とある中学校のコンテナの一角に、少女は拘束されていた。
名は夜比奈くるみ。ロリ巨乳美少女として名の知られる中学一年だ。
そこに、ネックレスをじゃらじゃらさせ、一人の少女が入ってきた。
金髪にハイソ、ミニスカートの同じく中学一年女子、通称「H」だ。
そう。このHこそが、夜比奈を拘束した当人である。
彼女もかなりの美少女だが、喧嘩最強のレディースとして知られており、「襲って来た男15人相手を、素手だけで返り撃ちにした」という噂まで立っている程である。
「!? くるみっ!!」
そう言って、一人の大柄な男が駆け付けて来た。高校3年の柔道部、蛾地 無地男(がち むちお)だ。(ここは中高一貫なのである)
蛾地は「女を返して欲しければ、一人でコンテナまで来い」という手紙をもらい、ここまで走って来たのである。
そう。蛾地と夜比奈は恋人同士なのだ。
「何をしている?彼女から離れろ!」
「来たわねお邪魔虫さん…この子はあたしが告白しようとしてたの!あなたはそれを邪魔した!あなたこそ彼女から離れなさい!」
そう言いながらHは着ているものをいくつか脱ぎ捨てた。
彼女はレズだった。彼女は夜比奈に抱きつくと、頬にキスをしたり、耳に軽く噛み付いたりしている。
しかし蛾地は困った。相手が男なら、この柔道で培ったこの腕力で相手を無理矢理で引き離し、彼女を助けられるのだが
相手は女、女にこの腕力を使うと別の問題に発展しそうだ。仕方ない、教師を呼ぶしかない。
蛾地は職員室へ向かおうと、彼女らに背を向け走ろうとした、しかしその時だった!
手が一瞬で後ろで固定され動かなくなったと思うと、一瞬で前のめりになりヒザを着いてしまった!
振り向くとHが俺の両腕をがっちり組み、生足を俺の背中に押し付けている!
「誰が逃げていいって言ったの?」
そう言うと彼女は足に力を込めた。まずい!腕を折られる!
俺は抵抗しようとしたが、すぐ諦めた。この少女、かなりこの技を熟練している。俺の腕力を持ってしても、この技は外す事ができないようだ。
「わ、わかった!逃げない!だからそれだけはやめてくれ!」

蛾地は降参を宣言すると、あっけなくHは技を外した。何かしてくるのでは?と恐れたが、そうでもなさそうだ。
「ふん!まぁいいわ!これじゃフェアじゃないものね。さ。タイマンやりましょ。勝った方がくるみと付き合えるの。いいわね?」
そう言いながらHは肩をぐるんぐるん回している。
…!? 何を言っているんだ?この女、たかが噂でしかない喧嘩最強(笑)の小娘が、鍛えに鍛えているこの俺に本気で適うと思っているのか?
………冗談じゃない!少し前まで小学生だったガキに暴力を振るうなんて大問題だ!適うか否かではない!そもそも闘えないんだ!
蛾地はそのまま後ろ向きに走り出した!
確かにさっきの技は良く出来ていた。しかし背を向けなければ…どうにか…
「…チッ」
Hは舌打ちをすると、その場に生えていた半径20cmくらいの木を思い切り蹴った!
蹴られた木は見事に折れ、ダイナミックに倒れる!
その倒れた木に見とれている刹那、Hは高速で駆けると、その逞しい足を振り上げ、蛾地の顔面に直撃する寸前で止めて見せた!
蛾地の顔に冷汗が流れる。
「そんな隙を見せていいのかしら?タイマンやるの?やらないの?」

蛾地はカバンを置き、上着を脱いだ。どうやら逃げさせてくれないようだ。ならば
そのタイマン、受けてやる。くるみは手放したくないし、女に蹴り崩されるのも、男としてのプライドが許さない!
蛾地は上半身裸になった。鋼のような筋肉の鎧が、全身に光る。

