ターン

勇者は紐の様な赤い水着を体に当てて鏡を覗いた。殆ど紐なのだから後ろ姿はほぼ裸だ。
女勇者はコソコソそれを着出した。
腰まわりと乳房がきゅうくつ。
乳首の辺りが深々と赤い生地に押されて、乳房がはち切れそうに隆起している。
脱いだら体に水着の跡が付いているだろう。
後ろ姿も見てみる。
(H…)
自分の背や、臀部の上、尾てい骨辺りに悪戯描きされた様に赤い線が走っている。
淫奔な曲線を描く臀部が鏡に写って、これもはち切れそうである。
若い娘はチョロチョロまわりながら自分の体を見ている。
ポコポコ子供を産みそうだと言われた事もある臀部と水着のデザインの卑猥さ。
赤い布に押され、可哀相な様子の乳房。
実際片方の乳房を開放すると、もう跡が付いていた。
勇者はマントを首に巻き付け水着を脱ごうと手を掛けると、仲間の武闘家が部屋のドアを叩いた。
武闘家が入ると大きなマントを胸元に当てて体を隠している勇者が居た。
イイ女がちょっと困った顔をして、肩の辺りの肌を露出させている婀娜な姿。
武闘家は爽快となる。とても良い気分で、簡単な旅の会議をし、去り際武闘家は勇者の肩に触れた。
勇者は自分の肩にある男の手を見た。好きな手である。
少し気持ち良さと嬉しさで彼女は目を伏せた。
武闘家は妙な手触りに気付く。下着かと思っていた肩の赤い紐は、
「あの水着?」
(ヤダ、バレちゃった…)「うん、着てみたの」
「見せて」
これは試作品でタダで貰った。デザインも違って生地もずっと少ない。「だめよ…」

マントが開かれた。(あぁ…)プルンと飛び出す乳房。
「これは…恥かしいな…」
「だから、言ったのに…」
嗄れていて低く潤むセックスアピールのある声の彼女だが、今は高めの声でヒイヒイと力無い。

「ごめん…あ、おへそだね」
「わぁん」
腹まで見られた。
その時男の体に変調が…(わっ)そして彼女の水着にも。水着の色は紫に変わっていって、二人でびっくりした。
「いいね。とっても」
「そう?」
男がふいに離れる。(?…あっ)男の変調と興奮に、女は気付いた。(どうしよう…)
「後はどうなってる」
「うん…」
と勇者はベッドにうつ伏せに転がった。美しく見えるよう、気を付けた。
しかし臀部はマントで隠している。
「なんで」
「…後はほとんど裸なの」
仰向けに転がると武闘家は思ったより近くに居た。
「赤も良いけどね…どっちにしてもきつそうだ…」
「あっ、引っ張んないで…」
「触っていい」今水着を引っ張った所、乳房の所を。「だめ」
勇者はクルクルと華麗にマントを体に巻き付ける。「もう終わり」と男が言うと勇者は冴えた微笑みで
「また夜に」

勇者はもう一人の仲間の戦士の所へ行った。こうなったら二人に見てもらおう。今日はそう言う日にしようと。
「あの水着、着たの」
武闘家が見たと言う。恥かしついでかも知れないが見せに来た。
戦士はびっくりしながらなんとなく華やいで
「俺にも見せるの?なんで?」
そう言われている途中から、ユルユルとマントを取る彼女の姿はイけた。
とてもお世話になるその姿との出会いの瞬間に戦士はひたすらボケーッとしていた。
彼女の体はすぐにマントの中に隠れてしまったけれど
「ねぇ、夜に劇場に来て」

「なんだ、あんたもか」
勇者が武闘家に言った“夜に”とは、戦士と同じ約束であった。
アッサラームの劇場、観客は男二人。それで満員なのである。
音楽が鳴ると、ステージに女が一人跳ねる様に現われた。
灼熱の炎に燃えた様な黒い肌。悶える様に腰を振るその踊りはベリーダンス。
厚い腰はたわわに熟れた桃の様な嬌艶のライン。それが妖しく動き、夜に円を描いた。
女がハーレムパンツの足でパンと舞台を蹴るのが合図か音楽が止み、女がサッと顔を上げた。
そして見えを切る様に顎を下げ、女の顔は正面になる。
女勇者らしい凛々しい彼女の表情が、チリチリ踊る金色の耳飾りに演出され共に鳴った。
(バリー…)
その素晴らしい肉体は彼女だとわかっていたけれど、綺麗に化粧したその顔を見てまた確認する。
髪飾り、腕輪、乳房の先を少しだけ隠す胸当て、全て煌びやかな黄金の混じる金色で、上半身はこれだけの装い。
下半身は足首に小さな鈴。透明過ぎる布のパンツから、金色の下着がはっきり見えている。

