最終更新:ID:3r39Celhpg 2015年09月10日(木) 00:33:09履歴
昔むかしのお話
あるところに娘を神様に差し出した男がおりました
青い瞳の綺麗な神様は 娘を天使にしてくださいました
天使となった娘は 幼く美しい姿のまま年を取ることはありませんでした
男は天使になった娘を鳥籠の中で大切に育てました
■■■■のお話
あるところに仲の良い■■■■■■がおりました
ある時 ■■は悪い■■たちのせいで■■■■になってしまいました
けれどもそこに■■■■■■■■■が現れて ■■を助けてくださいました
もう■■と ■■■■■■■ように
昔むかしのお話
あるところに仲睦まじい夫婦がおりました
ある時 妻はとても愛らしい娘を身ごもり産み落としました
けれども そんな二人の元へ怪物がやってきて――――・・・・
び り り っ ・ ・ ・
一人の少女の奇妙な依頼から始まった事件は、世界の存続と共に幕を閉じる。
堕ち逝く赤い世界を食らい、“己”を得た銀が紡ぎあげる台本が人にもたらすは、希望か絶望か。それは今は誰にもわからない。
この世界へ踏み入れた白が人にもたらすものが希望か絶望か。それも今は誰にもわからない。
全ての謎は明かされたのか? いいや。
結局失踪した人間が“あの事件”のように戻ってくることはなかった。彼らは何処へ行ったのか?
銀の玩具箱、あの中で見た消えた人間によく似た子供は一体なんだったのか?
答えを知る者は口を閉ざす。
「この物語はおしまい」
「本は玩具箱の蓋と共に閉じられた」
「語られるべき真実は」
「もうどこにもありはしない」
台本は街と共に生ける劫火にくべられ灰となる。
役者達でも、最早全てを知ることは叶わず。
ただひっそりと、策者“たち”は微笑む。
「めでたし、めでたし」
「これはぼくたちにとっての」
「Happy ending」
「さあ、次の物語を始めましょう」
PCより
PLより
新しい世界。怪物がいない人だけの世界と、あの人は言っていた。
神や化け物を求めるのも人間なのに、おかしなことを言うなと思った。
化け物がいない世界だって、人はまた化け物を作り出す。
求める。使う。食い散らかす。殺す。
人だって化け物だ。
ところで種の特性として温かいモノが好きなのだけれど。
布団の中とか。
炎の中、とか。
極上の安心感。
あの中は好きだ。
宛ら人が胎内に安住を求めるような其れ。
絶対の黒箱。闇、温かさ。
回帰、流転、転生。
炎に抱かれたら、自分だって死ねる。
その平等さが好き。
灰は違う、安らぎの地ではあれど、還る場所ではない。
其処からは出なければならない。
いてはいけない。
まとまりきらない思考。
眠れぬまま、天井を見上げて何時間じっとしていただろう。その実十分くらいしか経っていないのかも。いやいや、もしかして数日……?
髪の毛を掻き乱して体を起こす。
今までの記憶まで滅茶苦茶になりそうだった。
日々受容される情報の量が膨大過ぎる。
眠る間に其れ等は取捨選択がなされ整理される、らしい。
一昨日纏めた捜査資料から、今朝道を歩いてる時にすれ違った通行人が読んでいた新聞の広告まで雑然と浮かんでは消えて、浮かんでは消えていく。
もう何日眠っていないだろう。
数分、意識が沈みかけても、何かとても嫌な夢を見て現実に引き戻される。これが更に性質が悪い。言うなれば、机の上に雑然と積み上げられた、あるいは棚に滅茶苦茶に突っ込まれたファイルを整理しようと取り出して見直して床に置いてバラバラにして、そのままにされていく感じ。整理されずに余計に散らかる記憶とそれに躓いて藻掻く思考は頭を圧迫して酷い痛みを生んでいる。
昨日と今日と数年前と今が混在する。
明日は見えない。
今の感覚を抱くのは何時の自分?
何に怯えているのだろう。
寝台から裸足で降りた床は冷たい。少しだけ意識が鮮やかになる。
黒の中の一点の白い曇り、失敗、欠けた部分、足された部分。
一歩踏み出して窓に。
生きることに疲れて、飛ぶことを忘れて、炎の傍にいたかった。寒い。
瞬く間の死が欲しかった。永劫の再生。悠久の生命。痛い。凍えて動けない。
血と涙。憐憫。死を払う。赤と白。救いをあげよう。天使。
怖い。痛苦。招かれる。死のニオイ。
――嗚呼、××は可哀想だ。
硝子に手を添えて、ぼんやりと夜空の月を見つめる。
頬を何かが伝っていたことには少し遅れて気づいた。
それより硝子の冷たさが痛かった。
窓を押し開ける。まだ冷たい空気がピリピリと指先を痺れさせる。
届かない、月に手を伸ばす。
飛べば掴めるだろうか。
太陽の光で輝く月。
自分は影。
影は寒い。火だってないだろう、だって暗いから。
窓枠によじ登って、腰掛ける。
掴む所のない足を空中で遊ばせる。
ぴたりと止める。
冷たい。風が髪で遊んで首筋を撫でる。傷。消えない、何の傷?
空が白になるまでは、自分の時間。
眠ったつもりになろう。
まるで鑢でもかけられたみたいにノイズだらけの自分だって、黒に沈めれば――
ああ、だめだ……
明日――もしかしたら既に今日かもしれないけど――も、何時ものままで居よう。
ぐちゃぐちゃに呑まれて消えてしまわないように。
神や化け物を求めるのも人間なのに、おかしなことを言うなと思った。
化け物がいない世界だって、人はまた化け物を作り出す。
求める。使う。食い散らかす。殺す。
人だって化け物だ。
ところで種の特性として温かいモノが好きなのだけれど。
布団の中とか。
炎の中、とか。
極上の安心感。
あの中は好きだ。
宛ら人が胎内に安住を求めるような其れ。
絶対の黒箱。闇、温かさ。
回帰、流転、転生。
炎に抱かれたら、自分だって死ねる。
その平等さが好き。
灰は違う、安らぎの地ではあれど、還る場所ではない。
其処からは出なければならない。
いてはいけない。
まとまりきらない思考。
眠れぬまま、天井を見上げて何時間じっとしていただろう。その実十分くらいしか経っていないのかも。いやいや、もしかして数日……?
髪の毛を掻き乱して体を起こす。
今までの記憶まで滅茶苦茶になりそうだった。
日々受容される情報の量が膨大過ぎる。
眠る間に其れ等は取捨選択がなされ整理される、らしい。
一昨日纏めた捜査資料から、今朝道を歩いてる時にすれ違った通行人が読んでいた新聞の広告まで雑然と浮かんでは消えて、浮かんでは消えていく。
もう何日眠っていないだろう。
数分、意識が沈みかけても、何かとても嫌な夢を見て現実に引き戻される。これが更に性質が悪い。言うなれば、机の上に雑然と積み上げられた、あるいは棚に滅茶苦茶に突っ込まれたファイルを整理しようと取り出して見直して床に置いてバラバラにして、そのままにされていく感じ。整理されずに余計に散らかる記憶とそれに躓いて藻掻く思考は頭を圧迫して酷い痛みを生んでいる。
昨日と今日と数年前と今が混在する。
明日は見えない。
今の感覚を抱くのは何時の自分?
何に怯えているのだろう。
寝台から裸足で降りた床は冷たい。少しだけ意識が鮮やかになる。
黒の中の一点の白い曇り、失敗、欠けた部分、足された部分。
一歩踏み出して窓に。
生きることに疲れて、飛ぶことを忘れて、炎の傍にいたかった。寒い。
瞬く間の死が欲しかった。永劫の再生。悠久の生命。痛い。凍えて動けない。
血と涙。憐憫。死を払う。赤と白。救いをあげよう。天使。
怖い。痛苦。招かれる。死のニオイ。
――嗚呼、××は可哀想だ。
硝子に手を添えて、ぼんやりと夜空の月を見つめる。
頬を何かが伝っていたことには少し遅れて気づいた。
それより硝子の冷たさが痛かった。
窓を押し開ける。まだ冷たい空気がピリピリと指先を痺れさせる。
届かない、月に手を伸ばす。
飛べば掴めるだろうか。
太陽の光で輝く月。
自分は影。
影は寒い。火だってないだろう、だって暗いから。
窓枠によじ登って、腰掛ける。
掴む所のない足を空中で遊ばせる。
ぴたりと止める。
冷たい。風が髪で遊んで首筋を撫でる。傷。消えない、何の傷?
