ハッサン×ミレーユ ◆2CpAceT.OU

「うっ……く、ん…むぅ……うう……」
下着だけを身につけて、私が舌を絡ませながら顔を揺らし、手でその根元を扱くたびにうめき声が聞こえる。
そんなに堪えた声じゃなくて、もっと気持ちよさそうな声を上げてくれていいのに。
太くそそり立ったそれの下にある袋を反対の手で柔らかく揉みながら、私はわざと大きな音が出るように、
口から零れて男根にまとわりついている唾液をすすった。
じゅ…じゅっ……
「う、おあっ……」
上がった声がすぐにひっこめられてしまう。
もう。
じれったくなって私はついに顔を離した。
それでももちろん手は休めないけれど。
「ハッサン、我慢なんてしないで。
 みんなが寝ている間に、わざわざルーラでここまで来た意味がないじゃない」
膝をついたまま、ベッドに腰かけた彼を見上げると、彼は紅潮した顔で咳払いをした。
「そうは言ってもなぁ、おうおう声上げる俺っていうのも気色悪くないか?」
「そんなことないわ。私は聞きたい。
 貴方が感じてくれているんだ、って知りたいわ」
私は彼に笑いかけた。
本当にそう思っているからそう言ったのだけれど、きっと目は笑っていない。
そんな気がする。
「十分すぎるほど気持ちいいけどよ……まあ、なんだ。
 俺が俺の気色悪い声を聞きたくない」
彼はそう言って笑うと、髪を撫でてくれた。
一瞬痛みそうになった胸を押し隠すように私はまた下を向いた。
「さっきも言ったけど、口に出してね」
彼の優しい手とは反対に、彼自身は素直に自己主張している。
私は赤黒く反り返り、血管が浮いたそれに見とれながら、また口を大きく開けてそれに舌を這わせた。

私はずるい。
彼の私に対する好意を知っていて彼を連れ出した。
まだ女を知らなさそうなあの子たちに私の欲望をぶつけるのはかわいそうだ、と思えるくらいの
理性はかろうじて残っていたようだけれど。

ガンディーノに着いて私の身体は恐怖を覚えた。
あの王に支配され、犯された日々を思い出したからではなく、その恐怖を快感にすり替えた身体が
男に求められ、犯される快感を思い出したからだ。
自分でも信じられないほどに身体が疼いた。
身体を縛られ、鎖に繋がれ、男たちに嬲られ、貪られる快感。
私を始め、女たちに貪られ、酒に酔いしれ、歓喜の声を上げる男たちの声。
嫌悪していた筈のそれらを、私の身体は求めてしまった。
二日の間は自分で処理して誤魔化した。
けれど、あの城に入ってしまった後はもう誤魔化せなかった。
王は居なくなっていたけれど、あの場所は残っていた。
私を繋いでいた鎖。
私が王を貪った浴室。
それらを見ているうちに、身体が男を求めてしまったのだった。

そして、私はハッサンを連れ出した。
始めは彼に飲みに行こうとけしかけて、町の宿を出た。
今までも彼に誘われて何度か飲みに行ったことはあったから、彼はすぐに承諾してくれた。
けれど、私は酒場に行かず、ルーラを使って別の町にやってきた。
どうしたんだ、と問う彼に隠すこともせず、抱いてくれ、と私は頼み、私たちは宿に入って
私は今、彼の男を貪っている。

もっと酷くしてほしい。
頭を掴んで、喉の奥まで突き入れて、吐き気がするほど繰り返し繰り返し、私の口を咽を犯してほしい。
そして、その吐き気を押し返すほどの精液をたっぷりと身体に流し込んで欲しいのに。
彼はあくまで受け身だ。
分かっている、仕方がない。
彼は私にただの仲間という以上の気持ちを持ってくれている。
だから、そんなことする筈がない。
出来る筈がない。
そう思うのに、別の場所では男のくせに、男ならもっと女を貪ればいいのに、と思っている。
「ミレーユっ……、ふッ……く、ッッ」
息が上がってる。
我慢なんてしなくていいのよ。
そんなつもりで目を上げると、彼と目が合った。
すごく気持ちよさそうな顔。
多分あと一回、二回強く手を動かしたら、イってしまいそうな、そんな顔。
なのに、切ない顔で私を見てる。
嫌だ。
気持ち悪い。
男はもっと優越感に浸った顔で私を見下して、快感に溺れる汚い笑顔で腰を振っているものなのに。
私は居たたまれなくなってきて、指に力を入れると強く彼の根元を擦り、吸い上げた。
「ぐっ……く、うあっ!」
びくんびくんと脈動した彼の男根の先端から、濃厚な精液が私の咽に放たれた。
口の中に広がる独特な臭いが私を満たす。
ほら、男は汚いものだ。
こんなクサいものを身体から放って、女を犯して、快楽に酔いしれる。
……けれど、それを求める私はもっと汚い。

