ゴッドイーターでエロパロスレの保存庫の避難所です

「それで…どうしますかこれ、誰がやります?」
「「「………」」」
榊を隣室に片付けた後、中和剤を前に皆に問いかけるアリサ。
全員、薬から視線を外さず、穴よあけとばかりに見つめている。
しばらくそんな状態が続いていると
「そ、そうですよねっ。それじゃ仕方ないですから、同じ部隊の隊員としてわ、わ私がっ…」
そう言って中和剤の瓶に手を伸ばすアリサ。
「あ、アリサさんっ!そ、それでしたらっ私がやりますよ…!」
そしてそれを遮るカノン。
「わ、私、一応この中では最年長ですしっ…。いつも皆さんには迷惑かけてますし…こんな時くらいはお役に立てたら…」
「い、いえ、気にしないでくださいカノンさん。それに…あの状態のリーダーに口移しなんてできます?」
アリサは部屋の隅で縛られたままでいるレイジに目をやる。
この部屋に来たときから一貫して自分の世界にトリップし続けている。
「緊張のあまり大事な薬をこぼしたら大変ですから…「ごめんなさいっ…!」ズドンッ
「ぐおっ!?」
そこへ近づき、彼の腹に強烈な一撃を叩き込むカノン。
そして生まれる二人目の意識不明者。
「これで…何も問題ないですよね?」
カノンは笑顔でそう言いきった。恐ろしい子っ…!である。
「もう二人とも、そんなことやってる場合じゃないだろうに…。今は彼を元に戻すことが大事なんだよ?」
相対し睨み合う二人に声をかけるリッカ。瓶を手にして続ける。
「ほら。どっちでもいいから、ちゃっちゃとやっちゃって…」
「リッカさん…その中身を初恋ジュースとすり替えたそれには…何か意味があるんですか?」
「うっ…」
ヒバリにつっこまれ、言葉が詰まるリッカ。
実はさっき、みんなが目を離した隙にすり替えておいたのさ!である。
「本物はこっちですよね?あぁ大丈夫ですよ。ついでに私の涙を入れておいたので、私がやりますよ」
そう言って手に持っていたグラスを机に置くヒバリ。
竹田ヒバリ、いつでも涙が流せる女である。
「ヒバリさん、いつの間に…。でも、口移しまではしてもらわなくても大丈夫ですよ?」
カノンが笑顔で言う。顔しか笑っていない。
「それより…アリサさん。さっき仕方ないって言いましたよね?それなら…私がやってもいいですよね?」
「あら、私そんなこと言いましたか?忘れちゃいました。…それよりリッカさん。薬をすり替えるなんてどういうつもりですか?」
「いやぁ、初恋ジュースでも飲んで頭を冷やしてもらおうと思っただけだよ。それに、何か下心もあったようだから私が代わってあげようと思って。
ところで…ヒバリ。今はいろいろやることがあるから恋愛云々には興味ないんじゃなかった?」
「それとこれとは別ですよ。レイジさんにはいつもお世話になってますし。
このくらいならむしろ喜んで、と思いまして。リッカさんだって人の事言えないじゃないですか」

「「「「…………」」」」

一触即発。淀んだ空気が支部長室に満ちていく。
そして

「ふふっ…まったく皆さんってば……射線上に立つなって…私言わなかったっけ?」
そう言って神機を構えるカノン。
どこから出したなんて野暮なことを考えてはいけない。

「もう、カノンさん。そんなもの持ち出すなんて……まったく、どん引きですよ、っと」

続けて自分の愛機を剣形態で構えるアリサ。
どこから出したなんてry

「ちょうどいいや…二人の神機……ちょっとバラして点検してあげるよ」
左手に小型の工具を数本、右手に100cmはありそうなレンチを構えて言うリッカ。
どこからry

「皆さんそんなおっかないもの出して……危ないですよ?」

そう言ってスタングレネードと小型麻酔銃を取り出すヒバリ。
このぐらいなら持っててもおかしくはない…だろうか?

「「「「うふふふふふ…」」」」」

各々がそれぞれの得物を手にし、笑う。
本来笑顔というものは肉食獣が獲物を前にしたときの顔に由来していると言われるが、今の彼女達の顔がまさにそれである。
誰かが先に動いた瞬間始まるであろう乱戦。譲れないものの為、彼女達は全力をもって臨むことだろう。
実のところ、中和剤に関しては、後は湯煎にかけて普通に飲ませればいいだけの話なのだが、そこには誰も気づかない。

「「「「…………」」」」

沈黙が支配する世界。
研ぎ澄まされた戦意が、今堰を切って溢れ出さんとするその時

「おい、榊。入るぞ」

乱入者が現れる。
「ったく。何で俺が……何やってんだ、お前ら?」
「ソーマ?何でここに?」
突然の乱入者、ソーマ・シックザールにアリサは問う。
「榊のおっさんに、新しく開発したドリンクの試飲をしつこく頼まれてな…。どうせロクなものじゃない…」
そう言って部屋に入ってくるソーマ。
「あぁ、それか。さっさと終わらせるか…。その後は急いで口直しだな…」
そして、彼は机の上にあった中和剤のグラスを煽る。
「ああっ!?待ってそれは!?」
「ソーマさんっ待って下さいっ!」
突然の事態に慌てるリッカとカノン。
それに対し、
「ヒバリさんっ!」
「分かってますっ!」
残りの二人は冷静に対処する。
ヒバリは持っていた麻酔銃をソーマに向けて発砲する。
「んぐぅ!?」