妖しい音楽が鳴ると勇者はまた舞い始める。ステージの空白、そこに男が居る様な顔付きと腰の動き。
これも芸術なのかも知れないが、それ程見せ物として完成していない所がえも言われぬ危険なエロチシズム。
ギリギリの艶めかしさ。まだまだ売り物にならない。ダンスとして売るには危険だった。
彼女ならではの野生味。美しさだけをただひたすらに讃美出来ない肉欲の舞台。
勇者は、仲間と楽団の人間達と座長にだけこの踊りを見せ、終えた。
「バリーちゃん素晴らしい」
「途中間違えちゃった」
惜しいな、残って欲しいなーと言われ、楽団にピーピー口笛を吹かれ、やっと入場を許された客に
「お、可愛い娘入ったね」「いや、この娘は違うの」
「勿体無いなー」
云々と騒がれつつ、踊り終えてすぐマントを着ていた勇者は、踊りを教えてくれた踊り子達の楽屋へ入っていった。

武闘家と戦士は夜の町を男二人で静かに歩いた。
「遅い時間に誘っちゃったから、今日はお昼までゆっくりしようね」
リーダーはパーティーにちょっとお休みを取った。
「あたしもたまに絵を書いて人に見せたり、踊ったりしたくて。
そしたら舞台貸してくれるって言うのタダで。踊りも教えて貰ったし見て貰いたくて」
アッサラームに来てから勇者は劇場に入り浸っていた。
後に立派な石盤を自ら作る勇者には絵心があって、絵で奉仕する事で舞台と楽団を借りた。
ダンスの練習量も形ばかりのゴールドでおしまい。
戦士が「綺麗だった」、武闘家が「H」と踊りを褒めると「やった」と勇者は笑っていた。
その後踊り子達にキャーキャー呼ばれ、女同士で何か相談しだした。
(あいつ、何か企んでるな…)
勇者はなにやら居るだけでHだ。その為によくチヤホヤされて、
可愛い色気、甘い色気も持っているが、毅然とした色気もあるので女にもモテた。
そんな勇者はたまにエヘンエヘンとふざけるものの、基本としてさっぱり奢らないは、自分が弱い事を知っているからだ。
勇者であると言う事も他ではない。
暗殺家。暴力で物を言う。いくら乱世だろうと堂々とは生きられない存在だと彼女は思っていた。
その事を彼女はしっかりと抱いていたい様である。だが勇者である事を誇りにも思っていた。

そうして生きて来た人間達が居て、その血を受け継いで自分があると言う事。
長い時間を飛び越えた、素直な愛である。
誇りに思っている事はちょっとだけ内緒だ。彼女一人が大事にしている物らしい。
戦士は勇者を愛していた。
何者にも怯まず、打ち解ける事も出来る強い心優しい心を持っているが、暗い男である。
その黒くて暗い部分が彼女に会えて喜んでいる。
勇者と戦士はお互いの悪い所こそを愛せている。違う所こそを求め合っている。そう生きて行ける。
野生的なSEXがしたい。彼女だけと。
「あいつかっこいいなぁ」
武闘家が言った。
勇者がこの男にどれ程の好意を寄せているのかを思うと戦士は時に胸を痛める。
先程劇場で武闘家はちょっと興奮していた。
この男のこんな顔はめったに見れなくて、勇者は踊るわ、鈍くて重い変な動悸を戦士は繰り返した。
珍妙な顔をしている。しかし男にも性的興奮を与える男である。長い黒髪を後に引っ詰めて三つ編みにしている風貌も彼に色を添えた。
会心の一撃を繰り返し、朗々とした美声で戦場を支配した。
空から光臨したと言うより、大地から生えて来て、しっかりと地に足を付けて戦う重々しい闘神を思わせた。
「あんた、帰って来たの」
武闘家に話し掛ける女は勇者かと思ったが違った。似ている。
背が低く髪が短く体付きも貧相だけれど、肌が黒く凛としたイイ女。
「いや、帰って来た訳じゃない」
「…そう」
武闘家はサッと戦士に手をかざして見せて、その短躯の美人と消えてしまった。
(あぁ…胸の小さい娘も良いなぁ…)
あーして、こういう具合に…と詳しく羨ましがっていた戦士だったが
(俺と飲もう、バリー)
デカイ男はキメラの翼で真っ直ぐにアリアハンへ飛んだ。
(アッサラームの酒じゃ酔えねぇぜ)ルイーダの所で買って帰るのだ。