空が白になるまでは、自分の時間。
眠ったつもりになろう。
まるで鑢でもかけられたみたいにノイズだらけの自分だって、黒に沈めれば――
ああ、だめだ……
明日――もしかしたら既に今日かもしれないけど――も、何時ものままで居よう。
ぐちゃぐちゃに呑まれて消えてしまわないように。
せめてもっと××らしくあれるように
「書類まとめましたよ、眼鏡掛け器一号」
「眼鏡掛け器じゃねぇし所長ですらなくなってんじゃねぇか!」
「ええ……流石に長いです」
「だから眼鏡掛け器をやめろ!」
「あっ」
「何だよ」
「……デビッドは眼鏡イーターなので一号もいらないですよね? 何と呼べば……」
◆実績のロックが解除されました◆
∞〜××より××〜∞
"悪夢と共に眠れぬ夜を数える"
PCより
192■年 1/XX
Massachusetts Bostn
Blandford Street50
192■年 1/XX
Massachusetts Bostn
Blandford Street50
「持つべきものは人脈とは言いますが、中々良い立地です」
トラックから最後の荷物を降ろし一息を付く。
チャールズ川から吹き付ける寒風を物ともせず、左手から火種を出し煙草に火を付ける。
彼は先の一件により帰る場所、職場を一挙に失ったものの知り合いの刑事と“話し合い”をし、
以前マフィアのアジトであったアパートを一部屋無償で借りられる事となった。
「………」
一息つくついでに、デビットは昨年の事件について改めて思い返す事にした。
「……住民の連続失踪事件、アッシェと言う少女からの奇妙な依頼、、シオル、
鏡、天使、アッシェ、アレイスト・ガーランド、リーベ、青、セント、遺跡、エドワード・ローリー、エトセトラ……」
難しい顔をして煙を肺に溜め込みゆっくりと吐き溜息をついた。
あの事件で知った事は、法では裁く事など敵わない、理解など到底出来ない強大で不可思議な超常の力が
この世には蠢いていると言う事だ。それこそ人間など到底敵うはずもないようなものであった。
しかし、同時に
敵わなくとも抗い対抗する事は出来る。それも人間だからこそ立ち向かえると言う事を
あの事件で一緒になった仲間達がいたお陰で知る事が出来たのだった。
「仲間さえいれば、ですがね」
そう呟くと、懐から自分の支えと…いや、自分を縛りつけていた警察手帳とバッジを取出した
「時は止まる事無く未来へと進む」
未練はない
No regrets
「そして未来を創るのは人間」
立ち止まるな
keep going
「過去に縛られるのはお終いです」
未来へ
To the future
「さて、と。荷物を上げる前に」
過去の清算をし、事務所に入る前。何かを思いだし荷物を漁り出す。
一枚の真新しいプレートを取出し、アパートの入口に取り付ける。
「探偵事務所、再開ですね」
◆実績のロックが解除されました◆
∞〜新規開店、依頼人募集中〜∞:新たな拠点を構え活動を再開する
PLより
先ずは皆さん6日間お疲れ様でした。
普段やらない系のPC&久しぶりと言っていい程の1920年代卓
勘を取り戻せず中盤まで地味眼鏡と化して居りました。
しかし、皆様と行動していき、悔いはない最後を飾れました。
最後に、
見覚えのあるPCに、以前の様に曲がる事の無いRPを貫き通したレネ・ゲイル/まほろさん
可愛い幼女かと思いきや毒舌、しかしクライマックスには衝撃的な体験の連続となってしまったアナスタシア/テレッテさん
同じ眼鏡&探偵仲間で共に行動する事もあり、男らしいかと思えばとても可愛らしい面もあったヘレディル/ツマースさん
アイアンマンのメンタル、タフガイ、しかし愛嬌のあるおいたんを演じたアレックス/ヨシタローさん
そして今回お世話になった古都子さん。ありがとうございました
先ずは皆さん6日間お疲れ様でした。
普段やらない系のPC&久しぶりと言っていい程の1920年代卓
勘を取り戻せず中盤まで地味眼鏡と化して居りました。
しかし、皆様と行動していき、悔いはない最後を飾れました。
最後に、
見覚えのあるPCに、以前の様に曲がる事の無いRPを貫き通したレネ・ゲイル/まほろさん
可愛い幼女かと思いきや毒舌、しかしクライマックスには衝撃的な体験の連続となってしまったアナスタシア/テレッテさん
同じ眼鏡&探偵仲間で共に行動する事もあり、男らしいかと思えばとても可愛らしい面もあったヘレディル/ツマースさん
アイアンマンのメンタル、タフガイ、しかし愛嬌のあるおいたんを演じたアレックス/ヨシタローさん
そして今回お世話になった古都子さん。ありがとうございました
PCより
PLより
192x 1/xx
アーカム リンドクレール探偵事務所寝室
「………おとーさま」
ぽつり、深い夜の闇
アーカム。リンドクレール探偵事務所、ヘレディル・エインジェルの寝室にて
偉大なる冒険家 エドワード・M・ローリーの一人娘。
アナスタシア・ローリーは眠れないのか、一人ベッドに腰掛ける。
隣で安らかに眠る友人を横目にいつもとは想像できないような小さくか細い声で呟く。
もう帰る家はここしかない。迎えてくれる家族もいない。
あの日、炎と灰と雪の中で…
「………」
あれから、眠ることができない。まぶたを閉じると。映るは
白い男
白い女
白く染める おとうさま
白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白
「ぁ」
視界が変わる。黒 闇 落ち着く色。
「………」
カタカタと手が、指が震える。
首元のペンダント。
ローリー家の家紋が入っている。左手の薬指に嵌めるものなのだが、当然、彼女のサイズにはあっていない。
だから、紐を通してペンダントにした、とても拙い、お粗末な
ローリー家、現当主の証。
今、自らの手元に残っているものはこれと…
「…ヘレディル…」
ともに生き延びた仲間だけ
「…」
ずっとここにいてもいいかとも考えた
「………」
一緒なら、やっていけるかも知れない
「……………ごめんね」
でもダメなのだ。自分の生き方は違う。
父に誓ったのだ。立派な冒険者になると。
父に託されたのだ。この世界を、偉大な冒険を
…母に守られたのだ。このちっぽけな命を
鳥籠は壊された。
鳥はもう二度と、そこに戻ることはない、できない
まだ幼いその鳥がどうなったかは、また別の話。
アーカム リンドクレール探偵事務所寝室
金の糸が月の光に反射する
小さく細い指が胸のペンダントに触れる
淡い空の色をした瞳が、哀愁を漂わせ
やさしく、やさしく、指輪の紋章をなぞる
「………おとーさま」
ぽつり、深い夜の闇
アーカム。リンドクレール探偵事務所、ヘレディル・エインジェルの寝室にて
偉大なる冒険家 エドワード・M・ローリーの一人娘。
アナスタシア・ローリーは眠れないのか、一人ベッドに腰掛ける。
隣で安らかに眠る友人を横目にいつもとは想像できないような小さくか細い声で呟く。
もう帰る家はここしかない。迎えてくれる家族もいない。
あの日、炎と灰と雪の中で…
「………」
あれから、眠ることができない。まぶたを閉じると。映るは
白い男
白い女
白く染める おとうさま
白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白
「ぁ」
視界が変わる。黒 闇 落ち着く色。
「………」
カタカタと手が、指が震える。
首元のペンダント。
ローリー家の家紋が入っている。左手の薬指に嵌めるものなのだが、当然、彼女のサイズにはあっていない。
だから、紐を通してペンダントにした、とても拙い、お粗末な
ローリー家、現当主の証。
今、自らの手元に残っているものはこれと…
「…ヘレディル…」
ともに生き延びた仲間だけ
「…」
ずっとここにいてもいいかとも考えた
「………」
一緒なら、やっていけるかも知れない
「……………ごめんね」
でもダメなのだ。自分の生き方は違う。
父に誓ったのだ。立派な冒険者になると。
父に託されたのだ。この世界を、偉大な冒険を
…母に守られたのだ。このちっぽけな命を
「わたし、いかなきゃ。」
「かごのなかは、もういやなの」
「しらなきゃいけないから」
鳥籠は壊された。
鳥はもう二度と、そこに戻ることはない、できない
まだ幼いその鳥がどうなったかは、また別の話。
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∞〜小さな雛の巣立ち〜∞:エドワード・ミシェル・ローリーの死亡時、生ける炎の子息を招来する
まずは皆様6日間お疲れ様でした。
ゆったりほのぼのと幼女RPしようと思っていたら、苦難、一難去ってまた一難
そして止めにお父様という、数多くの試練が襲いかかり、PL,PCともにテンパっておりました
ただ苦難を乗り越えていく事もとても楽しく、心に残るセッションとさせていただきました。
一重に、まほろさん、カートさん、ツマースさん、ヨシタローさん、そして古都子さん方のおかげです
また機会があい、ご一緒できれば幸いです。6日間本当にありがとうございました
最後に、文才など全くない(真顔)私の文をここまで読んでいただき本当にありがとうございます(土下座
後日談追加…きっとする。うん。きっと
ゆったりほのぼのと幼女RPしようと思っていたら、苦難、一難去ってまた一難
そして止めにお父様という、数多くの試練が襲いかかり、PL,PCともにテンパっておりました
ただ苦難を乗り越えていく事もとても楽しく、心に残るセッションとさせていただきました。
一重に、まほろさん、カートさん、ツマースさん、ヨシタローさん、そして古都子さん方のおかげです
また機会があい、ご一緒できれば幸いです。6日間本当にありがとうございました
最後に、文才など全くない(真顔)私の文をここまで読んでいただき本当にありがとうございます(土下座
後日談追加…きっとする。うん。きっと
PCより
PLより
192X年 1/XX
アーカム 何処かの一室
「………あークソ、またか」
まだ夜も明けない時間にムクリとソファから起き上がる。目が覚めてしまった。
それというのもあの日以降、繰り返し夢を見るようになったからだ。
業火が全てを燃やし尽くす夢を。
いろいろなものが燃えてゆく中、最後に現れるのはいつもあの二人だった。
熱い 助けて 熱いよ おじちゃん
そんな悲痛な声でいつも目が覚めてしまう。
「…………」
起きた足で俺はそのままある場所に向かう。
そこには二人の子供が眠っていた。
ジャックとアニタ。
「ったく、気持ちよさげに眠りやがって」
二人の頭を撫でてやる。
撫でてやりながら思い出す。
街が灰になる直前のことを。
「街はなくなると思ってくれ」
あの時、俺はガユスの言葉に反論しなかった。あいつらが街にいるというのに。
諦めていた。心の何処かで。こうでもしなきゃシオルの野郎は止められねぇ。世界が終わっちまうって。
そのために、街を、いや、あの二人を諦めた。
全てが灰になってから後悔した。絶望した。
俺のせいで、不甲斐ない俺のせいであいつらは死んじまった。そう思ってた。
だけど、二人とも生きていた。幻覚かとも思った。けどちゃんと生きてた。
あいつらは生きてた。だが、俺はあいつらを、ジャックとアニタの二人を見捨てた。諦めた。
あの夢はそんな俺を戒めるためのものなのかもしれない。
俺の思考はそんな結論にたどり着いた。
ふと、撫でる手を止め、一人つぶやく。
「もう、お前らを見捨てたりしねぇ」
言い聞かせるように。そして自分に刻み付けるように。
『絶対にだ』
アーカム 何処かの一室
「………あークソ、またか」
まだ夜も明けない時間にムクリとソファから起き上がる。目が覚めてしまった。
それというのもあの日以降、繰り返し夢を見るようになったからだ。
業火が全てを燃やし尽くす夢を。
いろいろなものが燃えてゆく中、最後に現れるのはいつもあの二人だった。
熱い 助けて 熱いよ おじちゃん
そんな悲痛な声でいつも目が覚めてしまう。
「…………」
起きた足で俺はそのままある場所に向かう。
そこには二人の子供が眠っていた。
ジャックとアニタ。
「ったく、気持ちよさげに眠りやがって」
二人の頭を撫でてやる。
撫でてやりながら思い出す。
街が灰になる直前のことを。
「街はなくなると思ってくれ」
あの時、俺はガユスの言葉に反論しなかった。あいつらが街にいるというのに。
諦めていた。心の何処かで。こうでもしなきゃシオルの野郎は止められねぇ。世界が終わっちまうって。
そのために、街を、いや、あの二人を諦めた。
全てが灰になってから後悔した。絶望した。
俺のせいで、不甲斐ない俺のせいであいつらは死んじまった。そう思ってた。
だけど、二人とも生きていた。幻覚かとも思った。けどちゃんと生きてた。
あいつらは生きてた。だが、俺はあいつらを、ジャックとアニタの二人を見捨てた。諦めた。
あの夢はそんな俺を戒めるためのものなのかもしれない。
俺の思考はそんな結論にたどり着いた。
ふと、撫でる手を止め、一人つぶやく。
「もう、お前らを見捨てたりしねぇ」
言い聞かせるように。そして自分に刻み付けるように。
『絶対にだ』
◆実績のロックが解除されました◆
∞〜オヤジの決心〜∞:生ける炎の子息を招来し、ジャック、アニタの二名が生存する
皆様、六日間本当にありがとうございました!
