ゴッドイーターでエロパロスレの保存庫です

少女は、夢を見ていた。
懐かしい、幼き日の思い出を。

少女が眺める夢の中の幼い自分はどうやら風邪のようで、苦し
そうな表情を浮かべたまま、少々その身の丈に不釣り合いなベットで眠っていた 。
枕元には袋にはいった錠剤と、水滴が滴る水入りのコップ。額には濡れタオルがのせられていて、
看病された痕跡こそあったが、どうやら彼女は今、一人らしい。
そりゃそうだよね、と少女は思う。自分の家族は、幼いころからずっと忙し人ばかりだったのだから。
彼女は裕福な家庭に生まれた。幼いころから教育を、人並みのかそれ以上の生活をてにしていた。
荒ぶる神が闊歩し、あらゆる物が満足にてに入らない現代において、彼女はとてもいい環境に
育った。……と、大多数の人間からしてみれば思えるだろう。だが、彼女はそうは思えなかった。
裕福であるということはすなわちそれだけの資産を得るための努力をしているということである。
だから、誰もいない。今に限らず、いつも少女は一人だった。使用人はいたが、家族はいつもいない、
そんな毎日。愛してくれているのはわかっていたけれど、少女はそんな日々が不服でしかたなかった。
眠っていた少女がふと、目を覚ましていた。そのまま、気だるそうに辺りを見回して、ため息。目を閉じる。
熱が出たらお薬が、暖かな布団が、清潔な部屋があるなんてかなり恵まれてることなんだよー、と昔の自分に言う。
贅沢な子供だ、と言って笑う。
ああ、これは自分か、と笑う。
でも、やっぱり寂しかったよね、と目を伏せる。
贅沢なのは知っているけれど、やっぱり辛いときには誰か、愛しい人にそばにいてもらいたかった。
服も、玩具も、食べ物も、家族に比べたら、全然……。
世界が揺らぐ。
夢が覚める。
と、そのとき。
バン、と大きな音をたてて部屋に誰かが入ってきた。
それこそ、頑丈そうな扉を粉砕しようかというほど、
思いっきり。

『エリナ!』

懐かしい声。
幼い少女も、夢を見ている少女も、ビックリしたように目を開けた。
走ってきたのか、ボサボサの赤い髪を直しもせず。上がった息も整えず。彼は少女のそばへと駆け寄った。
意識が薄れる。
入ってきた青年の声はもう、聞こえない。
しかし、気取った見た目とは裏腹に、具合が悪そうな少女の様子に訳もわからず右往左往しながら、それでも必死に声をかけている姿は、とても……

『うるさい、なぁ……そんなに慌てなくても、いいのに』

ぶっきらぼうに、幼い少女が答えた。
具合が悪いとこに騒がしくされ、不機嫌になった少女。が、それでも青年はそばを離れない。
少女が毛布を頭までずりあげる。
青年があせったように、さらに騒がしくなる。
それでも、少女は毛布から頭を出さなかった。

−−ありがとう……

風邪に関係なく、真っ赤になってしまった顔を見られたくなかったから。

少女はハッ、と目が覚めて、すぐに自身のからだの異常に苦悶の表情を浮かべた。
エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ、フェンリル極東支部第一部隊所属の新人ゴットイーターである。
普段であれば相棒のチャージスピア型神器<オスカー>と共に荒神殲滅の任務についているであろう日中に、彼女は自室のベットで横になっていた。
あろうことか、彼女は風邪をひいていた。
並々ならぬ身体能力を有するゴットイーターになったにもかかわらず、風邪はひくらしい。
その原因も、戦闘中に氷の張る極寒の海に叩き落とされそのままさらに長時間冷風にさらされていたがゆえ、と並々ならないものではあるのだが……。
風邪程度で、とも思えるだろうが、ゴットイーターたる彼女が任務受注にストップをかけられるほどである。今、未だに幼さをのこすその体を覆う気だるさは日常にも支障をきたしかねないものだった。
うぐぐ、と呻きながらも、エリナがなんとか毛布から頭をだし、自室を見回す。
誰もいない。
当然である。病人とはいえ、ここはプライベートな自室である。寝起きに誰かがいたら、知り合いだとしてもそれこそ異常だ。
ふぅ、と一息。
目を閉じる。

(だから、あんな夢をみたのかな……)

風邪で動けず、誰もいない部屋にたった一人。
一人が寂しい、不服であるという子供っぽい思想こそもうないが、似たような状況から、あんな記憶が夢として出てきたのだろう。
ここ、フェンリル極東支部は荒神との激戦区だ。日中どころか、夜でも友人のゴットイーター達は駆り出される。エリナ抜けた穴を埋めるとなればエリナが休んでいる限り、お見舞いに来るような暇は無いだろう。
なので、基本ここに訪れるのは先の事件で黒蛛病を患う人間が激減し比較的ひまをもて余している看護関係の人間ばかりだった。
確認して、ため息。
力を抜いて、思考を止める。
いま、この苦痛と退屈を回避する唯一の方法と言えば眠ることである。
眠ってしまえば、この孤独感からもちょっとは解放されるだろうと、気だるさにまかせ、再び夢の世界へと向かう。
さっきの続きがみれるかな、という淡い希望もあった。
エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。
幼き日に亡くした、優しい兄。
大好きだったあの人に、たとえ夢のなかでも、また会えるなら……。
そう、意識を沈めていき……

「エリナ」

跳ねるように起き上がり、ベットから落ちるように出入り口へ向き直る。
誰もいないはずのこの部屋で響いた、自分を呼ぶ男の声。
沈んでいた意識。
風邪によって定まらない思考。
孤独感のなかで見た、幼い頃の記憶。
冷静であれば考えもしない可能性を、このときのエリナは口にした。

「お兄ちゃん……!」

思わず、そう叫んだ 。
普段であれば、荒神との混戦の最中でも聞こえるような、大声で。

「………………あぁ?」
「あ……」

静寂。
寝間着姿で顔を真っ赤にしてエリナがお兄ちゃんとよんだのは、当然ながらエリックの幽霊でも、エリナの幻聴でもなく、黒いスーツを着崩した一人の男にだった。
右手には湯気の上がる小さな鍋を持ち、もう一方の左手には水の入ったペットボトルを持っている。
どうやら、エリナのお見舞いにきたらしいその男はフェンリル極致化技術開発部特殊部隊<ブラッド>の隊長その人だった。彼は先の事件で、フェンリル極致化技術開発局独立起動支部<フライア>から正式にここ極東支部へと移籍してきたのだ。
だから、ここに現れてもおかしくはない。
だが、彼は程の実力者ともなればエリナなどとは一線を凌駕する難度の任務に負われているはずで、お見舞いなんぞにくる可能性は最も低いはずだった。
未だに、静寂。
漆黒の全身に相反するように、濃い蒼の瞳は怪訝そうなまま、じっとエリナを見つめている。
エリナといえば、自分のしでかしたことの理解が未だに終わらずなんともいえない表情のまま固まっている。

「えっと……」

始めに動いたのは、エリナだった。
ゆっくりと、まだ見つかっていないとでもいうように布団の中へ身を隠そうと体を丸めていく。
が、

「……おい、エリナ」
「え……わ、ちょ、ちょっと! 先輩!?」

いつの間に、というまえに。彼は荷物をエリナの枕元の机に置くと、キスをするつもりかというほど顔を近づけてきた。
必要はなくても、反射的に逃げようと下がり、バランスを崩して倒れてベットと彼に挟まれる。
彼はこれ幸いと混乱してわたわたと全身を震わせるエリナの体を押さえつけ、さらに接近。
耳元に置かれる左腕。
鎖骨にかすりながら、首に添えられる右腕。
いつもと違い、パジャマのズボン状態ではあったが、太ももの間にも足を一本通され、覆い被さられる。
一切のためらいもなく行われた一連の動作に、エリナの小さな体はなすすべなく拘束されてしまった。
自分の体温が高いからだろうが、添えられた彼の掌の冷たさにエリナは小さく悲鳴を上げた。
一瞬、世界が止まって。
ツーっと、左右の腕がエリナの顔を固定する。
目は、開けない。
そして……

