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事故調委 作業長期化 尼崎JR脱線事故

http://www.kobe-np.co.jp/news_now/news2-672.html
2006/10/25

 尼崎JR脱線事故の原因究明にあたる国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調委)の作業が、長期化している。事故車両に残された時刻データにばらつきがみられ、脱線経過の分析が難航。運転士の死亡で事故の背景に、どこまで迫れるかも不透明だ。百人を超える犠牲者を出した昨年4月の事故から1年半。関係者は膨大な資料との格闘を続けている。(東京支社・山路 進)

迫れるか特異な背景/残る「時刻、速度」絞り込み

■1秒の誤差

 「本当の時刻はいつなのか」

 調査の実務を取り仕切る中桐宏樹首席鉄道事故調査官は、調査を始めて以降、自問自答を繰り返してきた。

 事故車両は、制限時速七十キロのカーブに、百キロを超す異常な速度で進入した。その事実に疑いはないのだが、脱線時の速度や、車両が大破するまでの経過を、極めて正確に「再現」するには、精度の高い時刻のデータが不可欠となる。

 ところが、列車自動停止装置(ATS)、モニター制御装置、信号制御盤など、調査した機器に記録された時刻には、それぞれ一秒以上のずれがあった。

 「たっス一秒と思うかもしれないが、時速百キロなら、二十七メートルも進む」。見過ごせる誤差ではなかった。

 昨年九月の経過報告では、カーブへの進入速度を「百十キロ以上」としながら、「まだプラスマイナス五キロの誤差がある」と言葉をつないだ。今年四月には「百十五―百十七キロ」と、誤差の範囲を絞り込んだが、「さらに精査したい」と慎重な姿勢を崩さない。

■人的要因

 脱線事故の調査は、高見隆二郎運転士=当時(23)=の死亡で、当初から難航が予想された。

 事故の主因は、「異常な運転による速度超過」との見方で関係者は一致する。

 事故車両は当日、宝塚駅手前で二度にわたり非常ブレーキが作動。伊丹駅でもオーバーランしていた。ミスを繰り返した高見運転士の焦りや、事故後に懲罰的との指摘もあったJR西日本の「日勤教育」への懸念など、運転席での心理状況をめぐっては、さまざまな推測がなされた。

 事故調委もこの点に注目し、鉄道事故では初めて、ヒューマンファクター(人的要因)の分析に取り組んでいる。JR西日本の幹部や現場の社員、乗客らから聞き取り調査を実施。集まった証言は四百人分を超えた。

 外部の専門家も加え、JR西の「企業風土」や電車運行システムなどの問題点を検証しているが、委員らは「詰まるところ、運転士本人に聴かないと、真実は分からない」と調査の限界を認める。

 芳賀繁・立教大教授(交通心理学)は「ヒューマンファクターに踏み込んだ姿勢は評価できる」とし、「企業風土や、『日勤教育』の問題点は数字では表せない。複雑に要因がからみ合い、事故が起こった背景を示すことに意義がある」と指摘する。

■未知の領域

 事故調委は今回、鉄道担当の調査官七人に加え、航空部門や外部からの応援を得て、最大十六人で調査にあたってきた。それでも「解明すべき疑問や矛盾は、まだまだ山ほどある」と担当者。

 脱線時に車両が左に大きく傾いたにもかかわらず、乗客が「体を右に飛ばされた」と語るなど、予測される状況と証言が食い違うケースも少なくない。

 「速度超過」という直接的な原因よりも、事故の背景が注目される「特異な事故」は、調査のあり方そのものに課題を突きつけ、調査対象も異例の広がりをみせた。

 年度内の作成を目指す最終報告書は、日航ジャンボ機墜落事故(一九八五年)の約四百ページを上回る見通しだという。

 航空・鉄道事故調査委員会 信楽高原鉄道列車事故(91年)などの重大事故を受け、2001年に航空事故調査委員会を改組。委員長、委員は国交相が任命。航空、鉄道が専門の学識者10人で構成され、航空、鉄道の部会に分かれる。通常、鉄道、航空の各事故調査官が、調べた内容を各部会で審議。大事故は全委員が審議するが、尼崎JR脱線事故では、外部の専門委員1人も参加している。
2006年10月26日(木) 06:33:22 Modified by umedango




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