主人公×ビアンカ 122@Part7

晴れ渡り、風も穏やかな空の下、どちらを見ても陸らしきものは見えない海の真ん中に一隻の船。
甲板にはキラーパンサーを筆頭に、スライム、キメラ、腐った死体と魔物のオンパレード。
普通の船が傍を通りかかったら、魔物に乗っ取られた船だと判断し、すぐにその場を離れるだろう。
しかし、この船の主は普通の人間であり、その彼は今、妻と二人で船の奥の浴室に居た。

「ちょっと、リュカ。まだ動かないでよ」
「えー……でも、もういいだろう?」
「まーだ。まだ、だめ……」
「だって、これ以上切ったらおかしくなっちゃうよ」
「そんな事ないって。だいたい、リュカは髪を伸ばしすぎなの」
そう言いながら、ビアンカは左の人差し指と中指でリュカの前髪を挟んで揃え、右手に持っていたはさみでじょきりとその髪を切り落とした。
硬い質の黒い髪がぱさりと乾いた音を立てて浴室の床に落ち、リュカがその髪の束に目を落とした。
「ねぇ……今の、絶対切りすぎてない?」
「……そんな事ないと思うよ?」
同じ様に足元に目を向けたビアンカはさも何も無かったかのように答えたけれど、裏返った声は隠せなかった。
ちらりとリュカの額に戻された視線がすぐにどこかへ逃げて行く。
「鏡見せて」
「さすが私ね。リュカ、男前よ」
リュカの言葉には応じずに、ビアンカは笑顔を作った。
不自然極まりない笑顔にリュカは「そう」とだけ返すと自分から手鏡に手を伸ばした。
「あっ!だめ!」
「やっぱり切りすぎたんだ」
その手を制そうと慌てたビアンカの姿に笑みが漏れそうになるのを堪えつつ、リュカはわざと口を尖らせて鏡を手にした。

「…………」
「あの、やっぱり、怒ってる?」
鏡を見た瞬間、眉根を寄せてしまったリュカの顔を、ビアンカは恐る恐るといった感じに覗き込んだ。
リュカの前髪は右が眉より少し下にあるのに対して左は眉より上、と明らかにバランスがおかしくなっていた。
しかもどう見ても直線ではなく、でこぼこ道か何かの断面図の様になってしまっている。
「あ、あのっ……みっ右、もう少し切ろうか」
引きつってしまった笑顔ではさみを動かし、切る仕草をして見せるビアンカに、リュカはわざとらしく溜息をついて首を左右に振った。
髪についていた切り屑がはらはらと白い旅装束の上に落ちる。
「いいよ。そんなことしたら、今度はこっちがもっと短くなりそうだからね」
「あの……怒ってる?」
普段の歯切れのいい物言いはどこへやら。
ビアンカはすっかり気落ちし、はさみを戸口にそっと置き、泣き出しそうにさえ見える顔でリュカを見た。
彼女が滅多に見せることのないこの表情がリュカの嗜虐心に火を灯した。
「怒ってはいないけど……これじゃぁ、ちょっと恥ずかしいよなあ……
陸はまだ当分先みたいだから、人には会わなくてすみそうだけど、 みんなには笑われちゃうよね」
リュカはビアンカに向けていた目を逸らし、浴室からでは見えない壁の外へと目を向けた。
「うん……ごめん、ね」
「んー……別に、そんなに怒ってはいないけど、俺だけ、っていうのはちょっとずるくない?」
「……え?」
細められたリュカの視線に、ビアンカは思わず自分の右肩に乗せてあるみつあみを両手で握り締めた。
「大丈夫、それは切らないよ。ビアンカの髪、大好きだし」
少し照れたように言いながら、リュカはビアンカの手に自分の手を重ねた。
「ホントに?」
「うん。でも……」
「でも?」
笑みを作っている筈の目がビアンカに得体の知れない恐怖感を与える。
優しく触れている手も、どこか取って付けた物の様にさえビアンカには感じられた。

