神話の時代は終わった

ラダトーム王は娼婦と思った。ロト(オルテガ)の娘と知れると王室は王すら跪く。
「顔を上げて。」
旅人の服を着て、逞しい戦士を連れ現われた勇者バリーは可愛く馴れ馴れしく言葉を始め、自
分は非力な人間だと言う。力をお借りしたくてこうして参りました。父がこの国でどの様な扱
いを受けているか存じせんが、父もこの思いに違う事はありませんと。
聴取者の胸板に震える熱い声を訳し、夫の響きの悪い嗄れた声が叫んで王室に伝えた。
勇者は芸術家。そして歩くだけで城が艶めかしさで華やぎ、しかし。
「急ぐんですね?」「子を奪われました」
「正門からお出になると騒ぎになるでしょう。裏口へ。母御前とは更に心酔いたしました」
しかしオルテガの顔見知りにはバレた。笑ってしまう程目元が似ている。銀色が雪の様に舞う
青い目、その色だけでもかつて世界を制したアリアハンの魔法力を示していた。
「勇者様抱いてあげて下さい」
バリーは乳まで出して嬰児を愛した。
「へぇー勇者さん母さんなの?」楽器を持った少年が授乳しているバリーに近付いて来た「うん」
「かっこいい…子供を探す旅なんだ…」
どうりでただの女戦士には無い迫力のある女だと少年は思った。
「俺…目茶苦茶ファンになっちゃった」
「本当?」
バリーの母らしい穏やかな顔にガライ少年は落雷が落ちた様に打たれた。溢れる愛情の向かう
本当の相手がなく、持て余し気味に見えて少年の目にもバリーは切なかった。
ついでにバリーの乳首が一瞬見えそうになった。(見えてないよね…)(お、…おっぱいが…)
「私がヘマしてもファンで居る?」
バリーは悪戯に笑う。
「うん」少年は指切りしてみせると言うので、勇者は小指を貸し絡めて艶めかしく笑った。
「あんな女とやりてぇーなぁ…」「すげー可愛い…あ、笑った。笑った」
夫は妻が男達に噂されて胸がすく様な時もあったが、喧嘩する事もあった。王すら軽く睨んだ。
勇者はそんな戦士を見て、この人の為にもっと綺麗になろう、可愛くなろう、…Hになろうと。
そしてシャアと出会う。彼はゾーマの力で生を受け実子の様に思われていた。
ゾーマは死に傾倒し、人の肉を糧に出来なくなって死に行くモンスター達さえ静観。
そこで現われたのがゾーマに私怨のあるロト。戦いに燃え、モンスターに新しい糧と生き方を

教えて回り、人間もモンスターも救った。
「こんな人間が仲間で良いんですか?」彼は父の仲間であった。勇者の方が緊張した。
戦士は処女の妖婦、女海賊を断った。彼の女を求める意志も欲求もバリーだけの物だ。三人は
ラダトームを離れる。シャアのルーラはこの世界中を飛び、バリーの旅に船は殆ど要らない。

「バリーには手を出すなよ」「……」
賢者はマイラの自宅の浴場。脱衣所からの声に返事はない。
「殺すぞ」
シャアはブラックのその声に情けなくも慄いた(そんな恐い…酷い…)
ブラックは蹴りでも入れてやろうかと浴場へ入って来た。
賢者は胸を隠し、足を閉じる。長い足、ふくらはぎ、太い太腿、厚い骨盤、ウエスト、全ての
ラインが柔らかくうねっていた。
大きな乳房、乳首が上を向いてそそり立っている。鎖骨の辺りから既に隆起していて、女の肌
が滑らかな稜線の様に下へと伸びる。ジパングの女に良く居た鳩胸と言うやつである。
黒髪の隙間から赤く輝く瞳と、妖しく艶(つや)やかな美しい顔を上げると、長い腕に擦れてそ
の大きな乳房が揺れた。
「父親と二人旅をしていたのが女だなんて、初対面からバリーさんも私も辛いと思ったから」
女武闘家ガイや(処女は守った)海賊ルティナと「やったって…犯したって…」
女同士の柔肌の絡み合いが、22才の男の頭の中に渦巻いた。ニヤリと笑う女は戦士ににじり寄
る。戦士は懐かしかった。
ブラックはジパングの女に目が無い。肌の香りは蜂蜜の様に甘く、ネグロイドのバリーもそう
だが有色人種の女の(艶めかしい生々しい)あのライン。肉感的に曲がりうねる体のラインが
猥褻な男を刺激する。甘い匂いが理性を飛ばす。容姿も匂いもシャアは女のそれだった。
黒髪をサッと後ろに落し、男を見上げる風情がたまらず(なんつーいい女…)
「短い旅かも知れないけど、仲良くしたいねブラックさん」
桃色の(小さくて可愛い口)(触って見たい)と思っていると、赤い不思議な色の目が少し
笑った。女は男の頬を両手で包み、短く口付けた。賢者は柔肌をヒクリと跳ねさせ、それで
又肌が香った。離れて、男女は何か悲しかった。

彼女の乳輪の鈍い黄色と言うか、桃色でない所がエロティックだと戦士は思う。艶(あで)やか
なその乳首をマジマジと見ると先端だけがかすかに桃色である。
(ああ、もう…)思い切り吸って鳴かせたい。震わせたい。男は刺激的な女に背を向ける。と、
真っ黒の妻が居て、男があんまりびっくりするので妻もびっくりした。
賢者はバリーに触れた男に触れられたかった。