「なに寝ぼけてんだ、エリナ」

コツン、と痛くない頭突きをされた。
腕が離れて、いいにおいが部屋に広がる。
目を開ければすでに彼は鍋の中身を(おそらくムツミちゃんが作ったであろうおいしそうなお粥だった)椀によそっていた。
エリナはしばらく聞こえてしまうのではないかというほどに高鳴った心臓の音を聴きながらポカン、と
お預けをくらった犬のように硬直して。次に、その、いかにもこちらの反応を楽しんでいる彼のさまが、混乱が羞恥に変換されようとしていた思考を八つ当たりという怒りの感情へ変換していく。
そのまま、重い体を感情巻かせに起こして、云う。

「あの、先輩! 私、ね……寝ぼけてなんか……!」
「んー? どうみても寝ぼけてんだろ。なにがお兄ちゃん、だ」
「だから……寝ぼけてなんかいませんー!」
「ああはいはい、わかったわかったよ面倒くさい。お前は寝ぼけてない。いいから病人はベットで大人しくしてろ」
「わ、先輩、まっ……きゃ……!?」

人形か何かのように持ち上げられる、エリナの身体。残念というべきか、幸いというべきか、お姫様抱っこではなく文字通り担がれる。

子供といわれることを最も嫌う年頃であるエリナにとって、誰かに持ち上げられるというのはかなり羞恥心を煽られる行為だったが、
起き上がった時点で力を使い果たしたため、そのまま荒れたベットを直し始めた彼の背中を小さい暴言と共に叩くくらいしかできなかった。

「熱でて瀕死だっていうから見舞いに来てやったのに、意外に元気じゃねぇか」

ベット戻され、そのまま羞恥やら怒りやらでそっぽを向いてしまったエリナに、かまわず彼はひょうひょうと話しかける。
なんだろう、夢のまんまなのに、あんまり嬉しくなかった。

「先輩がややこしいことするからじゃん……」
「お兄ちゃん、とか……くくくっ……」
「わ、笑わないでよ! かなり恥ずかしいんだから……」
「ああ、すまんすまん」

――悪いと思ってないでしょ。
――ああもちろん。
そんな会話をしながら、どこからか取り出したリンゴで器用にもなにかを形づくっている彼をみながら、ふとエリナは思う。
相変わらず不思議なひとだな、と。
入隊からほんの短い時間で副隊長になり、そのまま隊長へ。
特殊部隊<ブラッド>の隊長で。終末補食の阻止を行った部隊の隊長で。たった一人で大型荒神四匹を殲滅してしまうような、壮大な実力を誇る、そんな人。
キャリアには大差がないのに、その歩んできた道はエリナとは全く違う。にもかかわらず、疲れているはずなのに激務のあいまにこうしてお見舞いなんかに来てくれるのだ。
特殊部隊、選ばれた人間のみなれる特別なゴットイーター<ブラッド>。
その姿を見るまでは、その特別をはなにかけてこちらを見下すような連中かと思っていたが、いざ任務を共にしてみれば誰一人そんな人はいなかった。
教えを乞えば、丁寧に教えてくれた。
<喚起>の力を持つ彼に教えを乞うゴットイーターは多いが、そのすべてに対して彼は文句をいいながらも付き合い、教えている。
比較的初期から彼との交流を持っていたエリナの時には、少ない素材からわざわざチャージスピアを持参して手取り足取り教えてくれたほどである。
そうかと思えば、戦闘に関しては天才的な彼は意外に無知な一面もあり、教えてあげることもあった。

もっとも酷かったのが料理であり、卵焼きを作れと言ったら割らずにそのままグリルに放り込む、
レンジに放り込むは当たり前だった。しかも、さも当然のような表情で。
そしてなにより。たいして実力も変わらないのに、先にゴットイーターになったというだけで偉ぶる先輩ゴットイーターがいるなかで、
彼はさっぱり自分の地位に無関心だった。曰く、たまたま血の力が<喚起>という統率せいがある能力で、たまたま最初に使えるようになったから隊長になっただけだとか。
本人がそんな考えだからか、自分よりずっと上の実力を見せつけられているのに、なぜか不快を、距離を、感じない。
無愛想で、無関心で、面倒くさがり。
でも、ときどき天然で、面倒事はサボっても一生懸命な人間の頼みは断らず、努力家な人間には協力を惜しまない。
それができる人は珍しくないのかもしれないけれど、そこには、確かに人を惹き付ける彼だけの魅力があった。

(だからこそ、私は……)

そこで、一気に顔に血が集まる。
真面目な思考をしていたはずなのに、唐突に割り込んだ恥ずかしい思考。
やめやめ、とエリナは思考をリセットした。
ゴットイーターとなって、軽症こそ日常茶飯事ながら無病息災な毎日を送ってきたからだろうか。
今日はやけにすがりたい記憶や思い出が頭のなかを駆け巡っていた。

「先輩、そういえば……任務、行かなくていいの?」

エリナは布団から上半身をおこしながら問いを投げた。
彼がここに来て長くはなくともそれなりの時間が経過している。
すべてを認識しているわけではなかったが、エリナが知る限り彼は今日グボロ・グボロの感応種<カバラ・カバラ>と
ウロヴォロスの撃退を含めた複数個の最高難易度任務を受ける予定があるはずだった。
面倒くさがりな彼である、普段から十全の実力を発揮して戦うことは少なく基本的に任務をこなし尽くすのは時間ギリギリが日常であり、
サボっていてもここがアナグラであるかぎりここまで長時間滞在することはできないはずである。

だが。
ん? と彼は返事をしたのちエリナが予想もしなかった返答を返してきた。

「そんなもの全部終わらしてある。心配しなくても、今日中はここにずっといるさ。許可もとってある」

は? と、エリナは思わず女の子にあるまじき反応をしてしまった。
終わらしてある。
まだ、十四時を少しまわったかというこんな時間に普段丸一日かかって行うはずの任務を終わらしてあると彼はいったのである。

「お、終わらしてあるって……なら、私が休んで行けない分がまわってくるはずよね?」
「お前の受けるはずだった任務? ああ、ヴァジュラにシユウ、オウガテイル多数にボルグカムランと……あと、飛び入りのセクメト二匹だったか。
殺ってきたに決まってんじゃねぇか、その程度」

唖然。
驚愕などと生易しい表現ではたりないなにかがエリナの言葉を奪い去る。
彼自身の任務のみなら、まだわかる。酷いときにはわざと戦闘不能になって寝てたりする彼が本気
をだせばいつもより早く終わるかもしれない。
だが、いくらか難易度が下がるとはいえそれなりに実力を付けてきたエリナがチームを組んで一日
がかりで消化する任務も追加して、さらに強力な追加荒神も含めてこの時間となればそれはもはや異状である。
普段どれだけ手を抜いているのか、彼がどれだけ面倒くさがりなのか、改めて確認させられた。