「へぇ〜」
Hは驚いた。当たり前だ。誰が見ても驚くだろう肉体をしている。腹筋は割れに割れ、驚異的なそのバルクは、ボディービルダーもビックリの威圧感だ。
しかし、それでも蛾地はHの蹴りを恐れていた。先の蹴りはこのボディーを持ってしても、まともに食らえば耐えきれるか分からない。ひょっとしたら、一撃でノックアウトしてしまうかもしれない。
蛾地はとにかくHを近づかせないように、この類い稀なる黄金の肉体で威嚇した。
が、Hは何も問題無いかのように近づいて来る!
こういう場合、普通は体の大きい方が場を圧迫し、相手を隅に追い詰めるものだが
この場合は例外だ。あの蹴りを見せつけられてしまった以上、蛾地は後退りする事しかできなかった。
!ついに蛾地の背がフェンスと接触した!これ以上下がれないところまで来てしまった!
Hは一歩踏み込むとハイキックを放つ!
蛾地はとっさに両腕でガードする!強烈な衝撃が蛾地を襲い、さらにガードした手が顔に当たり怯んだ!
怯んだところを付け狙い、Hはさらにローキックを放つ!その高速の足さばきは天性のものか。
その大地を揺るがすような痛みは、蛾地の足で爆発する! 
大木のように太い足が地に沈む!
蛾地は悲鳴を上げながらも反撃しようとするが、先の強烈のハイキックが直撃したあの腕では痛みが邪魔し、腕を振り上げる事すらできない。
まだHの連撃は続いている!ヒザ蹴り、肘打ち、左フック、右フック、そしてヒザ蹴り!
最強の筋肉の鎧は、「Hの手足」という最強の鈍器によって、もうボロボロだ。
そして完全に怯み隙を見せた蛾地の顔面に、再びあのハイキックが!
鍛えに鍛えられた蛾地の首の筋肉は一瞬にしてはち切れ、首が一回転しそうな衝撃で一瞬にして横に吹き飛んだ!
蛾地の完敗だった。巨大な重戦車は、子猫のような可愛い小娘に、その屈強な全身をズタズタにされたのだった。
男のプライドと共に。

・・・俺は・・・一体・・・
蛾地は目覚めた。病室の天井が見える。
「お目覚めですか?」
可愛い声でそう言うのは夜比奈くるみ。看病に来ていたらしい、蛾地のためにリンゴを剥いている。
「やっぱりここにいたのね!」
攻撃的な声でそう言うのは、やはり「H」。
「くるみちゃん!こんな男なんてほっといて二人でデートしましょうよ。いいでしょ?ね!ね?」
攻撃的な声から誘惑する甘い声にガラッと口調を変えると、Hは夜比奈に抱きつくとその巨乳を揉んでいる。
「そんなぁ」
本当に嫌がっているのかよく分からない、か弱い声で夜比奈は言うが、押しが圧倒的に弱く、しぶしぶ
「すみません蛾地さん、また明日来ます。リンゴ、置いときますね。」
そう言いニコっと笑うと、その礼儀正しい夜比奈さんと、その挨拶という概念皆無な夜比奈さんと真正反対な不良少女Hは、退室しようと蛾地に背を向けた。
「まて。H、、、いや、初値ミル!!」
蛾地は言った。低く、芯の強い声で。
Hは驚いた顔で振り向くと、すぐに
「くるみちゃん!言っちゃ駄目じゃない!あれほど私の名前は・・・」
「くるみは関係ない!俺はお前を知っている。いいか、初値ミル!この怪我は1週間で治る。1週間後、夜9時、この病院の裏手通りの裏路地に来い!そこで、待っている!」
Hは蛾地を数秒見つめると、何も言わずに夜比奈と出ていった。
蛾地は全てを覚ったのだ。あのハイキックの衝撃、頭に直接響くあの強烈な衝撃で、全てを覚ったのだ。
1年前の初値ミルレイプ未遂事件。それに自分が関わっていた事。
刑務所の中で必死に鍛練、イメージトレーニングを繰り返し行っていた事。
そして、刑務所から出た当日、交通事故に合い、1ヶ月記憶が失っていた事を!