シャアは、戦士を一人占めしようとしてソワソワするバリーにも惹かれた。
勇者は爪先から頭の先までムチムチしたり、引締まったり、艶めかしいっ……と言った女だが、
賢者は美しさが目立ち、艶めかしくもあって(二人とも相当良い女なのだ…)
バリーの方が自分の夫である戦士に対して恥かしがっており、折を見てタオルで体を隠そうと
したりしている。上手く隠れたり隠れなかったり、乳首が一つ少し男に見られたりしている。
結婚後の方がこの男に肌を見られるのを惜しんでいる様だ。
シャアは乳房を余り隠さない。マイラの温泉は混浴。三人は仲良く湯船に入り、男の勃起に気
付くと女達は恥かしそうに離れて行った。
黒と黄、有色人種の見事な女。白い戦士は離れて行く二人の立ち姿にも酔った。
バリーは自分がシャア程ブラックに似合わないと思う。豪華なドレス等も彼女程似合わないと。
シャアの方は自分より年下で背が低いバリーの色気の迫力に圧されていた。
凛々しくありながら見る者を妖しく興奮させるなんと魅力的な女かと思う。
悲しい母でもあった。物静かで好奇心旺盛、明るいこの人も今はそれがかえって見ていて切な
い。(この人を慰められるなら何でもしたいし…)(抱けるなら殺されてもいい…)
「どうしたの?」
可愛い乳首の乳房はもう、薄い服の中に隠れてしまっていた。ボーッとしている半裸の女を
のぼせたかと心配して年若の女が話し掛けている。
少し嗄れた声は潤み、女相手にこれ程色気を溢れさせ、(眩しい…)
女も押し倒したくなる女が、この世には確かに居る。

勇者を犯そうとすれば王者の剣も作れない賢者を戦士は片手で突き飛ばした。
女二人は裸。女にしか出来ない愛撫もある。女がどうすれば喜ぶか女だからよく知っている。
「お前は女で、ちゃんと男が好きなんだ。自分の体も認められないから剣の一本も作れないんだ」

謀略した宿屋の部屋。賢者は長い黒髪を落とし俯いてとても艶めかしかった。オルテガでも
思っているのか。

「黒さんありがとう」自分の足りない物を示唆してくれた自分以外の人だ。
ブラックはジパングで“黒”と呼ばれ迷子の狼の様に愛されたものだ。
賢者はバリーには何も無いと言ったが、戦士にはオルテガとの事をかなり告白していた。
「バリーさんが好きですよ。女の子が好きなのもやっぱり私の本性ですから…黒さん憧れます。
いつも臨戦態勢で」
恋人だが憧れの女であり、主君であり、弟子。ブラックはバリー為に戦い、バリーが為に戦闘
中さえ欲情する情緒不安定な二年間であった。
バリーに着替えさせているうち、宿屋の廊下は御前零時。「今日…」「え?」
キスさせろと戦士と賢者がやって来て、男は勇者の唇に、女は勇者の頬にキスした。(わぁ、)
バリーは少し呆然として少し興奮して(なんか二人に吸い取られちゃう感じ…)
この日18才になった。賢者が戦士の黒いシャツを借りて素肌に一枚だけ着ていた。
「女神の居る所に光の鎧があります。女神に会うけど、バリーさん大丈夫?」
頷くバリーは(いい女だなぁ…)とシャアを眺めていた。夫を剥かれたバリーは嫉妬も通り越
して「ねぇ、シャアってうちのお父さん(ブラック)の妹?」

17才のシャアは鍛冶職人。オリハルコンが男と共にやって来る。
肌に触れて(握手して)女?と解るオルテガ。「はい」と少し柔らかく笑うと、オルテガはもじ
もじし出した。(かわいい…)彼女は又匂う様に笑った。
オルテガとシャアはモンスターと人間の合間を奔走。
オルテガ、息子の話をするとよく落涙した。「泣かないで」
シャアはオリハルコンを見事な斧にした父の技術、精神力に戦慄した。王者の剣は形にもなっ
てくれなかった。(私に闇の力があるからか…)
女の唇に男はゾッとして、互いに指も絡め呼吸も熱くなり、美しい絵の様なキスは段々生々しく
なる。触れると彼女はビクリと小さく震えた。時に少女の様な時があるこの女は低く喘ぐ。多く
の女を知らないオルテガは、こういう女は初めてだ。色気に関して派手で、虚しさを持った女。
ただ、肌に触れただけで男は背を向けて寝てしまう。

見るとオルテガの妻の肢体が、少し崩れた様な女体がシャアである。全身の肉付きも隆々とし
ていて、より女らしい。シャアの体にサンダを思い出していたのではないか。戦士は思う。
これもオルテガ、サンダへの愛かも知れない。そしてアリアハンにも思いを馳せ。