それでもようやく近頃馴染んで来た肌に触れられれば、身体は正直に反応する。
みつあみを握り締めていた指から伝わるリュカの指の感触に、ビアンカが小さく息を吐いてその指から力を抜いた。
「リュカ……?」
「なに?」
「……なんでもない」
『でも』の続きが気になって口を開いては見たものの、何を言っていいか解らず、ビアンカは結局口を閉じた。
リュカが何か企んでいるのは察することが出来ても、それが何かが解らないせいでビアンカは戸惑いが隠せないようだった。
一方、リュカの方はそれと知りつつ、ビアンカの手を自分の方へと引き寄せてその甲にゆっくりとしたキスを落とし、口を開いた。
「ねぇ、ビアンカ?」
「……なに?」
「俺だけ恥ずかしい思いをするのって、不公平だよね?」
「えっ?……あ、やっ」
その言葉に思わず身体を引いたビアンカだったが、リュカに強くてを引かれ、
バランスを崩して丸椅子に腰掛けていたリュカに倒れ込んだ。
リュカはビアンカの細い腰にすかさず手を廻して抱き寄せ、自分の開いた脚の間に立たせると、
彼女の柔らかな胸に鼻先を埋め、視線を上に向けた。
その先には、先ほど以上に困惑の色を濃くしたビアンカの顔があり、リュカの中には、もっと彼女を困らせたいという思いが沸きあがった。

胸の谷間に服の上から鼻を押しつけ、大きく息を吸い込んで、リュカは、
「んー。いい匂い……」
と溜息を漏らした。
「せっけんの、匂いじゃない?昨日、洗った、ばっかり、だし……」
服を隔てて伝わるリュカの熱い吐息と、尻をまさぐる両手にビアンカの呼吸が早くも乱れ始め、
ビアンカはそれを隠すために必死で話を逸らし誤魔化そうとした。
「そう、かなぁ?ビアンカの……匂いだと思うんだけど……特にこういう時の」
それをさせまいとするかの様にリュカの指が、言葉と一緒になってビアンカの脚の隙間へと更に伸ばされた。
「や、あっ!」
ビアンカの腰が逃げたが、リュカに抱き寄せられているせいで、結果的に、先ほど以上に彼に身体を近づけてしまうだけだった。
「あれ、まだ……?」
指に乾いた下着の感触が触れると、リュカは片手を一度離し、今度は胸へと移した。
数度、痛みを与えない程度の力をリュカが指先で彼女の胸に与えるとビアンカの頬はすぐに紅潮した。
「んっ……ぁ……」
時折零れる溜息に甘い声が混ざり、伏せられた瞼が切なげに震える。
服ごしにも判るほどに硬く尖ってきた胸の先をリュカが摘み、その度にビアンカは押し殺した嬌声でそれに答えた。

しばらくして、体温を増した胸をリュカに押され、ビアンカは少しだけリュカから身体を離した。
既に力が入らなくなって来た身体を保とうと、手はリュカの肩に置いたままだったけれど。
「ねぇ、濡れて来た?」
普段のリュカならばこんな事は滅多に聞いてこないし、
ビアンカもこんな問いは突っ撥ねて誤魔化すが、今日は負い目があるせいか、珍しく素直に頷いた。
リュカはリュカでそれが面白いのか、今度はスカートを自分で上げるように要求した。
「な、なんでっ……」
「だって、本当かどうか解らないじゃないか」
「……ホントだもん。リュカが、いっぱい、触るから……」
「だったら見せられるだろ?」
「べ、別に見なくても……」
「見ないでどうやって判るのさ」
「さ、わる……とか」
「触って欲しいの?」
「もうっ!なんで今日はそんなに意地悪ばっかり言うのよっ!」
恥ずかしさに耐え切れず、ついにビアンカは声を上げた。
けれどリュカは怯まない。
片手で腰を捕らえたまま、もう片方の手のひらでスカートの上からビアンカの脚を撫で、それだけで短く息を吐き出すビアンカに、口の両端を上げてにんまりと笑って見せた。
「ビアンカがはずかしそーーな顔するから」
「リュカが恥ずかしい事させようってするから…………ぁ……」
そこまで言ってビアンカははたと思い当たり、目を見開いてリュカの顔をまじまじと見つめた。
「さっき言っただろ?俺だけ恥ずかしい思いをするのはずるい、ってさ」
「だ、だけどっ」
「いいじゃない。ビアンカはみんなに見られたりしないんだからさ。
今日は俺に思いつく限りの恥ずかしい事、いっぱいするからね。はい、スカートめくって見せて」
「や……」
有無を言わせないリュカの物言いに、ビアンカはそれでも抵抗を示した。
しかし、今日のリュカはいつも以上に頑固で、そして意地悪くなっていた。
「じゃぁ、触ってあげない」
そう言って、またビアンカの乳房を弄び始める。
「ま、待ってよ。解ったから……でも、あんまり、変な事はしないでね」
ビアンカはリュカの肩に添えていた手を離し、自分のスカートの裾をつまむと、それをそっと持ち上げた。