「そ……そうなんだ……。今日は調子よかったの? いつもゆっくりしてるのに今日にかぎっ――」
「バカ、お前のためにやったんだろうが」
「えっ?」

さも当然と、彼は云う。

「だから、お前が風邪引いて動けないって、本当に辛そうだって聞いたからこちとら死に物狂いで荒神
なぎ倒してお前のとこにきたんだよ」
「え、あの……先輩……? それは、えと……」
「まさか本気だせばいつでもこんな風に二人分の任務を半日でこなせるとか思ってないだろうな? 
無理だ。普段ならまず無理。じゃあ、なんでできたか。お前が心配だったからだよ。ただでさえお前は
突貫癖があって普段から危なっかしいんだ、ただの風邪だと言われたところで安心できるわけない。
面倒なことに急ぎの任務が重なってるとこにそれを聞いたからな、流石にサボれなかった。
だから終わらしてきた。俺のも、終わってから回されるであろうお前の任務も。久々に大型荒神と四面楚歌状態で
戦ってきたぜ、急ぐためにできるだけ荒神一ヶ所にまとめたからな。
疲れた。ひじょーーーに疲れた。ま、結果お前は結構元気みたいだし俺は安心してお前をからかって遊べるわけだがな」

ずらずらずらずらずらずら〜……っと、まくし立てられる言葉。要約すれば、すべてエリナのために、というわけである。
その恥ずかしい言葉を、彼は相変わらず全く恥じらわずにエリナをじぃーっと見つめながら言い切った。
たまったものではなかった。
もう、隠れることすら放棄して。エリナは真っ赤なまま彼を凝視していた。

「はっ、相変わらず初なやつだな、エリナ。よくこんなんで俺に告白なんてできたもんだ」
「っ〜〜〜〜!!」

せっかく、さっき無理矢理押し込めた記憶……すなわち、自分から彼に告白した、という事実を、よりにもよって彼本人の口から言われてしまった。
最初は憧れだった。
強くて、平等。やめようとしても自分より強い人間を見れば妬んだり、自分より不真面目な人間を見ればイライラしてしまうエリナからみれば、それは素晴らしいことだった。

『極東の流儀にならって、これからあなたのことは“先輩”って呼ぶからね!』

隊長と呼ばれることを好かないという話を聞いて、ならばとそんなことを言ったころから、彼に憧れ以外の感情を抱き始めていた。
繰り返される任務。
面倒だ面倒だと繰り返しながらだらだら任務をやっている姿は、最初こそ苛立たしいものだったが、帰りのヘリの中ではチームメンバーへアドバイスを行っている姿をっ見ていれば嫌でもただの不真面目な人間で無いことを理解できた。
ひたすら強くなりたいからと引っ張り回した時期もあったが、嫌な顔はしても断ることだけはされなかった。
興味が憧れへ代わり、いつしか好意に変わっていた。
告白は、一種の賭けだった。
自分は未だに十四の子供で、相手は実力にも仲間にも恵まれた人間で。特に、同じブラッド所属のシエルという女性から好意的に思われているようでもしかしたらもう付き合っている可能性もあった。なにより、子供だからと相手にすらされない可能性があったのだ。
しかしながら、告白は成功した。
正直エリナは自分が告白の際になぜ好きになったかのなどの重要な点でなんといったのかさっぱり覚えていなかった。気づけば、普段のダルそうな雰囲気とうってかわって、見たこともない真面目な顔で後悔しないかと聞く彼がいて、エリナはハッキリとはい、と答えたのだった。

そんな経緯の末に付き合っているからだろうか、今日のように主導権を握られるのが当たり前になっていた。

「ほら、そんなに赤くなってちゃ悪化するぜ? 明日もこんな激務は勘弁だからな、さっさと治してくれ」
「誰の、せいだと思ってるのよ……恥ずかしいことを、あ、あんなにハッキリと……」
「本心だからいいだろ。お前が後悔しないと言ったときから、俺はお前を子供扱いして恋に恋してるだけだとかそんなこと思わず本気で答えることに決めたの」
「だから、そうゆうこと……ハッキリと……」
「クサイ台詞ですまねぇな。くくくっ……。まぁ、一番の理由はエリナのそうゆう困ったり恥ずかしがったりする顔がたまらなく好きだからだけどな」
「……変態」
「結構。ほら、汗かいて水分足りてないだろ。先にリンゴ食え」

エリナの暴言などまるで気にせず、完成と呟きながら彼はチマチマとなにやら作っていたリンゴ……つまようじまで用いて見事にエリナの相棒<オスカー>を型どったそれを差し出してきた。
料理ができないくせに、刃物の扱いに関してはムツミちゃんといい勝負らしい。
からかう、といいながらも自分を元気付けようとしている配慮なのだろうとエリナは理解していたが、素直にそれを誉めるのは些か癪だったので仕返しをしようと、思わず、

「無理。さっき動いたせいで体が動かないの、だから……食べさせて?」

今度は、彼がぽかんとする番だった。
それを見て、内心羞恥心でいっぱいいっぱいながらしてやったりと笑みを浮かべた。

「…………」

しかし、私だってこれくらい言えるんだからねというエリナなりの強がりだったそれは彼にとってはどうやら逆効果だったらしい。

「え……あれ? 先輩……?」

予想通りの反応がない彼を不信に思い首をかしげるエリナをよそに。彼は黙ったまま、無造作に差し出していたオスカー(リンゴ)を引き戻し自らの口に含んだ。
食べやすいようなのを作り直すのかな、とエリナは思った。
このときのエリナは失念していたのだ。この男はけして優しいだけの人間では無いことを。

「んっ……!?」

キス。
リンゴを咀嚼していたはずの彼はいつのまにかエリナの目の前へ。
まず、女のエリナが嫉妬してしまうような柔らかい唇の感触が。続いて彼が咀嚼したことでちょうど擦りリンゴのようになった濃い林檎の香りと甘みが、ザラザラとした彼の舌を伝って熱で体温の高くなっていたエリナの口内へと運びこまれていく。

「ん……あ、せんぱ……んんっ……!」

ただでさえベットの囲いに背を預けていたエリナに引くことは許されず、されるがままに彼の舌に口を犯されていく。
舌の裏側を、歯茎と歯の境目を。
エリナがリンゴの甘味と長時間のキスによって口内に貯まる自分のものだか彼の物だかわからない唾液を飲み込むのに必死になっている隙に、彼はじっくりとその幼い口を犯し、侵し、蹂躙していく。

「はぁっ……はぁっ……、せん、ぱい…………まって……んんっ……」

やっと口を離したかと思えば、球体としての原型を残していたリンゴをそのまま丸かじりして再び口づけを再開される。
先程とはうってかわり少々固形の混ざっていたリンゴを磨り潰そうと無意識に奥歯のもとへと運ぼうとする舌の動きを阻害し、無理やり彼の舌が絡みつく。
かとおもえば、舌にたまったエリナの唾液をまとったリンゴの破片を奪い返して、一瞬噛んで、またエリナの口内へと押し返してくる。
熱と興奮で、頭がぼうっとしていく。
背筋がゾクゾクと震え、いきすぎた快楽で全身に鳥肌がたつ。

「どうだ、うまいか? 今極東で手に入るなかじゃ最高級のリンゴらしいぜ、これ。高かった」
「はぁっ、はぁっ……あじ、なんて……わかるわけ……」
「そうかい、じゃあ……もっとくれてやる」
「んむっ……!」

三回目の口づけは、荒々しく。
首の後ろに手を回されて、ぐいっと引き寄せられる。
全身を包む怠惰感と興奮で意識が遠退き、飲み込むことすら億劫になり、口の恥から唾液かリンゴかが垂れ落ちるのを感じた 。
息苦しさは、気にならない。
ただ、胸元と足の間に熱とは違う熱さが収束していく感覚だけがいやにハッキリとしていた。ダルさが興奮へと、あっという間に変換されていく。

