ポートセルミの夜

港町として繁栄するポートセルミの夜は明るい。
宿屋や酒場の前は煌々と明かりがつき、酔っぱらい達の騒ぎ声が響き渡る。
大通りは夜が深くなっても人が途絶える事はなく、人々の眠りも遅そうだ。
路地ではあやしい商売の女達や、ガラの悪い連中もたむろってはいるが、
繁華街から離れればさすがに静かである。
「あ………」
ポートセルミの大通りから離れ、夜は少し寂しい噴水広場のやや奥まった木陰で、
フローラは甘いため息を吐き出した。
食事を終え、風にあたろうという妻の願いを夫が聞き入れ、静かな噴水広場の辺りを
歩いていたら、急に手を引っ張られた。
そして、奥まった木陰に連れてこられたかと思うと、そこで情熱的な抱擁と接吻が待っていた。
まだ、出会ってからも、結婚してからもそれほど経っていないけれど。最初はぎこちなかった
接吻も、どこか遠慮があった抱擁も、このごろやっと慣れてきた。
「あ、あなた……」
頬を朱く染めながら、フローラは口づけから解放されて一言、漏れるように零した。
「…フローラ…」
妻の名を呼んで、夫のアベルはまたフローラを抱き寄せる。
「あ……」
フローラの細い腰を抱き寄せついでに、尻にまで手がのびて、
まさぐるように引き寄せて自分の身体と密着させた。
「…あ、あの……恥ずかしいわ……ここは……」
どうやら夫がその気らしいとわかり、フローラは現在の場所についてもの申してみるが、
彼は聞き入れる気はないらしく、相変わらず彼の手は妻の尻を撫でている。
「あの…あなた……お願い……お部屋で……」
「うん……後でね……」
「後でって……」
「ごめん。我慢できそうにないよ……」
「そんな……」
困っている新妻をよそに、アベルは彼女の全身をまさぐっていき、胸に手がくると、
服の上からぐっとつかんでフローラはぎゅっと身を縮こめた。
「あん…」
上がっていく体温。鳴り止まない鼓動。荒くなる呼吸。
フローラも初めてではないし、最近は慣れてきて感じるようにもなったけれど、
こんな場所でやるのは初めてだ。
結婚してからの蜜月はフローラの部屋や別荘で、肌を重ね会わせ、旅先の宿でも幾度かしている。
ただ、馬車での旅路は周りにアベルが連れているモンスターもいる事だし、いつ何時、
何に襲われるかわからない以上、安眠する事はできない。

そのため馬車では、夫がずっと我慢しているのも知っていた。
一度、我慢できなかったようで迫られた時もあったけど、お願いして断った事があった。
だから、ポートセルミについたら、少し余計に休んで二人の時間を大事にしようと
思っていたのだけれど……。
ここを回って宿に帰るだけなのに、それすらも我慢できないほどだったとは。
ポートセルミに着いて、気が早まったらしい。
「はあ……はあ……」
いつのまにかフローラの長いスカートがたくしあげられ、足の付け根に近い部分を撫でられる。
「あなた……誰かに……気づかれたら……」
通る人も見かけず、奥まった木陰とはいえ、野外は野外。プライバシーはない。それが
フローラは気になって仕方がない。大事な所を付け狙う夫の腕をつかんで、小さな抵抗を試みている。
「大丈夫さ……。誰も……通らないよ……」
「……ん……でも……」
確かにその通りなのだが、そう言われても、やはり安心できない。
「…あ……ん……」
近くの樹木にそっと背中を押しつけアベルは妻に口づけを落とす。こうすれば、
彼女は何も言えなくなってしまうし、抵抗が弱まるのを知っているのだ。
最初はついばむような口づけ。それから、だんだん気持ちが昂ぶってきたら、
妻の口内に舌をねじこみ、濃厚なものを繰り返す。
「ん…ふっ……」
呼吸も億劫になるほどの濃厚さに、フローラは抵抗らしい抵抗も見せなくなった。
それを良い事に、アベルはとうとうスカートの中の大事な所に右手をのばし、
布の向こうにある形にそって指でゆっくり撫ではじめる。
「……んんっ……」
口づけをしながらも、フローラはそれに反応してわずかに眉をひそめた。
始めは遠慮がちだった指の動きもだいぶ大胆になっていき、乾いていた布は
だんだん湿り気を帯びてくる。
「……あ……だめよ……あなた……」
唇が離れると、妻はいさめる言葉を吐いてくるが、態度に拒否はない。木の幹に背中を
預けてフローラは、飛び出そうになる自分の声を抑えていた。
「……だめ……あん……」
瞳を閉じて、ゆるく夫を押し返しているが、その腕に力はこもっていない。
秘所をいじくるアベルの指が濡れてくる頃、フローラの腕は押し返すわけでもなく、
夫の服をつかんで時折、力をこめて握っていた。
「…あっ……!」
やがて、指は下着をずらして直接触れてきたものだから、フローラは小さく声をあげる。
「…だめったら……」

