PCより
あちらとこちらの境界線
退院後、職場に顔を出すと色々な人と会話する機会を得た。
心配する人、興味本位の人、怒る人、軽く涙する人、理由も様々。
まぁ、日帰り旅行に出かけて結果、1月近く入院ともあればこうなる。
年季浅い記者の私としては今期の査定がとても怖い。
長期療養に査定を仄めかす上司は、今回の件、簡単に記事に纏めてみろと言う。
という訳で先程からパソコンの前で思案している私が居た。
あった事をつらつら書くのはまったく持って苦ではない。
問題なのはその内容。真実を書けば上司は多分ラノベの一説か何かかと一笑に付すだろう。
色々と思案しつつも、4時間ほどで原稿を書き上げ纏めた。
その内容は今回の事件とは全く無関係の面白くもない内容だった。
梶一家の件を表沙汰にすることで注意喚起を呼びかけ、田中さんみたいな犠牲者をこれ以上増やさないようにする。
多分田中さんもそれを望んでたのかもしれない。その為に危険を冒して私達に貴重な情報を与えたのかもしれない。
だが、私は適当な話をでっちあげ、上司に落胆の溜息を一つ吐かせるに終わった。
私は慇懃無礼に黙礼すると自分のデスクへとそそくさと戻る。
自席に腰掛け、暫しの思案に浸る。
真実を隠したのは私の主義と反するところだ。記者としては常に真実に向かなければならない。
だが、小煩い私の主義は、今回の私の隠蔽工作を何故か見逃した。
一つは本件がこの世のものならぬ存在により引き起こされた事件であること。
もう一つは、私が彼女(さやか)にした「約束」。この件を他言しない「約束」。
私の言をさやかは信じてはくれなかった。それも仕方ない。
人と妖怪との約束話で大概は人間がその約束を裏切って妖怪を傷つけたりする。
それ故に、人が信じれないのも無理はない。捕食対象だというのも有るだろう。
だが、たまには例外があっても良いのじゃないかとも思う。
本件をこの世に公開したところで、彼女らは未だ存在するのだ。
死にそうな目にあいながらも、彼女らを恐れ憎む事が出来きれない私は、彼女らに魅かれたのだろうか?
実際には狂気の深遠に片足を踏み込んでいるのではないだろうか?
梶家で出された昼食の味を反芻しつつ、あの幻のような事件を思い起こす。
あの事件を幻と思う事こそ、あちらとこちらの境界線なのかも知れない。
私とあの少年達は、提灯の灯火を支えに行き来したのだ。
軽く嘆息する。さやかとの別れ際を思い出す。
あの子は最後まで私らを獲物として追っていた。
私はどうなのだろう?あの子を狩猟者として捉えれていただろうか?
思案から抜け出し、机の隅の写真立てを一瞥する。
そこには、さやかの変容直前を収めた写真が1枚。
デジタルカメラに残されていたはず居の写真データは全て消失していた。
だが、不思議な事に、一眼レフの最後の写真。それだけは残されていた。
写真に写った変容直前のさやかの顔は、複雑な表情を含めた笑顔だった。
写真を写したその時の私の顔も、多分似たようなものだったんだろう。
これもまた、あちらとこちらの境界線なのだろうか?
PLより
3日間お疲れ様でした。
深夜卓は実はあまり経験がなく、卓が始まるまでの時間の長さが妙に新鮮でした。
今回のシナリオはCoCと言うよりは和製ホラー的な色の濃いシナリオで、CoC以外のシステムでも行けるんではと思いました。
KP様に対する印象も既存のシナリオの所為か、前回の籠の鳥とはまた違う感じを受け、出来うるならオリジナルを見てみたい
という感を受けました。前作は色々と考えさせられる面が多々感じ、今回は割と王道的に進んだのもそれが理由でしょうか。
他参加PCの方々は本当、楽しそうにプレイされており、この辺りは見習う所かと深感銘受けました。
とはいいつつも、私も楽しかったのですが。
またいずれ機会ありましたら、これに懲りず宜しくお願い致します。
KP並びにPL諸氏、そしてNPCの方々へ、有難うございました。
備考:本シナリオ結果によるキャラクター情報変更点
SAN:75→73 目星 75→82(+7)
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