「っ……んあぁっ……!」

それを察したとでもいうのか、焦らすでもなくいきなり、グリッと乳首を押される。

ここはエリナのプライベートルームで、鍵はエリナ本人と彼しか持っていない。故に、ただでさえ発達途中であり、さっきまで寝ていた彼女は素肌にそのまま寝巻きをきていたため、ほぼ直接、その快楽はエリナの全身を駆け巡っていく。
キスも、愛撫も、無理やりで、唐突で。
しかし、彼に触れられるのが嫌なわけはなく。
だからこそ、心の準備をしていなかったエリナにとってはただでさえ強烈なそれが何倍にも増幅されているように感じられた。

「ひぅ……!? せ、せんぱ……むね、そんなに、つよく……しない、で……! わたし、いま、なにもつけてない……からぁ……!」
「だろうな、ちっちゃい乳首が痛そうなほど固くなってるのがよーくわかる。コリコリしてて、すっげぇ可愛い」
「だから、そうゆうこと……ハッキリ、と……あぁっ!」

パジャマの生地を利用してザリザリと刺激され、グリグリと潰すように押されて、カリッと爪を引っかけられて、最後にぎゅっと無遠慮につままれる。
押し退けようよする腕はすでに、両腕ともに背中でガッチリと彼の腕に拘束されていて。
拘束によって身をよじって快楽を受け流すこともできず、無理に力みつづけ、さらにキスで一気に昂っていたところに無遠慮な快楽を叩きつけられ、まだたいして時間がたっていないにも関わらず、すでに達してしまいそうなほどに全身が快楽に満ちていた。
比較的胸囲が豊満な女性が多い極東において、エリナはいつまでも凹凸の目立たない自分の体に軽いコンプレックスを感じていたが(彼女の歳なら普通なのだが、彼女の中での対象が幼い頃にみた十五の頃のアリサなのだからなのだろう)、彼は特に好みはないらしい。
ただ、意地悪く敏感な部分に触れられながらも抵抗できないエリナの姿を楽しんでいるようではあるのだが。
すでにリンゴはなくなっていたが、彼はエリナの反応が見足りないとばかりにキスを、愛撫を続ける。
深すぎるほどに深いディープキス。
無遠慮な幼い胸部への愛撫。
ギリギリ達してこそいないものの、エリナの下着の下はすでに気持ち悪いほどに濡れていて、間に挟まれた彼の足が邪魔さえしなければ無意識に太ももを擦りあわせていただろう。
もしかしたら、すでに接した彼の足にまでその生暖かい愛液は到達していて、それすら彼はニヤニヤしながら、あえて無視しているのかもしれない。
考えれば考えるほど、自分の体のすべてが彼に筒抜けな気がして……しかし、それすら快楽を増幅するためのスパイスで……。
気がつけば、ぜぇぜぇと荒い息をはくエリナを見下ろしながら、彼はとっくに息を整えていた。

「はぁー……ふぅ。相変わらず感じやすい体質だなエリナ。胸だけでそこまで反応してくれるのは嬉しいが、男の俺には到底理解できないな。胸だけで感じるってのは」
「はぁ……はぁ……はぁ……んくっ……しらない、よ。病人に、いきなり……こんなことする人の考えの方が、よっぽど理解できないと思う、けど……?」
「あはは、いやぁー……最初はするつもりなかったんだけどさ。熱で浮かされて真っ赤な顔しながら上目遣いで食べさせて、とか……死に物狂いで戦ってきて、心配してたお前が意外に元気で安心してたとこにそれはもう、我慢できんだろ。
エリナ、お前はもう少し俺のなかでのお前の言動の影響力を知るべきだ」
「知らない……わよ……」
「残念。まだ以心伝心の仲とはいかないか。さて、一回達する寸前までやっておいて聞くのも無粋というものだが……続き、いいよな?」
「…………」

知らない、とは言うものの。
無論、二人はこういった行為に及んだことがないわけではない。すでに互いの裸をみせあった回数は一回や二回ではない。
だからといって、多いわけでもなかった。
性行為とは好き合う二人が自然と行き着く行為ではあるけれど、決してそれを目的としてはならない。というのが、はじめて行為を行った際に彼がいった言葉である。
つまるところ、そこまで隙あらば求めてくる、ということがないのだ。自制が効く、とも言うべきか。
そんな彼が、獣のように爛々と目を光らせ自分を見下ろしているとなれば、さすがのエリナも彼の心中を察するのは難しいことではない。
彼に求められている。
熱に浮かされ辛くはあったが、それはとても、とても嬉しいことだった。
行為の回数が愛の深さでないことはわかっていても、全くなければ不安に感じるのも確かで。
一番互いを感じ合えるのが体を重ねている時というのも確かで。
求めることが苦手で、でも滅多に求めてこない彼が珍しく求めてくれている現在の状況は逃すのは非常に惜しいものだった。
しかし、

「し……しない……」

回数は未だ二桁にのぼらず、しかしながらそのすべては彼に主導権を握られまま行われていた。
性知識に疎いエリナに対し、年齢的に行為が初めてでも知識はそれなりに有している彼なのだからそれは当然ではあるのだが、プライドの高いエリナにとってそれは気にくわなかった。
嬉しいのに、素直に喜べないのは不幸な性格だとは思うけれど。
仕返しに意地悪するにしても、力でも知識でも行動力でも勝てないエリナにできることとなれば、こうして行為を断って彼を困らせることくらいである。
とはいえ、エリナはすでに達しかけている身であり、しかも直接秘所に触られているわけでもないのだか
ら布団に隠れた下半身を擦り合わせないようにするだけで精一杯なのだ。
下着はすでに、漏らしたのではと不安になるほどに濡れていて、もしかしたら薄い繊維のパジャマのズボンまで濡れているかもしれない。
だから、なんで、と彼が聞いてきたらお願いしますって言えたらいいよ、といってやろうと思っていた。

「ふーん……そうか、残念だ」
「え……?」

呆気なく、彼は引いていく。
これまたエリナなにとっては予想外だった。
昂った体に一気に鳥肌がたつのを感じた。今日中といった彼がいつまでここにいるのかは知らないが、少なくともその間自分はこの状態で耐えなければならないのだ。
股間に延びそうになる手を。
昂った精神を。
ぐちゃぐちゃに濡れた下着の感触を。
そう考えれば、それがどんなに辛いことか理解するのに時間はいらなかった。
ただでさえ熱で体が暑く意識がぼうっとしているのだ。並大抵の辛さではない。
とはいえ、今さらやっぱり、などというのはそれこそエリナのプライドが許さない。
そんな風にエリナがいろんな意味で悶々としていると、パチンと妙な音が聞こえてきた。
見れば、彼が腕輪のついてない方の左腕に透明で表面がツルツルした薄いゴム手袋を手にはめていた。

「えっと……? あの……それ、なんですか?」
「んー? いや、お前がもうしないって言うからさじゃあ本来の目的であるお見舞い兼看病の方をこなそうかなーって」

言うと、彼は薬が入っているであろう紙袋をガサガサと漁り、なにかを取り出した。
白い錠剤。
が、それが飲み薬にしては些か大きいようだった。
すなわち、

「せ、先輩。それ、まさか……」
「うん。座薬。よーく効くらしいぜ?」

ニタァ、と見るからに良からぬことを考えている笑顔が彼の整った顔に浮かぶ。
やめるつもりなど、そうそうない。
笑顔は、言外にハッキリとそうかたっていた。

「ほぉーら、ズボン下ろしてこっちにその可愛いお尻つきだそうか」
「や……ぜ、絶対嫌よ! そんなヤらしい顔した人になんか、絶対!」
「大丈夫大丈夫。俺は構わないがお前は嫌だろうからちゃんと手袋してるじゃん。このあとお前に利き手で触れられないのは嫌だからなぁー」
「そっちは関係……なくはないけど、そうじゃなくて! お、お尻なんか……!」