弾はちょうど彼の首筋に当たり、彼は薬を口に含んだまま朦朧とする意識でフラフラと歩いていく。

レイジの方へと。

「ちょっ!?そっちは!」
そしてそのまま倒れ込むソーマ。
倒れ込む先にはレイジ顔があって

「「んむ…」」ンヂュ

何かが結合するような、そんな音が響いた。

「「「「あ"あ"あ"あああぁぁぁっ!」」」」
男同士、そして両方共知り合いのキスシーンという、あまりの光景に心の底からの悲鳴を上げる四人であった。

こうして、彼女達の不毛な争いは幕を閉じ、ソーマは黒歴史級の口直しをすることになってしまったのだった。


「……うっ…ん…?ここ…は…病室か」
そう言って目覚めるレイジ。
「あ、目が覚めましたか、レイジさん?」
「お。本当だ」
「良かったです…」
そこへ声をかけるヒバリとリッカとカノン。
「おう…ってか、何で俺こんなとこで寝てんの?…そしてその顔何?」
身体を起こし、三人の顔を見て言う。
その顔は、慈愛と優しさに満ちた生暖かい笑顔であった。
「りっ、リーダー…っ」
そこへ、少し離れて立っていたアリサから声がかけられる。
「おっ、アリサか。どうかし「どん引きですぅぅぅ!」ええぇっ!?」
そのまま病室から走り去っていくアリサ。
廊下は走ってはいけない。
「な、何あれ?どうかしたのか?」
「あははは…。無理もないよね…」
「い、いろいろあったんですよ…」
苦笑いを浮かべるリッカとお茶を濁すカノン。
あれを話してしまうと彼の精神に重大なダメージを負わせてしまうリスクがある。
それはできるなら避けたいところ。

「ああ、そうだ。レイジさん、支部長から伝言です。コウタさんもリンドウさんも…あと支部長の身体にも異常は何もないそうです。
ちょっとした勘違いだったみたいで、薬ももう必要ないみたいです」
そう報告するヒバリ。本当の事情は全く違うものなのだが、彼がそれを知る必要はない、というのが彼女達の判断だ。
「そうなのか?んだよ、心配損だぜ。あんなくそマズい薬も飲んだってのに」

「うん…まったく…。…ご愁傷様」
「え?何そのすごくいたたまれない感じ…」
目をそらすリッカ。
「…何故みんなして哀れみのこもった顔で俺を見る?」
「それは…知らない方がいいといいますか…」
「そうです。気にしないで下さい。……私は最後にいいものが見れましたが」
口ごもるカノンとぼそっと聞き捨てならないことを言うヒバリ。
誰もレイジと目を合わせようとしない。
「んーしかし、あの薬を飲んだ後の記憶がほとんどないんだが…。何か…とんでもないことをしていた気がするんだよな…」
「「「うっ…」」」
「え…何みんな赤くなってんの?ちょっ、ちょっと、俺何したのさ!?おいっ!?」
三人を問い質すレイジ。しかし、誰も何も答えない、答えられない。
「そ、それじゃあ私達はもう行くね?もう夕食時だしさっ」
「は、はいっ!私もお腹がすいちゃいましたっ」
「そ、そういうことでレイジさん、今日はここでゆっくり休んでいて下さいね?」
口々にそう言い、病室から出て行く三人 。
「いや待って、待って下さいっ!俺が何したのかだけでも教えろ…じゃない教えて下さい!おーいっ!カノーンっ!リッカぁ!ヒバリさーんっ!」
彼の叫びは空しく、病室に響くだけであった。
病室ではお静かに。




後日談


最近、俺に対するみんなの態度がおかしい。
事件から三日程経ったある日、ベテラン区画の廊下を歩きながら彼は思った。
「何だか刺すような視線を感じることがあるし…。はたまた熱っぽいような視線も感じるし…」
言わずもがな、前者は男性陣、後者は女性陣である。
「何かジーナさんとか前よりよく話しかけてくるようになったし、教官も心なしか優しくなった気がするし。あと、ヒバリさんも人の顔見て赤くなったり…」
そんなヒバリの最近のマイブームは、ある二人の人物の『攻め』と『受け』について考察することらしい。
「絶対何かあったと思うんだが…。博士もみんなも「何もなかった」の一点張りだしよ…」
なお、事件の翌日。榊とコウタはエイジス島広場にてロープで簀巻きにされ、吊り下げられているところを発見されている。
その全身は初恋ジュースまみれになっており、危うくアイテールに襲われそうになっていたところを救出された。
犯人はまだ分かっていないそうだ。
「アリサ達とも未だにぎこちないし…。まったく何がなんだか…」
はあ…、と溜め息をつくレイジ。
「確か今日あたりリンドウさん達帰ってくるんだっけ…。ちょっと相談してみるか」
レイジがそんなことを考えながら歩いていると
「おい」
「ん?あぁソーマか」
腕を組んで壁にもたれて立っていたソーマに出くわす。
「どうかしたか?」
「任務だ」
そう言って並んで歩き出す。一緒にエントランスに向かうのだろう。
「相手は?」
「テスカトリポカとシユウが何体か」
「メンバーは?」
「俺とお前」
「二人だけ?」
「ああ。…二人だけだ」
「そうか。ふーむ」
「………」
「ま、どうにかなるか。このくらいなら」
「…ああ」
「? 何か嬉しそうだな?」
「気のせいだ」
「そうか?まぁいいや。よし!ちゃっちゃと片付けるか!」
気合いを入れるレイジ。


こうして、彼らは今日もまた、アラガミとの戦いに颯爽と赴くのであった。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます