多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。

都市

都市の概略

この街は、昼は如何にもみすぼらしく見える。
だが、夜は違う。
この街では、どんな貧しいものでも必ず一つは幻光灯篭を持っている。
夜になれば、それが本領を発揮するのだ。
幻光灯篭は、夜空に光を投げかける。
その一つ一つはか細くても、百、二百、千、万、十万と光を集めれば、それは巨大な幻像となり得る。
暗い街の上空に、七彩の海が映し出され、そこには「放映局」でもある光の舟が浮かぶ。
舟の大きさは、投影者の財力に比例するが、その舟の集まりである「星雲(クラスタ)」の勢力だけなら、投影者個人の魅力と人気によって幾らでも肥大化させることが出来る。
嫌われ者の【運営船】こそ海の中央に鎮座してはいるが、この海の真なる中心は、常に気まぐれな舟たちだけが決めるのだ。
マッチ売りの少女は一夜で天に召されるしかなかったが、この街であれば、いつでも天にいることが出来る。
そしてどんな貧しい投影者の舟だとしても、人気を集めることが出来るかぎり、あるいは人気のある幻像を産み出せるかぎり、この街では消えることはない。
幻光灯篭一つあれば、どんなものでも「星雲」の中心になれる可能性があるのだ。

朝になれば、夜天の海は消え、全てはみすぼらしい灰色の街に逆戻りする。
だが、それまではまだ時がある。
無限にすら思える、夢の時が。
ただひとたび輝くことが出来たなら、灰色の朝にゴミ箱のお隣になっても構わない。
そう思う者さえ、珍しくはない。

だからここでは、誰もが夢に溺れ、星になろうと夜天であがくのだ。
そう、これこそが【夜天投影都市・浮世】である。

吸血鬼との関わり

【夜天投影都市・浮世】は観光都市として安定していた。投影された幻光灯籠の群れは金を落としてくれる観光客を呼び寄せ、トラブルも【運営船】が未然に防いでいた。それ故貧しき者も明日の暮らしを不安に思うことなく幻想を投影できたのだ。
その状況が一変したのは、夜歩くものたち、つまり吸血鬼族の流入による。
一般に、吸血鬼族は娯楽に飢えている。劇場などの大衆文化は昼に花開き、夜にはしんと静まっている。彼らが興じることが出来るのは、読書くらいであった。吸血鬼族に知的なイメージが伴うのも、読書家が多いためであろう。それでも彼らは昼のきらびやかな娯楽に憧れていた。
彼らの欲求を満たしたのが【夜天投影都市・浮世】であった。夜天の幻想はどんな書物よりも美しく、きらびやかであった。吸血鬼らはこの都市に通いつめるようになり、そして次第に定住していった。幾晩かで去っていく観光客という、格好の吸血相手がいたことも吸血鬼の定住を進めた。

しかし、いつの時代も吸血鬼は排斥され易い。観光客からの度重なる吸血被害の報告もあり、【運営船】は都市への吸血鬼立ち入りを禁止した。これにより不満が爆発したのが、当の吸血鬼ではなく、幻光灯篭の投影者たちであった。投影者たちにとって、毎夜足しげく通ってくれ、おひねりを惜しまない吸血鬼は、すっかり上客になっていたのだ。

吸血鬼立ち入り禁止を【運営船】が発表してから11日後の昼。数万に膨れ上がったデモ隊は【運営船】を占拠し、市長など要職についていた者を都市から放逐した。その日の内に吸血鬼立ち入りの禁は解かれ、夜にはそれを祝う幻光が多く投影された。街はお祭り騒ぎであった。
これが、【夜天投影都市・浮世】と吸血鬼の歴史である。
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