行為に及んでおいて今さらとも思えるが、秘所を見られるのと排泄機関を見られ触れられるのはそれとはまた違ったベクトルの恥ずかしさがあるのだ。
エリナは彼に伝えていないが、過去数回の中で幾度かその指が背後に回ったことがあったのだが、そのたび、子供に戻ったような、子供扱いされた時の怒りとも羞恥とも違う言い様のない感覚に襲われ少々恐怖のようなものを抱いていた。
とはいえ、彼の性格上言えば率先してやって来かねないので言えないのだが。

「それに、もう今日はしないって私いったよね!?」
「ん? 違う違う。これは医療行為だ」
「嘘!」
「ははは、元気な病人だなぁー。仕方ないから、無理やり行こうか」
「ちょ、せんぱ……!」

脱力したまま横になっていたエリナに、一気に彼が馬乗りになる。
全体重をかけられているわけではなかったが、弱ったエリナにとってはそこに彼がいるというだけですでに拘束になっていた。
腕はあっという間に頭の上に拘束され、布団の上から太ももの間に足を入れられる。
うっすらと涙さえ浮かべたエリナの顔は、しかし彼に燃料を投下したにすぎず。
ぐりっと彼の膝が股間を刺激すれば、幼い声が淫らな悲鳴をあげた。

「なんだ、やっぱりお前も限界みたいだな」
「あ……っく、んん……! はぁっ……そんな、こと……ない、もん……んんっ!?」

四度目のキスが落とされる。
まだ若干リンゴのにおいが残る、文字通り甘い唇はエリナの力を根こそぎ奪い、冷静な思考を停止させる。
張本人である彼はその隙を見逃さず、一気に座薬を握ったままの左腕をエリナのパジャマの下……にとどまらず、下着の中まで忍び込ませた。

「んんっ!! せんぱ、い……やめ……んっ……!」

己の一番恥ずかしい部分を無遠慮に侵入してくる冷たい感触。
後ろも向かせずどうやって座薬を使うのかと思えば、まさかの前からいくつもりらしい。

「おお、すごいことになってるな。実はお漏らしでもしてたのか?」
「し、してな……ひゃん……!」

彼は、手袋はしていても、うでまくりはしていなかったらしい。
未だ産毛の一つも生えていないエリナの秘所を、彼の着ているスーツの袖がもろに削り、電気が走ったような快楽がエリナの背筋をかけ上がる。
四苦八苦していふりをして、わざと、しつこくそれを繰り返すのだから、指の方がお尻をまさぐっているにも関わらず、秘所を愛撫されているのとそうかわりない快楽がエリナを襲っていた。
今までまともにさわられたことのなかったお尻への刺激も、よりいっそうエリナの羞恥を上昇させていく。

「せんぱ、い……! そで、そでが……あたって、る……! わ、わたしの……っに、がりがり、ってぇ……!」
「んー? ああ、なんか冷たいと思ったら……。まぁまぁ、我慢して我慢してー。俺は今お前の後ろの穴探すので忙しいから」
「む、りぃぃぃ……! う、うしろ……うしろ、向くから……おねが、い……じゃないと、もう……ふあぁっ……!」

必死に身をよじって、拘束さえばければ即座に後ろを向いていたであろうエリナの必死な様子を前に。しかし、無情にも彼は意地の悪い笑みを浮かべただけだった。
ぐり、っとより一層深く、強く、エリナの秘所をスーツの裾が抉る。
それは、エリナのそれが普段はしっかりと閉じていて、お陰で今までは表面をこすっていただけだった腕が、一気に内部のピンクで柔らかい肉を抉った瞬間だった。
四肢に力が入り、痙攣が硬直へ。
拒絶の言葉を紡いでいた口はすでに喘ぎ声のみを上げ、先ほど同様拘束され力んでいるエリナがそれにいつまでも耐えきれるはずもなく、

「んぐ……あっ、はぁっ……あ、ああ、ぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」

掠れた悲鳴のような声とともに、耐えに耐えたエリナはその反動もあってか、自分よりはるかに重い彼を腹部にのせたまま無理やり腰が浮いてしまうほど大きく絶頂を向かえた。
月並みな表現を使えば、頭が真っ白になるような。
正直に言えば、彼に体を支配されているような。
自らの意思が一切介入することのない、他人によってもたらされた絶頂は未だ自慰も満足にできないエリナにとってはなにより心地よい瞬間だった。

が、

「ふぁ……!? あぐっ、あ、ああぁぁ――!?」

ビクリ、ビクリと未だ絶頂の余韻も抜けぬエリナのそこを行き来する手が止まる気配は一向になく、
達した直後でこの上なく敏感になっているエリナは落ち着くまもなく二度目の絶頂へと誘われた。
達した瞬間に二度目の絶頂を向かえ気が狂うかと思ったエリナだったが、それで終わりかと思うまもなく、
まったく止まらない刺激に再三腰が跳ね、意識すら薄れていくほどの猛烈な絶頂の波が襲いかかる。
もはや何が起きているのか、いつまでも終わらない快楽の恐怖のなか、ボヤけた視界で自分をこんな風にしている張本人を見れば、
その顔に普段の彼ならばまずあり得ない恍惚とした笑みをうかべていた。
彼がエリナの反応を、主に羞恥を示す反応を見て楽しそうにするのはすでに知っていたが、どう考えても今のエリナが示す他人視点の感情は苦痛である。
他人が苦しむ、というより嫌がる反応を見て楽しそうにする……つまるところ、彼はドSと言われる人種らしい。
無論、そんな知識を持たず連続で達し続け思考がおかしくなっているエリナにしてみれば、そんな彼の様子を見てもなにを考えられるわけでもなく、
ただただ快楽に身を支配され意識を失う寸前のような表情を浮かべるだけだった。
耐えに耐え、その先に一気に達し一回落ち着いて余韻に浸ってこその絶頂だというのに、流石にこう何度も連続で逝かされれば絶頂も苦痛と何らかわりない。
にもかかわらず、よく見れば、なぜだかボゥっとした表情で半分意識のないエリナの口からはいつまでも喘ぎ声が絶えず、涙が流れる瞳も微かに笑みすらうかんでいる。
無理やりで。
制止の声も受け入れてくれず。
ただ、自分の体を好きに弄ばれているのに。
それでもエリナは、彼からもたらされるその苦痛を快楽として受け止めていた。
当然そこにはエリナの彼に対する信頼と信用と親愛があるからこそなのだろうが、普通ならば精神的違いはあれど誰からされようと快楽は快楽で、苦痛は苦痛であるはずで。
まぁ、そうゆうわけである。
どれだけの時間が過ぎたか、流石にやり過ぎたようで、ガクガクと肉体反射のみでエリナが痙攣を繰り返すだけになってきた頃。

「……っ……っっ……っ? んんっ……ぐぅっ……! え、あ……え……!? なに……あぐ……んあっ、ああぁあーーっ!?」

ついに、というべきか。
くすぐるように、エリナの後ろの穴に冷たいなにかが這い。
否定するように、ピッチリと閉じたそこを無理矢理こじ開け。
ズブリ、と。
本来排出する以外の用途でなにかが通過するはずもないエリナの肛門に、細長い座薬が挿入された。
人生で初めての経験に停止していた思考が再開され、相変わらず与え続けられてい秘所への快楽もいったん忘れ、なんともいない排泄欲とも気持ち悪さとも言えない感覚に身をよじる。
感じているのか、否定しているのか。
体がそのどちらかを選べずに困っているような、奇妙で、不思議な感覚。
とはいえ、それを考える暇をくれるほどエリナにまたがる男は優しくなかった。

