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アシュケさんの夢

アシュケさんの夢  <第1話>

 それは、今から、600年ほど昔のお話です。
 ずいぶん、古いお話ですから、もう終わった話だと思わないで下さい。
 それは今のお話です。
 人類の未来のお話でもあります。

 イタリアのローマから半日ほど歩いて行きますと、小さな、ラットと言う名の村がありました。
 その村の人たちは、生活するのに必要なものは自分たちで作りまして、自給自足の生活でした。
 その村のはずれに、アシュケさんと言います、人が住んでいました。家族は奥さんのルシータさんと、2人の女の子ども、ソフィーとカレンと4人で細々と生活していました。

 ア シュケさん宅は、家の周りに畑がありまして小麦を作り、少し離れました斜面にはブドウ畑がありました。
 鶏も20羽ほど飼っていまして、毎日、その鶏の産みます卵を食べ、小麦は粉にしまして、パンを焼いたり、クッキーを作ったりしまして暮らしていました。
 アシュケさんは手先が器用で細かい細工物が好きでしたので、いつしか町の宝石商が、金細工用の金の塊を持ってきまして、その金を、指輪や首飾りに加工します金細工をやるようになりました。
 アシュケさんは、無口で、口下手で、正直者で世渡りがヘタですから、1人で毎日毎日、金細工の仕事が性格に合っていました。
 金細工がけっこう面白いと思いまして、精を出して働いていました。
 そんな訳で、次第にアシュケさんの作ります金製品はローマで、評判の良い品になりました。

 そんなある日です。ちょっと作業場を空けました間に、作りかけの金製品が盗まれてしましました。
 それで、困りました、アシュケさんは自分の手作業で作業場に金庫を作る事にしました。
 それは、田舎の民家の金庫としましては、やや大きな金庫です。
 そのやや大きな金庫が出来上がりまして、しばらくしますと、1人の村人が、やって来まして「自分の金も泥棒に盗まれると困るから、金庫で預かって欲しい」と言って来ました。

 それを聞きましたアシュケさんは、自分も金を盗まれまして、困った事がありますから、村人の金を小麦4キログラムか大豆3キログラムで預かる事にしました。そこで、アシュケさんは「金、10g、預かりました、預かり証を持って来ましたら金は返します、アシュケ」と書きました「預かり証」を渡しました。
 それを聞きつけました、村人たちが、何人もアシュケさんのところに、小麦や大豆を持って、自分の持っています金を預けに来ました。
 しばらく、たちますと、村人たちが、預かり証は、「金、1gを預かりました」と言うように、預かり証を「小分けして欲しい」と言うようになりました。
 不思議に思いましたアシュケさんは、「何でそんな事をするのか」と聞きましたところ、「アシュケさんの発行します預かり証は何とでも交換できるから」と答えました。アシュケさんの発行します「預かり証」は、いつしか、交換出来ない物は無い程の「魔法の紙」に変化していたのです。「預かり証」で物と交換した事が無いアシュケさんは、「ナルほどなー」と感心しました。

 そんなある日の午後です。
 ローマから、何年か前に会った事のあります、ナージさんが、ふらっとアシュケさんの作業場にやって来ました。
 そのナージさんが「村の人に預かり証を貸す」事を提案しました。
 この話を聞きまして、アシュケさんは何の事か判りませんでしたが、詳しく話を聞きますと、こーです。「村の人は金庫の中にどれだけの金があるか知らないから、預かり証を手数料としまして小麦4キログラム又は大豆3キログラムで1年間、貸します」と言うのです。
 さらにナージさんが言いますには「これは人助けだ」「便利になるから村人は喜ぶ」と言うのです、また、ナージさんは「これは、だれも困らない」「だれにも迷惑はかからない」と言うのです。
 これを聞きました、アシュケさんは、誰が考えましても、これは「詐欺」とまでは、言いませんが、限りなく「詐欺」に近い事ですから、断りました。第1に、無い物を有るように偽りまして「預かり証」を貸すなんて、正直者のアシュケさんは嫌なのです。

