竜王の花嫁

 礼儀どころか人の扱い方も知らぬモンスターどもに、光の玉とともに連れ去られた時から、ローラ姫の覚悟は決まっていた。
 世間知らずではあるが、一国の姫である。
 辱めを受けるくらいなら、人質として国を陥れるために使われるなら、自害しようと。
 だが、対面した竜王は真顔で姫に言ったのだ。
 アレフガルドと竜王軍の和平の証に、我が妃に迎えたい、と。
 驚き、声も出ないローラを、竜王は熱心にかき口説いた。
 始まってしまった戦を治める口実に、人と竜王、二つの支配を一つにするために、血の絆を作ろうと。
 夢中で喋る竜王に、手を握られていた事にローラは気付いたが、不快ではない。
 むしろ熱っぽく握り返し、竜王の方が驚く。
 一国の姫として生まれ、物心つく前から心に抱いていた使命感が、身の内を焦がしていた。
「私があなたに嫁げば、戦が終わるのですね?」
「全軍を引き上げ、人の王に息子として仕えよう」
 民と国と平和のために身を捧げる自分を思い、ローラの心臓は早鐘となる。
 嘘かもしれない。
 拒めば、配下のモンスターと己が腕力を持って、力ずくで組み伏せられるのかもしれない。
 ならば、我が身を持って平和をもたらす甘い夢が覚めぬうちに…
 かすかにうなずくと、感極まった竜王は、ローラを抱き寄せた。