「……ひぅ!? っぁ……あ、が……ぜ……せん、ぱ……い……なに、して……ぇ……っ!?」

次いで己の体内へと侵入してきた異物に、流石に意識がはっきりしてきたエリナが狼狽する。
座薬より、ずっと長い。
座薬より、ずっと太い。
そしてなにより、動く。
薄いビニール手袋に覆われた彼の指が、エリナの肛門の中へと侵入し、グニグニとその内肉を削っていた。

「どうだ、エリナ。初めてのアナルデビュー」
「んっ……はぁっ、はぁっ……あ、なる……? わかん……ない、けど……お尻、イ、ヤ……! グニグニって……はぁっ……されると……なんか、むずむず……する、の……!」
「ほう……。どこが?」
「はぁっ、はぁっ……やだ、ぁ……! 言わせ、ないで……」
「だーめ、言うまで止めないし聞き続ける」
「んぁっ……!!」

云うと、今まで無造作に動かしていただけの指がわずかに爪をたてながら上……膣側の肉を刺激し、無理やり押し上げた。
普段なにを感じるはずもないそこが不自然に広がり、空虚な排泄欲が一気に強くなる。ないものを出したい、そんな矛盾した欲求はエリナの羞恥をさらに刺激する。

「入れること事態はまぁ、びちょびちょだった前から水分を持ってきたからともかく……これだけ無理矢理逝かされてさらには尻穴引っ掻き回されてるのに、随分と気持ち良さそうだな、エリナ?」
「やだ……はぁっ、言わない……で……あぁっ……!」
「言うさ。言うたびにお前のお尻のなかぎゅうぎゅうと俺の指締め付けてすっごく気持ち良さそうだからな。なんのためにこんな説明口調で喋ってると思ってるんだ」

もちろん、体験事態今日初のエリナが本来性感の機能のないお尻のなかを引っ掻き回されたとしても性的快楽を伴うはずはないのだが、一度意識がとぶほどに逝き続けている最中である、なにをされても今の彼女には快楽でしかなかった。
がりがり、がりがり……!
医療行為という大義名分はどこへやら、本人すら触れたことのないそこで細い……されど当人からしてみれば太い指がこれでもかと暴れまわる。
だが、そちらに集中するあまり前への刺激は弱まっており、エリナは未だに未知の感覚によがりこそすれ、逝き地獄からは解放されていた。
つまり、今エリナの肉体を刺激しているのはお尻のなかを引っ掻き回している指だけで。
気持ちよくないかと言えば、否である。
未知の感覚だらこそ、ぬるぬると自分の中を動くそれに、敏感になりきった今でなくても淫らな悲鳴くらいは上げてしまうだろう。
とはいえそれは快楽とは別物で。
気持ち良いのだけど、刺激されるのは羞恥心ばかりではなかった。
むずむずと、急激に強くなっていくそれに、ついにエリナの頭のなかの秤が羞恥心の方向から傾いた。

「……っこ……」
「ん? なんだって?」
「……っ、だから……! ……お、おしっこ……! お尻のなか、グニグニされると、おしっこしたくなるの!!」

快楽地獄の次にエリナを襲ったものの正体とは、尿意だった。
彼の指が膣の方を撫で、削り、押し、刺激するたび、まるで膀胱を直接押されているような強烈極まりない尿意がエリナに襲いかかっていたのだ。
度重なる絶頂の最中に漏らすことがなかったのは彼女の精神力を誉めるべきか……。
とはいえ、少なくとも半日眠っていて寝起き早々彼に部屋に侵入され、体に侵入され、問答無用で何度も絶頂させられさらにはお尻のなかを蹂躙され、さすがに限界だった。
エリナにしてみればあり得ない方法で強制的に尿意を呼び起こされたようなもので、意識してしまったいま、次に絶頂を迎えれば決壊してしまう未来は容易に想像できた。
赤面などしている場合ではなく、お尻への侵入すら果たされていながら今さらだが、さすがのエリナも自身の放尿……というより状況的に失禁姿を見られることだけは避けたかった。

「お願い……トイレ、行かせて……」
「やだ」

グリィッ……!

「あ……や、ぁ……!」

必死の懇願は届かず、さらに強くお尻の内肉を押される。
手も足も拘束されているため無意識に縮こまろうと力むせいもあってか、わずかに尿道から生暖かいなにかが漏れだしたのがわかった。
すでに、絶頂云々など関係ない段階まできている。
言っても止まらない彼のことである、ほうって置けば本当にエリナが自分の腕に放尿するまで刺激することをやめないだろう。
わかってはいたが、だからといってやめるわけにはいかなかった。

「おね、がい……ぃ……! おしっこだけ、させ、て……終わったら、お尻でも前でも、好きなだけ……はぁっ……触っても、なにしても、いいっ……からぁ……!」

息も絶え絶えに。
赤面しながら。
宝石のように綺麗な瞳を歪ませ、涙をうかべて。
懇願。
だが、快楽でだらしなく緩んだ表情は、どこか己の言葉が拒絶されることを望んでいるようで。
彼は、それに従った。
一瞬、ぬるりとさんざん暴れた指がエリナの中から引き抜かれる。排泄にも似たその感覚におもわず艶かしい悲鳴があがり、同時に安心したような表情を浮かべる。
さすがに、それくらいの良心はあったかと。
一瞬、思った。
思って、エリナは、ズボンからは引き抜かれない腕と、ためいきのような笑い声で、悟った。

「断る」

ぎちぎちと、指一本ですら引きちぎらんと締め付けていたエリナの肛門に、彼は恍惚とした表情で、無情に、非情に、指を二本に増加して突き込んだ。
先程とは比べ物にならない猛烈な異物感と、排泄欲。
二本あるせいでなにもない空間が出来上がり、穴の中ではなく入り口が無理やり広がって、体内に風が入ってくると同時に反射的に肛門に力がこもる。
しかし、力が入れば当然中は狭くなるが、締め付ける程度では二本の指の暴走が止まるはずもなく、無理やり広げられ、反抗するために力んで、そこでさらに暴れられるという悪循環があっという間に完成してしまった。

「ゃ……ゃ……ぃゃ……やだ、ぁ……あぐっ……ああぁ……やめ、て……ほんと、に……漏れちゃ、うぅぅ……!」

返ってきたのは、笑み。

「いいよ、盛大に漏らしてくれ。寝転がったまま、からだの自由も効かずにおしっこするなんてそうそうないぜ?」
「そんなの、一生なくてい−−あ、や……やだぁ……!」

反論すると同時に彼の足が動き、今まで下半身を覆っていたズボンと毛布が一気に取り払わられてしまい、正に今失禁しようとしている幼い秘所が露になる。
急いで足を閉じようとすれば、その前に彼が両足でその間に割って入り強制的に開脚させられる。
むわっと、エリナ自身すらわかる強烈な雌の匂いが部屋に広がり、荒いスーツの裾で幾度も刺激されたせいで普段は隠れているはずの、
ザクロのようになった肉が見える秘所がひくひくと別の生き物のように脈打っていて、外気に晒され驚いたように元の筋へと戻る。
そこは、思った通りすでに漏らしたあとではないかというほど愛液にまみれていて、言い表しようのな官能的な様をしていた。
ゴクリと、唾を飲む音が聞こえ。
わざとらしく舌で唇を舐める彼の姿が目に入る。 
自分で見ることさえほとんどない排尿場面をほぼゼロ距離で、恋人とはいえ他人から見られる。
その事実がエリナに限界を超えて我慢する力をもたらしたが、排尿がこの時間の終わりである以上所詮それは無駄な行いでしかなかった。