シャアの父の遺作「魔神の斧って…」「そう、普通の人間には扱い切れない武器を」
ブラックは武器にミスを出させず、軽々と使った。
「私と生れ方が似ているのかも」

「おじさん三日船貸して」「三日で良いのかい」「うん」
バリーが山吹色に紅い飾りを付けたビキニ姿で中年に頼む。(子猫ちゃん…)
脱ぐと迫力のある女だ。纏う物が上品だろうと下品だろうと肌を見せれば彼女は輝いた。
三日前、白熊と子猫の様な夫婦がやって来て、中年はラダトームまで船で送りながら好ましく
あり悶々としたものだった。
可愛い艶めかしい猫は熊と消えていったが、中年の元に艶麗な女が残った。例えると蛇。
シャアは真面目で賢そうで、でも触れると溶けてくれそうで良いのだが、上着の前を開けて、
その薄い生地越しからも体のラインが見えたバリーの姿が離れなかった。
勇者は少し戦士と遊ぶ事にした。「海に行こう」「海ぃ?」「魔王の島の近くじゃないと普通の海だよ」
しかし太陽は無い。「キャー」「本当だ普通だ」
二人は子供の様に遊んだ。妻は今日18才になったばかりで若い母だが。
勇者が遊ぶとギャラリーがどんどん増えていった。小高い岩山にいきなり座り釣りしながら
バリーを見る男の集団が静かに、急激に増えて行った。“なんか、すげぇ姉ちゃんがいる”
そしてバリーの水着は山吹色から紫に変色して来た。
「あぶない水着も紫だったし、水着って人によって色が決まってるみたいだね」
「定番の色が薄紫ってやらしいな」
バリーは恥かしがった。
「勇者のくせに」「だって…」「しかたないとか、自分でどうしようもないからやらしい」
ペチペチ、素手で勇者は戦士を攻撃して来た。
少年達はわざとバリーの側で遊ぶ。彼女のお尻にぶつかりそうになって「ごめん」「いーよ」
肌に触れた、触れないで幼い男達はゲームする。議論する。
勇者は戦士の着ていた大きい上着を受け取って「人増えて来たし、帰ろう」
バリーが帰ると海も人が減って行く。

「わー、あんな格好したーい」とざわめく若く美しい女の集団もあった。
「…ねぇ、Hかな」色に限らずこの姿が。
バリーは美貌だが、艶めかしさの目立っている女だった。男装しても“この人男だったら良いな”
と思う者の希望的観測の元ではじめて、男に間違えられる。
凛とした雰囲気も美しくあるけれど、勇者の爽やかな品の良い気概こそを伝えていた。
「かなり。でも似合ってる」
「それに紫なんて白い肌が着ると安っぽくなる事が多いな」
つまり深い褐色のバリーは安っぽくないと言う事だろうか。(やだー…)勇者はテレた。
二人は船に戻った。二人切り。
「あたし達、今まで誰かに聞かれるとか、見られる所でばっかりだね」
バリーは水着姿でベッドに転がった。この船ではその心配がない事に戦士は気付いた。
「疲れが溜まると良くないし」
バリーは確かに、疲れが取れない時は逆に思い切り歌い踊り復活する体だ。無尽蔵の体力を
持つブラックはここ2年疲れていない。
「声出したいの…」
あの水着はどうやら戦士の手で脱がされても良いらしい。
(何の声だろう?)戦士も若いが(体に聞こう…)考えている事はオッサンだ。
「ちょっとHにしてね…」
それに対する男の短い返事は潤んでしまった。
男は彼女の可愛い乳首を少し強く噛んで、(きゃっ、切れちゃう、)そして舌で押し、
「ブラック…」
名前で、男は久し振りに呼ばれた。このごろ(あんたかお父さん)「お父さん」とバリーにして
は少し媚びた様な甘い声で呼ばれると、それはそれで嬉しい。
「あつい、…」
バリーは“熱い”と言うのが好きな様だ。互いの今の激しさを感じるまま、体温で伝えようと
する。男の腰は濡れて柔らかく吸い付くそこから、脈打つ物を抜いて行く。

離れ切りはせずにまた入って行って、入り切る時に腰を強く打ち付けた。
男女の太腿がパチンッ…と鳴る。
「ー…ん、いきそう…」
バリーは泣くような声で言った。
「あぁ…」
頬にキスされながら、濡れた重なりを出されて入れられ、甘く、溶けそうに女は鳴く。
「バリー、オナニーするだろ」「やぁん、ちょっとっ…」
「する?」「やめて…」
絶頂に慣れているなと男は思った。
「Hにしろと言ったのに…」「それは、だめ、」
バリーは本当に叫ぶ様な甘い声を出した。低い響きに男はドキリとした。女も爽快感に驚いて
いたが目を閉じて、自分の体を男の自由に任せた。呼吸で乳房が上下している。
戦士は指を広げた手を両の乳房に滑らせた。サラサラと動く時、その指に引っかかって、そし
て開放されて淡い色の乳首がプルン…と跳ねる。
戦士は彼女の手を取り、彼女の乳房の上に置いた。
「見せな」「だめ…」
「ちょっとでいいから」と彼女の手を彼女の下半身に導いた。男は女の手を絡めたままクチュッ…
とそこを愛撫して、そのまま彼女の手を置いてきた。
バリーは男の目の前で自分に触れてみる。
「んっ」(可愛いなぁ…)
「はずかしい…」
やめてしまった。その自らの愛液で少し濡れた手を戦士に忙しそうに掴まれた。