前に参加した灰雪の軋轢の細かい情報がちょこちょこと入っていてニマニマと笑わせていただました。
特にに印象に残ったのはおっちゃんのSANの固さでしたね。d100もさらっと回避するさまは自分でも戦慄を覚えました。(最後の最後に16とか持ってかれましたが)
RPが黙りがちになってしまうのはどうにか直したいですね。終盤とか特に。そこだけが反省点です。
では、まほろさん、カートさん、ツマースさん、テレッテさん、そして古都子さん。
また機会があったらご一緒してくださいね。
今回はありがとうございました!
(もう少し後日談追加するかも・・・?)
前に参加した灰雪の軋轢の細かい情報がちょこちょこと入っていてニマニマと笑わせていただました。
特にに印象に残ったのはおっちゃんのSANの固さでしたね。d100もさらっと回避するさまは自分でも戦慄を覚えました。(最後の最後に16とか持ってかれましたが)
RPが黙りがちになってしまうのはどうにか直したいですね。終盤とか特に。そこだけが反省点です。
では、まほろさん、カートさん、ツマースさん、テレッテさん、そして古都子さん。
また機会があったらご一緒してくださいね。
今回はありがとうございました!
(もう少し後日談追加するかも・・・?)
NPCの後日談追加条件:Gallery Modeを開放する。
“生ける炎の子息”
Goyus Dalahiedo -ガユス・ダラハイド-
Chapter.1“誘拐”から登場。
事務所も義弟も何もかもを自身で灰燼へ帰すこととなった彼は
その後、デビッドと共にボストンへ移り住み探偵業を再開した。
事務所の名前は「ダラハイド&ヘニング探偵事務所」。
新たな事務所であっても彼の日常は変わることなく、以前と同じように周囲は騒がしいようだ。
とはいえ、苦労はすれど変わらぬ日常を彼は何だかんだで楽しんでいるようである。
そういえば、彼の日常には一つだけ“大きな変化”があったらしい。
“青き混沌の器”
Caenntuh Fradgiirzu -セント・フラジアージュ-
Chapter.1“誘拐”から登場。
Chapter.5“立ち塞がる者”にて死亡。
“時止まりし娘”
Asche Garland -アッシェ・ガーランド-
Chapter.1“誘拐”から登場。
宿された天使の暴走により怪物と成り果て死にかけた彼女は、
灰と紅の力添えにより以前と変わらぬ姿を取り戻す。
行き場を失くした彼女だが、その胸に宿した想いは変わることはなかった。
その後、自らの意思で“灰の君”アシュレイ・ジンデルの傍にいることを選んだという。
秘めたる想いの結末がどうなったのかは……また別の話である。
“灰の君”
Ashley Zindell -アシュレイ・ジンデル-
Chapter.1“誘拐”から登場。
全てが終わった後、彼は自身を取り戻すため紅の元へ向かった。
果たして何をどのようにしたのかは彼と紅のみしか知り得ない。
とりあえずのところ、どうにか鳩にはならず、以前と同じ姿に戻してもらえたようだ。
元に戻った後も今しばらく現状を謳歌していたいようで、
愛息子に組織を預けたまま自由奔放にあちこちふらりと出掛けている。
“謎多き男”
Zero -ゼロ-
Chapter.1“誘拐”から登場。
事件が終息する前に、彼はその場から姿を消した。
その後の行方は不明であるが、風のうわさを聞く限り、息災のようだ。
“境界を超える者”
Liebe Garland -リーベ・ガーランド-
Chapter.1“誘拐”から登場。
二度目の死を迎えた彼であったが、銀の力添えにより甦る。
甦った後、ヴァレリー・ジンデルにより発見、連れ戻された。
現在は精神治療のために軟禁状態にあるようだが、本人はそれでも満足げ。
時折、こっそりと監視の目を盗んで抜けだしては、何かしら問題に巻き込まれて回収されているらしい。
“灰より孵りし銀”
Fraxinus Excelsior -フラクシヌス・エクスケルシオル-
Chapter.1“誘拐”から登場。
堕ち逝く赤き世界を喰らった後、彼は姿を消した。
彼の行動や言動には矛盾も多く孕まれている。
結局のところ、彼は何を目的として動いていたのかは謎のままである。
ただ一つ分かること、新たに生まれた銀の混沌がもたらすものは人類にとって良いものではないだろう。
彼もまた、“混沌”なのだから……。
“背信の受難者”
Xarhuts Fradgiirzu -ザルツ・フラジアージュ-
Chapter.1“誘拐”から登場。
あの大火をどう免れたのかは不明であるが、無事に生き伸びた様子。
彼女は今日も見えぬ右目で世界を見つめている。
裏切りの輝きを宿す青く優しい瞳が映すのは、遠い昔の過去の景色。
麗しき満月と、芳しき白百合の花畑、知られざる真実。
まだ彼女の物語は終わらない……。
“青き善なる混沌”
Azure -アジュア-
Chapter.2“銀の玩具箱”から登場。
Chapter.6“終幕”にて撤退。
“情深き氷の王”
Snow Villiers -スノウ・ヴィリアース-
Chapter.3“鏡が語る真実”から登場。
宿された青き混沌の断片がもたらした能力を駆使し、あの大火を生き伸びる。
街から逃げおおせた後、世話になっているギャングの元へ一度戻った。
その後は以前と変わりなく、実妹を取り戻すための方法を求め、世界中をあちこち飛び回っている。
その傍らには時折、アシュリーやアッシェの姿もあるようだ。
“青の理解者”
Aleister Garland -アレイスト・ガーランド-
Chapter.3“鏡が語る真実”から登場。
Chapter.6“終幕”にて死亡。
“ゆらめく未知”
Pacifista Bastion -パシフィスタ・バスティオン-
Chapter.4“パーティー”から登場。
自力で大火を生き伸びた彼ではあったが、存外負った傷は深く、再生に手間取ったようだ。
そのせいで予定より大幅に遅れたが、どうにかこうにか帰宅。
したのはいいものの、彼もとい彼女に待っていたものは、デートをドタキャンされた挙げ句、
大怪我をして帰って来た大馬鹿者へ、怒りも露わに微笑む彼女もとい彼だったそうな。
“未来見通す幼き瞳”
Othinus Midgardsormr -オティヌス・ミドガルズオルム-
Chapter.4“パーティー”から登場。
Chapter.5“立ち塞がる者”にて死亡。
“狩り立てる恐怖”
John Doe -名無し-
Chapter.4“パーティー”から登場。
Chapter.5“立ち塞がる者”にて撤退。
“神性の混血獣”
Laurence Dusty Mirror -ローレンス・ダスティ・ミラー-
Chapter.4“パーティー”から登場。
大火を生き伸びた後、彼は以前と変わりなくリーベの傍に静かに佇んでいる。
死した後、息子の歪んだ愛により甦らされた彼の瞳に、この世界はどのように映っているのであろうか。
しかし、どのような悲劇に見舞われようとも、彼は依然変わりなく息子を愛している。
その愛は、不変の真実にして絆として彼と息子を繋ぎ続ける。
“幼き偉大な冒険家の父”
Edward Michael Raleigh -エドワード・ミシェル・ローリー-
Chapter.5“立ち塞がる者”から登場。
Chapter.6“終幕”にて死亡。
“エドワードの右腕”
Chiquita -チェキータ-
Chapter.6“終幕”から登場。
Chapter.6“終幕”にて撤退。
“寡黙な東洋人”
武蔵 -ムサシ-
Chapter.6“終幕”から登場。
Chapter.6“終幕”にて死亡。
“愉悦を求めるギャングのボス”
Vollque Curro Levanante -ヴォルク・クロ・レヴァナント-
Chapter.6“終幕”から登場。
アシュレイ・ジンデルの要請により組織を率いて現れた彼は、
街が“生ける炎の子息”の劫火に包まれる前にそれを予期し、部下を連れ撤退した。
その後も以前と変わりなくアシュレイの組織と交流を持ちつつ、
愉悦求めてあちらこちらの事件に首を突っ込んでは引っ掻きまわし
部下や養子にした我が子達にやめてくれと泣きつかれているようだ。
“謎多き少年”
Naomi Lindow -ナオミ・リンドウ-
Chapter.6“終幕”から登場。
ヴォルクと共に現れた少年は、いつの間にかその場から姿を消していた。
果たして少年は何のために、あの場へ来ていたのか、誰も知る由もない。
ただ、“とある人物”の証言によると少年はあの時、
間近で堕ち逝く赤い世界をただじっと見つめていたらしい。
果たして少年は何を思い、それを見つめていたのだろうか。
“忠実なる白鳩”
Paloma Blanche Comme Neige -パロマ・ブランシュ・コム・ネージュ-
Chapter.6“終幕”から登場。
灰降る街にて甦りし己の主ヨシュア・マリアンと共に街を去った。
目的を果たした彼らは、次なる主の命を待ち侘びている。
全てはこの世を救いの光にて救済する為。
かつて、静寂と暗黒に包まれた闇より主が己らを救いだしてくれたように、彼らは主のために飛び回る。
主と言う眩い光を全ての者に届けるために。
“膏をつけられた者”
Joshua Marian -ヨシュア・マリアン-
Chapter.6“終幕”から登場。
12月25日、彼は一人の男の体を仮初の器として甦る。
甦りし救世主がこの世にもたらすは、救いの光。
父にして母なる神の命の元、二羽の白鳩を従えて、彼は歩き出す。
“全て”を救うために。この世の“罪”、その全てを浄化するために。
そのためにも彼は、まず己の肉体を取り戻すため、動きだす。
皆さま、6日間お付き合いいただき、ありがとうございました!!
