460 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:18:12 ID:u1muDsVs
照明がもどったとき、既に下級戦闘員の三分の二、十三名がすでに戦闘不能になっていた。
まだ息のある者もいたが、致命傷であり長くはない。
今この会場で動ける者は赤いドレスの女、銃を構えた下級戦闘員六名、
そして壇上で大股をひらき、腰を抜かしている寧子、そしてダークキッドである。
「わずか一分で十三人だと……ありえん」
その惨状に驚く赤いドレスの女、上級戦闘員であるカリーネである。
ラテン系の黒髪の女。彫りの深い顔立ち。モデルのような八頭身の体型。
赤いドレスもみればフラメンコ用の衣装にもみえる。

「しかし、こちらはまだ七人いる。死ね、ダークキッド」
カリーネの号令の下、ダークキッドにむけ、七つの銃弾が牙をむく。
横っ飛びにかわし、そして、そして今日の参加者のうち一番太っていた男を盾にした。
小銃のため、脂肪のたっぷりとつまった身体を貫通するほどの殺傷力は持たない。
いや、仮に貫通したとしても既に威力が殺されており、
改造されたダークキッドの肉体を致命的に傷つけることはない。
非道な行為と罵るものいるかもしれない。
しかし、命を賭けた戦いにおいてダークキッドのとった行動は責められるのか。
少なくともダークキッドはそのような謗りなど毛ほども何も思わないだろう。
彼はただひたすらに『復讐鬼』なのである。


461 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:19:53 ID:u1muDsVs
男の身体を抱えたまま戦闘員にむかって突き進む。
彼我の差1m。ここまで来ればダークキッドの独壇場である。
彼が刃へと変化させられる身体部位は四つ。両腕両足の外側である。
両腕だけでなく、両足も鋭利な刃に変化させ、太った男の死体を相手にむかって投げると同時に、
回し蹴りの要領で下級戦闘員一人の上半身を斜めに薙ぐ。
勢いそのままに今度は軸足も浮かせ蹴りこむ。もう一人、今度は頭部がきれいにスライスされる。
あまりの早業に動揺している一人の下級戦闘員の胸の谷間に右腕を突き刺す。
引き抜くと同時に両腕をのばし一回転、二人の下級戦闘員の首がすとんと落ちる。
一息の間に五人。圧倒的な強さである。
カリーネはかなわないとみたかその間に後方に飛びのいていた。
残されたの下級戦闘員ただ一人。
「あ、ああっ助けっ……」必死でこらえる下級戦闘員。
前には復讐鬼、背後には生殺与奪について絶対の権利を持つ上級戦闘員。
ブラックレディースお得意の命乞いもできないのである。


462 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:23:10 ID:u1muDsVs
小柄な二十前後の女は身体を震わせながら、
いっこうに攻撃してこないダークキッドに銃口をむける。
クリクリとした大きな眼いっぱいに涙を浮かべている
「よーく狙え、外せば地獄行きだ」
さっき抱き殺した男の顔が下級戦闘員−レイナの脳裏に浮かぶ。
父の名代として参加していた三十過ぎの容姿端麗な男だった。
ああいった場は苦手だったのか、少しおどおどしていたが、
真剣に「本当に抱きしめてしまっていいの」と聞くので、
少し年上ながら可愛いと思ってしまった。
そんな男をペットにしたいなぁなんて考えて、
ものすごく興奮しながら殺した。ちょっと濡れるくらい気持ちよかった。
けど、終わった後に少し後悔した。ああ、これはその報いなのだ。
あの世に行ったら謝ろう。まあ行き先は違うかもしれないけど……
そう軽く夢想してレイナは少し落ち着いた。


