カジノ船の夜

フローラは“それ”を握って胸に抱えたまま俯いていた。
そして小さく深いため息をつく。
「はぁ……やっぱり私には……でも、あの人のために。ぽっ……」
――コンコン
「フローラ、大丈夫かい?」
ドアの向こうのアベルの声に、フローラはハッとする。
「えぇ、すみません。あの……」
「なんだい?」
「もう少しで出ますから待っていてください。先に寝ないでくださいましね」
覚悟を決めたフローラは手早く“それ”を身につけていった。
鏡の前で自分の姿を映し、また赤面する。
大きく深呼吸をしたあと、脱衣室のドアを開けた。

「お待たせしました。あなた」
「フローラ、その格好は……」
白バラのように透き通った肌を彩る“それ”は、布の面積が極端に少ない
ポートセルミの酒場や、カジノのダンサーたちも身につけていた衣装『踊り子の服』だった。
お嬢様として育てられ、修道女として神に仕えた彼女にとって
その服はあまりにもアンバランスだが、それ故に艶かしさもひとしおである。
「さっきあなたとこの船を探検したときに見つけましたの。やっぱり私には似合いませんか?」
「そ、そんなことは……。似合ってるよ、綺麗だ」
「ありがとうございます」
フローラは微笑んで、その場でくるっと回ってみせる。
向こう側が透けて見えるほど薄い腰布がふわりと舞い、アベルは唾を飲み込んだ。

テーブルに置かれたワインとグラスを持ち、フローラはベッドに座るアベルの隣に腰掛けた。
夜のカジノ船からは昼間の騒がしさは消え、波の音とゆったりとした音楽だけが聞こえていて
特にここ特別室は穏やかで優雅な時間が流れている。
「お酌いたしますわ」
血のように赤いワインがグラスに注がれる。
身体に向けられたアベルの視線を感じて、フローラは恥ずかしそうに話し始めた。
「本当にダイタンな衣装ですわよね。私には恥ずかしくて、とてもムリだと思っていました」
アベルはワインに口をつける。
「でも……先ほどアベルさんが踊り子さんの足をまじまじと眺めているのを見てしまって」
思わずワインを噴きこぼしそうになる。
「これも妻の務めだと思っています。私の足でよければ、お好きなだけ触ってください……ぽっ」

普段はロングスカートに隠されている白い脚。
それが今、太腿の付け根まで露になっている。
「いいの?」
「はい。私はあなたの妻ですから、お好きなだけ……」
アベルはワイングラスを置いて、そっとフローラの膝の辺りに右手を置いた。
フローラがじっと見つめるその手は、ゆっくりと動き出す。
小さな膝を摩るように、そして撫でるように少しずつ上のほうへ。
アベルのごつごつとした大きな手が、フローラのむっちりとした太腿を撫でる。
薄い腰布を捲り上げたとき、フローラがアベルの手を掴んだ。
それは拒否反応ではなく、羞恥心から来る力のない抵抗。
「あっ、ごめんなさい」
「緊張してるのかな?」
「はい。少し……」

アベルは手を退けると、先ほどのグラスを取って、ワインを口に含んだ。
そしてフローラの肩を掴み、強引にキスをするとワインを口移しで流し込む。
「んんっ!」
口元から零れたワインが、白い肌の上に赤い軌跡を描きながら、胸の谷間へ流れていく。
「んっ……くッ……コクンッ」
ワインが喉を通り過ぎたことを知らせる音。
同時にフローラの身体がドサッとベッドに押し倒される。
「あなたっ……」
アベルは赤い軌跡を舐め取りながら、右手をフローラの脚の間へ滑り込ませた。
細く絹のように滑らかな脚、その一番柔らかい内腿の部分を揉み解していく。
左手は丁寧な装飾が施されたブラを外し、桃色の先端を唇と舌で愛でた。
「あっ!あんっ!あなた……んんっ!ンあっ!」

愛撫のせいか、それともワインのせいなのか、フローラの肌は耳まで紅潮している。
愛する人に硬く尖った乳首を吸い上げられ、布の上から最も敏感な核心部分を刺激され
淑女はベッドの上で嬌声を漏らしながら激しく乱れた。
「んっ!んふっ……あっ!あっ!いやっ!」
下腹部の微熱は蜜壷を潤し、溢れ出た愛液は股布に大きなシミを作っていた。
「もうビショビショだから、ね」
「はい……でも、恥ずかしいです」
「僕も脱ぐよ」
アベルは身につけていたものを脱ぐと、フローラの最後の布を取り去る
フローラの手首と足首には踊り子のアクセサリーがつけられてはいるが
お互いに生まれたままの姿になった。
丁寧に処理された脇や、小さく整えられた青い芝生からは、フローラの育ちの良さが垣間見える。
芝生の下にある秘裂は、だらしなく口を開き、何かを欲しがるようにヒクヒクと動いている。
「挿れるよ、いいね?」
「はい。ください……。あなたをください……んぅっ!ンンっ!ああぁぁ!」
アベルが腰を突き出すと、フローラのそこはヌルヌルと抵抗なく奥まで受け入れた。