ダイスが荒ぶったり荒ぶったり荒ぶっていたりしましたが、無事にエンディングを迎えることができて良かったです。
KPとしての反省点はやはり多いです。
何が一番の反省点って、細かなところで情報提供しきれていなかったところでしょうか……。
動機づけや情報フックを用意するのはやはり難しいですね。
次のシナリオで今回の反省点を生かせるよう、頑張ります。
時間に圧迫されていた部分もあり、色々削り取ったイベントも多く、「結局これってどういうことだったの?」と疑問を解決できぬまま終わってしまったのも反省点の一つですね。
もう少し時間をきちんと管理出来る能力がほしいものです…。こればっかりはもっと経験を積んで磨くしかないと思うので、今後とも頑張っていきたいと思います。
ただ皆様の疑問の一つを解決するためのヒントがあるとするなら、
“神話生物は優しかろうが何であろうが根本的に人と相容れることはない”
ということでしょうか。
本編中では割とはっきりとしていたようにも思える敵味方。
けれども裏を返せば……。本当の敵は誰で、味方は誰だったのでしょう。
人間にとって最後まで信じられるのは、やはり人間なのではないでしょうか。
と、何だか余計謎を増やすような言葉を投げかけ、KPからのコメントは締めたいと思います。
最後に。
まほろさんへ。
久々にゲイルくんとも会えて楽しかったです!
レネくん共々発狂乱舞でしたが、楽しんでいただけたでしょうか……?
最終的に子供のころに戻ったようなゲイルくんのその後や、レネくんは結局パパと一緒に寝れたのかこそこそっと見守らせていただきます。
今後もKP共々、リーヴェくんやアッシェちゃんは頑張るので、これからもよろしく拉致されてください!(告白)
カートさんへ。
ものすごくお久しぶりでした!!
安定のRP力はやはり舌を巻かされます……。
サイコ●レイクというよりはバイオショッ●的オチになりましたが、なあに、まだ探索者続けられるから大丈夫ですよ。(蹴
ガユッチとの新探偵事務所開業おめでとうございます!! 色々頑張れ苦労人眼鏡コンビ!!
ツマースさんへ。
KPとしてお会いするのは初めてでしたが、やはりPLとして見るツマースさんと普段のツマースさんは違いますね。
こう、凜としているというか、ぴりりとしているというか……?
SANがどかんと直葬されてしまいましたが、アナスタシアちゃんと今後は行動を共にするということだから幼女に目いっぱい癒されてください!
テレッテさんへ。
ツマースさん同様、KPとしてお会いするのは初めてでしたね。
アナスタシアちゃんには数多くの試練を投げかけてしまい、申し訳ございません。
これから先紡がれるアナスタシア・ローリーの伝説を楽しみにしております!
パッパとチェキチェキについては楽しみにしたってな(
ヨシタローさんへ。
前回はまほろさん卓でPL同士と言うことで御一緒しましたが、私の卓は如何でしたでしょう…?
前回から続く物語、といった位置づけで、前回を知るからこそ分かるネタもこそこそと仕込ませていただいておりました。
とりあえずアレックスおじさんマジイケメンですね。いざという時に頼れる男性って素敵だと思うのです。
普段はつかず離れずな位置にいつつも、大切な時に傍にいて言葉を発してくれる大人と言うのは貴重なものです。
今後も幼女と仲良く頑張ってください!! あと左腕完治するとイイネ!!
“生ける炎の子息”
Goyus Dalahiedo -ガユス・ダラハイド-
Chapter.1“誘拐”から登場。
事務所も義弟も何もかもを自身で灰燼へ帰すこととなった彼は
その後、デビッドと共にボストンへ移り住み探偵業を再開した。
事務所の名前は「ダラハイド&ヘニング探偵事務所」。
新たな事務所であっても彼の日常は変わることなく、以前と同じように周囲は騒がしいようだ。
とはいえ、苦労はすれど変わらぬ日常を彼は何だかんだで楽しんでいるようである。
そういえば、彼の日常には一つだけ“大きな変化”があったらしい。
“青き混沌の器”
Caenntuh Fradgiirzu -セント・フラジアージュ-
Chapter.1“誘拐”から登場。
Chapter.5“立ち塞がる者”にて死亡。
“時止まりし娘”
Asche Garland -アッシェ・ガーランド-
Chapter.1“誘拐”から登場。
宿された天使の暴走により怪物と成り果て死にかけた彼女は、
灰と紅の力添えにより以前と変わらぬ姿を取り戻す。
行き場を失くした彼女だが、その胸に宿した想いは変わることはなかった。
その後、自らの意思で“灰の君”アシュレイ・ジンデルの傍にいることを選んだという。
秘めたる想いの結末がどうなったのかは……また別の話である。
“灰の君”
Ashley Zindell -アシュレイ・ジンデル-
Chapter.1“誘拐”から登場。
全てが終わった後、彼は自身を取り戻すため紅の元へ向かった。
果たして何をどのようにしたのかは彼と紅のみしか知り得ない。
とりあえずのところ、どうにか鳩にはならず、以前と同じ姿に戻してもらえたようだ。
元に戻った後も今しばらく現状を謳歌していたいようで、
愛息子に組織を預けたまま自由奔放にあちこちふらりと出掛けている。
“謎多き男”
Zero -ゼロ-
Chapter.1“誘拐”から登場。
事件が終息する前に、彼はその場から姿を消した。
その後の行方は不明であるが、風のうわさを聞く限り、息災のようだ。
“境界を超える者”
Liebe Garland -リーベ・ガーランド-
Chapter.1“誘拐”から登場。
二度目の死を迎えた彼であったが、銀の力添えにより甦る。
甦った後、ヴァレリー・ジンデルにより発見、連れ戻された。
現在は精神治療のために軟禁状態にあるようだが、本人はそれでも満足げ。
時折、こっそりと監視の目を盗んで抜けだしては、何かしら問題に巻き込まれて回収されているらしい。
“灰より孵りし銀”
Fraxinus Excelsior -フラクシヌス・エクスケルシオル-
Chapter.1“誘拐”から登場。
堕ち逝く赤き世界を喰らった後、彼は姿を消した。
彼の行動や言動には矛盾も多く孕まれている。
結局のところ、彼は何を目的として動いていたのかは謎のままである。
ただ一つ分かること、新たに生まれた銀の混沌がもたらすものは人類にとって良いものではないだろう。
彼もまた、“混沌”なのだから……。
“背信の受難者”
Xarhuts Fradgiirzu -ザルツ・フラジアージュ-
Chapter.1“誘拐”から登場。
あの大火をどう免れたのかは不明であるが、無事に生き伸びた様子。
彼女は今日も見えぬ右目で世界を見つめている。
裏切りの輝きを宿す青く優しい瞳が映すのは、遠い昔の過去の景色。
麗しき満月と、芳しき白百合の花畑、知られざる真実。
まだ彼女の物語は終わらない……。
“青き善なる混沌”
Azure -アジュア-
Chapter.2“銀の玩具箱”から登場。
Chapter.6“終幕”にて撤退。
“情深き氷の王”
Snow Villiers -スノウ・ヴィリアース-
Chapter.3“鏡が語る真実”から登場。
宿された青き混沌の断片がもたらした能力を駆使し、あの大火を生き伸びる。
街から逃げおおせた後、世話になっているギャングの元へ一度戻った。
その後は以前と変わりなく、実妹を取り戻すための方法を求め、世界中をあちこち飛び回っている。
その傍らには時折、アシュリーやアッシェの姿もあるようだ。
“青の理解者”
Aleister Garland -アレイスト・ガーランド-
Chapter.3“鏡が語る真実”から登場。
Chapter.6“終幕”にて死亡。
“ゆらめく未知”
Pacifista Bastion -パシフィスタ・バスティオン-
Chapter.4“パーティー”から登場。
自力で大火を生き伸びた彼ではあったが、存外負った傷は深く、再生に手間取ったようだ。
そのせいで予定より大幅に遅れたが、どうにかこうにか帰宅。
したのはいいものの、彼もとい彼女に待っていたものは、デートをドタキャンされた挙げ句、
大怪我をして帰って来た大馬鹿者へ、怒りも露わに微笑む彼女もとい彼だったそうな。
“未来見通す幼き瞳”
Othinus Midgardsormr -オティヌス・ミドガルズオルム-
Chapter.4“パーティー”から登場。
Chapter.5“立ち塞がる者”にて死亡。
“狩り立てる恐怖”
John Doe -名無し-
Chapter.4“パーティー”から登場。
Chapter.5“立ち塞がる者”にて撤退。
“神性の混血獣”
Laurence Dusty Mirror -ローレンス・ダスティ・ミラー-
Chapter.4“パーティー”から登場。
大火を生き伸びた後、彼は以前と変わりなくリーベの傍に静かに佇んでいる。
死した後、息子の歪んだ愛により甦らされた彼の瞳に、この世界はどのように映っているのであろうか。
しかし、どのような悲劇に見舞われようとも、彼は依然変わりなく息子を愛している。
その愛は、不変の真実にして絆として彼と息子を繋ぎ続ける。
“幼き偉大な冒険家の父”
Edward Michael Raleigh -エドワード・ミシェル・ローリー-
Chapter.5“立ち塞がる者”から登場。
Chapter.6“終幕”にて死亡。
“エドワードの右腕”
Chiquita -チェキータ-
Chapter.6“終幕”から登場。
Chapter.6“終幕”にて撤退。
“寡黙な東洋人”
武蔵 -ムサシ-
Chapter.6“終幕”から登場。
Chapter.6“終幕”にて死亡。
“愉悦を求めるギャングのボス”
Vollque Curro Levanante -ヴォルク・クロ・レヴァナント-
Chapter.6“終幕”から登場。
アシュレイ・ジンデルの要請により組織を率いて現れた彼は、
街が“生ける炎の子息”の劫火に包まれる前にそれを予期し、部下を連れ撤退した。
その後も以前と変わりなくアシュレイの組織と交流を持ちつつ、
愉悦求めてあちらこちらの事件に首を突っ込んでは引っ掻きまわし
部下や養子にした我が子達にやめてくれと泣きつかれているようだ。
“謎多き少年”
Naomi Lindow -ナオミ・リンドウ-
Chapter.6“終幕”から登場。
ヴォルクと共に現れた少年は、いつの間にかその場から姿を消していた。
果たして少年は何のために、あの場へ来ていたのか、誰も知る由もない。
ただ、“とある人物”の証言によると少年はあの時、
間近で堕ち逝く赤い世界をただじっと見つめていたらしい。
果たして少年は何を思い、それを見つめていたのだろうか。
“忠実なる白鳩”
Paloma Blanche Comme Neige -パロマ・ブランシュ・コム・ネージュ-
Chapter.6“終幕”から登場。
灰降る街にて甦りし己の主ヨシュア・マリアンと共に街を去った。
目的を果たした彼らは、次なる主の命を待ち侘びている。
全てはこの世を救いの光にて救済する為。
かつて、静寂と暗黒に包まれた闇より主が己らを救いだしてくれたように、彼らは主のために飛び回る。
主と言う眩い光を全ての者に届けるために。
“膏をつけられた者”
Joshua Marian -ヨシュア・マリアン-
Chapter.6“終幕”から登場。
12月25日、彼は一人の男の体を仮初の器として甦る。
甦りし救世主がこの世にもたらすは、救いの光。
父にして母なる神の命の元、二羽の白鳩を従えて、彼は歩き出す。
“全て”を救うために。この世の“罪”、その全てを浄化するために。
そのためにも彼は、まず己の肉体を取り戻すため、動きだす。
◆実績のロックが解除されました◆
歩む者、立ち止まる者:エンドロールをスキップせずに最後まで見る。
皆さま、6日間お付き合いいただき、ありがとうございました!!