463 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:25:53 ID:u1muDsVs
震えはとまる。
「死んじゃえっ」
黒い言葉をかわいい声にのせてレイナはダークキッドの頭部めがけて銃を撃つ。
首をひねるだけでかわすダークキッド。
そして、意外な行動にでた。
彼女を抱き寄せると唇を奪ったのだ。
「んんっ」
舌をからめるディープなキス。
呆気にとられるカリーネと寧子。
そして、接吻が終わったあと眠るように事切れるレイナ。
猛毒であるダークキッドの唾液を摂取したのである。
しかし、刃で切り裂かれるよりははるかに楽な死を与えた事への疑問は残る。
レイナの表情に何かをみたのか……真相はダークキッドだけが知る……


464 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:29:57 ID:u1muDsVs
「ま、なにはともあれ、わたしだけということだな……しかし、わたしはそう簡単にはやられんぞ」
肩を抜いた赤いドレスがスルッと地に落ちる。
あらわれたのは一糸まとわぬ、カリーネのすらっとした細身の身体。
並の男ならいやらしさよりもその美しさに目を奪われていたことだろう。
もちろん、ダークキッドはそんな感情をまして憎きBLに対して抱くはずもなく、
ただ、彼女の次の行動を警戒している。
「我が死の舞踏、存分に味わうがいい」
カリーネは軽快にステップを踏む。それはまさにフラメンコ。
本来ならサパトスと呼ばれるフラメンコ用の靴を履き、
はじめて鳴らすことのできるコツコツ、コツコツという軽妙な床を叩きつける音が会場に響き渡る。
そして何も持っていないはずの手を打ち鳴らせば、パリージョと呼ばれるカスタネットの音がでる。
小ぶりな乳を上下に揺らす全裸のフラメンコというどちらかといえばシュールな光景である。
もちろん、そんな彼女の踊りをボゥッとダークキッドが鑑賞しているわけではない。
音にしても改造した身体の中に内蔵しているのだとすれば不思議でもない。
そう結論づけ、腕の刃をカリーネめがけて何度も振るうのだが何故かスルリとかわされるのだ。
その間、カリーネの身体がどんどんと薄れていき、むこうの壁が透けてみえる。
そしてついに一撃も加えることなく、カリーネの姿がみえなくなった。
その現象をみて『透明化』が上級戦闘員たるカリーネに
与えられた能力なのだろうとダークキッドは推測する。
ならばと、下級戦闘員から流れ出た血で、池と化した血だまりのなかに身を移した。
こうすれば近づけば血が跳ね、上級戦闘員の位置がわかるとの判断からである。


465 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:32:00 ID:u1muDsVs
しかし、響き渡るコツコツ、カッカッという音はするものの、
いっこうに地面の血に足跡がつくなどということはない。
「ガハァッ」
鋭い鈍器で殴られたような衝撃が背後からダークキッドを襲う。
すぐに刃のついた腕をふるうが、むなしく空を切るのみ。
今度は前から腹にむかって一撃がくる。
「グホォッ」
蹴りこむがまたも何の感触もなし。
ただ、コツコツカッカッという音だけがただ耳に残る。
なぶられるように身体中を衝撃が襲う。反撃すれども相手には何のダメージも与えられない。

万事休すかとダークキッドが覚悟を決めた時、
バンッ銃声が会場に轟いた。ジェンナから奪った小銃を零二が撃ったのだ。
あたりこそしなかったがその音がダークキッドを救った。
ダークキッドはただの一歩たりともカリーネが『死の舞踏』をはじめた時から動いていなかった。
つまりは、『死の舞踏』とはダークキッドが考えたように『透明化』などといったものではなく、
『催眠術』であった。カリーネが裸体を晒したのも、ダークキッドを術中にはめるブラフにすぎない。
手と足に内蔵されたフラメンコに似た音が催眠を誘発させ、
対象を無抵抗にさせるというのがカリーネの能力であり策であった。
音に依存しているが故に、会場にいなかった零二には効かず、
そして彼の発砲音が催眠の音を乱し術が解けたのである。