息を荒くしながら言葉だけ拒否しているものの、本気で抗おうなどという態度は微塵にも現れない。
いつの間にか、右肩にかけられたワンピースの袖が降ろされて、露わになった胸を夫の
左手が覆っていた。
「……だ、だめよ…………」
フローラの声が震えてきた。しかし、夫の指はついに身体の中に侵入してくる。
「……はっ……!……だ、だめ……外で……なんて……」
「たまには、刺激があって良いと思うけど、どうかな」
「え…そんな……」
わずかな抵抗は、あっさりと否定されてアベルの指はますます調子に乗って、
過敏なところに触れてみたり、フローラの中をかき回し始めたりと、好き勝手し始めた。
「…あっ……んっ…!やっ……そんっ……」
声をおさえるのが難しくなってきて、フローラは必死で高くなる声を我慢した。
「やっ…あっ……はっ……ああっ…」
声よりもスカートの中から聞こえる水音の方が響いているのではないかと思うほどで、
アベルの指も相当濡れてきている。
「フローラも…我慢してたんじゃないの?こんなに濡れてきて……」
「あっ…そんなっ……んっ……」
確かに馬車での道程は性の快楽に目覚めてきたフローラにとっても、禁欲の日々であった。
だから、どうしたって夫に強く出れないのである。
「それとも……外っていう適当な緊張感が良いのかな…?」
「あっ…ああっ……あんっ……」
おそらく、その両方だ。それを心のどこかで自覚しながら、フローラは今にも泣きそうな声を
か細くあげながら、必死でこらえた。
「…すごいね……。……僕の指、もうびしょ濡れだよ……」
「…い、言わないでっ……」
顔を真っ赤にして、蚊の鳴くような声を出してかぶりを振る。それはもう
否定のしようがない程事実だった。
「………フローラ…」
低く、吐息に近い声で、アベルは妻の名前を呼ぶ。耳まで赤く染めて、
フローラはそれでもそれを喜んだ。
「…あ……あなた……あっ………はっ……」
か細い声をあげながら、震えるように呼吸を繰り返している。そして時折、びくん、びくんと
小さく身体を跳ね上げさせた。
もう抵抗をやめてしまったフローラは、スカートの中に入れられた夫の腕を、受け入れている。
すっかり妻の方は準備が整っているし、彼女が次にどうして欲しいかよく知っているくせに、
夫はついつい、こんな事を口にした。
「……ね…。次は、どうしてほしい……?」