ダイスが荒ぶったり荒ぶったり荒ぶっていたりしましたが、無事にエンディングを迎えることができて良かったです。
KPとしての反省点はやはり多いです。
何が一番の反省点って、細かなところで情報提供しきれていなかったところでしょうか……。
動機づけや情報フックを用意するのはやはり難しいですね。
次のシナリオで今回の反省点を生かせるよう、頑張ります。
時間に圧迫されていた部分もあり、色々削り取ったイベントも多く、「結局これってどういうことだったの?」と疑問を解決できぬまま終わってしまったのも反省点の一つですね。
もう少し時間をきちんと管理出来る能力がほしいものです…。こればっかりはもっと経験を積んで磨くしかないと思うので、今後とも頑張っていきたいと思います。
ただ皆様の疑問の一つを解決するためのヒントがあるとするなら、
“神話生物は優しかろうが何であろうが根本的に人と相容れることはない”
ということでしょうか。
本編中では割とはっきりとしていたようにも思える敵味方。
けれども裏を返せば……。本当の敵は誰で、味方は誰だったのでしょう。
人間にとって最後まで信じられるのは、やはり人間なのではないでしょうか。
と、何だか余計謎を増やすような言葉を投げかけ、KPからのコメントは締めたいと思います。
最後に。
まほろさんへ。
久々にゲイルくんとも会えて楽しかったです!
レネくん共々発狂乱舞でしたが、楽しんでいただけたでしょうか……?
最終的に子供のころに戻ったようなゲイルくんのその後や、レネくんは結局パパと一緒に寝れたのかこそこそっと見守らせていただきます。
今後もKP共々、リーヴェくんやアッシェちゃんは頑張るので、これからもよろしく拉致されてください!(告白)
カートさんへ。
ものすごくお久しぶりでした!!
安定のRP力はやはり舌を巻かされます……。
サイコ●レイクというよりはバイオショッ●的オチになりましたが、なあに、まだ探索者続けられるから大丈夫ですよ。(蹴
ガユッチとの新探偵事務所開業おめでとうございます!! 色々頑張れ苦労人眼鏡コンビ!!
ツマースさんへ。
KPとしてお会いするのは初めてでしたが、やはりPLとして見るツマースさんと普段のツマースさんは違いますね。
こう、凜としているというか、ぴりりとしているというか……?
SANがどかんと直葬されてしまいましたが、アナスタシアちゃんと今後は行動を共にするということだから幼女に目いっぱい癒されてください!
テレッテさんへ。
ツマースさん同様、KPとしてお会いするのは初めてでしたね。
アナスタシアちゃんには数多くの試練を投げかけてしまい、申し訳ございません。
これから先紡がれるアナスタシア・ローリーの伝説を楽しみにしております!
パッパとチェキチェキについては楽しみにしたってな(
ヨシタローさんへ。
前回はまほろさん卓でPL同士と言うことで御一緒しましたが、私の卓は如何でしたでしょう…?
前回から続く物語、といった位置づけで、前回を知るからこそ分かるネタもこそこそと仕込ませていただいておりました。
とりあえずアレックスおじさんマジイケメンですね。いざという時に頼れる男性って素敵だと思うのです。
普段はつかず離れずな位置にいつつも、大切な時に傍にいて言葉を発してくれる大人と言うのは貴重なものです。
今後も幼女と仲良く頑張ってください!! あと左腕完治するとイイネ!!
January XXth, 192X
Massachusetts Bostn Blandford Street50
"Dalahiedo & Henning detective office"
引っ越しというものをするのは、これが人生で二度目であった。
一度目は生まれて間もない頃。力の扱い方も碌に知らず、分からず、幼い子供にその強大な力は手に余るどころではなく。それは街を焼き、父を傷つけ、母と叔母の手を煩わせてようやくおさまったようなものであった。
きっと母と叔母が本気を出せば自分なぞ、立ちどころに存在ごと消しさることができたであろう。二人がかりで止めにかかられたのは、他ならぬガユスを守るためであったことを、ガユスは知っている。
「なんだかんだ、甘いよなぁ…」
背もたれに体重をかけ、軽くのけぞるように窓の外を見上げれば、眩しい青空が目を焼く。
この青空も自分にかかれば赤く染まり、灰の雪を降らせるのだ。そう思うとなんだか笑えてきた。
所詮、自分も壊すしか能のない怪物だ。ガユスの同族もとい、“あちら側”出身は大概そう。人が作りあげ、やっとの思いで守っているものをいともたやすく粉砕し、泡沫へと帰すことができる。赤子の手をひねるよりも簡単に。パンを千切るよりも手軽に。
なぜなら人は儚い。脆い。
そして全ての生き物は等しく、弱者の上に立つ強者でいたがるものなのだ。どんな善人であっても。そもそも善人足り得るものがそれらを振りまけるのは、彼らもまた己を強者の位置に置いているからに他ならない。他人に優しくするためには自身に余裕が必要なのだ。ガユスはそう思う。
優しくないと言われるかもしれないが、優しくなくて結構だと思った。
中途半端な優しさを振りまくくらいならば、始めから優しくしない方がいいのだ。
そういう意味では、今回相対したあの混沌はどちらも、振り切れた優しさを有していた。強者故の優しさを。
青色は全ての人々の幸福を願って。
灰色は愛する我が子たちのために。
人間的に考えればどちらも正しいのかもしれない。そう、そこにあった想いだけに目を向けたならば、それは決して間違いなどではなかったのだ。どちらも。
ただその行動と、それらがもたらす結末に目を向けたならば、
「どちらも害悪だ」
伸ばした手を太陽に重ね、ぐ、とガユスは拳を握りしめる。
はじめから。
あのアッシェと言う少女が事務所の扉を開いたときから、どうしようもない状況に陥ったならば、自分が全ての清算をしようと心に決めていた。
柔らかな心に刃を突き立て、古傷を抉り、飴色の血が噴き出すこととなっても。それでも――――・・・・。
そこまで考えて、ガユスはゆるく首を横に振る。
感傷に浸ったところで意味はない。自分に酔いしれるだなんて寒気を通り越して吐き気すらする。
この世には、結果しか残らない。
儚い願いも想いも祈りもその何もかもは露と消え、残されるのはそれらに突き動かされた人間達が刻みつけた微かな爪痕のみ。それさえもやがては治り消え去っていく。
想いに意味はなく、感傷にも意味はない。
誰もが平等に自分にしか興味がない。
世界は平等に全てに無関心で無慈悲だ。
「……残酷だな」
思わず口をついて出た言葉。感傷に浸ったところで意味はないのだが、今日の自分は少々、いやかなり、感傷的かもしれないな、とガユスは思った。
これは何か気分転換でも見つけるべきか。そう考えた矢先のこと。
「ガユス、」
そんな彼に話しかけるのは、同僚の――――いや、新しく“相棒”となったデビッド・ヤング・ヘニング、その人。
かっちりとスーツを着こなした彼は、やや神経質そうな所作でずれた眼鏡の位置を正すと、手に持った紙束と共にガユスに近寄ってくる。
「広告の件なんですが――――」
そうして彼の口から淀みなく紡がれる言葉を聞きながら、ガユスは小さく笑む。
「ガユス? 聞いていますか?」
「ったりめぇだ。生活がかかってんだからな」
――――所詮、自分も酷く利己的な生き物なのだ。
場所は変われど変わらぬ日常というぬるま湯に浸りながら、ガユスはひっそりと自嘲した。
◆実績のロックを解除しました◆
利己的遺伝子:“生ける炎の子息”を招来する。
灰燼に帰した街を、ザルツ・フラジアージュは歩く。
歩き慣れた道は何もかもが灰へと帰ったことにより、見覚えのない道へすっかり様変わりしていた。
あそこには確かお菓子屋があったと思う。
あそこは雑貨屋、女性向けの小物を売っていた。
あそこはレストラン、偶に店主が奇妙な創作料理を客に振るまっていた。
あそこは――――・・・・
脳裏に思い描く景色のどれとも、灰の街は合致しない。胸に一つ一つ刻みつけながら、ああ、あの街はもうないのだと思い知らされる。帰る場所がまた一つ、失くなった。
左目が見せる景色、この風景を表現するならばどんな言葉がふさわしかろう? 地獄? いいや、そんな熱く苦しくおぞましいものではない。これは、
――――“虚無”。
もう一人の声が頭の中、直接響いた気がした。
「ええ、そうですね……その言葉が相応しい」
くっくっ、と目深に被ったフードの下。さながら世界を呪う魔女の如く、ザルツは笑う。
事実ザルツは自身をこの世界の膿であり、ある意味では呪いのようであり、魔女のようなものだろうと思っている。自分が持つこの“知識”は一体何人を地獄の釜の中へ突き落すことが可能であろうか?