※続きの展開は勇者が攻めます。戦士はやられ役。

「はぁっ、はぁっ、」
平気そうな顔だったが、男はずっと快感に震えていた。ギシギシと鳴る音はベットの
音か船の音か。男はニュルニュルの襞に何度も挑んだ。
「あぁ…」
ベッドに張り付いた女の背が少し、うごめく。乳房は官能的に上下に揺れた。
「あ、あぁっ…ぅ、…ぅ」
(かわいいっ、)男の可愛いには時に、“婀娜(あだ)”と言う意味も含まれる。
目の前の女に先程のビキニの女も思い浮べて(あぁ、あんな女の子が…)
デカイ男に貪られて
「う…、うん…うん…」(あ、出る、)
女の声を聞きながら、快感に駆け上がる。男は腰がフラフラになりながら、仰向けで
頭を枕に悶えさせている勇者の首に吸い付く。
首は少しアザが出来てしまいそうだ。キスは快感の余韻で自然に出た物だが
(俺のもんだ)赤いあとを見てそう思った。しかし今日はバリーも同じ事を考えている。
(あたしのお父さん…浮気しないで…)
言葉には出さない。この男は怪物の子かも知れないが(そうかなぁ?)
貪欲な体で妻である事、女である事を主張する。
戦士は(バリーがロトになるんだ)と固く信じている。はっきり言うと魔王を倒して
皆の神様になる訳である。俺のものと思うのは矛盾で、少し男を感傷的にさせた。
バリーは足を開かされる。「あん…」
まだ男の白いなごりを残している彼女の陰部が見えた。
グチャグチャ男は触る。「やっ…あっ…」
顔を近付け、クリトリスにキスして舐める。「あぁっ、」この男は時に鋭く変質。
「もっと、足開いて」
男の両手の力もその足に働き、黒い下半身が丸く浮き上がる程になった。
「お前のこんな格好初めて見るな…」
グチャッグチャと妖しい音が部屋中に鳴り響いて、彼女の声も大きく高くなり、
「もっと、見せな」の後、愛撫しているだけの男はハァハァと荒い息が禁じ得ない。
バリーは開こうとするが「あぁんっ、あっ、」
頭をベッドに強く押して、イッた。いった後の陰部も戦士は舐める。
「ん、…」膣に舌を差し込むと、彼女は少し締めてくれた。

「Hな母ちゃん」「あんたも、声とかH…」
彼女は男の腰に乗ってきた。(お…)熱い男を捕えて彼女が導き、挿入。
「ぅっ…」吐息混じりの男の声も鮮烈だった。
「んっ…ぁん、」髪を乱し、勇者はスッポリと戦士を包んだ。戦士の両手は彼女の骨盤へ。
彼女は腰をギュッと前に、横に振った。小さく喘いでいた。
男は手を彼女の乳房へ、乳房を握った事で更に浮き立った丸い蕾へ。
「あぁぁっ、あんぅっ!」
女の腰はグニャグニャ動き、「はっ、あっ」
「っ…はぁ、…ぅ」男女は声も重なり合わせて混ぜる。
彼女は速くて細かな腰の振り。たまに大きくゆっくりと熱い男の物を翻弄して動く。
踊っている様な彼女の臀部だが、一人で踊っている訳ではない。グショグショに
濡れ、互いに夢中になっており、バリーは男を締めながら引き出す。
「うぁっ…ぁ、」
男の声を聞きながら「ん…」と又飲み込む。
戦士は陶酔と快感で、彼女をちゃんと愛撫出来ていない。失敗の様な指の動きが
彼女の乳房を、乳首を滑る。絶え絶えの動きが実は、
(いい…ほら、また…当たった…)蕾に男の指が。少し汗ばんで、彼女は乳飲み子の
我が子が居なくて淋しい自分の乳首を見た。
激しくもなく、優しくもなく、快感を招く腰。自分も、男も喜ばせ、
「あっ…あっ!」
乳房が揺れ続けていて、それを見る男も幸せで。自分の息子の為に、この乳房は張っていた。
(バリー…)
彼女の戦う姿が好きで。武器の扱い方も自分の癖を幾つも受け継いでくれた。
その娘は自分に愛情をくれて、自らヒョコッと寄って来てこれ程官能的で、
「うぅっ」と妙な奇声を発する所を、戦士は堪えた。「く…っ…」代りに機械音の様な
高い声が出る。
「あん…」勇者はギュッと目を閉じた。(いっちゃいそう…いく、)
「バリーッ…うっ、」
「あっ」と女も感じた。彼女の骨盤を捕えて、何度も腰と精液を押し付けた。彼女がユ
ルユル締めると男はまだ出した。
「ん…んぅ…」と溢れ出す放射を女は受けていた。男は恍惚としている。下半身は
まだまだ熱く濡れて、女の愛やら男の精液やら…(ドロドロ…)

と、女はピチャリ…と抜けて「わ、…出て来る…」とちょっと開かれた陰部を見せて
くれる。やり終えた男の陰部も今の彼女に取っては興奮の材料となった。
男の体にうつ伏せに倒れて来る。彼女の唇に男の乳首が近かった。くっ…と咥えられて
(わ、やめろ)
しかし男は口に出せなかった。今愛撫させるのは嫌なようで、とても良い様で…
「ん…」と妙に色っぽい声を男が出した。その唇に勇者はキスした。
「もう、いや?…」
素肌のバリーが素肌の男の上で尋ねて来る。男の答え等一つ。
後から抱いて彼女の胸の側から顔を出し、乳首を吸った。
「んん…」「シャアに何された?」
「あぁ、ぁ、吸われたよ…そうやって…」「あの変態」「やぁ、あぁ…」
女の乳首がそそり立った頃男も勃起して、バリーは少し、背を向けて誘った。
ブラックは生まれて初めてのバック(やべぇ…)良い。
彼女の背や少し見えるうなじを見ながら思う。彼女の嬌声が遠いのも良い。
バリーは腰を、自ら揺らして男を挑発した。(俺すげぇHな事してるっ)
快感に居る男がそう思う程、彼女の腰と彼の腰は猥褻だった。
真っ白と、真っ黒で。同じ人間なので奥まで入れる。男は入れる。女は誘う。
ブラックにバリーは艶めかし過ぎた。いつか折に触れ
「もちょっと何とかならんのか…」と叱らなければ成らないかも…しかし
「ん…ぁ…ぁ」
と鳴かれると(何だ、何だ)と可愛くってしゃーない。顔が見えない。
彼女はどんな顔で自分を感じているのか…。

