アルス×マリベル 307@Part5

アルスとのあの忌まわしい出来事から二ヵ月が過ぎようとしていた。
あの時。妙な薬を飲まされ、体の自由を奪われたマリベルは、アルスの復讐心が満足するまで
さんざんに責められた。
身も心もずたずたのマリベルに、あろうことか、アルスはまた抱かせろ、と言った。
『やらせてくれないなら、村の皆に喋っちゃうよ?マリベルがどんなふうに僕を 欲しがったか、
とかさ』
アルスのその言葉は、マリベルの口を塞ぎ、呪縛するに十分な効力があった。
純潔を奪われたことだけでなく、むしろマリベルにとっては、犬猫のように見下して扱って来た
アルスに組み伏せられて、いいようにされたことの方に恥辱を感じた。
絶対に誰にもこのことを知られたくない。
村一番の権力者の娘として、思うままに意を通して傲慢に振舞って来たマリベルにとっては、
プライドと自分の地位を守ることこそが大切だった。
また抱かせろとマリベルを脅したアルスは、あれからまだ何も言ってこない。
アルスがどういうつもりかはわからないが、大方、自分のしでかしたことに恐れをなして、ほとぼり
を冷まそうと必死なのに違いない。きっとそう。だって私はアミットの娘だもの。
だから、このまま二度目がなければ・・・。
なかったことにして、忘れてしまえばいい。
いつもの自分に戻って。そうすれば何も変わらないのだ。

      • マリベルは認めなかった。
家族から離れて自室で一人になった時、または夜に寝台に入って寝付くまでの間、いや、
それだけでなく、昼日中に誰かと話をしている時でさえ、一瞬身体をよぎる甘い疼き・・・。
忌まわしく、忘れ去りたいはずのあの時のことが、何度となく頭をかすめ、その度に身体
が何かを欲しがっている。
そんなことは認めれれようはずがなかった。

そうしてまた幾日かが過ぎた。
マリベルはすっかり安心し切っていた。生まれてから今まで、負の立場になったことのない彼女に
とっては、そう思えることの方が自然だった。
さすがにずっと、遠出はする気になれなかったのだが、その日はいい天気で、マリベルは久し振り
にグランエスタードへ行くつもりになった。
そうして、マリベルは一人でアミット村を出て、グランエスタードへ続く道を辿った。
岩場を抜け、森の近くへ差し掛かると、うららかな気候に誘われて小鳥が鳴く声が聞こえる。
こうしていると、あれは本当に嘘のよう。
マリベルはそう考えて笑みを浮かべ・・・・次の瞬間、凍りついた。
「やぁ、マリベル。どこ行くの?」
木の陰からアルスが現れ、マリベルの前に立ちふさがった。
『あのこと』があってから初めてアルスと二人きり。
マリベルは猛烈にそのことを意識して、さっきまでの気分が嘘のように心が弱まるのを感じた。
しかし、あれから多少なりとも過ぎた時間は、元通りとはいかないまでも、マリベルの自尊心を
立て直すには十分だった。
あの時は。薬で体の自由が利かなかった。でも、今は違う。
「邪魔よ。どきなさいよ」
マリベルはつんと顎を上げると、アルスを斜めから見下して言った。
アルスはぽかんとマリベルを見ているようだった。マリベルは自分の立場の優位を感じた。

「聞こえないの?この私が通るんだから、道を開けろて言ったのよ」
蔑むような得意の口調。それでも、アルスは動こうとしなかった。
(何よ・・・あ、もしかしたら、アルスは私に許してもらおうと思ってるんじゃないかしら。でも、言い
出せないのね。ぐずなアルスのことだから・・・)
マリベルは自分の考えに楽しくなって、ふふと笑った。
(でも、私は絶対許してあげない。ざまをみろだわ。放っておいて、いっちゃおう)
マリベルはわざと突き当たるようにアルスの横をすり抜けようとした。と、視界がくるりと反転する。
慌てて踏みとどまると、マリベルの腕を捉えたアルスと目があった。
「・・・!」
アルスの目には、見覚えのある暗い光が宿っていた。
「は、離しなさいよ!」
が、アルスは腕を離さず、逆に強く力を込めた。そして心から楽しそうな笑い声を上げた。
「ねぇ、マリベル。本当にそう思ってるの?自分の立場が元に戻ったって?ふふ、ねぇ、
なんで何ヶ月も時間をあげたと思う?・・・その方が効果的だと思ったんだよ」
アルスは、マリベルをそのまま森の中へ引きずり込んだ。勿論、マリベルは思い切り抵抗した。
が、思うように動く体をもってしても、アルスを止められなかった。それがアルスとの力の差で
あることに気が付いたマリベルはぶるっと震えた。大声で喚いても、誰も来なかった。
そして、本当に人の立ち入らない森の中まで連れて行かれると、マリベルはアルスに大きな木の
幹に押さえつけられ動きを封じられた。瞳を覗き込まれて、マリベルは体の震えが最早隠し切れ
ないことを知った。