酒乱の気がある勇者は仲間二人からの言い付けをちゃんと聞いて、劇団の人間と飲んだ時にかなり控えた。
(言い付け…守った)
少し酩酊している彼女は、宿屋で一人そう思って満足して眠りに付く。

宿屋の主人は魔が差した。ほんのり酔った勇者にフロントで会い、欲情。
覆面被って夜這いを敢行した。ドアはスペアの鍵で開けた。
妖女は寝ていた。酔っていたらしいからほのかに大胆な寝姿。誘われるまま一気に主人は抱き付いた。
最初はうぅん…と小さく唸りを上げた勇者だったが
「なに、誰?」
両手を捕まえて来ようとしているので、力に物を言わせているこの男が何をしたいのか勇者はわかった。
勇者が逆に男の両手を掴み、捻り上げる。
「どこから入って来たの」
主人は足が付くのが嫌な一心で、窓の方向を顎で指した。
「じゃあね」
と、勇者は窓の外に男を追い出した。
空手も組み手も体当たりも、主人は勇者に全く敵わなかったので、窓から外の地面に降りソソクサと消えてしまった。
それを確認して勇者は寝むる。(うーん…宿屋の人に伝えて置こうかな)今行ってはいけない。

武闘家は眠らなかった。寝入った女をおいて宿屋に帰って来た。三人パーティが三つ部屋を借りて
(俺の部屋だけが鍵開いてる筈…)
少し目が冴えてしまった勇者は上半身をムクリと起こす。(あれ、鍵閉め忘れたかな?)
いや、そんな筈は…しかし、武闘家は勇者の目の前に立った。
「あれ…何でお前ここに居るんだ」
「ここ、あたしが借りた部屋」
「適当な事言いやがって…」
ズシン…と武闘家は勇者のベッドに落ちて、彼女を抱いて来た。(キャー、ぅわー)
勇者を胸にスッポリと入れて、武闘家は「フゥ」と色付いた吐息を漏らした。
そして勇者の耳に優しく口付ける。「やんっ」
(おぉ?本当にまだ元気なの?)
それに答える様に、女の手が男の肩に優しく触れた。男は女の上半身の服を全て剥ぎ取った。(わぁっ…)

「あんた…どうしたの」
武闘家は何も答えず、勇者の胸の谷間に顔を埋めて、乳房に顔を挟まれたりしつつ、ズルズルと顔を動かし彼女を愛撫した。勇者は堪らず、
「あぁん」
低い嬌声で叫んだ。胸の柔らかかった突起は男の唇に捕えられて、ジワリ…と固くなった。
「瑠璃…なによ…」
勇者はそんな小さな声を上げているスキに、下の服も脱がされる。彼女の素肌は直にベットのシーツと男に触れる事になった。
男の大きな両手が、両の乳房を鷲掴み。そして左右にタポンタポン遊ばれた。「あぁ、あっ」
「すごい…デカイ…」
(やぁん…)
「なんで…」
とボソと言った後、武闘家は勇者の乳首に激しく挑み、勢い良く食み、吸った。
「ぁ、ぁ…」
ペロと舌で弄ばれ、舐め上げられる激しい快感に、勇者は顎を下げ目を閉じてもう声が出なくなり、強い吐息を漏らした。
まるで傷でも負わされた様な低く苦しそうな声なら出る。時に、何度でも。
「もっと、甘えな」声で聞かせて欲しい。
「だって…苦しい…」与えてくれる快感をもっと、緩めて欲しい。
「変わらないな…お前」
スルスルと唇を下腹部まで滑らせ、武闘家は勇者のヘソにキスした。「ぅ…ぅ…」(やらしい声、体…)
男は一瞬だけ何かに気付いた様子に見えた。
女の肩を掴み、少しだけ女と見詰め合った。勇者は片手で武闘家の頬と顎に手を滑らせ包んで来る。
勇者は乳房が大きいと言われた時から誰かと間違われている事に気付いていた。
「あたしの名前、呼んでみて」

