４．ギコ猫騒動から見る、アスキーアートの所有者 
これまでは、ギコ猫騒動の概要、法的側面、人々の反応を書いてきました。
ここからは、エントリーの本題である、ギコ猫騒動から見えるAAの権利意識・規範を取り上げます。その中でも、今回は「AAは誰のものなのか」「誰がAAの権利を持つのか」という「所有の主体」「権利の主体」を考えます。
結論を述べると、AAの「権利主体」は、「個人（創作者）」「集団（２ちゃんねる・あやしいわーるど）」「パブリック（所有するものがいない）」という三つの要素が相互作用することで決まっています。そして、相互作用の結果として「AAはパブリックである」に落ち着いている。
しかし「AAはパブリックである」は、幸運なほど弱い「個人」を背景としている。「個人」が力を持ったとき、この慣習は怪しいものになると考えています。
ここからは、エントリーの本題である、ギコ猫騒動から見えるAAの権利意識・規範を取り上げます。その中でも、今回は「AAは誰のものなのか」「誰がAAの権利を持つのか」という「所有の主体」「権利の主体」を考えます。
結論を述べると、AAの「権利主体」は、「個人（創作者）」「集団（２ちゃんねる・あやしいわーるど）」「パブリック（所有するものがいない）」という三つの要素が相互作用することで決まっています。そして、相互作用の結果として「AAはパブリックである」に落ち着いている。
しかし「AAはパブリックである」は、幸運なほど弱い「個人」を背景としている。「個人」が力を持ったとき、この慣習は怪しいものになると考えています。
三つの権利主体
私は、AAの権利を誰が持つかは、「個人」「集団」「パブリック」の相互作用によって決まると考えます。「個人」とは、著作者、創作者のことです。これは、現在の著作権法が原則として権利主体としている存在です。「集団」とは、ギコ猫騒動で言えば「２ちゃんねる」や「あやしいわーるど」のことです*4。「パブリック」とは、権利の主体が存在しないという意味です。法律で言えば、「パブリックドメイン」がこれにあたります。
ちなみに、関わる人数で言えば「個人→集団→パブリック」という順番で増えていきます。
しかし、「パブリック」になりやすいのは、「集団」ではなく「個人」の方です。なぜなら「個人」の場合は、その「個人」が権利を捨てれば、即「パブリック」になれるからです。また、「個人」はいつか必ず死に、権利もいつかは消滅します。
一方、「個人」と違い「集団」はなかなか消えることはない。集団の一部の人が権利を捨てようと言っても、「集団」としては捨てたことにはならなりません*5。
では、それぞれの主体がAAにおいては、どのように捉えられていたかを見てみましょう。
*4 実際に、集団（コミュニティー）に権利がある（とされかけている）ものとしては、「フォークロア(TCEｓ：伝統的文化表現)」があります。フォークロアとは、それぞの地域にある伝統音楽や美術のことです。近年、WIPO（世界知的所有権機関）では、このフォークロアを法的に守ろうという動きがあります。その中で、次のような条項案ができています。
この条項案では、「個人が受益者になるべきではなく、あくまでコミュニティー等が受益者となるべきである」（伊佐進一「第8回知的財産と遺伝資源、伝統的知識及びフォークロアに関する政府間委員会の概要―事務局提示案の解説と議論の今後」『コピライト』[2005.9] p23）とされています。
*5 実際、フォークロア保護の議論でも「伝統的な文化保護・保存の観点と、それら既存の文化の自由な利用の、双方のバランスをめぐる議論」となっています。（同上p20）
「AAにおける『個人』「集団』『パブリック』」
ちなみに、関わる人数で言えば「個人→集団→パブリック」という順番で増えていきます。
しかし、「パブリック」になりやすいのは、「集団」ではなく「個人」の方です。なぜなら「個人」の場合は、その「個人」が権利を捨てれば、即「パブリック」になれるからです。また、「個人」はいつか必ず死に、権利もいつかは消滅します。
一方、「個人」と違い「集団」はなかなか消えることはない。集団の一部の人が権利を捨てようと言っても、「集団」としては捨てたことにはならなりません*5。
では、それぞれの主体がAAにおいては、どのように捉えられていたかを見てみましょう。
*4 実際に、集団（コミュニティー）に権利がある（とされかけている）ものとしては、「フォークロア(TCEｓ：伝統的文化表現)」があります。フォークロアとは、それぞの地域にある伝統音楽や美術のことです。近年、WIPO（世界知的所有権機関）では、このフォークロアを法的に守ろうという動きがあります。その中で、次のような条項案ができています。
第2条：受益者（上記の訳は、私が一度訳したものをマガモ氏に大幅に修正していただいたものです。あらためて、お礼を申し上げます。）
伝統的文化表現・民間伝承の保護は、当該地域の人々や伝統を受け継ぐ他の文化的諸地域(地域・地方、国）の利益のために適用されねばならない。
1. 現地の習慣や慣例によって、伝統的文化表現・民間伝承の保管、管理、保護手段を委託されている上記の人々や諸地域。
2. 自らの文化的、社会的アイデンティティや文化遺産に特有なものとして、伝統的文化表現・民間伝承を継承し、用い、発展させている上記の人々や諸地域。
この条項案では、「個人が受益者になるべきではなく、あくまでコミュニティー等が受益者となるべきである」（伊佐進一「第8回知的財産と遺伝資源、伝統的知識及びフォークロアに関する政府間委員会の概要―事務局提示案の解説と議論の今後」『コピライト』[2005.9] p23）とされています。
*5 実際、フォークロア保護の議論でも「伝統的な文化保護・保存の観点と、それら既存の文化の自由な利用の、双方のバランスをめぐる議論」となっています。（同上p20）
「AAにおける『個人』「集団』『パブリック』」| １ | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
コメントをかく