その夜はとても静かな夜だった。
いつも以上に車や人通りは少なく、街のど真ん中なのに音一つしない。
普段からそういう街だが、心境による事もあってか、そこはより静かな場所と化していた。
そう思うのは、暗い夜の更に暗い裏路地に佇む巨大な影、そう。蛾地だ。
彼は腕時計を見た。もう9時にはなっている。遅い、もっと詳しく場所の位置を言うべきだったか?
「来てやったわよ」
後ろからだった。H・・・改め、初値ミルが現われた。
袖無しシャツに短パンにサンダル。かなり軽い服装だ。まぁ俺もそうだが
蛾地は何一つ身に着けてない状態。そう、全裸だった。非常に暗くて見えにくいが、その全身を包む鋼の鎧のようなバルクは、まるで彫刻のような男性の美を醸し出す。
ミルは何かを言い掛けたが、やめ、すぐに
「じゃあ、あんたが攻撃を始めたら開始でいいわよ。」

ミルは完全になめきっていた。 
「グゴ!」
巨大な拳が、ミルの小さな頭に直撃する!強烈な衝撃と共に、ミルの体は頭から吹き飛んだ!
ミルはこの男に2度、肉弾戦で勝利した。その体格差を無視した、遥かに凌駕する力で。
しかし、力だけではない。運もあった。1度目は相手の感情の揺らぎで、2度目は相手の少女を本当に殴って良いのかという迷いで、
そのペナルティの上での勝者なのだ。運も実力も内とは、この事なのかもしれない。
しかし、今回だけは別だ。ペナルティは0に等しい。
1度目の敗北で蛾地は、鍛練と、特にイメージトレーニングを積み重ねて来た。間合いを掴むため、そして健全なる精神力を保つためだ。
そして2度目の敗北で、トレーニングの全てを思い出した。今、蛾地は自分の出し切れる全ての力で、勝利を勝ち取ろうとしている!

ミルは気付くのが遅れた。ミルと蛾地の身長差は40cm以上も開いている。「一歩」がそもそも違うのだ。
突然来た痛みと衝撃にミルは戸惑うも、その抜群の運動能力を生かし倒れずに体勢を立て直す。
相手は完全に間合いを掴んでいる。間違いない。こんなリーチも違い過ぎる大男相手にどう立ち向かえば・・・
気が付くとミルは、無意識に後退りしていた。2戦目のあの圧倒感はどこへ消えたか。完全にお互いの立場は逆転しているのだ。
ミルの背には裏路地の続きがあり、その先には大通りになっている。
もし、このまま後退りして行けば大通りに出てしまうだろう。そうなれば、誰かに見つかる可能性は、いくらこの街でも高くなる。
だが、それじゃ駄目だ。いくら闘いが中止になったとしても、必ず再戦を挑んでくる。《この男はそういう目をしている。》
だから逃げる訳にはいかない。私の方が力が上という事を証明するため、完膚無きまでに叩きのめさなければ。
でも、どうやって?ひょっとするとやられてしまう可能性だってある。あのリーチを完璧に使いこなしていて、実力は確実に並じゃ無くなっている。そんな相手に一体どうやって?・・・
ミルはしばらく後退りを続けた後、ついに立ち止まった。

蛾地は手間取った。まさか止まるとは。このまま逃げて帰ってくれれば良かったものを。どうやらそうではないらしい。
しかし相手は言葉通り棒立ち状態だ。構えてすらいない。諦めたのか?
今ミルの居る位置は、確実に蛾地の攻撃範囲内だったのだ。
戸惑う蛾地の頭に、ミルのサンダルが命中する。
―サンダル飛ばし。 反対のサンダルも蛾地の頭に命中させた。
当然、ダメージなどない。これは挑発だ。
さすがにイラ立ったか、蛾地は踏み込むと、ミルにその強力な強拳を命中させた!
この二発はかなり重いだろう。当然だ。あの重量を誇る肉体からの攻撃だ。軽いはずがない。
しかし、二発受けねばならない理由があったのだ。
ミルは起き上がると、再び蛾地の攻撃範囲内に入って来た。
蛾地のこのパンチは、単に前に踏み込んで撃つだけだが、決して簡単ではない。
無理やりミルの位置に届かせるため、かなり前のめりになっているのだ。放った瞬間、かなりのアンバランスが生じる。
そこをミルに付け込まれた。
ミルはバックステップで拳をギリギリでかわすと、同時に目の前にある蛾地の手首を掴み、思い切り引いた!
! 蛾地はただ驚き膝を付く。
拳を二発も受けたのは、間合いの確認、そしてタイミングの確認の為だ。そしてそれらは全て、このインファイトのチャンスを生じさせる為だったのだ!
ミルは案の定、蛾地の懐へ飛び込んだ!

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