「バリー」
「キスして」
今は自分(勇者)とわかっているのだ。嬉しい。
しかし「ん…」と男は全停止状態に一瞬だけ陥っていた。
(キスしてよ…)
武闘家は勇者と一線を隔している…いや、そう言い切るよりは、口付けをしない男であると言うべきか。
勇者を女として見ているようだが、一緒に生きる気も、一緒にイク気も無いようである。
(つらいよ、つらい…)
男の髭か、髪の毛か、顔がくすぐったいと思ったら勇者の唇は男の唇に重なっていた。
彼女は唇もくすぐったくなって、(ウフフ…)やっと笑った。
「元気出しな。悪い酒だったね」
「あたしは元気だよ」
「死んだ様な顔してたぞ今。俺の事が嫌いですか?」
勇者は一緒にふざけようと思って、即答しようと思ったが、揃えて曲げていた膝をグッと男に割られてしまった。
勇者の顔はたおやかさを増して色めく。ふせられた目には羞恥の色が見え、開かれた陰部と共に潤んでいた。
男も潤んだ様なその淫蕩の声で静かに言う。
「かわいい…大きいね」
「えっ…どこ…」
勇者も頬を染めた官能的な顔で聞く。
男は下から上に軽く指で撫でてていく。女性の生殖器と呼ばれる所
「全部」
「あたし…大きいの?」刺激され、吐息を漏らしながらやっと勇者は聞く。
「大きい方だね」
男の舌が、男で言うカリと言うべき女の肥大した部分をペタ…と舐めた。
(…!!…)
快感が駆け上がって来て、女は眉間を強く締めた。
なおも深く、浅く…男の舌が女の熱い突起をゆっくり愛撫する。ヌル…と滑る。
「あ…ぁ」
男の舌は下方に少しのびる。ピチャリ…と大きな音が鳴った。フッと勇者は顎を上げる。

ピチャピチャ…とずっと音の鳴り続けるゆっくりとした愛撫。彼の太い指も、彼女の襞を弄び始めた。
「あぁぁっ…あんっ…」
彼女はグイと腰を持ち上げられた。座る男の顔が見え、自分の茂みと少しだが桃色の陰部も見えた。
それが男に舐められている様も、はっきりと。
「んんっ…ん、ぅあっ、あっ」
宙にだらしなく投げ出されている自分の足が、彼女の心をもっと卑猥にさせて行く。
下半身の桃色の突起が彼に食まれる。「ぁん…」
足が男に掴まれる。武闘着を淫らに肌蹴させた武闘家の舌と唇だけが彼女に吸い付く。
もう、男の口の中よりも彼女の桃色の方が濡れていた。滴り落ちそうな程。
彼の艶めかしさを借りて、彼女も淫蕩、淫靡、淫奔な世界に飛び込める気がした。
その世界で、彼の世界でずっと、もっと食べて味わいたい。自分自身さえ魅力的にさせて、性の世界、恋の世界をもっと。深にエロティックに。
勇者は武闘家の目を見た。微かに開け、まつ毛で視界を曇らせて。
男も見る。男が舌を動かし、女が柔らかい桃色をヒクつかせながら見詰め合った。
先に視線を反らしたのは男で、彼女の襞は強く弄ばれ始める。
女の喜ぶ場所を的確に捕え、強く優しい男の舌の動き。
「ぁあぁぁ、イ、…」
(もうイク、イッちゃう)と甘く可愛い声でも出せたらこの男の情欲を煽れただろうか。
しかし激しい快感にびっくりして声どころでは無かった。
(いつかもっと声、出せたらなぁ…)彼女は願いもエロティック。
「好き…」
武闘家は別段動きを止めずその声を聞いた。
勇者はベッドに深く肩を押し付け、厚い唇を半開きにして、熱い絶え絶えの呼吸を。愛しさと息苦しさを綯い交ぜにして、柔らかそうなシーツの上で柔らかい女の体がゆっくり揺れていた。
乱れた髪がかかっている彼女の肩に少し力が入った。
彼女は絶頂を迎えようとしている。とても長かった。
「…はぁっ…」
と強く一息出した後も、まだあの世界に居た。
ずっと見ていたかった。
(もっといけ、ずっとそのまま…帰って来るな)
満ち足りて行く勇者の表情を武闘家はずっと見続けていた。

