リリカル龍騎4話

「はやてちゃん、準備できたよ!」
「分かったで。エビルダイバー!」
 はやての指示とともに、エビルダイバーがギガゼールを空中に跳ね上げる。
この瞬間、ギガゼールの消滅が確定した。
「行くよ、レイジングハート!アクセルシューター、シュートォォォォォ!!」
『Accel Shooter.』
 無数の魔力弾がギガゼールへと向かっていき、そして当たる。
着弾箇所が一箇所ずつ削られ、着弾のたび穴が開き、最後にはエネルギー光以外何も残らなかった。

 片をつけ、アースラへと戻った面々。
クロノを見つけると開口一番、多少の邪悪なオーラを放ちながら、なのはが問い詰めた。
「ク・ロ・ノ・君?何であの装備の使い方教えてくれなかったのかなぁ?」
「いや、聞かずに飛び出していったのは君達だろう」
「…で、でも、それなら念話で教えてくれたって…」
「それなんだが…こちらからのミラーワールドへの念話は通じないようなんだ」
 初耳である。ミラーワールドにはジャミングの類でもかかっているのだろうか。
結局自分が悪いということを確認することになり、なのはの精神に多少のダメージができたようだ。
「…まあいい、今から説明する」
 そしてクロノはシステムの事について説明を始めた。
モンスターのデータを入れることで、ミラーワールドでの活動が可能、戦闘力の強化、モンスターデータの実体化、モンスターの気配察知が可能だという。
さらに言えば、データ化したモンスターが強ければ強いほど戦闘力の増大も大きくなるようだ。
ただし、本物のモンスターじゃない分戦闘力は劣るし、活動限界もライダーより二分短い7分55秒となっている。
「名前は何ていうの?」
「…ライダーの使うカードから名を取って『アドベント・システム』だ」
「アドベント・システム…」

第四話 『龍の再誕』

「真司…お前何回遅刻してくりゃ気が済むんだよ!」
 編集長の大久保大介が真司にコブラツイストを食らわせる。
「痛い痛い痛い!勘弁してくださいよ大久保先輩!」
「『編集長』だって言ってんだろ!」
「あ、そうでした。いだだだだ!」
 まあ、OREジャーナルではよくある事。
 
 プルルルル…ガチャ
OREジャーナルに電話がかかってくる。電話の呼び出し音を聞き、受話器を取る大久保。
「はいOREジャーナル…お、令子か」
 電話の相手はOREジャーナルの記者、桃井令子だったようだ。
『編集長、また行方不明事件です』
「何ぃ?」
『まだ一連の事件と同一のものか分かりませんけど…これから行方不明者の自宅に行ってみます。住所は…』
「ああ、分かった。ああそうだ、真司のヤツ手伝いに行かせっから」
『ええ?城戸君ですか?邪魔になるだけなんですけど…』
「いやいやいや、まあそう言わず仕込んでやってくれって。まだ見習いなんだし、俺の後輩なんだからさ」

 昨夜、また一人失踪した。
今回の失踪者の名は榊原耕一。これまでの失踪者と同様、原因や目撃者が見当たらず、部屋も密室、どうして失踪したかが分からないという状態だ。
その榊原のアパートで、真司と令子が合流する。
「令子さん!事件ですか!?場所どこです!?」
 現場で大声という、普通ならやらないようなマネをしでかす。
それを見た令子も呆れ果てているようだ。
「…バカ」
「あ、令子さん」
 令子の姿を見つけ、駆け寄る真司。
「あのねえ…現場で大声出すなって言ったのもう忘れたの?」
「あ」
 忘れていたようだ。
「…すいません」
「この間みたいに私の仕事の邪魔はしないでよ。いい?」
「分かりました」
「じゃあ、城戸君は部屋の中を調べて。許可は取ってあるから」
 そう言うと令子は周囲の聞き込みへと向かった。
真司もアパートの管理人室へと行き、鍵を開けてもらう。