「痛い!」
「済まぬ、初めて人の子に触れた…」
 緩められた腕から見上げると、人とは僅かに異なる顔立ちの、それでも立派な青年が目に入る。
「精霊ルビスの名にかけて、嘘はなりませんよ」
「マスタードラゴンにかけて…」
 竜王は首を振って言い直す。
「精霊ルビスとローラ姫にかけて、この地に平和を」
 ぞくぞくとローラの身が快感に震える。
 アレフガルドの誰も敵わない強い男が、ローラ一人を抱くために、全てを捨てるのだ。
 顔を仰向けると、竜王の唇が触れた。
 すぐに、彼は身を離し、ローラを覗き込む。
「寝所にお連れしてよろしいか?」
 答える代わりに、ローラは竜王の胸に体を預けてうなずいた。
 跪いた竜王は、ベッドに腰掛けたローたの足を恭しく掲げ、靴を脱がせて爪先に接吻する。
 作り物めいて冷たい指が素足に触れ、ローラは腿を震わせた。
 靴越しになら幾度も許した臣下の礼だが、素足に触れさせたのは初めてだ。
 足を愛でられる感触よりも、誰にも敵わぬ男が自分に跪いている事に、ローラの身は熱くなる。
「服従の証よ、ご存知?」
「姫を娶るためならいくらでも」
 ローラは爪先で竜王の鼻先を弾き、顔を背けた。
「小娘一人に形ばかりの礼ができるなら、何故先に父に跪きませなんだか。
 筋道立てて、和平の証に姫をよこせと、力尽くで奪う前におっしゃいませんでしたか!」
 跪いていた竜王が身を起こし、ローラを睨む。
 引き裂かれるか、焼き尽くされるか、ローラは身をすくめるが、竜王はゆっくり首を振った。
「何度床をなめてもそなたの父は耳を貨さなんだ、大義をつけてお願い申し上げても百度通っても、一目会いたいと頼んでも、人外の言う事など聞こえぬと。
 下手に出ていれば、しまいには姫が欲しくば、結納に我が配下を全て殺して城に積み上げて見せよと」
 ぞくぞくとローラの身が震える。
「対岸の城で、健やかに育つそなたをずっと見ていたよ」
「ずっと?」
「妻に迎えられずとも、一度お目にかかりたいと毎日、毎夜思っていた」
「戦は…」
「竜と人、どちらが地上を制するかの戦は、そなたが生まれる前からのこと」
 焼け落ちそうな肌と身のうちに、姫は身をよじる。
 和平のために身を捧げる使命と、最強の男を跪かせる優越、火傷するような恋心。
 まだ触れられもしないうちから、ローラは熱いため息を漏らした。
 作り物めいて冷たい指が、頬に触れる。
「…や…」
「いやならやめる、何もしない」
 違う、違う、と、ローラは声に出せずに首を振り、体の力を抜いた。
「私の真の姿を見せてもいいが、それでは愛し合う事も語り合うことも出来ないので、今は許せ」
 ローラはうなずき、胸と秘所を覆う手から力を抜き、全てを竜王の目にさらす。
 寄り伏した竜王の肌は、冷たい。
 火を吹きそうなローラの肌に触れ、溶けるように吸い付く。
 初めて触れる人の体を確かめるように這う指も、ローラの体温を吸って熱くなる。
 ローラは指をかんで、顔をしかめていた。
 床の作法はまだ知らない。
 知っているのは、常に毅然として姫の誇りを保つ事。
 取り乱したり一時の感情で動いてはならないと。
 柔らかい乳房を楽しんでいた竜王は、ローラの様子に気付いて、指を引き出させ、唇を吸う。
「辛いか?」
 堪えきれずに辛い、と、訴える前に甘いため息が漏れ、ローラは耳まで赤くなった。
「人の体はわからぬ。
 どこが気持ちいいか教えてくれ」
「…意地悪…」
「意地悪はそなただ、聞かねば判らぬ」
 もぞもぞとすり合わせる太腿に指が滑り込み、ローラは腰を引く。
「ひゃ…あ、」
 煮え立つような秘所を探る冷たい指に、教え込まれた礼儀作法がかき乱され、ローラは身をよじった。
「あ、はぁ、あ、…やぁ…」
「気持ちよいのか、いやなのか?」
 そろそろ判ってきたらしい竜王は、乳房を揉みしだきながら、ローラをからかう。
「…気持ち、いい」
 不意に竜王が身を離し、ローラの両足を押し広げる。
「駄目、そんなとこ見ちゃいや」
 が、内腿をなでさすられたローラは、足を綴じるどころかだらしなく秘所をさらしてしまう。
 仰向いた秘所から溢れた熱い蜜が尻を伝い、見られることを恥じて花びらが震える。
 花びらをなぞり、アレフガルドの秘宝の形を確かめ、割れ目を背中まで辿ってから戻ってきた指が、泉に沈む。
「ふぁあ、あ、あ、あん…」
「ここか」
「うん、うん」
 親指が秘宝を弄び、長い指がゆるゆると泉の蜜をくみ出す。
 氷のような指が温まるとすかさずまだ冷たい指が交代して押し入り、ローラはそのたびに身をのけぞらせ、無防備な乳房をからかわれる。
 やがて、竜王の冷たい唇と熱い舌が秘宝に吸い付く。
 ローラの喉から甲高い悲鳴が溢れ、うねる腰を竜王が押さえつける。
「だめ、もう、だめ、もうしないでぇ」
「やめるか」
「やぁん」
 広げた膝の間に竜王は体を入れ、秘所に男根を押し付ける。
 花びらが生き物のようにまとわりつき、触れられた秘宝は喜びに震える。
「は、あ、あ、あは、ぁ」
「行くぞ」
「うん」
 泉を溢れさせて男根が押し入り、ローラは痛みに驚いて身をよじる。
「やめて、やめて、痛い、」
「無理か」
「わかんない、いたい、」
 竜王はローラの背に腕を回し、抱き寄せる。
「こうしていても、いいか?」
「…うん…」
 竜王の胸に顔を埋め、ゆっくり体をさすられるうちに、痛みは鈍く散っていく。
「…だいじょう、ぶ」
「動かしてもいいか」
 声に出さず、ローラは竜王にしがみつく。
 一度、二度動いて、竜王はうめき、ローラの中に射精した。
 息を整えながら竜王とローラは唇を吸いあい、抱き合った。

「…子が、出来たらいいな」
「うん」
 ローラは、竜王の胸にもたれて目を閉じる。
「私と、あなたの赤ちゃんが、アレフガルド全部の王になれば、みんな仲良しになる、ね」
 ゆっくり、竜王の掌がローラの腹をさする。
「立派な卵を産んでくれ」
 途端に、ローラは跳ね起き、竜王に頬擦りして笑う。
「卵は産めないわ、人間は赤ちゃんを産むのよ」
 竜王は目を丸くし、それから二人はいつまでも語り合っていた。
2008年04月11日(金) 16:56:20 Modified by dqnovels




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