 アシュケさんの夢   <第2話>
 ある日の朝です。
 やや離れました町の役場の徴税官が、2人、やって来まして、納めきれない程の「税」を払うよう命令しました。

 町の徴税官が来まして、今まで受け取りました、小麦と大豆を全部、納めましても、まだ足りません程の「税を払え」と命令しました。理由は「元手無しで、村人の穀物を集めている」「大きな金庫を作った」と言うのです。納入命令の穀物とは小麦を600Kgと大豆400Kgです。
 納入期限まで「税」を納めませんと、「刑務所に入る事になる」と言い残しまして、徴税官は帰りました。
 町の徴税官が「税」としまして小麦を600Kgと大豆400Kgの納入を命じまして帰りますと、入れ替わりますように、ナージさんが、再びやって来まして、金の「預かり証」を村人に貸す事を勧めました。
 ナージさんは「人助だ」「誰も困らない」「誰にも迷惑にならない」「徴税官が命令しまた税が納入できる」などと言うのです。
 さらに「預かり証」を作ったりの事務作業が、アシュケさんは苦手ですから、預り証を作る作業はナージさんが「全部引き受ける」と言うのです。
 アシュケさんは貸し出します預かり証に「サインするだけで良い」と言うのです。
 アシュケさんは、まったく気が進みませんでしたが、「税」を納める事も出来そうですし、ナージさんの「人助け」「誰も困らない」との言葉を信じまして、渋々ですが、預かり証の貸し出しに同意しました。
 アシュケさんが「預かり証」の貸し出しを始めた事を聞きつけました村の人たちは、ぽつぽつとアシュケさんの家に訪ねて来るようになりました。
 アシュケさんは、預かり証を借りたい人には、小麦ですと4kgを受け取り、大豆ですと3kgを受けとりまして、預かり証を渡しました。
 預かり証を貸しますと、「預かり証は〇〇年〇〇月〇〇日に必ず返します」と誓約書にサインしてもらいました。
 この預かり証を村の人に貸し出す仕事は、アシュケさんにとって、まったく気の進まない仕事でした。
 初めの間は、週に1人か2人でしたが、次第に尋ねて来ます人が、増えて来まして、アシュケさんの金庫の中にあります「金」の1000倍もの「預かり証」を貸し出してしましました。
 しばらくしますと、また、ナージさんがやって来まして、ラット村と周辺の村々を領地とします王様に貸し出証を貸す話を提案しました。
 それと合わせまして、隣村にもアシュケさんの「取り次ぎ所」を作る事を提案しました。

 そうこうして、います間に、また町から2人の徴税官がやって来まして、前よりさらに多くの小麦と大豆を納めるように命じて帰りました。
 そんな話ですから、益々、多くの「預かり証」の貸し出しを行う事になりました。
 その後、ローマにも取次ぎ所開設。ベニスにも取次ぎ所開設。トリノにも取次ぎ所開設。ミラノにも取次ぎ所開設。ベネチュアにも取次ぎ所開設。ナポリにも取次ぎ所開設。フィレンツェにも取次ぎ所開設。ボローニァにも取次ぎ所開設。

 そうこうしていますと、ローマの王様が「隣の国を攻めて自分の領地にしたいから、預かり証を馬車5台分を貸してほしい」と言って来ます。
 アシュケさんは、だんだん、元気が無くなりまして、寝たり起きたりのアシュケさんに代わりまして、ナージさんが、ローマの王様に2つ返事で、貸し出しを承諾しました。

 そんな頃に、隣の国のスイスにも取り次ぎ所を出す事にしましたが、ナージさんは国が違います場合は、「預かり証」を変えまして、国を超えては「預かり証」は使えないようにしました。アシュケさんは、それが何のためなのか、訳が判りませんでした。

 その内、フランスでもアシュケ取次ぎ所を開設しました。
 パリにも取次ぎ所開設。リオンにも取り次ぎ所開設。マルセイユにも取次ぎ所開設。ニースにも取次ぎ所開設。
 アシュケさんの「預かり証」の貸し出しはヨーロッパ中に広がって行きました。