「どうしたの?マリベル。・・・怖いの?」
「怖くなんかないわよ!」
「でも、震えてる」
「うるさいわね、離しなさいよ!」
両腕を振り回して暴れようとしたが、手首を取られ頭の上まで上げられる。そちらに気を取られた
隙にアルスの足で膝を割られそうになって、マリベルは慌てて両膝に力を込めた。
アルスが腰を押し付けてくる。
「いや!離しなさいったら!」
大声を出すことで、マリベルは心の中に広がる恐怖を押さえつけようとしていた。
そして、自分が少しもあの時のことから逃れられていないことを悟った。
ふいに首筋に顔を埋められて、マリベルは悲鳴を上げた。
アルスはマリベルの動揺を舌先で感じながら、そこを舐めた。
肌が粟立つ。
そして、アルスはマリベルに強引にキスをした。
「ん!」
舌を入れられ、上顎を舐められ、また舌を絡まされる。マリベルは目を見開いたまま、それから逃れ
ようとしたがどうにもならなかった。
片手が自由になる。マリベルはその手でアルスを押し返そうとしたが、その前にアルスがマリベルの
スカートの裾を捲り上げ、手を中に入れた。
下着の上からそこを撫でられ、マリベルの目がさらに大きく開かれた。
「ぅん!ん、ん!!」
止めようも無く、下着の中にも手が入れられる。
「や、ぁ!」
激しく頭を振って、ようやくマリベルの唇は解放されたが、アルスの指はもっとひどいところに触れていた。
そこを割り開き、浅く中指を侵入させながらマリベルの芽に触れる。それだけで電流が走った。
マリベルが反応したのを見て、アルスはさらにそこをこね上げた。
「ふ、ぅん」
マリベルは愕然とした。たった1度だけ、それも何ヶ月も前のことなのに、身体は快感を覚えていた。
このままでは、あの時のように何もわからなくなって溺れてしまう。マリベルは必死でアルスから
逃れようとした。

体重をかけて身を捩り、アルスの戒めを払おうとしたマリベルに、アルスがそうさせまいと手を伸ばす。
「あ!」
捕まれた胸元に力がかかり、マリベルの服がそこから裂け、支えをなくしたマリベルはそのまま草の
上に倒れてしまった。身を起こそうとする間もなく、アルスにのしかかられる。体の上に馬乗りになられ、
苦しくてマリベルはもがいた。アルスはマリベルの下腹部あたりに腰を据えると、上からしげしげとマリ
ベルを見つめた。
「暴れるから、服が破けちゃったよ」
「ひどい・・・」
マリベルは気に入りの服を破られたことがショックで涙目になった。アルスはそんなマリベルが面白くて
仕方ない。
「ねぇ・・・服が破れたことなんて気にしてる場合かなぁ」
アルスはその破れた部分を掴むと、びりびりとそれを臍のあたりまで裂いた。
「やめて!何するのよ!」
「あれぇ、まだ下に何か着てるんだ。いいや、それも破いちゃおう」
すぐにマリベルの白い肌が露わになった。二つの小さなふくらみも。森の清気と、肌を晒された恐怖に、
そのふくらみの先端の淡く色づいた部分がつんと立ち上がる。
「かわいいね」
アルスは身を屈め、その突起に舌を這わせた。ぞわりとした感覚が肌の上を走り、マリベルはぴくりと
頬を震わせた。舌の先端でそこを突付かれると、下腹部に痺れが起こる。
「いや!いや!離してったら!!」
マリベルは両足をばたつかせたが、アルスはびくともしなかった。
―――どんなに抵抗しても、体はアルスから逃れられない。
マリベルは歯を食いしばってその事実を受け入れた。
―――でも、この前みたいに、あんな醜態だけは晒したくない。
マリベルは堅く目をつぶると、身体を強張らせて感覚に逆らおうとする。

