バーゲンセール

「ドリスお姉ちゃん! 遊びに来たよー!」
「いらっしゃいタバサ。相変わらず元気ね、あなたは。
 あ、ダンナさ、今ちょっと買い物行っちゃってるの。
 王女様がいらっしゃるんだから本気で料理の腕ふるうぞー! なんて。あたしだって元王女様なんだけど。
 ほら、グラッチ、グラッド。タバサお姉ちゃんよ。遊んでもらいなさい」
「キャッキャッ!」
「えへへ。おいで、グラッチちゃん、グラッドちゃん。
 えっ? っと! すごいすごい! 二人とももう走れるんだね」
「当然よ。タバサたちだって、2歳の頃にはもうあちこち勝手に走り回って、おばさん苦労させてたでしょ」
「えー。そうだっけ。私あんまり覚えてないな〜。
 グラッチちゃんグラッドちゃん。今日はね、お兄ちゃんも連れて来たんだよ!」
「お兄ちゃん? ……れ、レックス! 来てたの……」
「こ、こんにちは……。
 その、タバサに、無理に連れて来られちゃって……」
「そ、そう。ま、いいわよレックス。せっかく来たんだから、くつろいでって?」
「う、うん……おじゃまします」
「もう。お兄ちゃんもドリスお姉ちゃんも、いつまでも喧嘩してないで仲直りしてよ。何あったか知らないけど。
 あっ。ね、お兄ちゃん、その剣貸して!」
「お、おい、何するんだよタバサ! 危ないよ」
「平気平気。この剣、私が持っても何にも斬れないでしょ。お兄ちゃんじゃないと。だから世界一安全な剣よ。
 グラッチちゃんグラッドちゃん、ほーら注目! これが天空の剣よ、すごいでしょ!」
「ンー、ンー!」
「あっ何グラッチちゃん? えっ、グラッチちゃん、これ持ってみたいの?
 だめだめ。これお兄ちゃん以外にはすごく重いんだから……って、あっ、ちょっと!
 ……?? うそ。グラッチちゃん、軽々持ってる……きゃあっ!」
(ズガッ!)
「……ぐ、グラッドちゃんまで。ベビーベッド、真っ二つにしちゃった……。
 なんで? なんでグラッチちゃんとグラッドちゃん……お兄ちゃんしか、勇者しか使えない剣、使えるわけ?」
「ま、まあ、タバサ。こういうこともあるんじゃないか、あ、あはは……」
「そ、そうよ。勇者の血がなくてもいいとか……それか、突然変異ってやつよ!」
「お兄ちゃん? それにドリスお姉ちゃんも。なんでそんなに汗びっしょりになってるの?」

天空の剣は誰にでも使える剣ではない、という条件がまずある
つまり、誰にでも使える剣は天空の剣じゃない、ということだ

このパパスは偽物つかんでる

「やーいやーい!」
「おまえ、仲間外れ、仲間外れー!」
「こらっ! あなたたち、どうしてその子をいじめてるの?」
「えー、だってさ。こいつ、勇者じゃないんだよ」
「そうそう。お城にある天空の剣も天空の盾も、装備できないでやんの」
「俺たちみんな使えたのに、な?」
「そんなことでいじめてるの? やめなさい! やめないとライデインするわよ!」
「うわ、やべえ、レベル25だ。逃げろー!」
「ふう……。坊や、大丈夫? 痛いとこない? ベホイミしてあげよっか?」
「ひっ、ひっ、ぐすっ……。
 ねえ、お姉さん……どうして、どうしてみんなの中で、僕だけ、勇者じゃないの?」
「うーん……難しい質問ねえ。
 そうねえ……敢えて言っちゃうと、坊やのお祖母ちゃんがそんなに美人じゃなかったから……ってことかしら」
「お、お祖母ちゃんのせいなの……?」
「まあ、そういうこと。先々代の……あ、もう一つ前か。先々々代の王様の目に、とまんなかったのね。
 んー、だけどね、坊や、安心して。
 勇者の女の子と結婚して、赤ちゃんつくれば、勇者にはなれなくても、『勇者の父親』っていうのに、なれるわよ」
「ほんと? 僕、それになれる?」
「大丈夫! 坊や、今だってこんなに可愛いんだし、大きくなったら絶対いい男よ。だから、きっとなれるわよ!」
「それって……大きくなったらじゃないとダメなの? 今から、なれないの?」
「…………。
 坊や、いま、何歳?」
「12歳」
「あら……(ゴクリ)。だ、だったら、やれる、じゃなくて、なれるかもよ。
 なりたい? それと、坊や。ちゃんと、セキニン、とれる?」
「う、うん!」
「そう……。それなら、お姉さんについてきて……」
2008年12月27日(土) 06:19:33 Modified by test66test




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