スカートの下から現れた白い下着には、ビアンカが零し始めた雫が染みてきており、
腰を覆う部分と脚の境を覆う部分とでは明らかに布の色が違っていた。
「ホントだ」
リュカがそこをじっくり眺めてからビアンカに視線を向けると、彼女は赤くなった顔をそっぽに向け、怒ったような泣きそうなような表情を作っていた。
少し可哀相かなと思いはするものの、それを上回る高揚感に乗せられて、リュカはビアンカの下着のふちを指で辿り始めた。。
「ビアンカ、ホントは意地悪言われるのが好きなんじゃないの?」
「そっ…そんな事、あるわけないじゃないっ」
指の動きにビアンカは抗議の声が僅かに震わせ、つまんでいたスカートを握り締めた。
それでもリュカは加減する事なく続ける。
「そうかなぁ。だって俺にはいつもより濡れてるみたいに見えるよ?まだちゃんと触ってないのに」
「だって、さっき……」
「胸、触ったくらいでこんなに?」
リュカは湿った箇所に指を触れさせた。
しかし、その触れ方はビアンカに刺激が伝わるようなものではなく、ビアンカの身体は指を感じ取ろうとして感度を上げた。
「ふ……」
切なく口の端から落ちた彼女の声に身体の芯の疼きが増すのを感じたが、リュカはあくまで平静を装う。
「ねぇ、ビアンカ。そろそろ脱いだら?」
「えっ!?」
「これ」
反対側の手の指を臍の下にかけるリュカ。
「や……」
「脱がせてほしい?」
「そういう事じゃなくてっ」
「じゃあ、濡れたままずっと履いてるの?」
ビアンカの抗議を受けてようやくリュカが指を強く押し付けた。

「ひあっ!」
急に与えられた刺激にバランスを崩した身体を支えようと、ビアンカはとっさにスカートから手を放し、リュカの肩に手を突いた。
「ね、脱ぐとこ見せて」
それでも首を横に振るビアンカを見てリュカは頑固だなぁと呟いて口を尖らせた。
「……髪の毛はホイミでも元に戻らないのに……」
「わ、わかったわよっ……バカっ」
涙目になりながらもビアンカはリュカの肩から自分のスカートの中に手を移した。
ビアンカがスカートを降ろす様子をじっと見つめるリュカ。
言っても無駄と諦めたのか、いまいちおぼつかない膝のまま、ビアンカは濡れた下着からどうにか片足を抜いた。
下着と身体の芯を透明な橋が繋ぎ、リュカの喉がこくりと鳴る。
身体を支えようと片手をリュカに伸ばしたビアンカの目にリュカの顔が映った。
視線は一箇所に注がれ、頬は紅潮している。
気のせいか息も荒くなっているようにビアンカには思えた。
そしてなにより、彼女の視界の端では彼の分身がその存在を主張していた。
「リュカだって……」
「え?」
リュカがビアンカの言葉に顔を上げると、彼女はまたそっぽを向いてしまったが、
リュカはそれだけで彼女の言わんとした事を理解し、口元に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「そりゃ、ビアンカがかわいいからだよ」
「何がよ……」
怒る気力も失せたのか、ビアンカは溜息混じりに呟くと、はい脱げました、と下着を丸め、それを持ったまま両手を後ろに組んだ。
次は何?とばかりに膨れるビアンカ。
そんな開き直った態度が気に入らず、リュカは普段はこういう事には使わない頭を懸命に稼動させ、
その結果、ひとまず何の前触れも無くビアンカのスカートを持ち上げてみた。