いっていた彼女の顔が可愛くて武闘家は悶え。いかされた勇者は目を閉じて小さな呼吸を繰り返している。
「好きだって?」
「ん…あんたが聞いたから」
「嫌いじゃないって事ね」
そう言い武闘家は目を閉じた。(あら…)男は自分の欲求を見せてくれなかった。
さっきまで他の女とどれだけ激しい時間を過して来たのか。
(いつか…ね)
いつかこの男と。
(好き、好き。全部あげる)
女勇者は恋をすると旅が続けられないと思っていた。
しかしこの男は勇者としての自分を支えてくれた。“勇者”であれと願ってくれている。
(嬉しい…愛してます)
勇者は自分も武闘家の誇りを支えている事に気付いていない。
勇者として武闘家として求め合って、愛し合っていた。
武闘家としての彼の魅力を抱ける女は彼女だけだ。しかし男としての彼の魅力に気付く女は彼女以外にも沢山居る。そこが彼女はちょっと気に入らない。
沢山の女からこの男を奪う…“無理だ”と諦めなければ何とか成ったのに彼女は一生気付かなかった。
(くすぐってやれ)
それは愛情表現に近い。彼の三つ編みの先を、彼の鼻の穴の所でコチョコチョ動かした。
くしゃみまでしてくれるとは思わなかった。嫌がって寝返りした。
その男の背に勇者は胸を押し付けた。
勇者は魔王を倒すのはこの男だと思っている。その拳一つで世界を救う武闘家だと。
この男の功績を、勇者と言うだけで自分が奪う形になってしまう事を彼女は心配していた。
寝入りそうな男の唇に勇者はチュッと吸い付き
「修行つけて下さい」
自分がこの男と行動しても恥かしくない位強くなりたいと彼女は思った。
勇者は勇者、武闘家には武闘家の戦い方があると彼女は思っていたが、そんな事は言いたくなくなった。

「なんでも教えて」
身になる事ならどんな事でも。上体を起こし、彼に向いて座る彼女の元気で艶めかしい顔と乳房が男の目を少し醒ましてくれる。
「わかった、わかったよ」
うつろな目で男が答えると、女は今度彼の額にキスする。
男の堅い肩に押されている乳房さえ嬉しがっている様な可愛い口付け。
(武闘以外には…何を教えようかな…)
彼女はこのままで居て欲しかった。
どこか品がって、とてもワイルドで、ちょっと可愛い渋めのイイ女。彼女の女っ振りはこの男も時にオロオロさせた。
このままで誘惑され続けるのを望んだ。

裸の勇者を横に置いて大男は寝てしまった。この男はオモシロイ顔をしているが猥褻物陳列の如きモロの色気があって、女勇者はドキドキした。彼の持つその猥褻物も
(デッカイ。やだぁ)
やだぁとは失礼な。(でもあたしもデッカイみたいだから…)
つい、結合を想像した。(ん…)勇者は熱っぽくなってクラクラとした。
この人の事をもっと(好きになり過ぎたら…どうしよう…)
モンゴロイドは固いと言う。彼の長い黒髪を見ながら(素敵…)と勇者は思った。
男性を“あそこ”の事も(かなり)含めて“素敵”と思ったのは初めてだ。
(私は…)寝ている男の横で、自分の卑猥さが恥かしくなって勇者は丸くなった。