「え……え?」
夫の指は、自分の欲しい所にくれず、微妙なところを焦らすように動いている。
「……んっ…、そ…そんな……」
「ね…、フローラ…」
「あっ…」
ふっと息を耳に吹きかけられ、フローラの背中がぞくぞくと何かが走った。
「……あ…ん……、お、おねが、い……あ、あなたに……」
「うん」
「…あ、あなたに……だ、抱いて…ほしい……」
「うん、うん…。具体的に言うと?」
随分と意地悪になっているようで、実際にどうして欲しいか口にしろとまで言ってくる。
「そ……そんな…あ……あっ……」
「ねえってば、フローラ」
「……あ、あん…」
こんなにされては、フローラも我慢できなくなってきた。早く入れてほしくて、
うずうずと腰を揺らす。
「…お、お願い……あ、あなたの……その……いれて……欲しい……の……」
「へえ、僕の何?」
そこまで言わせようとするので、フローラはさらに困ってかぶりを振り始めた。
やはり生まれがお嬢様で、育ちが修道院の彼女にそこは少し辛いだろうか。
しかも、ここは野外である。
「……そ、その……あ、あなたの………………」
耳まで真っ赤にさせ、聞き取る事も無理な程の小さな声で、フローラが何かごにょごにょとつぶやいた。
「……ねえ?ちゃんと言ってくれないかな?」
「……う……そ…そんな、……こ…こんなところで……」
「ふふ…ごめん。さ、フローラ…。足を開いて」
今にも泣き出しそうな雰囲気になってきたので、さすがのアベルも意地悪をやめて
自分のズボンに手をかけはじめる。
フローラはそれを薄目で確認すると、樹木に背中を預けたまま、スカートをたくしあげて足を広げる。
その足の間に割り込み、スカートの中に片手を入れながらアベルはゆっくり腰を密着させてきた。
「あ…んっ…」
ちゃぷ、とスカートの中から水音が聞こえる、ぐっと力をこめて、腰で妻の股を乗せて突き上げる。
「あっ……んんんんっ…!」
声をあげまいとして、フローラは唇を噛みしめてくぐもった声を出した。
スカートからは二本の白い足が伸び、その間に居座って、アベルは妻の腰を抱き寄せる。
そして、引き寄せあうように唇が近づき、フローラは夫の肩に腕をまわした。

妻の腰をおさえたまま、アベルが身体を上下させると、それに合わせてフローラの身体も
上下に揺れる。動くたびにくちゃくちゃと水音が響き、二人を取り巻く熱はさらに上昇していく。
「はあっ…はあっ……ああっ……」
ここが外だという事がどうしても落ち着かなくて、フローラはなるべく声をおさえているのだが、
それが緊張感につながって、なんとももどかしい。
「フローラ……。…すごく……濡れてる…よね?」
「…い、言わないで…あなた……」
「気持ち良いよ……。とろけそうだ……」
「あ……あなた……」
感じてくれているのは嬉しいが、やはり恥ずかしい。顔を真っ赤に染めて、フローラは夫の肩を
抱き寄せ二人の距離をもっと近づけようとした。
「ほら…」
「あ、ああっ…!」
結合が足りないと感じたか、アベルはフローラの片足を持ち上げてさらに深く入り込んでくる。
「い、いや…あ、あなた……」
しかし、フローラがいくら言葉で拒否をしても、アベルは彼女の片足を高く持ち上げ、さらに足を
開かせて、仕切り直すように腰を一旦落としてから付きあげてきた。
「あ…あああっ……んむむっ……!」
深い結合に、フローラは思わず高い声をあげそうになり、必死になって口元を手で押さえる。
「フローラの奥……。とろとろになってて…とけそうだよ……」
「…あ、あなた……あなた……」
「もっと…、君を感じたいんだ…」
そして、アベルは何度も何度も奥を突き上げてくる。フローラは身体を上下させながら、
それを必死に受け止めた。
「あ…はっ…あっ……ハアッ、ハァッ、ハァッ…ああっ…はああっ…!」
背中がゾクゾクして、つながっている場所がとろけそうで本当に気持ち良い。ここが野外で
なければ、心置きなく声をあげられるのに。
「フローラ……フローラ……」
「あなた……ああ…あなたぁ…」
お互いを呼び合い、何度も唇を重ね会わせ、アベルは妻の足を持ち上げる角度を変えながら、
微妙な締まりの違いを愉しみながら妻の中の往来を繰り返す。
静かでひんやりとしていたはずの木陰は、今や吐息と水音に支配され、二人を中心に温度が
上がっていくようだ。
「…あんっ…んんっ…、はっ、あっ…い、いやっ…!あ、あなた…っ」
木の幹に背中を押しつけられ、二人の腰が合わさるたびにフローラのかかとが浮く。

