差別・偏見やヘイトスピーチを助長する「嫌韓」デマ・中傷に対抗・反論するウィキです。

関西で反ヘイトスピーチ活動をしていた元「友だち守る団」代表で在日コリアンの凛七星氏が2014年4月15日、生活保護不正受給詐欺の容疑で逮捕されました。『マンガ大嫌韓流』ではこの件を(悪質な)在日韓国・朝鮮人の不正受給の「極めつけ」だと断定し、「(在日特権の存在が明らかになると)在日の異常な生活保護率に対し批判が出てくるだろうし不正受給も難しくなってしまう(※注1)」から「批判そのものを封じ込めるために「差別」のレッテルを貼っていた」と描いています。

しかし、これは全く事実に反した悪意ある解釈です。以下、凛氏の生活保護受給についての詳細と、何が「不正」とされ、逮捕に至ったのか経緯を説明します。

凛氏が生活保護を受給していたのは2011年のことです。それまで、とある脱北者の支援をしていた凛氏は、そのせいで政治的なトラブルに巻き込まれ、それまで生活していた大阪を離れることを余儀なくされました。一年ほど九州に逃れた後に大阪に戻ったのですが、それまでの生活基盤も崩れてしまいました。それを立て直すために生活保護を半年間ほど受給していたのです。

この時期、凛氏は知人の仕事を手伝うなどして若干の収入があったのですが、これを申告しなかったことが後に発覚し、区役所から審査請求を受けていました。凛氏は生活保護受給時期に収入があったことを認め、返還に応じました。ただその時期にどれくらいの収入がありどれくらいの額を返還するかについての区役所との間でのやりとりは難航し、長引いていました。

いっぽうその頃、在特会などいわゆる「行動する保守」団体による街頭でのヘイトスピーチデモが勃興します。これに対して凛氏が有志と共に立ち上げたのが「友だち守る団」でした。2013年2月のことです。同じ月に鶴橋で行われたヘイトデモの後の街宣では、当時中学二年生の少女が「いつまでも調子に乗っとったら、南京大虐殺じゃなくて、鶴橋大虐殺を実行しますよ!」と演説するなど、関西におけるヘイトスピーチが過激化・凶悪化を増す中、「友だち守る団」の抗議も激化し、ヘイトデモ側との激しい衝突も起こりました。

そうした動きに対して警察・公安は神経を尖らせていました。ヘイトデモだけでなく、それに対する抗議活動もまた監視・取り締まりの対象としていた警察にとって凛氏はいわば「目の上のたんこぶ」だったことでしょう。生活保護の件を知った大阪府警は凛氏の住まいを「生活保護不正受給詐欺」で家宅捜索しました。生活保護返還については行政側との話し合いの最中でしたが、そのことが警察による抗議活動に対する弾圧の口実となることを懸念した凛氏は区が要求していた額を全額返還します。その際凛氏は区の職員に対して「この件が解決したこと」を確認しています。それにも関わらず大阪府警は凛氏を詐欺の疑いで逮捕しました。

この逮捕の狙いが「友だち守る団」の抗議活動に対する弾圧であったことは「全額返還し解決している、本来逮捕の必要がない案件であること」「詐欺容疑で家宅捜索・逮捕したのが大阪府警本部公安警備課(本来詐欺などを扱う部署ではない)であったこと」「「友だち守る団」の活動とは無関係(生活保護受給は活動以前のこと)であるにも関わらず、凛氏が「友だち守る団」代表であることが警察によって公表されたこと」などから明らかで、不当逮捕と呼ぶべきものでした。なお凛氏によれば、勾留中の取り調べの大半は詐欺容疑の話ではなく、反差別のカウンター運動に関するものだったということです。このことも、氏の逮捕が別件逮捕であったことを裏付けています。

逮捕後は、在特会らの大阪御堂筋で行われたヘイトデモ直後、百数十名のデモ参加者がいる中に単身で飛びこみ、代表者に抗議したことを「脅迫」とする容疑や、京都八坂神社でのヘイトデモ直前にあった凛氏と複数の参加者との衝突を「暴行傷害」容疑とするなどの追起訴がくり返され、勾留の延長がされました。そうした状況の中、体調を崩した凛氏は治療を優先させるため検察側の主張を受け入れ、三か月後に釈放、裁判で懲役二年、執行猶予四年の判決を受けました。

一般的に「(悪質な)生活保護不正受給」と言われて想像されるのは「多くの収入がありながらそれを隠し高級車を乗り回す」というようなものでしょうが、実際そうした「悪質」な事例は極めてまれで、たいていの「不正受給」は不定期的なアルバイトなどで得た収入を申告しなかった(申告し忘れた・申告が必要なことを知らなかった)、というような事例がほとんどです。凛氏の件も厳密に言えば確かに法的には「不正」であり、過誤がなかったとは言えません。しかし前述のように返還は済ませており、(証拠隠滅の恐れがあるなど)逮捕が必要な悪質な案件ではありませんでした。

凛氏の逮捕後、ネットやヘイトデモの現場では凛氏個人に対する誹謗中傷のみならず、在日コリアンの生活保護受給に対するバッシングやそれに関するヘイトスピーチがそれまで以上に頻発し、現在もそれは続いています。冒頭で取り上げた『マンガ大嫌韓流』の描写もそれに便乗したものと言えます。

日本も加入している人種差別撤廃条約(正式名称:あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)第4条(c)には「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと」を加入国に義務づけています。警察当局による凛氏逮捕は結果として「人種差別を助長・扇動」することになりました。このことを警察関係者は猛省すべきでしょう。



(※注1)
在日なら生活保護が受けやすい?」「最高裁で「外国人への生活保護は違憲」と判決?」でも述べているように、在日コリアンを含めた在日外国人が生活保護を受給できることは国際基準に照らしても正当・妥当なものであり、また在日コリアンだから生活保護が受給しやすいという事実もありません。日本人に比べ生活保護率が高いことも、長らく社会保障制度から排除されてきた歴史的経緯を鑑みれば何ら「異常」なことではありません。

Menu

メニューサンプル1

メニューサンプル2

開くメニュー

閉じるメニュー

  • アイテム
  • アイテム
  • アイテム
【メニュー編集】

管理人/副管理人のみ編集できます