「あ、あ、あ、あ、あ……やだ、やだ、やだ、いやぁ……っ!」

健気な抵抗はすぐに限界を迎え、エリナは股を思いっきり開かされたまま、膣も肉芽も晒したまま、勢いよく放尿を始めてしまった。
それは真っ正面にいる彼に降りかかる……はずだったが、器用に体を動かしエリナの拘束を続けたまま尿をさけていた。
むろん、尿が流れる様をまじまじと凝視することは忘れずに。
我慢を重ねた反動か、勢いのわりになかなか終わってくれない放尿とそれを凝視する彼の視線に耐えきれず、エリナは目をつぶってそっぽを向いた。
暗黒の中では今自分がなにをしているのかじっくりと思い知らされてしまうはめになったが、自分の最も汚く最も恥ずかしい行為を食ういるように見つめている彼が視界に入るよりはまだましに思えた。
人として最も隠すべき場所と最も隠すべき行為を、同時に二つとも見られている自分の姿はどんなものだろう……そう、エリナがぐちゃぐちゃになった思考のなかでふと思ったときだった。

「っあ、がっ……!?」

唐突に、まだ終わるはずのなかった放尿が停止した。
もちろん、すでに諦めていたエリナが自主的に我慢し止めたのではなく、強制的に外部からの力で止められたのだ。
ざらりと、尿の出入口をこする柔らかな感覚。
目を開け視線を落とせば、現在進行形で排尿していたはずのエリナの恥部に顔を埋める彼の姿があった。

「はっ、はっ、はっ……な、に、し、てぇ……!?」
「ん? ああ、ひや(ああ、いや)。おまへがひゃだっていふからとへへあげはんはお(お前がやだって言うから止めてあげたんだよ)」
「なに、いってるか……わかん、ない、けど……! 汚い、からぁ……なめない、でぇ……!」

どうやらエリナの放尿を止めたのは、彼の舌らしかった。
尿の出入口を直に舐められるのはさっきまでの余韻もあり、またすぐにでも達してしまいそうな快楽をもたらしたが、エリナにしてみれば自身の快楽より彼が自分の排泄物を口にしているという事実の方がよっぽど驚いた。
これまで膣を舌で刺激されたことがないわけではなかったが、まさか排尿さなかのそこに口を付けるとはまず思わなかったのだ。
しかし、そんな思考を知るはずもない彼は、エリナの反応が気に入ったらしく舌の先をぐいっと押し付け、尿の出入口にわずかに侵入させた。

「ひぁ……!?」

いくら柔らかい舌とはいえ、ペン一本の芯すら入るかわからないそこに侵入できる部分はそれこそゴマ粒ほどのものだったが、エリナにしてみれば尿道をこじ開けられているような感覚だった。
そうでなくともエリナは放尿の途中だったのだ、勢いを強制的に止められたことも加わって排尿する前よりよっぽど強烈な尿意と圧迫感を感じていた。

「あぐっ……せん、ぱい……!」
「ん?」
「いい、から……」

尿意と快楽と苦痛のなか、エリナは懇願する。

「なに、しても、いい……。私のお尻に……指、なん本入れても……私の恥ずかしいとこ、どんなに……激しく弄って、私をいかせても……私の、おしっこするとこ、何回みても……このあと、もっと恥ずかしくて、もっとすごいことしても、いいから……だから……」

両腕に、わずかに力を込めて。

「切ないの……先輩に、抱きつかせて……」

刹那、機械のようにピクリともしなかった拘束が解かれた。
同時に尿意を押さえるものが舌から肛門に突き込まれた左手から伸ばされた親指に変わった。
そのまま上体を起こした彼は、一瞬エリナに覆い被さろうと腰を曲げるが、思い出したように今までエリナの上体の自由を奪っていた右腕を伸ばし水の入ったペットボトルを掴んだ。
口に含み、ゴミ箱へ吐く。
性的興奮でエリナにしてみればもはやどうでもいいことだったが、律儀である。

「エリナ、そうゆうのをずるいって言うんだぜ……?」

襟元に指がかかり、パジャマのボタンが一気にはずされ、ついにエリナはほぼ全裸となった。
上気し、元々が白いおかげでハッキリと赤みを帯びているのがわかる上半身……主に胸へと注がれる視線は、エリナ自身が彼へと抱きつくことによって阻止される。
そして、やっと。やっと、エリナから初めてキスをした。
今までとは違う、自分の力加減によるキスもまた違った心地よさがあり、舌を絡め歯をなぞり息をつく間もない激しい行為と裏腹に落ち着いた気持ちだった。
とはいえそれもつかの間、両手が使えるようになった今、彼の両手がそれぞれエリナの膣を、お尻を、各五本の指での蹂躙を再開する。
肉芽が潰され、尻肉を引っ掛かれ、膣のなかにも指が数本侵入し、相変わらず強烈な尿意は出入口を封鎖されているので解消はされず、おかげで普段ではあり得ない早さで何度目かもわからない絶頂へと至る。
喘ぎ声はキスのせいで上げられず。
絶頂の後の休息は当然ないので、また意識が薄れて。
でも、さっきまでと違い彼をしっかりこの手で捕まえているから、苦痛はなく、ひたすら心地よかった。

「エリナ」

優しい声。

「なぁ……に……?」

ニヘラ、と自分でもわかるほど緩んだ顔と声で答える。
それに、彼はなにか耐えきれないとでも言うような笑顔で舌を打った。

「さすがに、俺も限界だ。いいよな?」

視線が下へ。
下腹部に熱を感じて、エリナも視線を下へと向ける。
そこにあったのは、独特の臭いを発する、女性のエリナにはない器官。
血管が走り、脈打つ巨大なそれには最初こそ悲鳴を上げたものだったが、今のエリナにしてみれば純粋によくあれが自分の中にはいるよねー、とか、苦しそうだなー、など、どこかずれた思考が浮かぶばかりである。
今ここで待ったを出せば、さすがの彼と言えど落胆するだろう。
むろん、それはエリナ自身も待ったをできれば、の話だが。

「うん……来て、先輩……」

一回手を離して、ベットに体を落とす。
凹凸の少ない体を……しかし、彼はなによりも愛しいというように眺め、覆い被さる。
もともと着崩されていたスーツは脱ぎ捨てられ、エリナと同じように前を開いたワイシャツ姿は男性らしさ、男性の力強さといった魅力をこれでもかと表現していた。
同じ命がけの毎日を過ごしている二人だったが、絹のような滑らかで美しい肌をもつエリナとは裏腹に、彼の上半身は鍛え上げられた肉体ともにゴッドイーターの治癒力をもってしても癒えない深い傷がいくつも刻まれていた。
不真面目とはいえ、それは実力の裏返しであるはずの彼に刻まれた傷。
そっとその体を抱き寄せ、自分の上半身とピタリと触れ合わせれば、力強さと共に、強すぎるそれは神を殺すことしか知らない……人肌の柔らかさを知らない悲しいものにも感じられた。
人が初めてしる人のぬくもりは家族から与えられるものだが、家族のいる幸せ、暖かさ、心地よさを知っているの人間は少ない。特に、強い人間ほどそれを知らず、知らないまま死んでいく。

(だから……なんて、そんなのは偉そうかもしれないけどさ……)

できれば、これからも彼にそれを教えてあげられば、なんて、エリナは思っていた。
なによりも強いそのぬくもりは、なによりも容易く失われてしまうのだから。

「ぁ……!」

熱が、侵入する。
数本の指すらきつい幼いエリナのそこに、熱い彼のそれが深く、深く、突き刺さり、犯していく。

「あ……あっ、つい……よぉ、せん……ぱい……! それに……ふ、ふかいぃ……!」
「……っく、はは。お前の中も十分あっついよ……。てか、毎回言うがまだ全部じゃ、ねぇ……!」
「あぐっ……!?」