「きゃ…やっ!」
リュカの予想に反して過剰な反応を示し、ビアンカは一歩下がり、捲くられたスカートを抑えようとした。
おかしい訳でもないのに笑みを零す口元を懸命に押さえながら、リュカはスカートの裾を摘まんだまま、再度ビアンカに顔を向けた。
「すっごい濡れてたね」
「なんでそういう事、言うのよっ」
「ホントの事言っちゃダメなの?」
「そ、そうじゃないけど……そんなじゃ、ないもん……」
語尾を消えそうに細くして、ビアンカは俯いた。
それだけの事なのに、リュカの下半身の血の巡りが加速する。
一方では早く抱いてしまいたいと思うのに、一方では滅多に見られない弱気になったビアンカをもっと見たいと思ってしまう。
しかしかなり近くなってきていた限界を堪えるのはどうにも辛く、それでもあくまでそっけなくリュカは口を開いた。
「そうか、ビアンカばっかりはずるいよね」
「え?」
「俺のも見ていいよ」
「……み、見たくないもん。別に」
半分は本心から、半分は期待しているとリュカに思われたくないために、ビアンカは極力嫌そうに唇を突き出した。
リュカの方も半分本気、半分は悪ふざけで多大にショックを受けた顔をしてみる。
「そっか……そうだよね、見たくないよね。俺のなんてさ……」
「そういう訳じゃ……」
ほんのちょっとの事で狼狽するビアンカをリュカが視線だけで見上げると、
ビアンカは、そういう訳じゃないんだよ、ともう一度小さく呟いてその場に膝をついた。
リュカの前に膝をつくと、目のやり場に困りながらもビアンカはリュカのベルトをはずし、旅装束をまくった。
今にもはじけ飛んでしまいそうに見える下着の前を留めているボタンを緊張と羞恥でおぼつかない指先で外してやると、リュカのそれがぬっとその全身を現した。
今までにだって見ているものなのに、身体のほかの部位とは明らかに違う質感と、己を主張するその猛々しさに、ビアンカは思わず息を呑んだ。
ビアンカが揃えた指をそれに触れさせると、リュカは小さく身を震わせた。
ビアンカの指がすべるようにそれを包み込んでいく。
唇を寄せ掛けた彼女は一度動きを止めて、いつも右肩に乗せてあるみつあみを右手で後ろに送った。
その手がリュカの膝に乗る。
リュカはそんなちょっとした仕草にも高揚して、ビアンカの手の中のものがいっそう硬さを増した。
改めて、というふうに一呼吸したビアンカの吐息にもリュカはくすぐられてしまう。
「んっ……」
ビアンカの唇がゆるく押し当てられた。
唇へのキスと同じように、はじめは触れるだけだった唇が、徐々にあちらこちらと吸い付いていき、それにつれてリュカの息遣いも荒くなっていった。
しかし、淡すぎる指使いにもどかしくなってきたリュカは、小さな声で彼女の名前を呼んだ。
名を呼ばれ、ビアンカは一度動きを止めると、口内の唾液を掬い上げた舌を覗かせ、握りを少し強めて、彼自身の頭の部分にゆるりと舌を絡めた。

「は、ぅっ……」
思わず声を出してしまったリュカに気を良くしたビアンカは、上下動する手の邪魔にならないようにしつつ、ぴちゃぴちゃと音を立ててあちらこちらを舐め始めた。
「ふっ…う、あ……」
ビアンカの舌が動くたびにリュカが両手で装束を握り締める。
ビアンカは最後に根元から頭まで彼の反りに合わせて舐めあげ、そのまま口でかぽりと包み込んだ。
「はっ……!」
「ん…くっ……ぅふう…」
上目遣いにリュカを見上げたビアンカの目が満足そうに笑み、リュカはその視線に物理的な快感とは違う高まりを感じ、また一歩限界に近づいた。
ビアンカもリュカが発する声と唇から伝わってくる熱に浮かされ、身体の疼きが増してきて、無意識のうちに腰を揺らした。
リュカはそれを見逃さない。
「ビアンカも……して、あげようか?」
彼女の頭を押さえ込み、がむしゃらに突き動かしたい衝動をどうにか堪えているリュカが問うと、ビアンカはびくりとして動きを止め、どうして分かったんだとばかりに不思議そうな視線を彼に向けた。
「……ふ、う?」
息を漏らした口の端から幹を伝って唾液が流れる。
「だって、ビアンカ……お尻、動いてる」

