新妻の目覚め

 フローラは寝台の上で横たわり、身悶えていた。全裸である。
「あ、あなたぁ、ん、どうして……」
 右手を秘所に当て、人差し指と薬指でドロドロに濡れた肉門を開き、中指を出し入れする。左手は形の良い右胸を揉み上げ、硬くなった乳首を人差し指で転がした。
 頬を紅潮させ、いやいやという風に頭を左右に振り、荒い呼吸を繰り返す。
「あなたぁ!」
 ひときわ大きな声を上げると、秘所をいじっていた右手を両腿で挟みつけ、背を反らせる。絶頂に達したのだ。
「あなた……」
 脱力し、寝台に横たわるフローラの青い目から涙が溢れた。

 この一週間、フローラは夫との肌の交わりをしなかった。
 結婚から一月、冒険と旅の日々を過ごす中、フローラは夫から毎日のように求められた。大商人の娘として何不自由なく育った彼女は、性的な知識も乏しく、経験は全くなかった。
 そんなフローラに、夫は男女の営みの快楽を教え込み、生まれて初めて経験する肉の悦びにフローラは溺れていった。
 子供の頃から激しい肉体労働に従事し続け、魔物との戦闘で鍛え抜かれた夫の肉体。そして、女の体を知り尽くした技巧はフローラに狂おしい極上の快楽を与えた。
 だが、この一週間、夫はフローラの肢体に全く手を振れてこなくなったのだ。

 夫が自分と肌を合わせなくなって4日目、野宿の寝袋でフローラは夢で夫に抱かれていた。次の日の朝、下着はぐっしょりと濡れていた。夫の仲間の魔物達の視線が、自分に集中してる感じがして、落ち着かなかった。
 5日目、街の宿屋の寝台で、彼女は火照った体を持てあまし、一睡もできなかった。何度も隣室の夫に「抱いて」と言いに行こうと思った。だができなかった。彼女の中のプライドの高さと教養が、はしたない行動を許さなかった。夫の振る舞いにフローラは涙で枕を濡らした。
 6日目、体のうずきに我慢できなくなった彼女は、初めて自慰をした。だが、その行為は己の夫のぬくもりと感触への飢えを深めただけだった。