「……すまん。大丈夫か?」
私の口から萎えた男根を引き抜いて、彼は言った。
どうしてだろう。
すごく苛立つ。
咽に粘りつく精液を飲み込んで、私は男が喜ぶ笑顔を作って彼を見上げた。
「大丈夫。すごく美味しかったわ。
 気持ち良く、なってくれた?」
「おう、そりゃあ、すごく気持ちが良かった。
 けどな」
なによ。
「あんなもん、うまいもんじゃないだろう?
 まあ……飲んだことがある訳じゃないから味は知らんが、臭いは、なあ……クサいじゃないか」
彼を選んだのは間違えだったのかもしれない。
もっと、『そうか、うまいか!』とか『じゃあ、もっと飲め』とかそういう言葉を期待していたのに。
その辺で男を拾えば良かった……?
「……きれいにしてあげる」
私は彼の言葉には応じないで、萎えてしまったものを手に取って、それをしゃぶり始めた。
周りについた自分の唾液や先端に残る精液を舐め取ったり啜ったり、
彼に聞こえるようにわざと大きな音を立てて、見えるようにわざと下から舐め上げて、彼を煽った。
「ミレーユ……また、勃っちまうぞ」
「その為にしているのよ。私のことは気持ち良くしてくれないの?」
くすくす笑って、私は自分の脚の間に手を入れた。
触らなくたって、もう十分に濡れているけれど、彼に見せつけたかった。
私はこんなに淫乱な女なんだということを。

下着の中に空いていた左手を入れて、自分の秘部に指を入れて、私は音が出るようにかき回した。
くちゅ…ちゅ、……ちゅぷっ
「ねえ……聞こえるでしょう?
 もう、こんなになってるの。貴方を欲しくて」
少し力を取り戻してきていた男根を右手で強く扱くと、それは簡単に元通りになった。
「うは、情けねえ……」
ちょっとおどけたように言う彼。
「情けなくなんてないわ、素敵よ。
 ……ねえ、くれるでしょう?」
自分で分かる。
今の私はきっととても媚びた目をしている。
ハッサンのこれは、私が知る中でもかなりのものだ。
少なくとも、あの王よりはずっと立派なもの。
これで身体を貫かれたら、どんな快感があるのだろう?
早くこれで犯してほしい。
私は彼から手を離して立ち上がると、身体を隠していた下着をすべて取り去って、裸になった。
彼がため息をつく。
私に見とれている。
性の快感とは違う喜びが、一瞬胸をかすめた気がした。
「はあ……キレイだなあ」
「ありがとう……」
そう言いながら、身体をくるりと翻して、私は扉に手をついた。
そうしながら、今の言葉は今日初めての本心から出た言葉のような気がした。
足首まで落ちていたズボンから足を抜いて、彼もベッドから立ち上がる。
そんな彼を確認してから、私はお尻を彼の方につきだした。

左手を扉についたまま、右手で自分の秘部を広げる。
出来るだけ良く見えるように。
「ここよ。早く入れて」
彼がお尻に両手を添えてくれた。
ぞくりと身体が震える。
「ねえ、挿れたかったら、後ろの方に挿れてもいいからね?」
彼の男根が挿入されたら裂けてしまうかもしれないなんていうことを考えたら、またぞくぞくしてきた。
「俺はこっちの方が好きでな」
指がゆっくりと入ってきた。
「あ………ふっ……」
欲しかったもの程じゃないけれど、自分の指よりずっと太い彼の指に、
私は早くも悦楽に近いものを感じ始めた。
「もっとォ……」
私が要求すると彼は指をぐりぐりと動かしてくれた。
けれど、その動きはとてもゆっくりでもどかしい。
「焦らさないで……」
そう言ったのに、彼は指を抜いてしまった。
そして、その場に膝をつくと今度は両手でそこを広げて、今度は舌を挿入してきた。
じゅぶじゅぶと音がする。
短いけれど何か得体のしれない生物のように舌が私の中で動き始めた。
「あ……やっ!ああッ!」
今度は指が私の敏感な場所を嬲り始めた。
あくまでゆっくりとした動きだったけれど、脚の先から頭のてっぺんまで甘い疼きが身体を這う。
こんな風に触れられたことはなくて、私は両手で扉にすがりついた。