頬を染めていた淡い紅色が耳まで一気に広げ、ビアンカは顔を上げた。
「……っは!やっ、だ……そんなこと……」
「いいじゃない。ビアンカ、俺としたいと思ってくれてるんでしょ?
だから、すごく嬉しい」
そう言って、リュカはビアンカの唇にたっぷりとついた唾液を親指で拭い、その指をぺろりと舐めた。
リュカの言葉に押されたのか、その仕草に押されたのか。
ビアンカの熱を持っていた箇所はひときわ熱い雫を体外に押し出し、それが膝まで流れ落ちる感触に、ビアンカは身体を震わせ、片眉をひそめた。
「っ……」
つられたようにリュカが震え、すでににじみ始めていた白く濁った液体がその量を増す。
「……ビアンカ、あとちょっと……お願い」
痛みを堪えているようにさえ見えるリュカに言われて、ビアンカは頷いて再びそれに顔を寄せ、
「口で……いいからね」
と告げると、口でリュカを包み込んだ。
動かす余裕のない舌をどうにか絡めて、顔を前後に揺らし、口で補えない所には手を使う。
ビアンカが溜まった唾液を飲み込もうとして、上下した舌にリュカの先端が圧迫される。

「ビっ……ビアンカッ!」
その声に、ビアンカがひときわ強く口の中のものを吸い上げた。
「あっ……くうぅっ!」
ついに耐え切れなくなったリュカがビアンカの口の中で爆ぜた。
喉奥めがけて放たれた精液は飲み干しきれないほど多く、ビアンカの口の端から、白い濁液があふれ出て、ビアンカの胸元にたぱたぱと落ちた。
硬さを失ってしまったものがビアンカの口から離れると、彼女は顔をゆがめて、口の中に残ったものをすべて嚥下して、肩を上下させた。
口の周りについているものを指で掬って舐め取り、目の前の萎えたものを手にして、ビアンカは舌で周りについているものを拭った。
それだけで、リュカはまた軽く勃ち上がる。
「ありがと……」
リュカは椅子から滑り降りるようにしてビアンカの目の前に膝を着き、彼女の口の周りにこぼれた、自分のものを舐め取ると、唇に軽くキスをした。
「すっごく気持ちよかった」
熱が冷めきらない笑顔でそう言うリュカにビアンカも照れた笑顔を返した。

リュカはまた一つキスをすると、近くにおいてあったバスタオルに手を伸ばし、
「今度はビアンカの番ね」
と言った。
「え……あ……」
「ね」
頬に唇を落としたリュカに、ビアンカが頷くと、彼は両腕をビアンカに廻し、その後ろにバスタオルを広げ、寝て、と言いかけた。
「あっ!ちょっと待った」
バスタオルの上に腰を落としてかけていたビアンカがその動作をやめてリュカの方を見ると、彼はビアンカの腰留めを外し始めた。
「えっ!?なっ、なにっ?」
「服、汚しちゃったからね。脱いで」
「あ……自分で、脱ぐ……」
「ダメ。俺が脱がす」
ビアンカの返事も待たずに、リュカはビアンカの衣類を脱がせてしまい、ビアンカは先ほど、下着を脱いでしまったことを今更思い出し、服を取り返そうと手を伸ばした。
しかしリュカは、彼女の手が届かないよう、自分の後ろにそれを置いてしまうと、片腕だけで彼女を包み込み、まだ苛めモードの抜け切らない意地の悪い笑顔を見せた。

「服は、要らないよね」
「それはっ……そう、なんだけど……」
「だったら、いいじゃない」
うろたえるビアンカの背中を支え、その場に横にすると、リュカは彼女から身体を離した。
白い身体が窓から差し込む日の光を反射して、滑らかな曲線を描き出す。
リュカは自分の衣服をすばやく脱ぎ捨てた。
その間も恥らって身をよじるビアンカからは視線を外さない。
ようやくすべて脱ぎ終えると、リュカはビアンカの脇に両手を添えた。
手のひらで彼女の輪郭をなぞり、下へとそれを移していく。
「あっ……んっ……」
移動するリュカの手の下で、ビアンカの肢体がくねり、そのたびに甘い声が彼の耳を打ち、リュカは再び自分が高まってきている事を感じていた。
手が膝まで来て、リュカがビアンカの閉じられた膝に手をねじ込むと、ビアンカがか細い声を出した。
「あ……や、やだ……」
「開かなかったら、何にも出来ないよ?」
「でも、ここ……明るいし……」
リュカは一度窓の方を見てから、またビアンカに顔を向け、
「うーん……でも、暗くするのは、無理じゃない?」
口元に笑みを浮かべてそう告げた。
「そう、だけど……」
「まあ、今日は諦めて」
戸惑うビアンカをよそに、リュカは膝を開き、その膝が彼女の豊満な胸につくほど膝を折り曲げた。