「はあ、はあっ、はっ、はあっ…」
フローラは身体を上下させるたびに湿っぽい吐息をこぼし、時折、ぎゅっと眉を寄せた。
「んっ……フローラっ……い、イキそうかい…?」
「あ、あなたっ……あっ、ああっ、も、もう……」
フローラの瞳が恍惚に揺らめき、絶頂が近いらしい事を悟る。
「じゃあ…声をあげないように……ね……」
言って、アベルは妻の頭を抱き寄せ自らの肩に当てると、さらに激しく妻を突き上げた。
「ん…っ…んんっ!んんんんーっ!!」
フローラも夫の肩を抱き、そこに口を押し当てながら加速する夫の動きに合わせて腰を
動かしていたが、ついに彼の背中に爪をぎゅっと立てる。アベルの身体が震えるのに合わせるように、
彼女も身体を震わせて、やがて力が抜けていく。
「ん……は……」
口を肩から離すと、どこまでも甘い声を出して、フローラはぐったりと夫にもたれかかる。
「はあ……はあ……ん…はあ……」
じわりと股に広がる濡れた感覚。アベルの精がフローラの中に吐き出された証拠だ。
じゅぽっと随分量の多そうな水音をたてて、夫が妻の身体から離れる。
二人はしばらく息を整えていたが、やがてフローラの方も落ち着いてきたらしい。
「……もう……」
あまり責めている様子はないが、困った調子で、フローラは夫に向けて声を出した。
「ごめん…。我慢できなくてさ……」
少しは悪いと思っているらしいアベルが、フローラの肩に手を置く。彼は元々マントを
着ているし、彼女も長いスカートをおろしてしまえば、二人の情事の跡は一応は見えなくなる。
「…でも…すぐにまた君が欲しくてたまらなくなりそうだ…。その…、部屋へ……急がないか?」
「まあ…あなたったら……」
もう既に赤い頬だが、フローラはその頬に手をあてて夫を見上げた。そして、小さくかぶりをふる。
「……もう……。……でも……いつまでもここにいるわけには…いきません…ね?」
どうやらあっさり許してくれたらしい妻に、アベルは思わず笑みをこぼすと、
彼女の肩を抱いて歩き出した。

まだ新婚とも言える期間だし、出会ってそれほどでもない二人だが、今はお互いに夢中なようだ。
宿の自分達がとった部屋に戻った二人は、鍵をかけるなり、早くももどかしげに抱き合っている。
先ほどの興奮が、未だ醒めていないのだ。
若いアベルも新妻に相当入れ込んでいて、風呂の前に妻の身体を求めて、フローラをベッドに
座らせると、開かせた足の間に入り込んで早速彼女をむさぼっている。
「あんっ!あっ!あはっ!ああんっ!」
さすがに野外よりかは声を抑える事もなく、フローラは何度も責め立てるアベルを受け入れて、
彼の肩をぎゅっと握りしめていた。
下着は脱がされたものの、服はまだ着たままという、慌ただしさである。
「んっ……」
時折、唇を寄せ合って、それからまたアベルは妻の身体に執心する。
腰を打ち付けながらも、アベルはフローラの胴巻きを取り外そうと手にかけた。
それを察した彼女は自らの手でそれを取り外す。
邪魔な胴巻きが取り払われると、夫は妻のワンピースをめくりあげ、はぎとってしまった。
そして、フローラを押し倒してベッドの上に乗り上げる。
「あ、ああああっ!」
仰向けにされたフローラの艶やかな青い髪がベッドの上に広がり、露わになった乳房が揺れた。
「フローラ……フローラ……」
「…あなたぁぁ……あなたぁぁ……」
彼女の脚の裏側、柔らかい太もものあたりを両手で掴んで、ひざが肩に着く程に身体ごと
ベッドに押しつける。そして、アベルはそんなあられもない姿の妻を眺めながら、抽迭を繰り返した。
うわごとのように呼び合い、吐息と水音、肉のぶつかりあう音、それにベッドのきしむ音が部屋に充満する。
夫の逞しい腕に抱かれながら、フローラは彼にしがみつき、目覚めたばかりの快楽に溺れていく。
最初は痛くて痛くて。でも、我慢しているうちに、つぼみが花開くように、そちらの方に目覚め
はじめると気持ち良くてたまらない。
鼻にかかった声をあげながら、揺らされるままにアベルを受け入れる。
アベルの方も、アベルの方で、それの気持ちよさに嵌ってしまい、いかんとも妻が手放せない。
さっきのように、ちょっとしたチャンスを伺いながら妻の身体を狙う始末。
若さ故の勢いに、二人は快楽の限りをむさぼりつくす。
汗で光る妻の揺れる乳房に食らいついて、それでもアベルは妻の中の往復を止める事はない。
自分も服を脱ぎ捨て、ターバンも取り外し、傷だらけの身体を明かりの下にさらして、
さらにフローラの身体にのしかかる。