「彼曰く半分、だったか」
空恐ろしい話だ。
この街に住んでいた人間を遥かに超える数の人間を、ザルツはたった一人で殺すことができてしまうのだから。いいや、一人ではない。
「………貴方は私、私は貴方」
そっと左目に手をかぶせ、右目で世界を見る。
ただ暗闇ばかりを映す右目、その景色の向こう、満月と白百合の幻想。思わずため息が零れそうな甘美な景色がもたらすのは心壊す知識。――――記憶。
頭を振り、ザルツは瞼の裏に焼きついた幻想を振り払う。それに浸るのは後でいい。今、ここにいる、その理由を忘れてはいけない。
「セント、」
呼んだところで返事があるはずもない。
セント・フラジアージュは、死んでしまったのだろうから。
「セント……」
それでも呼ぶ。彼を呼ぶ。呼んだら返事が返ってくるかもしれないだなんて、くだらない夢を見られるほど子供ではなくなってしまったけれども、呼ばずにはいられなかった。
大切な血を分けた肉親。
大切な、家族。
「……置いて行かないって、言ったじゃない…おにいちゃん」
掃き溜めのような路地裏で身を寄せ合った子供時代。
自身より少し大きいだけの、小さな体が抱きしめてくれたあの温もりを忘れはしない。必死でザルツのため、そして自身が生きるため、食料をくすねて来た彼が隠した傷を忘れはしない。碌な栄養も摂れないために弱っていくザルツに涙ながらに謝り続けた彼を、忘れはしない。
忘れはしない。
「……私、やらなくちゃいけないこと、あるんだ」
灰に帰った街の、どこかに混じる兄の灰へ向けて。
「…先にそっちで待っててね、おにいちゃん」
同じところへ逝けるかは分からない。それでもザルツは兄へ、哀願する。
「今度はずっと一緒に……いたいなぁ」
全てが終わった後にやるべきことは、とうの昔に決まっている。
◆実績のロックが解除されました◆
幻想交響曲・第4楽章「断頭台への行進」:Fradgiirzu兄妹の片方が生存し、片方が死亡する。
千切れ飛んだ意思を統合しようと働きかける。青い輝きの一つ一つに散らばされた意思に、命令を下す。
集い、
戻れ、
と。
その意思に応じ、輝きたちは一か所へ集まり始める。集まった輝きの一つ一つが結合を始める傍から崩壊し、何度目かの霧散。何度も何度も同じことを繰り返しはするものの、一向にそれらが何かの形を作るまでは至らなかった。
そうしているうちに、青い輝きが舞う幻想的な光景へ二人の人間が足を踏み入れる。
一人は銀色の髪に、少々薄い紫のかかった銀色の瞳を持つ男。口の端をさも愉快げに吊りあげ、さながら楽園を犯す悪漢のような下卑た悪意を纏ってそこに立っていた。
もう一人は血をこぼした暁のように紅い髪に、不思議な輝きを帯びた青い瞳を持つ子供。ふっくらとした、やや青ざめている薄桃色の唇は形がよい。それでいて、子供自身が纏っている雰囲気はどこかアンニュイなものであり、それらが子供の人目惹く美貌と相まって子供の存在をどこか神秘的なものに見せていた。
対照的な雰囲気を纏う二人は、周囲に散らばる青い輝きにさっと目をやる。
「見事にバラバラだねぇ」
愉快そうに男が喉を鳴らした。
「綺麗ですね、いつか東洋の本で読んだ蛍の輝きのよう」
さながら死した生物のような、生の輝きが感じられぬ淀んだ瞳で周囲を眺めながら、子供はそう呟いた。
「大丈夫? 目が死んでるよ?」
「………帰宅した時の“仕置き”を考えて死にたくなってる」
「嫉妬深い彼氏?」
「……どちらかというと心配性かな」
「そう。まあどちらにせよ、僕のせいにすればいいさ」
からから笑いながら、男はさらに一歩、青い光の中へ踏み込む。男に追従するように、子供も一歩踏み込んだ。
粉雪のように舞い落ち、蝶のようにふわりと舞い上がる青い光の一つに、男が手を伸ばす。すぅ、と青い光は“意思”を持ってその手を避けた。避けられたことに男は一瞬目を瞬かせたが、次の瞬間にはけらけらと滑稽なコメディ映画でも見たかのように腹を抱えて笑いだした。
「笑えるー」
一頻り笑ったところで男は笑みを引っこめ、舞い散る青い幻想を捕まえ握りつぶす。そっと手を開けば、隙間からさらさらと銀色の粉が地面へ向けて落下した。粉は風に浚われ、地面に落ちきる前に吹き流されていく。流された粉が青い輝きを帯び始め、集い、そして再び同じような青い光が生まれ、群居するそれらに混じった。
「やっぱ殺すのも配下にするのも無理か」
「そのつもりだったんですか?」
「可能だったら? まあ今は無理だと証明されたけど」
男は肩をすくめる。
「流石“青”。そんじょそこらの混沌とは一線を画す」
皮肉たっぷりの笑みを浮かべながら、男は集まろうとしては離散する青い輝きの動きを視線で追う。
「ま、一線画しても此処までコテンパンにやられちゃったら、流石にそう簡単には戻れないみたいだけど?」
「元より本体ではありませんしね」
「本体!? そんなの破壊しちゃったら大惨事どころじゃないよ!!」
「知ってます」
何を馬鹿なことを言っているの、と子供の言葉に男はわざとらしく大袈裟に驚いて見せた。そんな男に、子供は鬱陶しそうな顔をする。
しかしながら、男の所作は仰々しく道化じみたものであったが、その言葉はあながち嘘でもない。
もしも彼らが、そしてあの生ける炎の子息が破壊したものが青の本体であったなら……。
仮定であったとしても、恐ろしい話であった。
恐らくこの世の生きとし生ける全ての存在が、一瞬にして地獄かはたまた天国か、どこへ逝くかはさておいて、死に絶えるに違いなかった。生き延びるものがあるとするならば、それは男のように、俗にいう“神”というカテゴリーに分類される存在のみであろう。あるいは“不死”と呼ばれる性質を持ちうる者たちか。いずれにせよ、まともな生き物や“死”の口吻(くちづけ)から逃れられぬものが生きながらえることはない。
「白痴様も大層なものをお創りになったものだよね」
男は再度、青い光の一つを握りしめる。今度は先ほどの所作よりも幾分か優しく、思いやりの感じられるものであった。それは男の性格を考えれば、単なる気のせいか、あるいは本当に思いやりからのものであるならば、気まぐれによるものであったのだろうけれど。
「まさかまさか……“この星そのもの”を神格化するとは御見逸れしたよ。何考えてるんだろ、あの神」
「考えるだけの知性もないでしょう、言葉通り。そもより大半の神々は本当の意味での人格や魂は持ちえないらしいですし。貴方たち、這い寄る混沌という例外はさておいて」
「まあね」
頷いて、男は手を開く。青い光は手が開かれるや否や、男の手から逃げ出し、再び集まろうとしては離散を繰り返す輪の中へと戻っていった。その様子を眺め男は、当分はあの調子のままだろうと見当をつける。まともな形を取り戻すのはいつになるだろうか。
明日かもしれない。明後日かもしれない。
一週間後かもしれないし、一ヶ月後、あるいは一年後かもしれない。
はたまた十年経とうとも戻るのは困難か。
いずれにせよ、
「待ってやる義理はないんだけど」
笑みを深め、男はぴん、と左手人差し指を立てる。
そのままくるくると、珈琲をかき混ぜるように人差し指で空気をかき混ぜる。指先から零れ落ちる銀色の残滓が男のなぞった空気に残り、円を描く。
くる、くる、くる、くる。
やがて銀の円の中央に、ぽつん、と針で刺したような小さな“穴”が開く。穴は男が指を回すごとに広がり、やがてそれは銀の円と同じサイズにまで広がった。
すると、漂っていた青い光が吸い寄せられるように一つ、また一つと円の内側へ、穴の中へと入っていく。
全ての輝きが穴の中へ収まると、男は円を描くのをやめる。
「はーい、回収完了ー」
乱雑に男の手が振られ、銀の残滓が霧散。同時に、円の中、ぽっかりと口を開いていた穴も霧散した。
後には男と子供だけが残される。
「さて、目的も果たしたし……次の遊び、はじめようか」
「……危ない人」
「ふふふ、馬鹿だなぁ。遊びも人も、危ないほど面白いんだよ」
半ば独り言のように吐き出された子供の言葉に、男――――フラクシヌス・エクスケルシオルは嘲笑った。
「“火遊び”くらいのスリルがちょうどいいのさ!! 彼みたいにね!!」
◆実績のロックが解除されました◆
蛍狩り:Fraxinus Excelsiorが誕生し、かつ、Azureが深手を負った状態でシナリオをクリアする。
綺麗な部屋。清潔なベッド。窓ガラスから見える空は青い。
あの暗い地下とは何もかも正反対の場所であるのに、この部屋の目的はその実、地下と変わりないのだ。
即ち、この部屋はリーベを閉じ込めるための檻であった。
窮屈さは感じない。寂しさも、苦しさも感じることはない。相手と環境が変われば、同じことであっても心中とは様変わりするものなのか、とリーベは小さく笑む。
檻の形をした苦痛と、檻の形をした愛と。
同じ形であっても異なるそれ。
「愛されてるって幸せだねぇ」
しみじみと呟く言葉に返事を返す者はいない。
ひとつ不満を挙げるとするならば、まさしくそれであろう。
この部屋へリーベを閉じ込めた“主人”は忙しい。代理とはいえ、一つの組織を率いるトップである以上、それは致し方のないことなのであろう。
分かってはいる。分かってはいるが、理解することと、それにどのような感情を抱くかは全く別なのだ。
「ヴァルくんに会いたいなぁ」
不満げに愚痴を零す。やはり返答はない。
いよいよをもって退屈がリーベを殺そうと忍び寄る。退屈ごときで死ぬわけはないし、死ぬつもりも全くありはしないが、心中を表す言葉があるならばまさしく『退屈で死にそう』であった。こうなってくると、苦痛に満ちてはいても、何もされていない時間の方が少なかった地下が恋しくなってくるというものである。人間とは現金だ。もっとも、痛いことは嫌いなのだが。自分は断じてマゾヒストではない。
ごろごろとベッドの上、どうしようもない暇を持て余す。
「ひまぁ」
「ヴェスはヒマなの?」
「ふぁ」
唐突に掛けられた声。ぴたりと動きを止め、視線を声が聞こえたあたりへ素早く向ける。
