多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。

書物

エレクトラ・ラムンゼン作。

記述

 エル・ア・フィリスの出自が【神々の図書館】の【言の葉の精】であるという説は、既に中世バルハラント?神学者?の研究のなかに見られる。エル・ア・フィリスとは即ち「エルから漏れ出たもの」の意であり、【図書館】でしくじりをやらかして放逐された【言の葉の精】たちの総称なのだと。周知の通り、エルという音はすべての【言の葉の精】の名の頭につく一種の接頭辞である。それ自体は簡単な音韻であり、自然、多くの言語圏でそれぞれ違った意味をもって存在している。つまり、メアレンでは「星」、北方語では「神秘」、西方語ではそのものずばり「妖精」。ことに、北方帝国の古都バルハラントの神学者たちの間では、エルという言葉は特別な意味合いをもっていた。神々や精霊による人知の及ばぬ業は、エレイン?即ち「神秘の声」とか、エルダール?即ち「神秘の足跡」といった言葉で受け止められていた。この後者の言葉と同じ名を持つ【言の葉の精】が、ニースフリルが隠匿する直前に世に出した一連の文献のうちの一つである『続・書物の森の物語?』のなかに複数散見される。最初の『書物の森の物語?』ができうる限り厳密に伝承を記録したものであったのに対し、『続・書物の森の物語』は多分に創作が入り混じった著作である(このことは、第一の書では同じ名の妖精でもかなり違った性格を見せることがあるのに対し、第二の書では同じ名の妖精は可能な限り人格の統一性を保つように気が配られていることからもわかる)から、ニースフリルが北方の神秘家たちの研究を知っていて、意図的にこの言葉を作品のなかに織り込んだことはかなり確実なことと思われる。後期ニースフリルは、前期の厳格極まる考古学者としての態度をゆるめ、創作や哲学研究といった分野にまで手を広げていたので、そのような態度の変遷がこれらの書物の性格にまで影響したことは疑いない。現在でも多くの研究者がこのことを非難しているが、もちろんそんなこととは関係なく、この二つの書はトロス三国を超えて広く六ヶ国語にまで翻訳され、たくさんの子供たちの愛読するところとなった、その伝承学的価値の大小など気にすることなく。そして、よく知られているとおり、第二の書の最後に配置されているあの題名のない章で、エル・ア・フィリスは深い森の中に十二人の少年少女を連れ出したのだが、それを捕まえたのは他ならぬエルダール?だったのだ。「神秘の足跡」が「エルから漏れ出たもの」を捕まえる。しかし、単純に見れば神話的寓意に満ちたこの場面を、彼女自身古き神の71分の1であるところの考古学者は実に微笑ましい童話的ハッピーエンドに変えてみせた。つまり、エルダールはいっときはエル・ア・フィリスを厳しく非難するのだが、子供たちがエル・ア・フィリスを心から熱心に弁護するので、最後には【言の葉の精】も言理の妖精に手をさしのべ、十四人は手をつないで輪になって町へと帰っていったのだった。

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