「ああっ!ああああっ!ああああんっ!」
口を大きく開けて、フローラは押し寄せる夫からの圧力を、少しでも吐き出そうとしているようだった。
しばらく、自分の下で喘ぐフローラを愉しんだ後、アベルは彼女の身体を反転させて背後から組み付いた。
「あっ?んんんっ…!」
自分の身に何が起こっているのかよくわからないようで、フローラの声に困惑が混ざる。
それを無視して、彼女の背後から片足を抱え上げると足を開かせると、無防備にさらされた内股に、
自分の腰を片足ごとねじ込ませた。
「あううっ…んん…」
敏感な場所にアベルの腿が当たり、フローラはやや逃げるような動作を見せたが、
杭はすでに打ち込まれている。逃げられるはずもない。
その杭は彼女を貫き、男の手足は鎖のように女の体を拘束する。フローラはもう喘ぐ事しかできない。
妻の白い肌に絡みついたアベルは、しつこく腰を動かしながら、背中から強く抱きしめた。
「ひいっ……ひああっ…!はああっ…!」
フローラは、自身がどんな風に抱かれているのか把握できていない。ただ、大きく足を開かされ、
そこに夫の足と腰がしっかりと居座って絶え間なく動いているのと、膨らんだ胸にも大きな手が
張り付いてぎゅうぎゅうと握りしめているのがわかるくらいだ。
「あふっ…!あっ、うっ…んっ…んんっ…!」
足の付け根から振動が与えられるたびに、フローラは身体を揺らし息を吐き出す。
アベルは妻の中を擦れば擦るほど、己の渇きが満たされるような感覚を抱いた。
「あっ…あああっ…!」
外ではフローラのなめらかな肌を包み、中では彼女の濃厚な蜜に包まれている。
蜜壷は抜群の収縮とヒダでアベルを刺激し、何度でも受け入れた。
深くも浅くも、激しくも穏やかでも、彼の侵入が止められる事はない。
アベルは息も荒く、夢中になってフローラを求めた。お互いの肉のぶつかり合う音が高く響き渡る。
「あふっ!あうっ!あんっ!ああんっ!」
さらなる抽迭にフローラは喉から声をあげた。
「あ、ああああっ、あなた!あなた!」
汗ばむ手でシーツを掴んで、引き裂かんばかりに強く引っ張る。
フローラのあえぐ声がアベルの脳内にガンガンと響き、それに駆り立てられるように腰を打ち付けた。
そして、お互いの絶頂が近い事を悟ると、アベルもぎゅっと目をつぶり、
妻を淫楽の淵を落とすべくその行為に集中する。
「あっ……!っああああっ……!」
声にならない声をあげ、フローラは喉の奥が見えるほどに大きく口を開けた。

「くっ…!」
締め付けられるような、フローラから返ってくる強い快感に思わず声を漏らし、
アベルは我慢を解いて彼女の中に精を迸らせる。
全身脈打つような感覚。身体がうち震える程の快楽。すべてが二人を包んだ。
やがて、足を絡ませた二人は息も荒く力が抜けたようにベッドに横たわる。
二人は並んで仰向けに寝転んだ。しばらくして、見つめ合った二人は唇を重ね会わせた後、
どちらともなく笑い出す。
「……ふふ……ふふふふ……あなた……」
さすがに疲労が顔に出ているフローラだが、汗で張り付く髪の毛もそのままに、
夫の肩に額を寄せて瞳を閉じた。
「……フローラ……」
自分も荒い呼吸を整えながら、妻の肩を抱く。
カーテンは閉じていたが、窓は開いており、潮の香り含む風が吹き込んできた。
それが少し、心地良い。
どれだけの間、二人は息を整えていただろうか。疲れてうとうとしだす、フローラの肩を掴んで、
アベルは半身を起こした。
これだけでは、まだ足らないのだ。また、欲しくなる。
「……あなた……?」
あまり明るくない明かりの下、フローラは眠そうな顔と声でアベルを見つめる。
そんな表情も本当に可愛い。
だめだ。もっと、もっと欲しくなってたまらない。
「…フローラ…」
妻の瞳を見つめ、やがて顔を近づけて唇を寄せた。そして、顔が離れると、そこにはまた
何とも言えぬ愛らしい笑顔を浮かべる妻がいる。
そんな笑顔を見せられては、うずまく欲望が腹の底から吹き出るように沸いてくるではないか。
アベルはさらに身を起こして、仰向けに横たわるフローラを天井から隠すように、覆い被さった。
「…あん……もう……あなたったら……」
少し落ち着いてきた彼女の白い頬に、またぽっと赤い華が咲いた。