466 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:33:38 ID:u1muDsVs
「しまった、仲間がいたか」
ダンスをやめ、そう叫ぶカリーネ。術を破られればもろいもの。
それが彼女の最期の言葉となった。
ダークキッドは右腕を刃から全高八〇cmの刀と呼ばれるような鋭利なモノへと変化させ、
カリーネにむかって突進。
カスタネットの役目を果たし、さっきまでダークキッドにダメージを与えていた
特殊合金を内蔵している掌でカリーネは受けようとするが、
ダークキッドのスピードの乗った一撃をその小さな掌だけで受けることなどできない。

刃が鈍い煌きを放ち、カリーネの身体に斬りつけられる。
一瞬の後、カリーネの美しい裸体に不似合いな頭から股間までに赤い筋が走り、
そして彼女の身体は左右真っ二つに切断された。
ものすごい量の血飛沫があとからあとから噴き出ていく。


467 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:34:39 ID:u1muDsVs
カリーネが倒れ、ついに寧子の味方はいなくなった。
さきほどまでの戦いでダメージを受けながらも、ゆっくりとした足取りで近づくダークキッド。
「ひっ、ひぃぃ」事業に成功したキャリアウーマンというイメージをかなぐり捨て、
寧子は無様な醜態を晒している。
「どうだ、悪魔に魂を売った感想は。老いない美しい身体は手に入れたかい」
静かに、まるで諭すかのようにダークキッドは寧子に問いかける。
しかしその問いの後半は聞かずともわかっていた「まだ」だったからだ。
今回の契約が遂行され、はじめて改造手術を受ける予定であった寧子の身体は、
未だ三十半ばの若さを失った身体だけだ。
いや、もし同年代の女がみればうらやむような肌を持っていたが、
寧子自身にとっては忌々しい老いを刻んだ姿態だった。
「な、なにが悪いのよ。ずっと美しくありたいなんて女なら誰もが思っていることじゃない。」
ヒステリックに叫ぶ寧子。呆れたようにダークキッドはいう。
「悪いことじゃないさ。それを否定するつもりもない。
 しかしな、多くの犠牲のもとにってのは違うんじゃないのか」
「あ、あんな金と女しか興味のない腐った豚共を殺して何が悪いのよ。
 そうよ世界は女が支配すべきなの、男は死ぬか奴隷、ハハ、それでいいじゃない」
あきらめたのか、命乞いもせずに心のままをぶちまける哀れな女に、
ダークキッドは少し憐れに思う。
まだ、改造されていないただの人間であるということも彼女への殺意を奪っていた。
パンッ
戦闘員から奪い取った銃を寧子にむかって撃つ。銃弾が彼女の頭の横をかすめ壁にめりこむ。
「ハヒィッ」
チョロチョロと黄色い液体が青いドレスを濡らしていく。
「命まで奪わん。好きにするがいい。
 だがもし次、ブラックレディースとしてあらわれたときはいっさいの容赦はしない」
そういうとダークキッドは血でむせかえる会場を振り返りもせずに入口で待っていた
零ニとともにその場を後にした。


468 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:41:21 ID:u1muDsVs
「はひひひひひひぃっ、助かった。ダークキッドォォォわたくしをコケにしてぇぇっ
 けど、顔は覚えたわ。フフ、雲雀崎寧子を舐めないことね。社会的に抹殺してあげる」
暗い野望を胸に秘め、復讐に燃える寧子。そう、生き延びたそのことで寧子は勝ったと確信した。
契約は遂行したのだ。これで永遠の若さが手に入ると心の中でほくそ笑む。