 何とでも交換できます、「魔法の紙」は、いつしかヨーロッパ中で貸し出されるようになりました。
 そんな頃、誰が名前を付けたのか判りませんが、この魔法の紙は「アシュケ・ピラミット」と言う名前が付きました。
 ヨーロッパ中で「預かり証」が発行されます頃に、ラット村のアシュケさんの家の隣には立派な、4階建てのレンガ造りの「アシュケ・ピラミット本部」が出来ました。
 そのビルの中では50人の従業員さんが雇われまして、忙しく、「預かり証」が毎日毎日、作られまして、各地の取次ぎ所に発送されていました。
 その本部ビルの2階奥にはナージさんの部屋がありまして、各地から報告が来ます「預かり証」の発行状況を表示します大きなボードを眺めまして、各地の取次ぎ所に指示を出していました。
 アシュケさんは気が付きませんが、「アシュケ・ピラミット本部」のビルの玄関の上にはピカピカに金色に輝きます13段のピラミッドのマークの上に左目とその上に「アシュケ」と書かれていました。
 そんな頃、アシュケさんは体調が悪くなり、寝たり起きたりの状態になってしましました。

 アシュケさんの夢  <第3話>

 アシュケさんは相変わらず、体調が悪く、自由に動けない状態でした。
 そんなアシュケさんを見て、奥さまのルシータさんと娘のソフィーとカレンは泣いて「預かり証の発行」の商売から手を引く事を言いました。

 ナージさんは、ローマの王様と隣国の王様が戦争を始めますと、両方の王様に大量の預かり証を貸し出しました。
 ナージさんは、王様が戦争を始めますと、より多くの預かり証が必要になりますから、いつしか、ナージさんは王様同士の戦争をケシカケまして、隣同士の王様をケンカするように仕向けていきました。
 それも「戦争はデカければデカイほど良く」、「戦争は長ければ長いほど良い」事に気が付きました。
 いつしか、ヨーロッパ中の王様は、ナージさんのご機嫌を損ねますと、王家の存続が出来ない状態になりました。
 それを良い事に、ナージさんはどこの王様にも預かり証の「独占発行権」を約束させました。
 それまでありました「アシュケ・ピラミット」の取次ぎ所を、あたかも王様が「預かり証」を発行しているかのように、王様の名前を付けました「預かり証」に変えました。

 ナージさんが一番心配します事は、元々、無いものを貸し出している「詐欺師の商売」「虚構の商売」ですから、村々の人がアシュケ・ピラミットは「ただの紙切れだ」と言い出す事です。
 そこで、ナージさんはヨーロッパ中に、そのような事を言い出す人を探し出します秘密組織を作りました。
 もし、「預かり証の金は無い」と言うような村人がいますと、その人はおろか、親兄弟からおじさん、おばさんに至るまで、ある時には、その村全体にアシュケ・ピラミットの貸し出しを即日停止しました。
 それだけでは、「預かり証の金は無い」のウワサが広がると困りますから、スイスのバーゼル市に「信用不安対策所」を作りました。
 ここにはレンガに金箔を貼りまして、500個の「見せ金」(みせがね)を用意しまして、ヨーロッパのどこで信用不安が出ましても、即日、馬車でこの「見せ金」を運びまして、村人を安心させました。
 このように、アシュケ・ピラミットは最高権力者の王様の上に、「預かり証の独占発行権」を武器に見えない「闇の権力」としまして君臨するようになりました。その姿は決して世間に判らない存在としまして最高機密にされました。
 各地の王様はナージさんの「操り人形」になったのです。

 それまでの村々の村人たちは力を合わせて、農作業に精を出し、必要な物は、物と物を交換しまして、争いなど無い社会でした、ところが預かり証が出回り出しますと、あたかも人生の目的が「預かり証の収集」に変化しました、最高の人間とは「預かり証を多く集めた人」と言うような間違った考えが支配的となってしましました。
 アシュケさんが考えていました「人助け」「誰も困らない」「誰にも迷惑にはならない」、これらは真っ赤なウソだったのです。ただ便利になった事は確かです。

 ちょうど、アシュケ・ピラミット本部がラット村から、イギリスのロンドンに移転した頃、アシュケさんは奥さんのルシータさん、娘のソフィーとカレンに看取られながら、亡くなりました。
 ラット村にありますアシュケさんの墓石の裏には、「人類は総力を上げて個人の発行します預かり証の回収を訴えます」と言う一文が彫ってあるのです、これはアシュケさんの「夢」だったのです。

 <完結>
 こんな長い文章を読んでくれてありがとう。2015年3月30日
2015年04月03日(金) 09:09:03 Modified by toronto




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