戦士はアリアハンでルイーダに誘われて、聞こえない振りをした。
女の旅人が話し掛けて来て、戦士はそちらと話し出す。高そうなワインを肩に掛けて戦士は店を出た。
女勇者の事ばかり考えて、ソワソワして、楽しくて、景気付けに飲み過ぎた。
ルイーダが誘い、シブメの格好いい処女がつい初めてのキスをしてしまう様な男に、戦士はどうやらなっていた。
加えて戦士は美貌と言える。肢体なら彫刻の様な完成度。バランス。
(どうだろうか?バリー)
と夜空に訪ねても虚しい。童貞は意を決してその夜空にキメラの翼を投げた。

勇者の部屋の扉を叩くと、寝ているのか返事がない。鍵は開いていた。
勇者と武闘家が二人で寝ていた。シーツをめくると勇者は素っ裸。(あぁぁぁぁぁぁっ)
戦士は裸の勇者を胸に抱いた。勇者はうむぅ…と可愛く唸った。
このやろうと戦士は武闘家を足で押して床に落とした。
勇者は自分がなにやら挑まれたかなと勘違いして、ムニャと返事した。

「よう、ブラック」(おぉ、やるか)
「お前が女だったらねぇ…」
武闘家の寝言だった。寝ながらも戦士の気配を感じたか。そしてまだ女が欲しいのかこの男。
二人の間に何があったのか。戦士は勃起していた。
不安に立つ…。悲しい哉立つ時は立つ。裸の勇者を抱いている今その先端が濡れて来た。
この魔法の世界、一晩寝ただけで魔法力も体力も回復する。日が昇ってから彼女に触れると、折角回復した彼女の体力を奪うだろう。太陽が上らなければ…。
上るな、と戦士は思った。
(こいつを、俺にくれ!)
二番目でも、恋されてなくても良いから。
勇者は目を醒ましたらしい。「あんた…」と見詰めて来る。こんな可愛い彼女の顔を見た事がなかった。
「あっ…」
戦士と気付くと勇者は離れる。武闘家を探した(どこ?)
戦士は抱き付いて、彼女をベッドに倒す。乳房にのめり込んだ。
(いたいっ、いたい)
彼女の乳房が風船だったら割れている。硬く鋭利な髭。
「だめ…ちょっ……と」
乳首を吸われた。さっきの男と同じ様に。しかし戦士の方が弄んで、やんわりと、悪戯の様に吸って舐めて来る。
「あぁ…もう、H…」
腕力も体力も全く敵わない。そこは勇者、戦士に一生敵わない。
勇者と戦士はレベルも違う。戦士がずっと上。しかし飛び抜けて強い男が一人居る三人パーティー。
勇者と戦士は傷を舐め合う事が無かったと言い切れない。仲も良くキスも沢山した。
しかし今、心のこもったキスは勇者はちょっと困った。
戦士は深々と勇者の唇を捕えて、舌でゆっくり自己主張する。(やめて…)
「!」勇者がビクリとする。(きもちいい…)と男が思った。
挨拶上手な彼女の“そこ”である。指にチュッと吸い付いて来た。
この貪欲な性器、それに伴う自分の性欲を抑えたりしながら、しっかりとそれを抱いて彼女は生きている。
(いいよ、俺としよう)
男の指が動いて彼女の下半身の勃起がグニュと変形した。
「あっ…」

