差別・偏見やヘイトスピーチを助長する「嫌韓」デマ・中傷に対抗・反論するウィキです。

「嫌韓」の主張

日本人の学生の多くが学費で苦労したり進学を諦めている一方で、中国・韓国からの留学生は返済不要の奨学金を得ている。これは日本人に対する「逆差別」ではないのか?

反論

中国・韓国からの留学生全てが奨学金を得ているわけではない。また留学生に対する奨学金には合理的な理由がある。

最近、上記のような主張が右派・保守派の論客の間で流行っているようです。たとえば田母神俊雄氏はこんなことを言っています。
例えば今、我が国に外国人留学生は16万人おり、その半分は中国人です。日本政府は彼らに毎月約14万5000円もの返還不要の奨学金を与えています。国立大学の学費は免除、私立大学の学費は政府が負担しています。加えて家賃の補助までしていますが、日本の大学生には1円の補助もありません。ここんなおかしさがまかり通るのも、日本政府が中国や韓国に度を越した配慮をするからです。当たり前ですが、日本の税金は日本人のために使われるべきです。

田母神政経塾 ー自公連立政権は実現不可能 「強い日本を」再び取り戻すー


こうした主張の拡散に特に熱心なのが、タレントのフィフィ氏です。




(三番目のツイートでフィフィ氏が紹介しているチラシ画像)


しかし、このような主張には様々な問題、もっとはっきり言うなら極めて悪質な印象操作とゴマカシがあります。ひとつずつ見ていきましょう。

まず田母神氏の主張ですが、ここで氏が述べている「日本政府は彼らに…返還不要の奨学金」云々というのは国費留学生のことを指していると思われます。田母神氏の主張を読むと、あたかも16万人の外国人留学生が皆「返還不要の奨学金」を得ているかのように思えます(参照した年度が違うためか、田母神氏が挙げる数字とは食い違いがありますが、フィフィ氏が紹介しているチラシもほぼ同様の主張です)が、実際はどうでしょうか。ここで日本学生支援機構のホームページを見てみましょう。




上のグラフを見れば分かるように、たとえば平成25(2013)年度の留学生総数が168145人なのに対して国費留学生は3930人(全体の約2.3%ほど)に過ぎません。留学生全体に占める中国人・韓国人の割合が多い(中国人について言えば田母神氏の挙げる数字よりやや多く6割ほど。そこに韓国人を足すと約7割)のは確かですが、中国人、もしくは韓国人留学生が他の留学生より優遇されて国費留学が適用されているというデータはありません。したがって田母神氏が言う「日本政府が中国や韓国に度を越した配慮」をしているというのは何の根拠もありません。

こうした主張が悪質なのは、「数が多い」事実を「不当に優遇されている」というイメージに絡めて印象操作を行っている点です。隣国である中国や韓国からの留学生が多いことは何の不思議もありません(それに加えて中国は人口自体が多い)。国費留学生制度についての批判を装いながら(制度に対する疑問や批判自体はあってもおかしくはないでしょうが)中韓の留学生に対するネガティブな感情を呼び起こすという点においても、極めて悪質なヘイトスピーチと言えるでしょう。

「国費留学生」は「日本のためにならない」のか?


次に、田母神氏の「日本の税金は日本人のために使われるべき」という主張について。田母神氏の主張を素直に解釈するなら、外国人留学生を「日本の税金(※注1)」で支援することは「日本(人)のためにならない」ということになります。はたしてそうでしょうか。ここで、フィフィ氏の一番目のツイートを批判する目的で書かれたブログ記事の一節を紹介します。
フィフィやZAKZAKの最大の問題は国費留学生の意義を分かっていないことだ。どの国も数に差はあれ留学生を奨学金を出して迎え入れている。通常、給付型である。日本人学生が米国に留学する際にお世話になるフルブライト奨学金も給付型である。
なぜか。それは留学先の国(日本)を理解してもらい、母国に帰って文化交流を始めとする国交関係の柱になってもらいたいと願っているからだ。あわせて、日本の技術を学び母国の発展に活かしてもらいたいと思っているからである。留学生は両国の懸け橋になるし、そのことで、国どうしの未来が開ける。アメリカがフルブライト他、留学生支援に熱心なのは世界に米国のサポーターを増やしたいからである。
だから、どこの国も返還義務がない。留学期間がすぎれば帰国する学生に返還義務を課しても返還のあてがないことも理由の一つであるし、将来その国を担うであろうエリートに奨学金で絆が深めれば安いものである。
「中韓留学生は超厚遇」は嘘〜ガセネタに追随するフォロワーたち - 十兵衛のすずめがえし

簡単に言えば、国費留学生制度は保守派・右派が重視する「国益」に叶った制度だということです。

まとめ


長くなったので以上のことを箇条書きにすると、

・学費等を国から支援される「国費留学生」は留学生全体のごく一部に過ぎない。
・中国・韓国からの留学生は数が多いが、彼らが留学生の中で特別、あるいは不当に優遇されているという事実は確認できない。
・優秀な留学生を国が支援することは「国益」に叶った行為である。

となります。

最後に、フィフィ氏が繰り返し述べている「日本人の学生が学費の面で苦労しているのに…」という主張にも触れておきます。確かに日本の大学の学費の高さは異常とも言えるものです。民主党政権時代の2012年、日本は高等教育の学費を段階的に無償化することを定めた国際人権A規約13条2項(c)の留保を撤回しましたが、未だ無償化は実現していません(参照:主張/世界一高い学費/国際公約を守って無償化へ(しんぶん赤旗) - BLOGOS(ブロゴス))。

しかし、「日本人の学生が苦労している」原因があたかも「外国人留学生の優遇」であるかのように語るのは明らかに問題のすり替えである上、すでに見てきたように前提となっている認識が間違っています

こうした問題のすり替え、すなわち「日本人が苦労しているのは外国人が優遇されているせいだ」という主張は、排外主義者が外国人生活保護に言及する時と全く同じ論法です(参照:在日なら生活保護が受けやすい?)。2014年の衆議院選挙で田母神氏を公認した「次世代の党」が「外国人への生活保護廃止」を公約として掲げていたのは象徴的です(参照:最高裁で「外国人への生活保護は違憲」と判決?)。

国民の困窮を外国人のせいにしてゼノフォビア(外国人憎悪)を煽るのは極右や排外主義者の典型的なやり方であり、ヘイトスピーチやヘイトクライムの温床となることは諸外国の事例を見ても明らかです。このような風潮・主張を許すべきではありません。


(※注1)「日本の税金」の全てが「日本人の税金」でないことは常に留意しておきたいところです。参照:日本人の税金でなぜ/日本は日本人のものだ?

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