 7日目の今日、彼女は再び自慰をした。その行為は空しさばかりをフローラに残した。
「どうして、どうしてなの……」
 一時の紛らわしとわかっていても、体のどうしようもない火照りを鎮めるのは自慰しかない。再び手を敏感な箇所で蠢かせはじめたフローラに、扉が開く音が聞こえた。
 あわてて目をやると、そこにはフローラの夫が立っていた。
「あなた……」
「ごめんね、フローラ」
 身を起こすフローラに近づき、男は彼女の唇にキスをする。そのままフローラを寝台に組み伏せ、覆いかぶさっていった。
 男の左手はフローラの張りつめた右の乳房を揉みしだき、口は左の乳首を吸い上げる。
「ん……」
 フローラの胸は巨乳という程ではないが、豊かで形も良い。結婚以来の夜ごとの営みで夫に揉まれ続け、胸はより大きくなった。内心で密かに誇りに思っている胸を重点的に攻められ、フローラは肉の快楽と精神的な満足感の両方に満たされる。
 豹や虎を思わせる夫の肉体に組み敷かれ、隅々まで唇と手で愛撫を施されたフローラの肉体は燃え上がっていた。そして、一週間ぶりに味わう愛しい男の感触は、どんな美酒さえも及ばない酔いを彼女に与えた。
(あなた、来て)
 フローラの肉門は、奥から染み出す蜜で溢れかえっていた。あとはここに夫が剣を突き込めば、フローラの肉の飢えは癒される。己の内側を満たす夫の剣を、彼女は待ち望んだ。
「やめだ」
 いきなり男はフローラの体から身を離すと、寝台から降りた。
「あ、あなた……」
 悲痛な思いに貫かれ身を起こすフローラを、男は薄い笑みを浮かべて見つめる。
「そんなに入れて欲しいのか?」
 あからさまな夫の問いに、フローラは顔をそむける。
「そ、そんなこと」
「フローラ、俺は君にもっと自分に正直になってほしいんだ。だから、はっきり言ってくれ。本当に止めるよ」
「ほ、欲しいです。あなたに入れて欲しいんです」
 あさましい言葉をやっとの思いで口に出すフローラに、男はさらに追い打ちをかける。
「俺の何を、どこに欲しいんだ」
「そんなこと……い、いえません!」
「仕方ないな。じゃあ、こう言うんだ。あなたの太くて硬い剣を、淫らなフローラの奥まで突っ込んで掻き混ぜてください。お願いします。これで許してあげるよ」
 フローラは、夫の口から出た言葉に頭が真っ白になった。大商人の令嬢として育ったフローラのとっては、聞くのさえ汚らわしい言葉であった。こんな言葉を夫が自分に言わせようとしている。衝撃に何も考えることができない。
「あなた、お願いだからそんな酷いことを言わせないで……」
 妻の必死の哀願に、男は黙って寝台の下に脱ぎ捨てた衣服を手に取り、ゆっくりと身につけていく。
 夫の言った言葉を紡ぎ、生殺し状態の自分にとどめを刺してほしい。
 そんなあさましい言葉は言うことはできない。
 フローラの心は二つに分かれる。肉の欲望と理性と羞恥心がせめぎ合う。そして、夫がゆっくりと服をまとうのを見るフローラの心での戦闘は、肉の欲望が勝利した。
「あ、あなた。言いますから、出ていかないで……」
 フルーラの声に、男は顔を上げて面白そうな表情で彼女を見る。
「あなたの、ふ、太くて……硬い、剣で、淫らな……ん!」
「フローラ、もう一息」
 わき起こる羞恥に言葉が出せないフローラに、夫は先を促す。
「淫ら、淫らなフローラの中に突っ込んで、か、かき混ぜてください」
「お願いします、は?」
「……お、お願いします。いやあ!」
 あまりにもあさましい言葉を己が口に出したことに耐えきれず、フローラは両手で顔を覆って俯いてしまう。だが、彼女の中では不思議な感情がわき上がった。
 大商人の令嬢たる自分があさましい言葉で愛する夫におねだりする。その今の状況に異様な興奮を感じたのだ。恥ずかしくて死にたいくらいなのに、肉門は蜜をあふれさせる。
(私、どうなってしまったの?)
 男はいきなりフローラの腕を取ると、ベッドに組み敷いた。足首を掴むと、大きくフローラの足を開かせる。
「入れてあげるよ」
 夫はいきなり自分の剣をフローラの肉門に刺し込んだ。あふれかえる蜜によってとろけているそこは、夫をズブズブと呑み込んでいく。
「ひあっ、ああっ!」
 待ち望んでいた夫の剣を体内に感じ、フローラは背を仰け反らせる。自分の指では決して得られない体内の充実にフローラは歓喜した。もう2度と男が自分から離れないよう、夫の広い背中に手を回して抱き締める。
 男は力強く、それでいて繊細で微妙な動きとリズムの変化をもってフローラを頂点へと追い上げていく。
「あ、あなた、だめなの、いいの、変なの……」
 あまりの快楽に、フローラは自分で何を言っているかわからなくなっていた。夫の与えてくれる肉の悦びしか考えられない。
「あ、ああっ!」
 夫が自分の中に白い欲望を放った瞬間、フローラは待ち望んでいた極彩色の頂点に到達したのだった。

「あなた……」
 フローラは満ち足りた心地で、隣に寝る夫にささやきかける。
 フローラは、夫の腕の中で何度も何度も頂点に導かれ、一週間の飢えは完全に満たされた。だが、フローラの心には夫への疑問が渦巻いていた。
「どうして、私を……」
「こうでもしなくちゃ、フローラが素直に俺を求めてこないから」
「え?」
「俺は、フローラに自分から俺を求めてきて欲しかったんだ。抱いて下さいって」
 これまでフローラは夫から求められたことはあっても、自分からは求めなかった。大商人の令嬢という育ちから来る貞節さと羞恥心が、己から男を求めるという行為をさせなかったのだ。
「で、でもあんな恥ずかしいことを……」
 あさましいおねだりの言葉を思い出し、フローラは真っ赤になる。
「だけど、興奮した」
 図星だった。大商人の令嬢たる自分が、淫らに男を誘う。そのことは不思議な開放感と興奮を彼女に与えた。
「フローラ、君が知らないことを俺はもっと教えてあげるよ。だから、フローラも俺をもっと喜ばせてほしいんだ」
「……はい、あなた」
 フローラは自分の身も心も奪い尽くした夫に、恥ずかしそうな笑みを浮かべてうなずいたのだった。
2008年04月11日(金) 19:45:28 Modified by dqnovels




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