「ダメっ、だめぇ……」
行き場を失くした快感が頭の中で渦を巻いている。
今までだったら身体を貫かれるのと一緒に、快感が走り抜けていくだけだったのに、今はそうじゃない。
じれったくて、早くどうにかしてほしいのに、このじれったさをもっと感じていたい。
息が乱れて、思考が上手く出来ない。
こんな時は何も考えないで、快感に身を任せればいいだけの筈なのに、それが出来ない。
やだ、怖い。
「ハッサン!ハッサン!」
抱きしめて。
一番言いたい所が声に出せない。
それなのに、彼は立ち上がってお腹に手を廻すと、抱き寄せてくれた。
次の瞬間、足が床から離れた。
「え!?何?」
何が起きたのか分からなくて、傍にあったものにしがみつくと、それは彼の首だった。
さすがは怪力を自称するだけある。
私を軽々と運んで、彼はベッドに寝かせてくれた。
また苛々してきたけれど、今度は一緒に泣きたくなってきた。
「……早くして?」
脚を広げて精一杯媚びてみるのに、さっきまでと違って上手くいかない。
それでも彼は私に覆いかぶさってきた。
その癖、
「ホントにいいのか?」
なんて聞いてきた。
「今さらでしょう?」
いくら私がけしかけたとはいえ、飲ませるところまでやっておいて、何を言っているのだろう。

「まあそうなんだけが、なんというか……、ヤケクソなミレーユを抱いても嬉しくないんでな、俺としては」
否定する気はないけれど、面と向かって言われるとさすがに返答に困る。
宿に入ってすぐだったら、そうは言ったって勃ってるじゃない、とでも返せたのだろうけれど、
今はなんだかそれが出来なくて、彼から顔を背けるために私は横を向いた。
「……いいわよ、もう」
急に冷静になってきた。
快楽に負けた自分にも、彼を利用しようとした自分にも、それなのに私に優しくしようとする彼にも、
全てに腹が立って、私は身体を起こして毛布を引き寄せるとそれを肩にかけた。
彼にすごく申し訳なくて、自分が情けなくて、涙が出てきた。
「……ごめんなさい」
どうにかそれだけ言って毛布に潜り込んだら、その上から頭を撫でられた。
堪えていた涙が一気に溢れてきた。
色々な事が頭の中に洪水のように押し寄せて来て、どうしても抑えきれずに毛布の中で泣いていると、
「すまん。ちょっと入れてもらえるか?寒い」
と彼の声がした。
声を出せないまま頷くと背中側に彼が入ってきた。
お尻にあれが当たった。
涙は相変わらず流れていたけれど、ちょっとおかしくなって笑うと、悪い悪い、と彼も笑ってくれた。
「ミレーユ、こっち向け」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を見られたくないという前に、どういう顔で彼を見ていいか分からなくて、
私は首を横に振った。
「いいから」
彼に肩を引っ張られて、仕方なく、俯いたまま彼の方に寝返りを打つと彼はそっと抱き締めてくれた。

今度は太ももにあれが当たる。
けれど、彼の手が優しくてまた涙が出てくる。
気になるやら、申し訳ないやらで困っていると、
「そのーな、なんだ。ま、泣きたかったら俺の胸で泣け、と」
と上ずった声が聞こえた。
きっと照れているのだろう。
本当は笑うべき所じゃないのだろうけれど、私は吹き出してしまった。
「わっ、笑うかあ?
 確かに、クサイことを言ったとは思うが、笑わなくてもいいだろう」
「ごめんなさい」
謝ってはみたけれど、顔がどうしても笑ってしまう。
笑っているうちに、私はハッサンの胸で笑いたくなって来た。
私は枕元の鼻紙を取って涙と鼻水を拭くと、彼の胸に熱くなった頬をそっと押しつけた。
私を抱きしめていてくれた腕の力が少し強くなった。
心臓の音がする。
少し早い。
身体が密着しているせいで、あれの形がはっきり分かる。
私がその気になったら彼はどんな風に抱いてくれるのだろう?
そう思ったら、このまま抱いてほしいと思えてきた。
そっと上を向く。
きっと酷い顔をしているはずなのに、彼は真面目な顔で私と目を合わせてくれた。
少し身体を伸ばして彼の唇に口づけると、ドキドキと胸がときめいた。
正しいキスというものをするのは初めてかもしれない。
一度離して、もう一度口づける。
それをお互いに何度も繰り返すうちに、唇が離れなくなってきた。