瓜二つの顔がそこに佇んでいた。
にこにこ。幼子が浮かべる笑みを浮かべ、歩きとスキップの中間くらいの足取りで真っ直ぐにベッドまで近寄ってくる。
「ヴァルくん」
「ヴェスに会いに来ちゃった」
にこにこ、にこにこ。
無邪気な子供さながらと言った笑みで、ぎぅ、と抱きつかれる。
「会いに来てくれたの? 嬉しいな」
「でしょでしょ、もっと喜んで、ヴェス」
「うん、喜ぶ喜ぶ」
軋み痛んでいる髪へ手櫛を通す。時折突っかかり引っ張りそうになるたびに手を止めて、指先を蠢かせながら絡まったそれを可能な限り優しく解き、上から下へ。頭頂部から毛先へ。何度か繰り返していると通りが良くなってくる。
「えへへー」
されている側は満足げな笑みを浮かべ、している側も楽しげな笑みを浮かべる。
そっくりな顔がどこか似たような笑みを浮かべている様は、まるで鏡のよう。事実、二人は鏡なのだ。
「俺ね、」
「うん?」
「ヴァルくんがいなきゃ死んじゃうんだ」
「なんだ、そんなの当たり前。だって俺もヴェスがいなきゃ死んじゃうもん」
「そっか」
リーベの言葉に彼は当然だ、と言わんばかりに笑う。リーベも笑い返した。
「うん。ねぇねぇ、」
そして今度は彼が口を開く。
「うん?」
「ヴァルくんがいなきゃ俺死んじゃう」
「大丈夫、俺もヴェスがいないと死んじゃう」
「そっか、良かった。これってあれだよね、きょーいぞん、ってやつだよね」
「そうだね」
笑いあい頷きあう同じ顔。
かつて“そうあれかしと願われ片割れを演じた鏡”と、“自身が【兄か弟か(どちらか)】分らなくなった少年”。
実像と鏡像は限りなく似ており、しかしながらその実、別物(逆様)であるように。鏡像と実像は別物(逆様)でありながら、限りなく似ているように。
似ているようで異なり、異なっているようで似ている二人。
実像失ければ鏡像は生まれず、鏡像失くして実像とは言えず。
「ねえ、」
「うん?」
「結局俺はどっちなのかな?」
「どっちでもいいじゃない。俺達、どっちにもなれるんだから」
「ああ、そうか、そうだね」
合わせ鏡のその向こうにあるのは――――・・・・
◆実績のロックが解除されました◆
Twins In The Mirror:GailとLiebeが狂気に陥ったままの状態で本編をクリアする。
大規模火災により街が焼失
12月25日未明、■■■■にて大規模な火災が発生。街一つ丸々焼失するという事件が起こった。火災の原因については現在のところ不明だが、テロリストの仕業ではないかということで調査が進められている。
この事件を受け、軍による救助隊も派遣されたが、生存者については絶望的だという。
この事件を受け、軍による救助隊も派遣されたが、生存者については絶望的だという。
――――とある新聞の一面記事より抜粋
神の奇跡? 火災を生き延びた生存者達
12月25日、■■■■を襲った恐ろしくも痛ましい火事の生存者が発見されたことを軍が発表した。
「街で暮らしていた人間と比較すれば遥かに少ない人数であるが、火災の規模を考えればこれだけの生存者がいたことは奇跡に近い」と、会見を開いた■■■■氏は語る。
今後も引き続き生存者がいないか捜索を続けるとともに、保護された生存者たちから、火災について詳しい事情聴取などを行っていくつもりだとの方針を氏は発表した。
「街で暮らしていた人間と比較すれば遥かに少ない人数であるが、火災の規模を考えればこれだけの生存者がいたことは奇跡に近い」と、会見を開いた■■■■氏は語る。
今後も引き続き生存者がいないか捜索を続けるとともに、保護された生存者たちから、火災について詳しい事情聴取などを行っていくつもりだとの方針を氏は発表した。
――――とある新聞の一面記事より抜粋
赤い月と燃え盛る太陽、世界終焉の序曲か
12月25日、■■■■を襲った恐ろしい事件の生存者から、筆者は非常に興味深い話を伺うことができた。
曰く、炎が街を包む前、赤く巨大な月が地上めがけて落下してきていたのだという。街の人間の大半はそれを見てショックを受け、意識を失ったり精神的におかしくなり、病院へ担ぎこまれるものが相次いで居たという。(取材に応じてくれた生存者は街の精神病院で勤務していたらしい)
また、それ以外にもこの街一の金持ちであったアレイスト・ガーランド氏の邸宅から何か青白い光が天めがけて真っ直ぐ伸びる様も目撃したと彼は語ってくれた。
今現在、国が調査中の火災の原因について尋ねたところ、彼は「あの火災はテロリストの仕業なんかじゃない。私は見たんだ。燃え盛る太陽が突然、街の上空に現れたのを…!!」と酷く怯え、それでいながら興奮を隠しきれぬ様子で口早にそうまくしたてた。
取材はその後彼の興奮が収まらず、医者を呼んで鎮静剤や鎮痛剤を注射してもらう事態にまで発展したため、一時中断。
後日、日を改めて彼の元を訪れたところ、彼は既に帰らぬ人となっていた。医者や看護婦に詳しい話を聞いたところ、筆者が取材を切りあげ立ち去った後、どうにか興奮状態から落ちつかせることはできたものの、全身が焼けただれるほどの重度の火傷の影響か熱をぶり返し、昏睡状態に。その後、熱は下がったものの意識が戻ることはなく、そのまま帰らぬ人となったとのことだ。
ぱたり、とスクラップブック――もとい革張りの手帳――が閉じられる。安楽椅子に腰かけた老人は、深々と溜息をついた。
「人間ちゅう生きモンはほんま、好き勝手よお騙りたがるんやね」
呆れ半分、感心半分。枯れ枝のよう細い手が、挟み込んだ記事のおかげで分厚くなっている手帳の表紙を撫でる。
「なんでこないな、自分たちには理解でけへんからって都合よう解釈でけるんでっしゃろ。それこそ理解でけへん」
老人は心底不思議そうに首をかしげる。
独特のイントネーションで紡がれる英語は、耳慣れない者にとっては大層聞き辛いものであった。手帳を持参した“客”も例外ではなく、困ったように頬を掻きながら頭の中で老人の言葉を咀嚼する。
「えーっと……つまり、理解できないことを好き勝手解釈して広めていることにご不満なんでしょうかね…?」
「不満はあらしまへんで。うちが関わっとるわけじゃあらしまへんさかい。たや、ここまで誇大妄想でける頭に感心したはるんどす。」
「ううん……貴方の言葉は、貴方の訛りもあって解釈するのに時間がかかりますね」
「ほんまに使えへん頭持っとるんどすなぁ、あんさん。オツムんええ頭と交換どした方がええんではおまへんどすか?」
「ははは……」
全てが全て理解するには至らずとも、馬鹿にされているということは雰囲気と言葉のニュアンス、拾い上げた単語から感じ取り、客は苦い笑みを零す。
噂通りの偏屈で厭味な老人であった。正直、取材など放って早々に帰りたい気持ちの方が今は強い。が、そういうわけにもいかない。これも仕事であるし、何より、あの火災についてより詳しいことを知りたいならば、この老人の元を訪ねるのが一番だ、とオカルトに精通しているらしい友人から聞いたのだから。
男は、オカルトなど信じてはいなかった。だが友人に対してはある程度の信頼を置いていた。大抵の場合、彼の言葉を聞いていれば万事がうまくいったし、上手くいかずとも悪い結果へ転がったことは一度もなかった。『持つべきものは友』とはよく言ったものである。
「ほして、こないなモン持ってきて、結局うちになんを聞きたかったんどすか?」
手帳を客に投げ渡しながら、老人が首をかしげる。
「ああ……その事件について、貴方の意見を伺いたく」
「なんや、しょーもない用事どすなぁ」
はんっ、と老人が鼻で笑う。男は老人を殴りたい衝動を堪え、ただひたすら彼の言葉を甘んじて受けた。
「ほして?」
「はい?」
「うちん意見を聞いてどないしはるんどすか?」
一対の瞳が何もかも見透かすように、男を見据える。
不思議な色合いの瞳は光の加減によっていかようにも変わり、見つめていると吸い込まれてしまいそうになるほどの美しさを持っていた。これが本当に年老いた男の瞳だろうか、と思えるほどそれは美しい。あの瞳を手に入れることは数多ある宝石を手に入れるよりも素晴らしいことのように思え、それでいて罪深いことのようにも思えた。
不意に、ふっ、と老人が笑う。それと同時に客は、はっ、と我に帰った。
「つまらん」
老人は笑みを引っこめ、鼻を鳴らした。視線が男から逸らされ、店内へ向けられる。
「 、」
老人が一言、何事かつぶやく。すると、少し離れたところで本を読み耽っていた子供が顔を上げた。
「うん?」
「お客はんがお帰りになるそうどす。お見送りしなはれ」
顔を上げた子供に、老人はつまらなそうにそう指示する。それを聞いた子供は一つ頷くと本を閉じ、立ちあがって男の傍まで寄って来た。
そら恐ろしいほど人目を惹く子供であった。
一対の青い瞳に、病人のごとく白い肌。薄桃色の唇は少々血色が悪く青ざめてはいるものの、ふっくらと膨らんで形が良い。ゆるく持ち上げられた口の端は微笑んでいるようにも、うすら笑いをしているようにも見えた。黒々としたつややかな髪は、夜闇を溶かしこんだかのよう。今はまだ子供であるが、もしもその美しさを保ったまま成長したならば――――背筋がぞっとするほどの美人へ育つに違いなかった。
「どうぞこちらへ」
男のどこか呆けたような顔つきも、頭のてっぺんからつま先までまじまじと舐めるように観察する視線も意に介さず、子供は淡々とうすら笑いを浮かべたまま男を店の出入り口へ導こうとする。
「あっ、いえ、まだお話が」
「どうぞお帰りを」
慌てて言い募ろうと縋るような視線を老人に向けるも、ぴしゃり、と一言の元、切り捨てられる。此処で帰るわけにはいかない、と男は子供をはねのけカウンターへしがみつくように老人へ顔を寄せた。
「お願いしますよ、俺の生活もかかっているんです」
「生活、なぁ……」
老人はどこか鬱陶しそうな視線を男へ投げかける。面倒くさそうとも、答えたくなさそうとも受け取れる態度。どちらにせよ、男にとってそれは非常に困る話であり、なんとしてもネタ話の一つや二つ、ひっさげて帰らなくてはならなかった。
