王子×王女5

イブールを倒した。これでアルスの妻、ビアンカを助けることができる、

そのはずだったのに。
「お前は……ゲマ!」
「ほっほっほ、イブールを倒したのですか。それでは……。」
ゲマはなにごとかをぶつぶつと唱える。

「お……父さん……、タバ……サ……早……く……逃げ……て……。」
アルスの隣にいたレックスがうめくように言う。
「ゲマ!貴様は……!」
アルスはドラゴンの杖をゲマに向けるが、
「相手を私の操り人形にする呪文ですよ。
おっと、私に攻撃しないように。勇者に当たってしまいますよ。」

「タバサ、下がっているんだ。」
「何度見てもいいものですね、親が子をかばう姿というものは……。」

レックスに攻撃はできない。
もしかしたらレックスに当たってしまうかも……。
アルスは防戦一方になり、そしてついにドラゴンの杖が跳ね飛ばされる。
体には無数の剣を受けた傷。

「あなたは探し求めた天空の勇者に殺されるのです。それも自分の息子にね。
気分はどうです?」
「ぐ……ゲマ……くそっ!」
悪態をつくも何もできない。
「お……父さ……ん……。」
「どうですか?自分が尊敬する父親をあなたの手で殺める気分は。」
「やめ……ろ……。」

倒れたアルスの胸に天空の剣がつきつけられる。
が…………。
「ほう、なるほど。さすがは天空の勇者、この呪文にも耐性があるのですか。
ですが、心の奥底に秘めた感情はどうですかね……?」
ゲマはレックスをアルスの先にいるタバサへと走らせる。

タバサは妖精の剣を抜く。
が、直後、跳ね飛ばされた。
やはり呪文主体のタバサと剣で戦うレックスの力には雲泥の差がある。
レックス、もしかして私を憎んでいるの……?
タバサは思う。
天空の剣がタバサめがけて振り下ろされる。
が、痛みは来なかった。
レックスは剣を投げるとそのままタバサへと向かって来る。
レックスはタバサの方を掴むとそのまま押し倒した。
タバサのその体があらわになる。
レックスはタバサの服を切っていたのだ。
「タバ……サ……、ごめん……。」
「レックス……。」
タバサの目に涙が浮かぶ。

「ゲマ……!貴様は……!」
だが歩くこともできないアルス。
「ほっほっほ、何をおっしゃるのです?これこそがあなたの息子が望むことなのですよ。」
レックスのベルトがほどかれる。
レックスは下着を下ろすと、タバサに迫る。

「いや……レックス……。」
が、レックスの動きが止まる。

「おやおや、あなたは自分の妹が悲しむのは嫌なのですね。それでは耐えてみなさい。
どれだけ持ちますかねえ。もしかしたら精神が崩壊して二度と戻らないかもしれませんよ……?
家族を思う気持ちとは見ていてこれほどまでに気持ちいいものなのですねえ……、ほっほっほ。」
「タバ……サ、ご……めん……。」
レックスの目にも涙が浮かんでいた。

タバサは思う。
レックスが自分の前で苦しんでいる。
このままでは……。
レックスのことが好きだった。
だからこそこんなゲマのようなものにレックスとの「はじめて」の思い出を汚されるのは嫌だった。

だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
「レックス……、私はいいよ……。レックスがレックスじゃなくなっちゃうなら……。
好きなの……」
レックスが。
「ごめん……本……当に……。」
「がっ――――。」
タバサは痛みに背中を張る。
まだ何者の侵入も許しておらず、濡れてさえいなかったそこからはとめどなく血があふれる。
この上なく乱暴な動き。

ああ、レックスのが出てる……。
タバサはそれを知覚するが、痛みに何もできない。
ただレックスとの愛を汚されたという心と体の痛みで涙を流すだけだ。
「タバ……サ……、ボク……のせいで……。」

二人とも悲しみの涙を浮かべながら自分の好きな相手と交わっている。
父の敵、ゲマのせいで。
それを見ていたアルスに蓄積した怒りにドラゴンの杖が反応する。
アルスは竜となった。
ゲマに向かって足を振り下ろす。
ゲマは何とかよけたが、次もよけられるという保証はない。
「くっ、このままでは危ないですね……。ここはいったん退くとしましょう。」
レックスとタバサの動きが止まる。
レックスはタバサから自身を引き抜く。

「あ……。」
タバサはそれきり何も言わなくなる。
タバサからピンク色の液体がどろりと出てきた。

元の姿に戻ったアルスはレックスとタバサの元へと歩き出す。
レックスはタバサの首を抱きながらすすり泣いていた。
「ごめん……ごめん……。」



それから3人はビアンカをストロスの杖の力で元に戻し、グランバニアへと戻ってきた。

「そう、そんなことがあったの……。」
アルスはビアンカにそれまでに起こったことを話した。
ゲマが二人に何をしたのかも。
「うん……。それでレックスもタバサもお互いに傷つけたと思ってるんだ。」
「でも、あの子たちを見てると小さい頃の私たちを思い出すの。
そんなに似てるってわけじゃないけどなんだかうまくやって行きそうで……。」
「じゃあ、いいんだね。」
「うん。」

「お父さん、ボク、タバサにいくら謝ってもいけないことをしたんだと思う。」
「大丈夫、タバサは許してくれてるよ。タバサを傷つけたのはお前じゃない、ゲマなんだから。」
「でも……。」
「それなら僕からレックスに罰を与えよう。」
一息置いてレックスに告げる。
「判決、レックスは一生タバサのそばで守って生きていくように。」
ニコリと笑って言う。
「それでは退廷するように。」
「うん!」

「ねえタバサ、今日一晩、言うことを聞いてあげるよ。」
言う前はどうやってタバサに話しかけようかということで頭の中がいっぱいだったが、
思ったより簡単に言えたことに安堵する。
「じゃあレックス……。」

レックスは今、タバサの上にいる。
二人とも服は着ていない。
「ねえレックス、どう?」
顔を赤くしたタバサが聞く。
「すごくかわいい……それに、きれいだ。」
「ふふっ、ありがと。」
「触っていい?」
「うん……。」
沈黙が二人の間に流れる。

レックスはタバサの胸に手を伸ばす。
タバサの背中を抱いてタバサにキスをする。
自分の顔も真っ赤なのだろうと思いながらも止められない。

口を放し、二人のものが混ざりあった唾液が橋を作る。
「いいよ、レックス。すごく。」
橋が、切れて落ちた。
「もっとレックスのあったかさ、感じたい……。」
そう言ってタバサはレックスの脇の下から背中へと両手を回す。

二人の元にお互いの心音が聞こえる。
それは心地いい音として二人の全身にいきわたる。

「ねえ、レックス、……来て。」
最後でさらに顔を赤くするタバサ。
レックスはタバサの首をだき、キスをした。

「レックス……中に入ってくる……。」
「タバサ……。」


「あっ……もう駄目……レックス……。」
「んっ……あっ……タバサ……出ちゃう……。」


二人はそのまま抱き合って話をする。
「ねえ、タバサ。ボク、ずっとタバサのそばにいるからね。」
「でもお父さんとお母さん、許してくれるかなあ。」
「大丈夫、昨日お父さんがずっとタバサのそばで守っていていいって言ったから。」
「そう、じゃあ大丈夫だね。」

彼らは魔界から帰ってきた後、結婚し、双子を含む何人かの子を生み育てたというが、
それは昔のことのため、結婚したのはいつか、何人の子供がいたのかはわかっていない。
2013年05月23日(木) 23:31:36 Modified by moulinglacia




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