この前は、何をされるかわからないまま、アルスに弄ばれて自分を失った。でも、今度は何が起こるか
わかってる。だから、耐えてみせる。声なんか上げない。何度もアルスなんかにいいようにされてたま
るもんですか・・・!
マリベルは目を閉じ顔を背け、来たることを撥ね退けようと身構えた。
アルスの唇が、今度はマリベルの突起を含み、吸い始めた。
途端に起こる、甘やかな痺れ。
マリベルはますます堅く目を閉じる。
アルスは、上目つかいにそんなマリベルの様子を伺いながら、空いている方の乳房に手を伸ばした。
持ち上げられるように乳房をもみしだかれる。そうしながら、アルスは人差し指でマリベルの乳首を
掻いた。
「ふ、ぅっ!!」
強い電流が身体を駆け、マリベルは思わず声をもらしてしまう。
アルスはそこの固さを確かめるようにくりくりと転がした。
先程の刺激でスイッチが入ったかのように、マリベルのそこは快い感覚を強く身体に伝えてきた。
もう片方のふくらみは、乳輪ごとアルスの口に含まれ、丹念に舐られていた。
マリベルは頬に熱が集まってきたのを感じた。
必死で湧き上がる感覚をやり過ごそうとしては失敗していたが、マリベルはまだ耐えられると思っていた。
そう。それだけで済めば、マリベルは醜態を晒すことはなかったかもしれない。
勿論、それだけでは済まなかった。
マリベルの臍の辺りまで裂かれた服に、アルスがするりと手を入れた。
下着の上から布地を押し付けるようにそこを撫でられ、マリベルが目を見開くと同時に、アルスが満足気な
微笑みを浮かべた。
「・・・濡れてる」
「嘘よ!」
「嘘じゃないよ、ほら」
「ぁ、ん」
下着の股の部分からアルスの手が入り込み、そこがくちゅっと濡れた音を立てた。

「教えてあげるよ、ここがこんなになってるのはね」
「ん!」
アルスはわざと音を立てるように「そこ」に指を立て掻き回した。
マリベルの内腿がびくりと痙攣する。
「・・・マリベルが欲しがってるからだよ」
すでに二本指を入れられ、そこの一番敏感な突起に押さえつけるように手を動かされると、マリベルは
その刺激に思わず腰をよじった。
くちくちとそこが音を立てる。
「この前より感度がいいね。・・・やっぱり一度知ったからかな」
「そ、ん・・・あ!や!・・・」
「すごいや。どんどん溢れてきてる」
充分に濡れたことで、アルスの指がどんどんリズミカルに滑りそこを突く。
歯を食いしばって声を殺そうとするあまり、呼吸すら難しくて、快感に溺れまいとするマリベルを苦しめた。
急に指が引き抜かれ、知らない間にまた目を瞑っていたマリベルは思わずアルスを見た。
視線が合うと、アルスはこれ見よがしにマリベルに手をかざした。糸を引くほどに、そこには粘ついた透明な
液体がたっぷりとついていた。
「ほら。マリベルのだよ」
マリベルが顔を背けたのを見て、アルスは面白そうに小さく笑うと、指についたそれを舌で舐めた。
ぴち。
それは極小さな音だったにも関わらず、マリベルの耳に刺さるほど大きく響いた。
「マリベルの・・・甘い」
かあっと全身に熱が巡り、先程まで指を立てられていた箇所がずくんと疼いた。そこが物欲しげにきゅっと
締まったのがわかった。張りつめた心が軋んだ音を立てて崩れかける。
「・・・もう、や・・・」
ぽろっと涙が一粒落ち、草むらを濡らした。

身体が思い通りにならない。二度目だからこそ、何が起こるのかわかっているからこそ、心で嫌悪しても
身体が勝手に反応していく。
情けなさと絶望で、マリベルの頬にはいくつも新たな涙が生まれこぼれた。
「う・・・ふッ」
続けて漏れそうな嗚咽を飲み込む。
「泣いてるの」
アルスにそう問われても、答えられない。消えてしまいたかった。
嫌だと言いながら勝手に反応する身体。そして、身体に宿っている本当はそうされたいと望んでいる
もう一人の自分。
「調子狂っちゃうな。ねぇ、いつものマリベルはどこに行ったの?」
言いながら、アルスは行為を再開した。すっかり敏感になった股の付け根を撫でる。
「やっ」
暴れる、というより、幼い子のように力なく手足を動かすマリベルの抵抗に、アルスがまた手を止める。
「ねぇ、ほら、そんな風に泣かないでよ」
「や、も、いや」
「いやって・・・こんななのに」
ちゅくんとそこにまた指を入る。
少し動かしただけで、マリベルがびくびくと反応する。
「や、は・・・」
それでも、マリベルはいやいやと首を振って、アルスを退けようとする。

