムを開いた。弁護士や臨床心理士らが集い「賠償など必要な知識や情報を得る場」との位置付けだ。

 約百七十人が参加したシンポでは、アンケートに答える形で「一人でいると先のことが心配」「JR西の補償担当者が事務的。加害者意識が薄れている」といった声が寄せられた。

 佐藤健宗弁護士は「過去の日本の大事故で、負傷者をまとめる取り組みは初めて」と話し、「賠償や示談は焦らず慎重に」と呼び掛けた。
2006年11月11日(土) 16:30:26 Modified by umedango




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