「ねぇ、あたし子供みたいな時ある?」それは婉曲的な言葉だった。処女の様な時が
あるかと。「あるさ」「どんな時?」「内緒だ」男は自分一人の物にしておきたかった。
言い辛い程Hな事をしている時に感じたのだし。
バリーはシャアに襲われて、止めろと言う意味でシャアの乳房を掴んだ「あっ…」と
その時シャアは少女になったのだ。(凄いな、いい女だな)(あたしだって…)
バリーの嫉妬心からブラックは思わずこの幸運な時間を得た。

バリーはブラックの髭を剃っていた。クリクリした目で男の顔を見て「はい、終わり」
「ありがとう」以前武闘家の仲間が居たが彼の三つ編みを編んだのも彼女だった。
パーティーはバリーの物でつまり、「シャアはワンピースね」
服装のバランスも勇者が決める。女の仲間が出来た事はともあれ女勇者を楽しくさせた。
カーキ色の短いドラゴンローブの上に深い紺の闇の衣を賢者に纏わせた。
髪も青く見える黒髪を束ねずだが、髪等彼女の魔法で邪魔にはならない。
バリーが誉めたセクシーな姿だが、戦士はバリーとあんな抱き合い方をしたばかりで
ボーッとしていた。あの時のバリーばかり思い出していた。
女神の塔内部「ここ落ちてみよう」と戦士が勇者と賢者の腰を抱いた。
「ぎゃっ」「あ…黒さん…」賢者も勇者も同意したが「恐い…」「恐いよ」「うるせぇ行くぞ」
と戦士が回転床で滑ると、あ──と三人は落ちる。女神の像があった「な?」
戦士は勘は良いがかっこ良さが伝わらない時がある。
女神は身勝手な事を言って消えて行った。戦士は「見てろよ」と不敵な言葉をボソと吐いた。
「バリーさんは何か信じて旅してる?」
女神に子をさらわれ、更に魔王に奪われた女は
「んー、父さん」
(私もロト(オルテガ)は信じてる。バリーさんより危なかしくって頼りなんだけどね)
子供の頃から思うままにならない事がバリーは多くあった。オルテガが反対するのだ。
(勇者の娘って…)バリーは自分の立場が少し嫌だったけれど、オルテガが好きだったので
よく彼に従った。

オルテガなりの勇者の誇りを守る術(すべ)があるのだろう。その気高さは好ましさ
と共に幼児のバリーにも伝わった。
「…そう言う所あるね。カンダタの前でも凛としてて素敵だったよ」
「…父さんの事好きだった?」バリーはどうやら爽やかに女として、一人の女に聞いてくる。

ドムドーラで馬に見(まみ)える一人の勇者「あったー!」
町の子供と喜び合うそのオッサン「みつかった。ありがとう」
マイラの鍛冶屋の店主。(うわ、かっけー!)所が女だった。(俺に?)マイラ中で
重婚しろと誘われた。18才はよく色目を使う。キスもしてしまった。妻子持ち53才
の男に(まさか、)
しかし狭い湯船に一緒に浸かって彼女の長い足を褒め、ベッドで彼女を抱いた。肌だ
けを。(気持ちよかった…)オルテガは公私混同しつつ賢者シャアと活動する。

「おじい!」「カンダター!」
祖父と孫、偉丈夫二人は抱き合う。カンダタはラダトームで捕り物をしていた。(お
じいごめんな…)元盗賊だったから盗賊の行動が良く解るなど口が裂けても言えない。
「城の台所の奥だ。間違いない」
太陽の石を奪った賊に踏み入ろうとするカンダタ、着るは覆面マスクにパンツ一丁。
小麦色の肌にミチミチの筋肉。上下緑でバッチリ決めて、「おじい来てくれるのー!?」
「うん。灰色が良いな」
オルテガの白い肌に灰色は目を惹いた。頑健な筋肉は派手過ぎず、しっとりと老いて
上品だった。つまりカンダタ目立たなくなった。青に変える。
窃盗と言う悪に立ち向うオルテガは凛々しい。(おじいごめんよ…)元大盗賊と知れ
ればカンダタは間違いなく祖父に斬殺される。カンダタは祖父を見る度胸が苦しいのだ。
オルテガは一人も殺さなかったが、台所から城の回廊、王の寝室までムチャクチャに
して素早く賊を追捕した。仕事の狂暴な勇者である。
城の下女がオルテガと気付き話し掛ける「やあ」
覆面の中から気品溢れた見目麗しい顔が出て来て、もの凄い美声で喋る。喋る内容は子供の様だ。
どこの貴族か学者かと言う、聡明で柔らかい雰囲気。しかしそんな格好で口調で
(何なんだこの男は!)オルテガ(ロト)をこうだと知らない召し使い達は唖然。