アベルの腰の動きに合わせて、ベッドが軋み、フローラが泣き
結合部からの淫らな水音がカジノ船の特別室に響く。
「あっ!ああっ!気持ち…いいですっ!……あなたっ!んんっ!」
「フローラ!……僕も気持ちいいよ!フローラ!フローラ!」
「ハァ…うっ!んんっ!アンッ!キスして……くださいッ……」
アベルの舌に縋りつくように、フローラは舌を動かし絡ませる。
張りのある形の良い女の乳房が、筋肉質な男の胸板で潰される。
身体を密着させたことで、アベルはより深くまでフローラを突いた。
コツコツと奥をノックされ、フローラの絶頂がすぐそこまで迫る。
「んふっ!ンン〜!あっ!あんっ!ダメです!私、もう!」
愛する夫の広い背中に腕を回し、必死にしがみつきながら
フローラは頭の中で無音の花火が咲き乱れる不思議な感覚に身を委ねた。
「いやぁぁ!ダメッ!いっ!イク!イキますっ!……んんんっ!あぁっ!」

「ハァハァ……ッ……はぁはぁ……っ……」
身体中に汗を滲ませたフローラは、夢心地の中で息を整えようとしていた。
汗で濡れた青い前髪をアベルが左右に払ってやる。
時折ピクピクと動く下腹部、その奥にはまだ硬いままの熱を持ったアベルの存在。
「ごめんなさい……私だけ……」
「気にしないで。気持ちよかった?」
「はい。とても」
フローラは恥ずかしそうに視線を外した。

「今度はフローラが上になってみようか」
「私がですか?上になるというのは……」
「乗馬するみたいに、僕の上に跨って」
言われるがまま、結ばれたままフローラはアベルの上に跨る。
これを騎乗位と呼ぶことなど、お嬢様育ちのフローラは知る由もない。
「恥ずかしいですわ……」
「大丈夫。手をついてバランスをとって」
アベルの胸に手を置くと、男らしい筋肉の硬さにフローラはキュンとなる。
「ゆっくり動いてごらん。馬に乗ってるみたいに。……そうそう」
「こうですか?……やだ、恥ずかしい。……んっ……あっ……」
その動きは、まさに馬に揺られるようだった。
ゆっくりと前後に腰を動かし、二人の呼吸に合わせてリズムを刻んでいく。
「あぁっ……はぁん……いいっ……」
「下からも動かすよ」
「やっ……アァ……あんっ……あっ!」
前後に揺れるフローラの動きに、下からのアベルの動きが交わる。
ズンズンと突き上げられるたびに、淑女は再び恍惚の表情を浮かべて乱れた。
「んっ!んぅ!あぁっ!アンッ!」
渦を巻くように溜まってきた射精への欲求が、出口を求めて登ってくる。
アベルはフローラの柳腰を両手で掴み、雄の本能をむき出しに激しく乱暴に突き上げた。
「んっ!んっ!んっ!イヤっ!ダメです!いッ!またイっちゃいます!いくいくいく……あぁぁぁ!!」
白い乳房を揺らしながら、長い髪を振り乱すフローラ。
熱く蕩けた肉壁に強く優しく締め付けられて、アベルもまた絶頂に達した。

 ビュクン ビュルッ ドクン ドクッ ドクッ 

熱い精液がフローラの中に何度も放たれる。
一回、二回、三回……
自らの中で跳ねた回数を数えながら、フローラは意識を失った。



波の音だけが聞こえる。静かな部屋。
ベッドの中でフローラはアベルの頭を抱いている。
フローラの乳房に顔を埋めながら、アベルは妻の愛と同時に懐かしいものを感じていた。
それは遠い昔、マーサに抱かれていたときの記憶なのかもしれない。
フローラの優しい香りに包まれながらアベルは目を閉じた。
「お料理も、魔法も、夜の営みも、もっともっと頑張りますわ
 これからも私を傍に置いてくださいましね。愛してます、あなた……ぽっ」
―終―
2009年04月29日(水) 22:34:57 Modified by test66test




スマートフォン版で見る