動悸が強くなってきて、ため息に卑猥な色が帯びてくる。
舌が疼いて、彼に触れたいと思うのに、さっきはあんなことまでしていたのに、
今は舌で唇に触れることさえできない。
そんなキスなのに身体の芯が熱くなってきた。
さっき彼に触れられていた時のもどかしさがまた身体を覆い始めて、私は耐えきれずに唇を離した。
「あの」
「すまん」
声が重なった。
「「はい」」
また重なって、私たちは一緒に笑った。
落ち着いてから目が合うと、彼は何も言わないまま私の背中をベッドに押し付けて、キスをくれた。
彼の太い首に手を廻すと、唇を舐められた。
それだけで、身体中がぞくぞくする。
たまらずに口を開くと、舌が入り込んできた。
脚の間には手が滑りこんできて、身体の中に入ってきた指はさっきと同じように私を焦らしてくれた。
「ふ……あっ!んっ!」
声が上がってしまう。
今までならばそんなことは当たり前で、むしろ男を喜ばせるために、自分の気持ちを高ぶらせるために
わざと大げさに高い声を上げていたのに、今は出来ない。
漏れる声でさえ恥ずかしい。
恥ずかしいと思っているのに、もっと感じたいとも思ってしまう。
唇がほんの少し離れた時、私は堪らずに彼の名前を呼んだ。
「ハッサン……お願い……」
彼だから欲しいと思うのかどうかはよく分からなかった。
けれど、少なくともさっきまでのように自棄になっていないのは自分で分かる。
ただ、今はここにあるぬくもりをもっと近くに感じたかった。

彼は指を抜くと、私の脚を持ち上げて身体を押しあててきた。
少し緊張する。
こんな気持ちは初めてで、思わず彼にぎゅっと抱きつくと、ゆっくりと彼が身体の中に侵入してきた。
「ん……ん、ん……」
くぐもった声が嬉しい。
疼いていた身体が満たされていく。
「あっ……んうっ!」
急に胸を掴まれた。
「やっ!あッ!」
胸の先を嬲られて声を上げると、今度はそれに合わせるように身体が動き始めた。
「んッ!や……ま、って……ぇっ」
ダメ。
身体が宙に浮く。
今までとは違う快感が身体を覆う。
疼いていたところに胸と中の両方を攻められてる。
やだ、またさっきみたいに怖くなってきた。
気持ちがいいのに怖い。
「やあっ!だめッ!……あッ!あッ!」
「すまんッ……止められないっ……」
そんなに強く動かないで!
ダメ、怖い!
離さないで!
「アッ!ひあっ!……ッッ!ぁあッッ!」

気がつくと窓の外が白くなり始めていた。
なんだか肩が重いと思って胸元を見ると太い腕が後ろから廻されている。
一瞬、何かと思ってから、後ろからの豪快な寝息に気がついた。
「ああ……」
そうだと、昨夜のことを思い出す。
泣いたせいで目の周りが熱い。
どんな顔をしてみんなに会えばいいのだろう。
その前に、どんな顔で彼を見ればいいのか分からない。
彼がまだ寝息を立てているのを確認してから、ゆっくりと彼の方に向くと彼はのんきな顔で眠っていた。
彼の唇を見ているうちにキスをしたくなってきて、でも起こしたくなくて自分の唇を触ってみる。
少しだけ鼓動が速くなった気がした。
彼を起こさないように出来るだけそっとそっと起き上がったけれど、そんな心配は必要なかったのか、
彼の寝息は変わらずに豪快だ。
服を着て、まずは顔を洗おう。
目の腫れは引かないだろうけど、涙の跡は洗いたい。
それから、彼が起きたらまず昨日のことを謝って、もうあんなことはしない、って誓わなくちゃ。
服のボタンを止めてふと思った。
あんな、自棄になるようなことはもうしないけれど、そうじゃなければ彼を求めていいんだろうか。

(了)
2008年12月27日(土) 19:39:32 Modified by test66test




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