カンダタは祖父がマイブームとなり、銀色のカツラを購入。
オルテガは短く刈り込んだ野武士風の髪型だが、赤く鈍く光る高貴な石はオルテガに
こそ相応しく見えた。

女神の祠へ行くと男は進む。天使をオルテガは見返って「よお」
「こらこら」羽と女達の髪がくすぐったくてオルテガは困った。行く手を遮られている。
祠の主が現われた。と、オルテガの目を見た(お…)試されている気がして、オルテガは
テドンの婿になる時の事を思い出し、目の光り方に気を付けて身構えた。
「女の子ばっかりなんて卑怯だろう」
「全て若い娘に見えますか」「うん」「勇者様欲求不満ね…」
オルテガは真っ赤になって俯いてしまった。天使達がクスクス笑っている。だが勇者と認められた。
ルビズが孫と共に居るそうで、一刻を争う事態だそうで、女神の塔に早く
行った方が良いと。オルテガと聞くと主は慌てていた。(俺の孫?カンダタ?)
「あの恐ろしい塔へこの男を行かせるんですか?」「こんなに美しいのに…」
「キラキラしてるのに」「嫌よ」「オルテガはどうして戦うの?」「息子の敵討ち」
「お爺様、ムリしちゃだめ」「若くて良い勇者探しておくわ」
人間以外の生き物と話すと時にハッとする。閃く様に。面と向かって美しいと言われ面映いが。
「探してあなたに伝えるわ」「ありがとう。さよなら」
(あれ?シャア…)待っている筈の彼女が居なかった。
子供が出来る様な事はしなかったが、あれだけ触れて足りなかったろうか…。
彼の女性に対する欲求不満は妻と娘に会えない事かも知れない。上の世界に帰っても
息子サイモンの子(彼の孫)に会うだけで、アリアハンには帰れなかった。
戦意が、萎えそうで。
「ねぇ、チューして」
小さな天使が祠の外までついて来た。(おや…)頬と唇がプチプチしていて勇者の
娘に似ていた。天使の女、(さき程の様な彼の錯覚でなく本当に)人で言う12、3才
だろうか、54才の男を誘惑。(バリー…)
勇者は一瞬、胸の潰れる様な顔をして、天使に唇を近付けた。(あ、この人泣いてる…)
胸の中で泣いたのだと天使は思った。
我が娘を思う人間の男の愛情が、激しくて、苦しくなってしまって、天使は勇者を軽く
突き飛ばしてしまった。
「やーめた」「意気地がないなぁ」「なによ、きらい」「アハハ」

天使はオルテガの笑顔が好きだが、パタパタ飛んで行く。
その後シャアが通信モンスターのメーダを連れてやって来る。メーダはバラモスの声で叫んだ。
「孫はお前の娘の子で、乳児だ。今はゾーマに捕えられて居る」
オルテガはラダトームへルーラ、目の前の海岸へ走る。今の時点で魔王の島へ一番早
く着くのは、死の海を泳ぐ事だった。
「待て、俺の背に乗り空で渡れ!」「いつまで待つ!?」「解らん、時は掛かる」
シャアも泳ぐが力付き、メーダに助けられた「俺の事は良い、さらば」
バラモス以外のモンスターが魔王の島へ空を渡るのは不可能。オルテガはバラモスに
助けられ、魔王の島へ降り立ったが視力と聴力を殆ど失っていた。それは悪化の一途
を辿り、今はどんな状況なのか。

※3にメーダは出て来ません。でもGBA版に1のモンスターが出る。みたいな事をどっかで…。

「好きでしたよ」(わぁ、父さん、どうしよう)バリーは嬉し恥かし。二人を想像すると甘そうな男女だ。
(いや、H)(きゃっ)闇の衣を纏えるだけあって、バニーガール経験のある賢者はバリーのお尻を少
しだけ触って来た。
「バリーさんのお父さん(オルテガ)だもの」
「いやぁんっ」(ん?)戦士が勇者の嬌声を聞いて仲間に入りに来た。
バリーは二人を目で叱った。武器を持ち鎧を着たバリーは少し冷たい魅力で、気高く、
戦士と賢者を悶えさせた。
「バリーさん、今日ドムドーラでテドンのお祭りがあるんだよ。行こう」
「本当?やった」鎧の中で勇者は笑った。
王者の剣も明日出来る。勇者の装備が全て揃って戦士は安心だ。
「依頼者との共作だと言う事、依頼者の顔で作るって事も足りなかった。バリーさんの喜んでる顔見たいな」

「ローさん」勇者バリーの元許婚「ママになったのか?」やはり最高の男が用意されていた。
14才のローは15才のバリーの母に思いを告げようとしていた時、35才のオルテガに彼女を
掻っ攫われた過去がある。
心中穏やかでないローと無垢なバリーの関係は実にエロティックだった。
18才と3才の時、21才と6才の時、25才と10才の別れ、33才と18才の今も。
「勇者だって?」「そうさ、テドンの勇者でもあるんだ」
ローと同じくネグロイドのテドンから来た人々が言う。
武器商人のローだが女戦士は嫌だった。どんなにいい女になるかと思っていたバリーだったが
「俺も親父になるよ。子供の名前はユキノフ」「ユキノフ…」「女の様な気がする」
(お前に似た娘になると良いなぁ…なんで戦士になったんだ…)
竜王の事を聞いては慰める為にローはバリーを抱く。今は誰と誰の蜜月なのか解らない程甘い。
お腹の大きい彼の妻も穏やかだ。バリーが自分と同じ、ローの妻になるだろう覚悟があるらしい。
(ちょっと待て!)ブラックは穏やかでない。
ローは商人であり、町を動かしている男であり、その妻にはバリーの如き器の大きい女は必要かも
知れない。(待てって!)性的に魅力のある女としても(!)

「何でだ!」
バリーはほぼスッポンポン。祭りに参加する若者は性器以外どこも隠さない。

バリーは温泉よりもずっと大胆だった。これが私の姿だと言わんばかり。
腕輪はするが小さな布と皮の下着で下半身を少し隠しただけ。他は外気に触れている。輝いていた。
戦士に宿屋で留守番してろと言うのだ。
洗面所から出て来るのはどこの良い女かと思ったらバリーだった。ただ前髪も全て、髪は後に流して
キッチリと束ねただけだ。
「ガラっと…印象が変わるな」「そう?」
ネグロイドのあの、丸い額が可愛らしくて戦士は前から好きだった。
「父さんはこの髪型私らしいって言ってたな…」(お前ってカッコイイ女なのな…)
新しい刺激を折よくコロッと見せる女である。「俺も行く」「……うん。おいで」
(……)
軟弱ではないが…ブラックはしゃらくさい都会男と言って良い。
他の裸の女と手を取り合ってバリーは火に向かい、その回りで踊った。
バリーの体はやはり目立った。見ない男は居なかった。
戦士はテドンのワイルドさに唖然としていて、女達に座らされた。歓迎される。
バリーの父オルテガも、兄サイモンも祖父ライトもこのテドンの歓迎振りに圧倒された男達だった。
バラモスは楽しんだ。バラモスと同じ匂いのゾーマも歓迎されたのかも知れない。
可愛い女達が引き止めてくれるがブラックは帰った。
踊りの輪から一時離れたバリーは、座る男の間に座っている。踊っている時もそうだったがバリーは
素晴らしい笑顔だった。満面笑みの多くない女が明らかに戦士の居ない所でそれを見せていた。
戦士は彼女に対して初めての感情を抱いた。彼女に背を向けながら燃える様だった。