「うんっ…!んんっ…!」
「はあああっ!あああっ…!」
低い声で唸りながら、アベルは重い力でフローラの最奥を確実に突いている。早くはないが、
ぐっと奥の奥まで潜り込み、そして先端が見えるほどに引き抜いてから、
また奥を目指して深く潜り込むのだ。
大きく開脚した妻の真ん中に陣取り、アベルは彼女の腰をしっかり抱いて柔らかい
肉の味を存分に楽しんでいる。
柔らかくて暖かく、汁気のある身体にうずめればうずめる程、男としての硬さが増すようだった。
柔らかさを堪能した後は、軽く揺らして反応を楽しむ。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
ちゃぷちゃぷと溢れる秘所や、切なそうな妻の吐息がまたなんともよろしい。
今、こんなに満たされて、アベルは彼女の背中をかき抱く。フローラもそれに応えて彼女の両腕が
背中に回った。自然に唇が近づき合い、実感する幸福。
それから、少し腕に力を込めて押し倒すと、フローラは素直に横たわった。
ゆっくり打ち付けるたびに、眼下で揺れる乳房が魅惑的だった。ぷるぷると震え、思わずそれに吸い付く。
彼女のは控えめと言える膨らみだが、可愛らしくてとても気に入っている。
なにより、全身、弾力があってしなやかで抱いているだけでも気持ち良い。彼女の白い肌に触れる
自分の濃い肌のコントラストが、妙な支配欲を増幅させる。
彼女は自分の妻で、好きな時に、好きなだけ彼女の身体を抱けるのだ。
まあ、実際はそううまくいかない事も多いのだが、彼女と自分は堂々と身体を結び会える間柄なのである。
そう思うと、アベルの動きはどんどんエスカレートしていく。
優しく抱いていたはずなのに、彼女の白い肌に歯形を残し、この握力で彼女の乳房を握りしめ、
相手の意向も構わず身体をひっくり返し、強姦とも言える勢いで彼女を犯していた。
そうして、フローラは気がつけばベッドの上に四つん這いにされていて、背後から
がんがん突き上げてられていた。
「あっ!あっ!あああっ!あっ…、あなた…!あなた!」
肉がぶつかり合う音をたてて、アベルはフローラの腰を砕かんばかりに責め立てる。
長い髪の毛を振り乱し、野獣のように吠え、慎み深かったはずの令嬢の影は、
今の彼女にはもうない。男の下でさんざんによがる雌に成り果て、夫とつがい続ける。
自分の肌に強く食い込む夫の爪の痛さも今では快楽だ。
しかし、こんな乱暴に犯されても、彼女はそれも夫の愛の一つだと知っている。
なにより、彼女自身、こういうのが嫌いではない。
やがて、追い詰められるような絶頂の予感に、フローラは身体を大きく震わせた。
「…くうっ!つああっ…!ああっ!ああっ!も、もう…!」
「良いよ…!イッて良いよ…!フローラ…!思う存分…、イカせてあげる…!」
そして、渾身の突きと共にすべてを解き放つ。
「ああっ……、……ああああああああっっ!」