「任せてください。必ず真実を突き止めて見せますから」
「頼むよ」
 管理人が榊原の部屋の鍵を開け、ドアを開く。
「部屋を片付けようにも、気味が悪くてさぁ」
 ドアを開けた瞬間に漂う異質さ。真司が部屋の中を見た時にその正体がはっきりした。
部屋にある姿が映るものすべてが新聞紙で覆われている。
食器棚のガラスや窓まで塞がれ、光も入らない、そんな状態だ。
何か分かるかと思い、食器棚の新聞紙をはがすが…何も無い。
「何でこんな事したんだろ…」
 そうして窓に向かって歩く。すると何かが足に当たった。
足元を見ると、何か四角い物体が落ちている。それを拾い上げる真司。
中に何かが入っているのを見つけ、取り出した。『SEAL』と書かれたカードだ。
「あれ?俺、これどこかで…」
 その瞬間、真司の頭の中に色々なものが飛び込んできた。
秋山蓮との出会い、ドラグレッダーとの契約、シザースやガイ、王蛇との激闘、手塚との出会いと別れ、そしてオーディンのタイムベント。
そう、真司は今、かつての戦いの記憶を全て取り戻したのである。
それと同時にモンスターの気配を示す金属音。前の戦いと同じなら、クモ型モンスターのディスパイダーが現れるはずだ。
とりあえず取り出したカードをしまい、その気配の発生源へと駆け抜けた。

 令子が榊原の部屋に行くと、もう真司はいなかった。
「…もう、戻るなら戻るって言いなさいよ」
 とりあえず部屋を後にし、車へと戻る。
そしてこの後、信じられないものを目にすることになった。
「城戸君…?」
 見ると真司が令子の車の前に立っている。
近付いて話を聞こうとするが、突如カードデッキを前に突き出す。
すると何も無い空間からバックルが現れ、それが真司の腰に巻きついた。
驚き、目をこすっている令子。
無理もない。普通ならありえないことが目の前で起こったのだから自分の目を疑いたくもなる。
だが、驚きはこれで終わらなかった。
右腕を左上に伸ばし、ポーズをとった真司が「変身!」と叫ぶ。
そしてバックルにカードデッキを装着し、変身して車の窓に消えた。
「何が起こったの…?今のは何?」
 目の前の出来事を現実として受け入れられないまま、とにかく自分の車へと歩き出す令子。
車の窓には巨大な蜘蛛と、それと対峙する真司が映っていた。

「手塚さん、もっとスピード出えへんの?」
「無理を言うな。これでもかなりのスピード違反をして走っている」
 手塚の赤いバイクに、二人の人影が乗っている。
一人は嘱託魔導師・八神はやて。もう一人は仮面ライダーライア・手塚海之。
先日占ってもらい損ねたシャマルとともに改めて占いに来ていたのだが…今回もまたモンスターの出現で占いが中断されることになった。
いつになったら占ってもらえることやら…失礼、話がそれた。
この3人のうち、ミラーワールドに入れるのははやてと手塚のみという事で、はやてをバイクに乗せてモンスターの出現位置へと移動しているところである。
ちなみに現在の速度は80km/hである。警察がいたら違反切符を切られていただろうが、幸い見つからずに目的地にたどり着けそうだ。

 ズシャアアアア…ゴスッ
「ってぇ…」
 ライドシューターを持たない真司は、モンスターの前に現れ、そして思い切り滑って近くの車に頭をぶつけた。
やはりタイムベントで時が戻っても、ブランク体でミラーワールドに入ると頭を打つのは変わらないようだ。
「…っと、やっぱりコイツか!」
 真司の予想通り、そこにいたモンスターはディスパイダーだ。
ディスパイダーの方も音と声で気付いたのか、真司の方を向く。
「よし…行くぞ!」
 そう言うと、カードデッキから一枚のカードを取り出し、バイザーに装填する。
『SWORDVENT』
 上空から長剣『ライドセイバー』が落ちてきて、そして地面に突き刺さる。
それを引き抜くと、ディスパイダーへと突っ込んでいった。
もちろん、前のようにただ振り下ろすだけだと折られてしまう。それが分かっていた真司は、ディスパイダーの足の節目を狙う。
ここなら他と比べて脆いだろう、そう考え、ディスパイダーの足の節目に突きを食らわせようとするが…
「…まあ、予想はしてたけどな」
 折られた。
ならばと言わんばかりにもう一枚のカードを取り出し、バイザーに装填。
『GUARDVENT』
 今度は盾『ライドシールド』が落ちてきて、真司の左腕に納まる。
「だあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
 武器は無い。ならば取れる戦闘手段は肉弾戦のみ。
ライドシールドを装備して左腕を補強し、渾身のパンチを繰り出す。