「途中で帰ったんだ」「見られてたな。触ろうとしていた男も居た」
バリーはまだ笑う余裕があった。(祭り見たのと、見なかったの、どっちが良かったかな…)
何となく冷たい戦士に驚きながら勇者は思う。戦士は組み臥す様に勇者をベッドに倒した。
両手を押さえつけて噛み付く様に女の首にキスした。
彼女が両目を閉じて小さくなっていた事に気付くまで、時間が掛かった。
(あ……)乱暴にされて思い出したろうか。
男は自分の過去の行い(彼の意識は無かったのだが)にだけ、萎えてしまった。ただ彼女を抱いた。
目がパチリと開いた。その、猫の様な顔をした彼女に口付けた。

(恐いよ…)16才の時ロマリアで、彼女は男が恐かったのではなく、この男そのものが恐かったのだ。
バリーはその事を、当時から知っていた。
挿入するとバリーは悲しそうな声で、しかし確かに感じていた。官能的で切なくて(好きだよぉ…)
ジパングで自分に犯されている時、彼女はこんな風だったろうと思った。(ごめんな…)
優しくキスをした後は、そう思う彼の優しさでは有り得ないほど激しく彼女を求めた。
珍しく良く濡れていて、彼女の声やベッドのきしむ音は宿屋の主人にさえ聞かれた。
男の激しい息遣いは部屋中に響き、バリーにだけ聞かれる。
あぁ、ああ… ─彼女の声が遠くに聞こえた。息を弾ませる彼の意識が遠退きそうだったからだ。
「はぁっはぁっ」
女は男の腕に指を強く立てた。
踊り疲れた乳房はその後すぐ、途切れ途切れにその動きを止めた。

「おはよう」バリーは笑顔で男に言う。
「お腹痛いよ」
昨夜の男の激しさに、明るく不満を漏らしている。

「俺も疲れてた…」「うん…」
「お前と同じなんだよ。大暴れして疲れを取るタイプ」
「ごめんね。大暴れして」
勇者はシーツから顔の上半分出して言った。
戦士はそのシーツの中に手を突っ込んで乳房を優しく触った。「んー、…」
勇者は悶えて小さく暴れた。
「今日も、夜もしよう」「、…逆に疲れるよ…」「そんなスタミナじゃないだろお互い」
「あん…また、子供出来ちゃう」「ふやそう」
戦士は勇者の背を抱きながら「…、……。」
この男の声はボソボソ喋ると聞き取り難い。勇者は聞き取れなかった。この男は様々な言葉を操る。
勇者は嗄がれた声を異国の響きの様に聴いて漂った。
バリーはオスイカに愛され捲くったメスイカの様にヨレヨレ。
(疲れたか、可愛い奴)「わぁん、しばらくベッドで寝れなくなるのに」
バリーが憶えているのはベッドの温もりよりも男の肌だ。(いやぁん)
ヨレヨレになりながら女の体は熱い。「ごめん、ごめん」
(ル―ク、母さん頑張る)その子の父が男として彼女に与える充実。バリーはこの男に心乱れていると、言って良い。

ローが今朝死んだ。ゾーマの黒い手に引き裂かれた。バリーの怒りの凄まじさ。
シャアはバリーのこの顔を見て王者の剣を完成させる事が出来た。
(怒りだったのか、愛情深いこの人の…)剣は。その顔で生れた。
ついにバリーはこの旅で初めて剣を取った。一振りすると空気が変った。名刀の所為だけではない。
「もう誰も戦いに出ないで。約束して。あたしの仕事だもの」
テドンの男の戦意を、一言、一振りでその意に従わせた。
(魔王は色々な方法で私を殺そうとしている…)
勇者バリーの肉体だけではない。心から滅ぼし、全てをもぎ取られたその死体を見たいのだろう。
(負けるものか…!)
「ローは死んじまったけど…バリーが勇者で本当に良かったと思う」
テドンの人は老若男女同じ様な事を言った。泣いたりする。
(凛々しさじゃ敵わない。初めて会った時から)ブラックはバリーのそこにも惚れたのだ。一目で。
ブラックは恐らくロマリアからの移民の血を受け継いでいて髪も金色、目も緑。島国の暮らしを
体が懐かしがってジパングを愛した。
バリーはここに、かつて全世界を制した魔法の民アリアハン大陸の戦う王者の血を見せた。
(そうだ、俺は剣こそ心血を注いでお前に教え込んだ)
神の称号を貰う剣豪を我こそ育てたり……22才の剣士に壮絶な栄誉だ。
「ママ…」「バリーママ、食べられちゃうよ…」
幼いテドンの子供達は心配して泣いたりしていた。バリーは腕輪と手首に飾りを付けている。テ
ドンで母の証だ。
「大丈夫。すぐ帰って来るからね」
バリーは夢も野望も無く、愛情と戦闘力が溢れている。