「なぁに、この惨状は」
人を逆なでするような声とともに会場の入り口にあらわれた一つのシルエット。
血も死体もまるでみえないかのようにズンズンとまっすぐに寧子のもとへと歩いてくる。
黒皮のベルトのようなもので胸と股間だけを隠した女であった。
といっても胸部は乳首だけが隠れているようなもので胸のほとんどの部分が露出している。
股間部も同じようにお尻はむきだしで『女』の部分だけが黒皮で隠れているだけだ。
惜しげもなくあらわにした全身のプロポーションは、男がすぐに股間を握りしめてしまうほどに
いやらしい身体つきをしている。柔らかそうな歩くごとに揺れ動き形を変える爆乳、
くびれた腰、そして形のよい大きなヒップ。そして寧子が何よりも嫉妬したのは若さである。
ほとんどが露出した身体から誰もがうらやむ十代の肌の張りや艶がみてとれるのだ。


469 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:42:33 ID:u1muDsVs
「さぁて、みわたすところあなたが唯一の生存者みたいだけど……
 そうさっき書類でみたわね、ええと確か雲雀崎寧子」
どこか猫を思わせるかわいらしい顔つきの女が寧子の名前を呼び捨てにする。
「は、はいそうです。あなたは」
「ぼくぅ、ぼくはねぇケイト。ブラックレディースの幹部ってところかな
 えっと、自己紹介も終わったところでなんでこんなことになってんのか教えてちょうだい」
若者言葉というのだろうか。寧子は彼女の口調にかなり苛立ったが、
幹部という立場は絶対である。事の顛末を細かに伝えた。
もちろん、寧子自身が契約を遵守したこと、
人間である自分にはダークキッド相手にはどうしようもなかったことは強調して。
「また、ダークキッドか。なんていやなやつっ。こんどはあたしがこらしめてやらなきゃ」
プンプンッと怒るケイト、女子高生がいたずら好きの男子に怒っているようにしかみえない。
しかし、寧子もそんな感想を持ったが、なりはともあれ幹部である。もちろん口には出さない。


470 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:43:53 ID:u1muDsVs
「あの、それで、ブラックレディースへの入会の件は……」
おそるおそるケイトに聞く寧子。
「うんっ。そうだね、契約もしっかりと守ったようだし入会を認めたげる」
喜色満面の笑みを浮かべる寧子。
紆余曲折あったがこれで「永遠の若さ」が手に入るとなれば安いものだ。
「じゃあ最初の指令ね」ケイトはニヤニヤしながらそう告げる。
まるでいたずらを思いついたかのように。
「は、はいっ」
直立しながら指令を待つ寧子。
「うーん、ぼくの実験台になって」
「は?」
「だから、実験台になってっていってるのお・ば・さ・ん。
 あんたの財産はすべてBLがもらった。もう用済みなんだよねおばさん
 だから最初で最後の指令はぼくの実験台になること。すごいよ幹部じきじきなんだから」
すべてを犠牲にしたのに裏切られた。
寧子はこれほどまで人は怒ることができるのかと思うほど頭にきた。
何よりもこんな小娘におばさんよばわりされたことが一番……



471 :名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 02:45:05 ID:u1muDsVs
「キィィィッ」
金切り声をあげて、ケイトの絞め殺そうと首に手をかけようとする。
その時、全身に痛みが走ったかと思うと身体がまったく動けなくなる。
そして青いドレスがバラバラになり熟れた裸体が晒される。
「ハハ、努力はしてるみたいだけどやっぱりおばさんの身体だね。
 お腹あたりが少したるんでるんじゃない」
「え、なに。いやぁみないでぇ」
若い女に老いた裸体をみられる。これほどまで、寧子にとって恥ずかしいことはなかった。
「ふん、みたくもないよ。サヨナラお・ば・さ・ん」
「やめっ、ゲブッ」
ケイトの声と同時に寧子の身体に線が幾重にも走り、
そして二十以上のパーツに分断されボタッボタッとその場に肉のピラミッドをつくる。
「お役目ご苦労さま、なかなかいい実験台だったよ。ダークキッドに試すのが今から楽しみだ」
茶化したようにいい、肉と化した寧子を一瞥するとケイトもその場をあとにした。

                                                        つづく

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