背中を弓なりにのけぞらせ、フローラは髪の毛を振り乱して天井に向かって吠えた。
同時に襲う強い収縮感に、アベルもぎゅっと眉を寄せて彼女の腰を強く抱きしめる。
「はあっ…はあっ……はあ、はあ…」
お互いに肩を上下させる程に荒い呼吸を繰り返し、あふれ出る汗を拭こうともしない。
どれだけ、アベルの精をこの身体に注入されたであろうか。今もまた、どれほど胎内に
注ぎ込まれている事か。
全部出し終わったらしく、アベルが差し込んでいたものを引き抜くと、白濁した液体が
こぼれ出た。もう今日で三度目だというのに、まだこんなに出るとは。
「あ…ん……」
そして、フローラは力なくベッドの上に横たわる。そんな妻を見下ろして、それからアベルも
彼女の隣に倒れ込んだ。
本当に、これが自分の人生なのだろうか。
彼女と結婚してから思う、今の自分は夢の中で生きているのではと思う錯覚。
潤いのある夫婦生活。今までの自分は何だったのかと思うほどの幸福感。
彼女の実家を出てからは、経済的には豊かではなくなったものの、そのあたりは
慣れていたのでどうって事はなかった。だが、精神的な潤いは驚くほどだった。
振り返れば、妻がいる。護るべき人がいる。眼が合うと微笑んでくれる。これが、幸せというものか。
初めて知った。
まさに思い知ったというやつだ。
昼は昼で彼女を護りながらも、自分の存在意義を確認する充足感。
夜は夜で、嵌るほどに耽る濃密な時間。
こんな自分にこんな時間が訪れるなんて。
娶った妻が可愛くて可愛くて仕方がない。
ついつい夢中になって、やり過ぎてしまいやしなかっただろうか。自分は馬鹿に体力があるけど、
彼女は違うのだから。
ふと顔を上げてフローラをのぞき込むと、彼女は呼吸を繰り返しながら、
未だぐったりと横たわっている。
「……フローラ…?」
おそるおそる名前を呼ぶと、彼女は身じろぎした。
「…はあ……はあ……なあに…?あなた……」
「…あ…その……平気……?」
「…はあ………はあ……ん……ごめん…なさい……あなたの妻なのに…あなたについていけなくて……」
声をかけられて、フローラは少しだるそうに身体を動かすと、疲れた笑みで夫に応える。
「い、いや、そんな事は良いんだ。また、やり過ぎたのかと……」
「少し…休めば……大丈夫です……」
そう言って、フローラは長い夜の相手をする覚悟を見せてくれる。必死に自分について
こようとする姿が、アベルにとって本当にもう、たまらない。

「フローラ……」
「はい?」
疲れているだろうに、彼女は精一杯微笑みかけてくる。
たまらなくなって、アベルは彼女を抱き寄せて額をくっつけた。
「…あなた……?」
「フローラ…。君と出会えて……本当に良かった…」
「あなた……。どうしたの?いきなり……」
「…うん……。君と結婚できて…、良かったなって…改めて…さ……」
「あなた……」
思わず、フローラも心の底から笑みがこぼれ出る。フローラの方こそ、窮屈な生活から
連れ出してくれた夫に感謝しているのだ。せめて足手まといにならないよう、彼の妻に
ふさわしくなるために、目下修行中なのに。
夫はこんなにも力強く愛してくれるではないか。自分を望んでいる。欲してくれているのだから、
それに応えねば。それに、アベルの子供をたくさん産むなら、この程度でへたばっては
いけないと常々思っている。彼との子供なら、何人だって産んでみせたい。
なにより、フローラ自身も目覚めた快楽に溺れている真っ最中だ。
体力さえ何とかなれば、疲労も厭わず夫と夢の中に浸れるのに。
すごく疲れるけれど、もう気持ち良くてたまらない。さっきの外でいたしたのだって、
恥ずかしさはともかくとして、しっかり感じてしまった。
もう少し休んだら、また夫と夢の中へ溺れたい。
「ふう…」
息を大きく吐き出して、フローラはごろりと仰向けになる。カーテンから吹き込む風が、
熱い身体にちょうど良かった。
遠い潮騒が実際に耳に届いたのか、それとも昼間の記憶であったのか。それを確かめる術を
知らぬまま、まどろみの淵へと落ちていく。


「……あ、あなた…。お隣の若い夫婦……す、すごく、激しかったようですわね…」
こちらは伝説の勇者を捜し旅を続ける夫婦。壁越しに、女の高いあえぎ声やそれに混ざる
男の低い声、それに呼応するようにベッドのきしむ音をさんざん聞かされて、夫人の方は
落ち着かない声を出す。そして、隣のベッドで寝入る夫の方を見やった。
「…うっく……ハア、ハア…!だ、大魔王が……ゆ、勇者様にお、お伝え…を……!」
しかし、既に寝ている夫の耳には、隣の夫婦の激しいアレは聞こえていないようで、
寝苦しそうになにかうめている。
「……………………」
夫人はそんな自分の夫を横目で見て、深いため息をついた…。
2008年12月27日(土) 21:15:43 Modified by test66test




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