「やあっ!」
とっさに脚を閉じようとしたビアンカだったが、当然リュカの力にかなう筈もなく、ビアンカの濡れそぼった身体の中心はリュカの目の前に晒され、リュカはぬらぬらと光り、ひくんと震えるそこをじっくりと眺めた。
先ほど雫が流れ落ちた事を示す跡を見つけると、リュカはすかさずそこに舌を這わせ、
「ン……膝まで……」
ビアンカに聞こえるような呟きを発した。
「ど……して、そう、いうことっ……」
足先をひくんと跳ねさせながらも、抗議の言葉を口にしたビアンカを上目遣いで、リュカは見上げた。
「だって、本当のことだし?
それに……ねえ?」
前髪のお返しが終わっていないと、柔らかいももを揉みしだき、跡がつきそうなほど強く吸い、上目遣いでそう言うリュカにビアンカは目を見張った。
「うそっ!や……んっ!リュカ、しつこ……っ」
「色々言うけど、ビアンカ、いつもより濡れてない?」
リュカはくすくす笑いながら、湧き出してくる蜜を指で掬ってそれを舐めた。
ビアンカはビアンカで強く首を横に振る。
「そう?なら、ちゃんと濡らさないとね」
リュカの舌がビアンカの身体の入り口に差し込まれた。

「んあっ!」
ビアンカの背がびくんと反る。
リュカは彼女の脚を押さえたまま、舌でひだを舐め、唇で秘核を甘く食んだ。
「はっ!……あっ、ああっ……んっ、や……」
一つ一つの動きをする度に声と共に雫が溢れ、ビアンカの秘毛はぺったりとその白い肌に張り付いている。
「どう?気持ちいい?」
口の周りを舐めながらリュカが尋ねた。
彼の顔もまた、高揚感でのぼせている。
「……っ、知らないっ!」
「気持ちよくないなら、そう言ってよ。ビアンカのこと、気持ちよくしたいから」
ビアンカの怒った口調に動揺もせず、リュカは彼女の中に指を二本そろえて沈めた。
「ふ、くぅぅ……」
真っ赤に染まった顔のビアンカは眉をひそめて身をよじり、己の中のリュカの指を締め付けた。
言葉とは裏腹に止まることを知らずに、高まっていく彼女の様子とくちゅくちゅという粘質の音がリュカを煽る。
彼女が一番反応を示す場所を押し、親指で周囲の毛並みをいじるうちに、リュカはまた一つのことを思いついて、リュカは少しはなれた所に置いてあった剃刀に手を伸ばした。

「リュ……リュカ?」
「ここ、きれいにしようか」
剃刀を持ち直し、ビアンカの下腹に刃を当てるリュカにビアンカの顔の色が引いた。
「や、やだよ」
「大丈夫。傷つけたりしないから」
「や……」
「子供の頃みたいにさ……」
調子に乗って笑顔で言うリュカに対して、ビアンカの目からポロリと涙がこぼれた。
「ビアンカっ?」
さすがに慌てるリュカから、ビアンカは目を逸らし、指で涙を拭った。
「もう、知らないっ。
…たし、ちゃんとっ……謝ったのに、リュカ、意地悪ばっかり……」
「あっ……うん、うん。そうだよね、ごめんね、俺、やりすぎちゃったね」
リュカは即座に剃刀を後ろに放ると、ビアンカを折り曲げてあった膝ごと抱え込み、涙の跡がかすかに残る目じりを舌で拭われビアンカの肩が小さく揺れた。
「ごめんね、ビアンカ」
頬に唇を落とすリュカに、ビアンカは顔は横に向けたままで視線だけを向けた。