泣き出したら止まらなかった。様々な感情が押さえきれず、溢れていくらでも涙が零れた。マリベルは
『泣く』という行為に逃避を見いだした。
腰部の昂ぶりも体中の熱い感覚も、ないことのように思いたくて、ただただすすり泣くことに意識を凝らす。
それしか、できることがないかのような――事実そうだったが――思いつめた涙は、思いがけず、
アルスを戸惑わせた。
「そんなに泣いたって・・・ねぇ、本当は欲しいんでしょ?」
マリベルの足を割り、そこに自身を押し付け、確かめるように軽く腰を揺する。
「ん、ふぁ」
微かながらもマリベルが反応を返す。
「ほらぁ」
それでも、マリベルは体を投げ出したまま泣くのをやめない。
浅く挿入を繰り返す。
その度に反応するくせに、マリベルは泣く以外のことをしようとしない。
「泣き止めよ」
焦れたアルスはそんなマリベルに構わず、さらに足を開かせると、ぐぅとそこに身体を沈めた。
「ひ、ぅああ!?」
半ば分離しかけていたマリベルの意識は、強い刺激に瞬く間に呼び戻された。
アルスは薄く笑うと、マリベルの足を抱えて、腰を動かし始めた。
アルスが激しく腰を動かすと、ガードの外れたままだった身体には対応しきれない快感が
身体駆け巡り、マリベルをあっという間に支配した。
「いや、あ!んあっ、あ、あ!」
そして、身体だけでなく、意識も。
逃げという選択を選んだがために、そこに抵抗する用意がなかったマリベルは、非常に容易く
快楽に堕ちていった。自尊心も羞恥心も、マリベルの何かを守るはずだったものは遠くへ追い
やられたまま、与えられる感覚をただ快感として受け止める、そんな状態だった。

そうなってみると、今までの抵抗が嘘だったかのように、マリベルは身の内に湧き出す快感を、
純粋に追い、貪るのに夢中になった。
もう何もかもどうでもいい。身体の望むままにさえさせてくれたなら!
「んん!あ、いい!はぁ・・・っ!」
少しでも刺激を逃すまいと、アルスに密着するよう、腰がうねるように勝手に動いた。
捩じられるような勢いで乳房をつかまれる。マリベルは快感に飛んでいきそうな身体をアルスの
首にしがみ付いて押さえようとした。
「あぁ!あー・・・!」
押し流されるような大きな波が来る。
「あ!あぁ!あ、あーーー!」
波にさらわれる寸前、マリベルは自分が本当に望んでいたものが何だったのかを知った。


少しだけ、意識を飛ばしていたらしい。
気が付くと、アルスはすでに身体を離し、横に寝そべっていた。
マリベルが視線を向けると、アルスがまた蔑むような顔でマリベルを覗き込んだ。
しかし、マリベルは、それを悔しいとも悲しいとも思わなかった。そんな自分に自分で驚く。
そのマリベルの戸惑いは、アルスにとっても予想外の反応だったらしい。
アルスの目が一瞬泳いだのをマリベルは見逃さなかった。
――笑ってやる。得意の、勝ち誇ったような顔で。
今度は本当に、アルスがうろたえる。

マリベルは身体を起こすと、布切れになった服をかき寄せて胸を隠し、寝たままのアルスを
見下した。
「ちょっとぉ、気が利かないわね。いつまでもこうしてられないでしょ。何か着る物取ってきてよ」
「え・・・」
「それとも、アルスはお父様や村の皆に、あたしをこんな目に合わせたって知らせたいわけ?
 こんな格好で家に帰れるわけないでしょ」
「あ、うん・・・」
「じゃ、早く取ってきて」
「・・・ああ」
アルスは、未知の生き物を見るような顔でマリベルを見ると、慌てて身支度を整え走って森を出て
いった。
その後姿が視界から消えると、マリベルは堪え切れず声を立てて笑った。
おかしくて仕方がない。
アルスはやり方を―もしくは引き際を―間違ったのだ。
アルスに追い詰められ、自尊心も何もかも捨て、恥態を晒し切っててしまったマリベルは、守るべき
自分がなくなったことで、もう怖いものは一切なくなってしまったのだった。
   (自分でも、自分がこんなに強いなんて知らなかったわ。
    それに――)
マリベルはもうひとつの思いつきに嬉しくなって微笑んだ。
   (次からは、私の望む形でいくらでも欲しいものがもらえそうだし)
そう考えただけで熱くなる身体を押さえながら、マリベルは久し振りに楽しい策略を巡らせ始めた。
2008年12月27日(土) 04:02:39 Modified by test66test




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