「見て良いか」
戦士は女の陰部が大好きだ。“この女の”…と付くともっと好きだ。
「だめ…」
彼女は自分の陰部を手で隠した。
「なんでだよぉ」
「いやぁ…」
と勇者はうつ伏せになってしまった。その背を戦士の舌がとても微かに走った。
勇者は強く音を立て、息を吸った。
(やめて…イキたくなっちゃう…)
男と“一緒にイキ合う”と言うは甘い誘惑。戦士にはその用意がある様だ。
戦士と勇者のキスを覗いている男がいた。
上半身裸の男がチュッと音を立てて、恐らく全裸の女に吸い付いている様を“前”を突っ張らかせて見ていた。
(女の娘が…凄くH…)
この男も人の目を気にせず、ここで一人で“やって”しまおうかと思っていた。
「ねぇ、寝ておかなくちゃ…」「ん…」「だめぇ」
あの娘は声もHだなと、男は心もあそこもズキズキさせた。そして
(嫌がってるじゃないか)
媚び、女の甘えは感じられたが。凛々しくあろうとする健気な彼女も感じられた。
「こらこら、止めなさい」
(あっ、あんた誰よ)
隣の部屋に宿泊していた旅の男である。この男の仲間三人も廊下に居て、事態に気付いた。
(すげぇHな娘!)
ベッドに座りその黒い体をシーツに隠している娘は、新しい三人の男も喜ばせた。
しかし彼女を愛撫していた大男は恐い。
男達は女勇者の様子を見た。戦士にソソと寄り添ってこちらの様子をうかがっている。
(なんだ、愛し合ってる様じゃないか)
男が覗いていたその気配に目を醒ました男が居た。四人の男達と真っ先に対峙したのはこの武闘家だった。
彼が二言三言話すと男達は居なくなっていた。
「いやぁ、バリーモテモテだね」
と言う武闘家だが、戦士が横に寝ていてびっくりした。
橙色の朝日が部屋に差し込んで来た。(あぁ、もう駄目だ…)と戦士は断念する。
戦士は勇者に自分の気持ちを伝えるのは恐かった。自分の大切な物も全てをつぎ込む事になりそうで。それでも

(いつか好きだと言えたら…)
それを望みつつ、戦士は寝むった。

「よしよし」
そう言って来る武闘家の胸や腹を、勇者はポコポコ殴った。
勇者は戦士の煙草を取った。「畜生。俺もやるか」
中年と若い娘は一緒にムセた。
勇者は寝ている戦士の額もポコと叩いた。
しかし戦士は「うわー…眠らせてくれぇ…」完全に二日酔い。
勇者はちょっと脱ぎ過ぎ、男二人は飲み過ぎ。三人の失態が一気に集まった町もない。
煙の中で武闘家と勇者が少し笑った。

色々足が出て…人生台無しだろうか、宿屋の主人が逮捕されてしまった。(あらー)

勇者はダンスに何を企てていたのか。ポルトガ王落とすのに参加。と言う事だ。
ベリーダンスに対し失言あって、踊り子達をがっかりさせた大帝皇である。
「バリー、やるのよ!」
「やる、やる」
殆ど冗談で構成された踊り子達との楽しい別れ。勇者一行はアッサラームを去る。
後の話、ポルトガ王は勇者を見初めた。冗談になってない格好悪さ。
船を貰う時の勇者のバツの悪そうな顔に、戦士と武闘家は笑った。

武闘家の女は、彼の妻だったと言う。盗賊に関わり(その事は彼が助けてやったが)、彼の武闘の事を結局理解してくれなかったので別れた。
「でも好き合ってるんでしょ」
武闘家があの女の事を好き…と言うのは感付かれたかも知れないが、あの女が武闘家を好きだと何故勇者にわかる。
蛙が逆立ちした様な大胆な格好で、どこも隠さず舐められる。
武闘家の唇を見た時、その記憶が蘇って勇者は体をジワリと熱くした。
「だって、好きでもない人に…苦しくなる程感じないよ」
しかし留まる事は出来ない。武闘は捨てられない。

バハラタに到着。占い師の声に勇者は一人、足を止めた。
「魔王は全てを滅ぼすもの。凍てついた暗闇と死の世界の支配者じゃ」
今の乱世を滅ぼすのも男かも知れない。勇者は不意に父オルテガを思った。
そして時は旋回している。
先見の明のある者はなんとなく女を見ていた。滅びの次にある舞台を。

勇者は又二人の前で踊ろうと思う。武闘家の歌、戦士の楽器がプロで混じるのは恥かしいのだけれど。
三人は仲が良い。勇者は自分の仲間を自分の目で選んだ。
運命に導かれた仲間でも、伝説の血族集団でも無い。
だから別れがいつもすぐそばに。
酒が入った時勇者は寂しい、と言った事がある。三人の旅が終わるのが寂しいと。
「俺はバリーちゃんにずっとついてくよ」
「お前が大事なんだよ」
「本当?」
たまに本音を言う彼女が可愛いと思って、又始まってしまう。
「あん、もう、駄目だってば」

END
2008年12月27日(土) 04:57:01 Modified by test66test




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