「もう……あんなこと、しない?」
「うん、しない」
「ホント?」
「ホント」
「反省してる?」
「もちろん」
ビアンカはようやくリュカの方に顔を向けると、自分の唇をほんの少しだけ突き出して、人差し指でそれを示した。
「ん……」
リュカは小さく頷くと、目を細めてゆっくりと顔を寄せた。
安心したようにビアンカが瞼を伏せ、近づいてきた唇を受け止める。
互いに互いの唇の感触を堪能しながら、どちらからともなく、唇を開き、そこから覗かせた舌で相手の唇を舐め合う。
そうするうちに見つけた相手の舌に自分を摺り寄せ、絡め合う。
口の端から溢れ出た唾液がビアンカの頬へ。
頬から首筋へととめどなく流れていき、唾液を混ぜ合う音が口内から互いの聴覚を刺激した。
鼻から漏れる息、密着しているせいで伝わる鼓動、それらが二人を先ほど以上に高揚させていった。

リュカの熱を帯びた塊とビアンカの身体の芯がこすれ合う。
その音に加えて、重ね合った唇が立てる音と、その隙間からこぼれる乱れた息遣いのせいで、船の一角にある浴室は淫猥な空間となっていた。
秘核をリュカ自身に強く嬲られ、ビアンカが正常な思考回路を保つことが困難になってきていて、彼女はただひたすら、リュカにしがみつき、リュカに唇をとらわれ、
本能の赴くままにリュカの唇を貪りっていた。
しかし、ビアンカはどれだけ高まっていても、どれだけ感じ易い場所を圧されていても、どうしても望む場所に行き着けないようだった。
ビアンカが僅かに顔を引くと、それはリュカも同じことだったらしく、物言いたげな視線をビアンカに落としてきた。
乱れた息をどうにか整えたビアンカが声を発しようとすると、それより先にリュカがビアンカを求める言葉を告げた。
上昇した体温のせいで赤く染まっていた頬を更に紅潮させてビアンカが頷くと、リュカはビアンカの片足を抱え上げて、僅かに身体を浮かせ、怒張したペニスをビアンカの中心に合わせると一気に彼女を貫いた。

「ひぁっ!……ぅんっ」
浴室に響いてしまった声を慌てて押し殺そうと、ビアンカが唇を噛む。
それをさせまいとするかのように、リュカは一度引いた身体をこれ以上はないという程にビアンカに押し付け、ビアンカの中で己自身を暴れさせた。
「あんっ!やっ、リュッ……ま……ああッ!!」
何か告げようとはするものの、言葉を紡ぎだす前にリュカにそれを阻止されて、ビアンカは響く声を止めることすらも出来なくなってきた。
「ごめんっ……待て、ない……っ」
リュカの方も過ぎる快感に、息を切らし、眉根に力が入る。
「はッ……ぁ!んくぅっ!」
容赦のない攻めに、ビアンカは掠れた嬌声を上げることしかできなくなり、むしろリュカにしがみつき、自ら彼を求めるような動きさえするようになってきていた。
「あ、あッ……ああああッ!」
「ビッ……ビアンカッ」
限界を向かえ、これまで以上に自分を強く締め付けるビアンカの熱く濡れた感触に堪えきれなくなり、リュカもついに限界を迎えた。
どくどくと熱い奔流が、既に弛緩し始めているビアンカの中へと下っていく。
「んっ……」
身体からすべてが抜け切ってしまったかのような感覚に、リュカがぐたりとビアンカの上に崩れると、ビアンカはうっすらと目を開けて、荒く肩を上下させながらも、そんな彼に小さく微笑んだ。
リュカが重そうな身体を動かして、そんなビアンカの唇に口付けてると、彼女は満足そうなため息を漏らした。

しばらくしてリュカが身体を起こすと、ビアンカも起き上がった。
「っ……」
不意にビアンカが片眉をしかめ、息を呑んだ。
「ビアンカ?どうしたの?」
顔を覗き込んだリュカに、ビアンカはなんでもない、と慌てて頭を横に振った。
しかし、リュカは目ざとく擦り合わせられたビアンカの脚に目を留めて、彼女の耳元に口を近づけた。
「もしかして、出てきちゃった?」
図星を当てられ、顔を真っ赤にして俯くビアンカの耳を見て、リュカはまたどこか意地の悪そうな笑みを浮かべたが、すぐにそれを消して彼女の耳元にそっと唇を落とした。
「きれいにしようね」
リュカがそう言うと、ビアンカは小さく頷いた。
その後、二人が浴室から姿を消したのは日もすっかり沈んだ頃だった。

(了)
2008年12月27日(土) 05:44:57 Modified by test66test




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