戦士の統率力と行動力はバリーのパーティーでいつも、人が入れ替わろうと随一だった。
(バリーはモンスターの王になるだろう。だからああして、こうして)
宿屋で鏡を見ながら、勇者に心と実力で支えられつつ夢に燃える男はフと、鏡の中に何か認めた。
戦士は急にバリーの母の言葉を思い出す。
翼があったらどこに行くの──?
(翼があったら…)
ルークを探してバリーに会わせるだけだ。それだけの人生で良い。

「バリー」「ん?」
テドンの人々の前でも少し泣いたが、宿屋でバリーはボロボロ泣いた。自分の非力さが悲しい
らしい。ただ救うべき人達の前では涙ぐんでも凛としていた。
「なに?」しゃくり上げながら彼女は聞く。
闇の手がバリーの視界を埋めた。戦士の背から生えている。
「どうやら俺は人間じゃない。俺はお前と、自分の為にも本当の所が知りたい。
だが俺がお前と旅するかどうか、決めるのはお前だ」
「外すなら、俺一人で戦う方法がある」
「どんな方法?」
バリーはあんまりに普通に聞いて来る。戦士はちょっと拍子抜けしてしまった。
あなたに任せると言う。
「あんた又何か良い事思い付いたのね…成功すると良いね。ドキドキしてきた…」
戦士は勇者が余りに可愛くてキスも出来なかった。
「あんたが好きよ」
結婚前は守られている気がした。しかし今、この男はバリーの事を心に置いてくれてくれている
のだろうが、精力的にどんどん前に進んで、
(あたし、追い付けるんだろうか…?)
この緊迫。流石、アリアハン城が第一に推した戦士であった。
(こういう人、ドキドキする…)
「好きよ、あんた」
(な、何回も言うな…)
戦士はびっくりしてしまい、嬉しかった。そして彼の生き方はこの彼女の一言で又少し変わる。

一人の男が女神の祠を行く。2m5cmの彼より大きい二人の男(天使)が、その戦士の両腕を
捕えた。しかし戦士は一寸も動かず、二人の男を軽々引き摺った。
老人老婆も居る天使達。戦士ブラックがどれだけ欲望の面で満たされて居るか解る。
「バラモスと、テドンの人間が良い例だろう。人はもうモンスターと」
「その先をあなたが言ってはいけません」
女神ルビズは天使達を下がらせた。祠の最上階がブラック一人になると、女神は泣いた。
「人がモンスターと生きる道もありましょう。私は無力でありました…」

ゾーマの、退廃と死への傾倒を滅ぼそうとして、女神は失敗した。
だからバリーは女神を疎む事はこれと言って無かった。元々はゾーマが分を超えたのだと
女勇者は解っていた。
「何故あれ程…人の子を奪ってまで大魔王を滅ぼそうとしたのか…神の勝利が目的だった筈でした。
しかし愛してしまった」
ルビズがゾーマをである。(うひゃー)
「私はこのアレフガルドを創造した者。その武器で私を斬りなさい」
ブラックの魔神の斧はゾーマが賢者シャアの父、賽(さい)に依頼し作らせた武器だった。
「魔王が滅んだ後、あなた方を救う約束は果たします。だから全てが終わったら斬って。斬れないなら、抱いて」
女はもう身も世も無く、立ち上がる事も不可能となってその手を男に絡めて来た。
女は闇と光の混ざる快感を知ってしまったらしい。戦士に斬り掛かられた時だろう。
女神は見る男の最も理想的な女の姿になって、泣きながら男にすがるが、戦士は冷たいものだった。
その冷たさに女神は又惹かれるわけである。
戦士のこの行動と意志は天界を駆け巡り、最高神の逆鱗、まさに龍の鱗に触れた。
“神の時代は終わった”として豪腕を振るう戦士。
(大魔王の手先め、引き裂いてくれる!)戦士と神龍の戦いも又、約束された。

帰路に着く戦士の瞼甲だけが上げられていて、目だけが鎧の中から見えている。
ブラックは顔も体も端正だ。しかし天使の女達は恐ろしがった。
屈強な戦士の中では優し気で儚げかも知れないが、普通の男に混ざればちょっと優しそうな白熊である。
少し幼い天使が追ってきた。バリーの旦那の割りに恐いと言う。戦士は困った様な変な笑顔を
天使に向けた。(でも良い人ね)
「人間は嫌いだけどバリーは好きよ。きっと魔王を倒してくれるわ」(へへぇ、お目が高い)
「ドムドーラで裸で踊ってるの見ちゃった。おっぱいかっこいーの」
「俺もあいつの胸好きだ」「下品よ」(あんたもね)
「オルテガも好きよ。捨て身で派手で乱暴だけど悲しそうな人よ。…でも大きな声じゃ言えない」
「ん?」「私一人がこっそり好きなの。誰にも言いたくない」
どうやら天使も人に恋する時代だ。あのレイアムランドの双子の妖精を思った。

「ブラック様」「ブラック様」もし彼が押し倒せば、片手で押しただけで「あん、」「ご無体な」
「いやん」「あぁ、いけないわ」
と、頂戴出来そうな。(…もっと仲良くなって居ればよかったかな)
バリーの為、女関係はバリーに対してでさえある程度我慢をしたい。戦士は欲張りになった。
美しくありたかった。
(そう、キス位一発…)
その美しさもどこか気が抜けていて、この様なものだが。

「ただいま」「おかえりー」
人間も、女二人が待っててくれて華やかだ。雨雲の杖を持って戦士は帰って来た。実に
平和な一人旅となった。虹の雫を手に入れてリムルダールへ勇者一行は向かう。

            END
2008年12月27日(土) 03:30:48 Modified by test66test




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