そんな、男の必死な態度が功を奏したのか、それとも単なる老人の気まぐれか。
老人は少々考えるような仕草を見せた後、不意に「そんなら、こうしまひょ」と口を開く。ぴん、と立てられた人差し指が、男の眼前に突きつけられ、自然と視線がそこへ向かう。
「うちん頼みを一つ聞いてくれたなら、そん頼みを聞いてあげまひょ」
「頼み、ですか?」
「そうどす」
老人は深く頷き、男にその“頼みごと”を話して聞かせ始めた。
* * *
「そんなことでお話していただけるのでしたら」
老人の話を聞いた男は一もニもなく頷いて、店から飛び出していった。
「良かったのかな? あんなお願い事して」
子供が呆れたような声音で問う。それに、老人はけたけたと笑いながら頷いた。
「ええんや。二度と彼はこん店には来ーひんでっしゃろ」
「来ないだろうね……」
――――だって死んでしまうわけだし。
子供の言葉に老人はにぃ、と笑みを深めた。
「何や不満が?」
「別に。俺と彼は赤の他人だしね」
眼鏡の奥で目を細めた老人の視線を受けながら、子供は肩をすくめる。
「そんなら別にええでっしゃろ。それより膝が冷えるさかい、こっちゃへおこしやす」
ちょいちょい、と老人が子供へ手招きをする。招かれるまま子供が近寄れば、ひょい、と老人の膝の上へ乗せられた。
元より子供自身、平均より体躯が小さいのもあるかもしれないが、それにしたって軽々と持ち上げる辺り、この老人は見た目以上に力があるようだった。
子供を膝に乗せ、老人は人形でも愛でるかのようにその髪を梳く。子供は特に抵抗するでもなく大人しく、手近にある本へ手を伸ばし、活字の世界へ没頭するのであった。
可哀想な男は子供の言葉通り、もう二度とこの店へ現れることはなかった。
曰く、炎が街を包む前、赤く巨大な月が地上めがけて落下してきていたのだという。街の人間の大半はそれを見てショックを受け、意識を失ったり精神的におかしくなり、病院へ担ぎこまれるものが相次いで居たという。(取材に応じてくれた生存者は街の精神病院で勤務していたらしい)
また、それ以外にもこの街一の金持ちであったアレイスト・ガーランド氏の邸宅から何か青白い光が天めがけて真っ直ぐ伸びる様も目撃したと彼は語ってくれた。
今現在、国が調査中の火災の原因について尋ねたところ、彼は「あの火災はテロリストの仕業なんかじゃない。私は見たんだ。燃え盛る太陽が突然、街の上空に現れたのを…!!」と酷く怯え、それでいながら興奮を隠しきれぬ様子で口早にそうまくしたてた。
取材はその後彼の興奮が収まらず、医者を呼んで鎮静剤や鎮痛剤を注射してもらう事態にまで発展したため、一時中断。
後日、日を改めて彼の元を訪れたところ、彼は既に帰らぬ人となっていた。医者や看護婦に詳しい話を聞いたところ、筆者が取材を切りあげ立ち去った後、どうにか興奮状態から落ちつかせることはできたものの、全身が焼けただれるほどの重度の火傷の影響か熱をぶり返し、昏睡状態に。その後、熱は下がったものの意識が戻ることはなく、そのまま帰らぬ人となったとのことだ。
――――とある雑誌の記事より抜粋
ぱたり、とスクラップブック――もとい革張りの手帳――が閉じられる。安楽椅子に腰かけた老人は、深々と溜息をついた。
「人間ちゅう生きモンはほんま、好き勝手よお騙りたがるんやね」
呆れ半分、感心半分。枯れ枝のよう細い手が、挟み込んだ記事のおかげで分厚くなっている手帳の表紙を撫でる。
「なんでこないな、自分たちには理解でけへんからって都合よう解釈でけるんでっしゃろ。それこそ理解でけへん」
老人は心底不思議そうに首をかしげる。
独特のイントネーションで紡がれる英語は、耳慣れない者にとっては大層聞き辛いものであった。手帳を持参した“客”も例外ではなく、困ったように頬を掻きながら頭の中で老人の言葉を咀嚼する。
「えーっと……つまり、理解できないことを好き勝手解釈して広めていることにご不満なんでしょうかね…?」
「不満はあらしまへんで。うちが関わっとるわけじゃあらしまへんさかい。たや、ここまで誇大妄想でける頭に感心したはるんどす。」
「ううん……貴方の言葉は、貴方の訛りもあって解釈するのに時間がかかりますね」
「ほんまに使えへん頭持っとるんどすなぁ、あんさん。オツムんええ頭と交換どした方がええんではおまへんどすか?」
「ははは……」
全てが全て理解するには至らずとも、馬鹿にされているということは雰囲気と言葉のニュアンス、拾い上げた単語から感じ取り、客は苦い笑みを零す。
噂通りの偏屈で厭味な老人であった。正直、取材など放って早々に帰りたい気持ちの方が今は強い。が、そういうわけにもいかない。これも仕事であるし、何より、あの火災についてより詳しいことを知りたいならば、この老人の元を訪ねるのが一番だ、とオカルトに精通しているらしい友人から聞いたのだから。
男は、オカルトなど信じてはいなかった。だが友人に対してはある程度の信頼を置いていた。大抵の場合、彼の言葉を聞いていれば万事がうまくいったし、上手くいかずとも悪い結果へ転がったことは一度もなかった。『持つべきものは友』とはよく言ったものである。
「ほして、こないなモン持ってきて、結局うちになんを聞きたかったんどすか?」
手帳を客に投げ渡しながら、老人が首をかしげる。
「ああ……その事件について、貴方の意見を伺いたく」
「なんや、しょーもない用事どすなぁ」
はんっ、と老人が鼻で笑う。男は老人を殴りたい衝動を堪え、ただひたすら彼の言葉を甘んじて受けた。
「ほして?」
「はい?」
「うちん意見を聞いてどないしはるんどすか?」
一対の瞳が何もかも見透かすように、男を見据える。
不思議な色合いの瞳は光の加減によっていかようにも変わり、見つめていると吸い込まれてしまいそうになるほどの美しさを持っていた。これが本当に年老いた男の瞳だろうか、と思えるほどそれは美しい。あの瞳を手に入れることは数多ある宝石を手に入れるよりも素晴らしいことのように思え、それでいて罪深いことのようにも思えた。
不意に、ふっ、と老人が笑う。それと同時に客は、はっ、と我に帰った。
「つまらん」
老人は笑みを引っこめ、鼻を鳴らした。視線が男から逸らされ、店内へ向けられる。
「 、」
老人が一言、何事かつぶやく。すると、少し離れたところで本を読み耽っていた子供が顔を上げた。
「うん?」
「お客はんがお帰りになるそうどす。お見送りしなはれ」
顔を上げた子供に、老人はつまらなそうにそう指示する。それを聞いた子供は一つ頷くと本を閉じ、立ちあがって男の傍まで寄って来た。
そら恐ろしいほど人目を惹く子供であった。
一対の青い瞳に、病人のごとく白い肌。薄桃色の唇は少々血色が悪く青ざめてはいるものの、ふっくらと膨らんで形が良い。ゆるく持ち上げられた口の端は微笑んでいるようにも、うすら笑いをしているようにも見えた。黒々としたつややかな髪は、夜闇を溶かしこんだかのよう。今はまだ子供であるが、もしもその美しさを保ったまま成長したならば――――背筋がぞっとするほどの美人へ育つに違いなかった。
「どうぞこちらへ」
男のどこか呆けたような顔つきも、頭のてっぺんからつま先までまじまじと舐めるように観察する視線も意に介さず、子供は淡々とうすら笑いを浮かべたまま男を店の出入り口へ導こうとする。
「あっ、いえ、まだお話が」
「どうぞお帰りを」
慌てて言い募ろうと縋るような視線を老人に向けるも、ぴしゃり、と一言の元、切り捨てられる。此処で帰るわけにはいかない、と男は子供をはねのけカウンターへしがみつくように老人へ顔を寄せた。
「お願いしますよ、俺の生活もかかっているんです」
「生活、なぁ……」
老人はどこか鬱陶しそうな視線を男へ投げかける。面倒くさそうとも、答えたくなさそうとも受け取れる態度。どちらにせよ、男にとってそれは非常に困る話であり、なんとしてもネタ話の一つや二つ、ひっさげて帰らなくてはならなかった。
そんな、男の必死な態度が功を奏したのか、それとも単なる老人の気まぐれか。
老人は少々考えるような仕草を見せた後、不意に「そんなら、こうしまひょ」と口を開く。ぴん、と立てられた人差し指が、男の眼前に突きつけられ、自然と視線がそこへ向かう。
「うちん頼みを一つ聞いてくれたなら、そん頼みを聞いてあげまひょ」
「頼み、ですか?」
「そうどす」
老人は深く頷き、男にその“頼みごと”を話して聞かせ始めた。
* * *
「そんなことでお話していただけるのでしたら」
老人の話を聞いた男は一もニもなく頷いて、店から飛び出していった。
「良かったのかな? あんなお願い事して」
子供が呆れたような声音で問う。それに、老人はけたけたと笑いながら頷いた。
「ええんや。二度と彼はこん店には来ーひんでっしゃろ」
「来ないだろうね……」
――――だって死んでしまうわけだし。
子供の言葉に老人はにぃ、と笑みを深めた。
「何や不満が?」
「別に。俺と彼は赤の他人だしね」
眼鏡の奥で目を細めた老人の視線を受けながら、子供は肩をすくめる。
「そんなら別にええでっしゃろ。それより膝が冷えるさかい、こっちゃへおこしやす」
ちょいちょい、と老人が子供へ手招きをする。招かれるまま子供が近寄れば、ひょい、と老人の膝の上へ乗せられた。
元より子供自身、平均より体躯が小さいのもあるかもしれないが、それにしたって軽々と持ち上げる辺り、この老人は見た目以上に力があるようだった。
子供を膝に乗せ、老人は人形でも愛でるかのようにその髪を梳く。子供は特に抵抗するでもなく大人しく、手近にある本へ手を伸ばし、活字の世界へ没頭するのであった。
可哀想な男は子供の言葉通り、もう二度とこの店へ現れることはなかった。
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たぬきじじい:老人に上手い具合にあしらわれる。
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