 ボキィッ

 嫌な音、それとともに走る激痛。
おそるおそる痛みの発生源である左腕を見ると…本来ありえない方向に曲がっていた。
「折れたァ!?」
 これはさすがに予想外。ついでに言うとライドシールドも真っ二つだ。
とにかく、これで武器は無くなり、格闘戦も通じないことが分かった。
『詰み』という奴であr…いや、まだ取れる手段はあった。
(こうなったら…使うか?封印のカード…)
 前の戦いでは使わずに破り捨てたカード『SEAL』。それはモンスターを封印するカードだ。
万策尽きた今、それを使うしか助かる道は無い…そう思われていた。
『ギャオオォォォ…』
 …その必要は無くなったようだ。

 真司はこの咆哮に聞き覚えがあった。
      それは、紅蓮の火龍。
      それは、無双龍の名を持つ魔物。
      それは、共に戦った相棒。
 その咆哮の主は『無双龍ドラグレッダー』。かつて真司と共に戦った龍のモンスターである。
「そうだ…前と同じなら、こいつが俺を狙っててもおかしくないはずだ!」
 真司は一度ディスパイダーかと距離をとり、無事な右腕で折れたライドセイバーを投げつけた。
足の一本で弾き返すディスパイダー。しかしそれで隙が出来た…モンスターと契約するには十分な隙が。
この隙に真司は一枚のカードを取り出す。それは佐野がギガゼールと契約した時に使われたものと同じカードだ。
「悪いなドラグレッダー、俺を食おうとしても無駄だよ。」
 契約のカード『CONTRACT』をドラグレッダーに向け、契約を結ぶ。
「お前の力を借りるよ。またよろしくな」
 光がおさまったとき、真司の姿が変わっていた。
銀の仮面、銀の胸当て、そして紅い鎧を纏う仮面ライダー『龍騎』となったのである。

「仕切り直しだ。いくぞ!」
 そう言って一枚のカードを取り出し、ドラグバイザーへと装填しようとする。
だが、ドラグバイザーがあるのは左腕。先ほどの骨折が響き、装填しようとすると痛みが走る。
彼らが現れたのは、まさにその時だった。
『ADVENT』
 見覚えのあるモンスターが飛来する。
ピンク色のエイのようなモンスター。それを持っているのは、龍騎の記憶には一人しかいない。
そして、そのモンスターの主が現れる。
「お前…ライアの手塚海之!?」
「俺はお前を知らない…だが、どうやらお前は俺を知っているらしいな」
 エイのようなモンスター…いや、エビルダイバーを引きつれ、ライアが現れる。
さらに遅れること数秒、はやてが路地から現れた。
その事で龍騎がさらに驚く。
「はやてちゃん!何でこんな所に…しかも生身でいるんだ!?」
「え…その声、真司君?そのカッコどしたん?」
 どうやらこの二人は知り合いのようだ。
龍騎にしたって知り合いが生身でミラーワールドにいたら驚くし、はやてははやてで知り合いがライダーになってミラーワールドにいたら驚くだろう。
「ああ、もう!この際事情の説明は後だ!とにかくコイツを何とかするぞ!」
 全員それで納得し、臨戦態勢を取る。
戦闘再開である。

   次回予告
「「食らえ!!」」
「他のライダーにも、教えれば止められるかも」
「城戸君、あれはどういう事?」
『戦え…戦え!』
仮面ライダーリリカル龍騎 第五話『龍騎』

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2007年06月15日(金) 17:37:49 Modified by beast0916




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