歳も、身長も、なにもかも彼に比べて小さいエリナである。当然膣のサイズも彼のそれを受け止めるにはあまりに小さく、受け入れていること事態がすでにギリギリだった。
長く、異常なまでにしつこく行われた前座もこれを考えてのこと、といわれれば頷ける(当然、建前でしかないらしいが)。
入り口は限界まで開ききり、彼のそれがまだ3割りほど残っているにもかかわらず子宮は半ば押しつぶされている。体の中心に一本棒を通されたような圧迫感は、
背筋を伝い快楽としてエリナの中で暴れまわる。
圧倒的なサイズ差であることはとっくに承知の上。息つくまもなくゴツゴツと、まさかそこにまで侵入するつもりかというほど激しく子宮口叩かれれば、
肺を押されたように体から空気が飛び出していく。一瞬息を吸えば、刹那口づけを再開し甲高くあげてしまいそうになる喘ぎ声を必死に隠した。
自分を貫く彼のそれだけでもいっぱいいっぱいなのに、相変わらず彼の両手はエリナの体ではなく下腹部に集中していて、突くと同時に肛門を押し広げ、戻すと同時に肉芽を押し潰す。
尿道を押さえる指は絶妙なタイミングで押さえるタイミングを変え、一瞬離し尿が漏れそうになった瞬間押さえ直し、を繰り返され強烈な尿意が薄れることは全くなかった。

「ん……はぁっ、ああ……! せんぱい、それ……やだ、ぁ……。おしっこ、のとこ……グリグリって、されるの……」
「そうか、嫌か。まぁ、エリナの嫌だは気持ちいいってことだからなぁ……?」
「そ、そんな……ことぉ……ぁ、やぁ、ああぁっ……!」
「はっ、体は正直、だ。さて、今日は俺がイクまでに何度可愛いイキ顔を俺に見せてくれるん、だっ……!」

ぎゅうぎゅうと、エリナがイッた反動で締め付けてくるそこに、彼は今度こそ己のそれを根本まで挿入した……というより、勢い的には叩き込んだとも言えるようなものだった。
子宮が平らになるほど潰され、限界を迎えたそこはついにこじ開けられてしまい彼のそれはエリナのさらに深い部分へと侵入していく。
入るはずのないものを、ゴッドイーターの頑丈さと人体の柔軟さまかせに無理やり突っ込んだのだ、狂ったようにイきながらもなんとかこれ以上醜態をさらすまいとしていたエリナだったが、たまらず絶叫する。
防音設備こそ完備されていなければ誰かが何事かと駆けつけてくるような、とてもじゃないが病人のあげる声ではないほどの、淫らな悲鳴。
ゴッドイーターとしての怪力は彼を抱き締めるのではなく絞め殺さんばかりに発揮されていたが、普段とのギャップを喜んでか彼は限界をとっくに超えたエリナをさらに責め立てる。
邪魔くさいビニール手袋を取り去り、ずいぶんと慣れ……しかし全くキツさが変わらない肛門に三本目の指が侵入し、それぞれの指が性感帯となったそこを広げ、引っ掻き、押し、暴れまわる。
痛々しいほどに膨れ上がった肉芽は戻るのか不安になるほどに押し潰され、引っ張られ、ざらざらとした衣服の繊維で弄り回される。
もう動かないでというように必死に締め付ける膣のなかを、本来入ってはならない子宮の中まで侵入したそれは、奥を叩く勢いをさらに増し、わずかだがエリナのすらりとした腹部がぷっくりと持ち上がっていた。

「あ……ぐ……っ……か、はぁっ……や……だ、ぁ……」
「……んん?」

あえぎ声にまざって、再びエリナの『お願い』が成される。

「せん、ぱいから、も……抱きしめて、くれなきゃ……やだぁ……!」

それは、幼子が親の温もりを求めるような。
子供が触れ合いをもとめるような。
まるで幼児退行したような、泣き声の訴えだった。
同時に、力がもう入らないのか、ひっしに抱きついてきた腕から力が抜け落ち、エリナの体がベットへと落ちそうになる。
逃がすまいと、抱きしめられれば満足げに……それでいて、妖艶な笑みが浮かぶ。

「はは、ずるい表情だ。……胎内に出すぞ、エリナ」
「はぁっ、はぁっ……うん……うん! ひぇんぱ……せん、ぱい、の……ぜんぶ……わたしに、ちょうだい……!」

子宮の中に、火傷しそうなほど熱い白濁が吐き出される。
彼の熱が自分のなかに行き渡るのをかんじながら、エリナは貪るようにキスを求めた。
もはや何度目かもわからない絶頂は、ようやく解放された排尿の快楽と共に訪れ達したのとは別の痙攣を起こしていたせいか、なんとも言えない気恥ずかしさをせめて隠したかったらしい。
彼はといえば、そんなエリナを抱きしめたままベットへたおれこみ、今までとうって変わって愛しそうに優しい笑みを浮かべていた。

「はぁ……、はぁ……、あは……。先輩、優しい顔、してる」
「ふぅ……なにいってんだ、俺はいつでも優しいよ」
「嘘」
「ばれたか」
「……好きだよ、先輩」

最後にして初めての余韻に浸りながら、エリナは彼の腕のなかで、嬉しそうに笑みを返した。

「……くそ、ずりぃな」

赤く染まった、彼の顔を眺めながら。

閑散とした廃墟に、けたたましい戦闘音響き渡っていた。
神と人の争う音。
まず、風化していたコンクリートの壁を突き破って飛び出てきたのは、大きな虎ような見た目をした獣だった。<ヴァジュラ>雷を纏う大型の荒神である。荒神発祥以来初期から確認されている強力な荒神で、その派生種は数多い。
並の荒神ならば一対多数であっても捕喰し返してしまうそのヴァジュラは、今、全身に余すところなく傷を負っていた。
雷を放つマントの様な生体機関、屈強な前後の足、神話の聖獣のような貌、あらゆる部分が結合崩壊を起こし、あらゆる生物を威圧する雄叫びもどこか弱々しい。
雷が収束し、たった今自身が飛び出してきた廃墟の中を穿つ。
神たるその身を傷付けた主がそこにいたのだろう、ヴァジュラは弱々しく、しかし勝利の雄叫びをあげる。
−−そんな、幻想。
雄叫びをあげるヴァジュラ、その口には深い蒼の槍が突き刺さっていた。
巨大なその槍を神に突き立てるのは、まだ幼さを残す少女だった。見に纏う衣服は所々薄汚れ、手足にわずかな切り傷こそあれ、相対する神に比べればそれはかすり傷ともいえ、また神に相対しているにしては小さすぎる傷だった。
携える槍と同じく美しい宝石のような青の瞳は鋭く見細められ、自分の何倍もある獣に対しまるで怯む様子を見せない。
顔面に大穴を開けられたヴァジュラはたまらず後方に大きく跳躍し、距離をあけた。顔面に穴など開けられれば普通生物は死に絶えるが、神たるヴァジュラには即死する要因にはなり得ないのだ。
捕喰さえおこなえばたちどころに回復するだろう。
駆動音。
もちろん、少女はそれを許さない。
地面が抉れ、少女の姿がぶれる。
槍は、今度こそヴァジュラを貫き、その命を奪い去った。

「ふぅ……」

ヴァジュラのコアを回収し、辺りへの警戒を終えた少女、エリナは浅くため息をはいた。
あの日から数日後、あれほど彼女を苦しめていた熱はやっと引き、こうして任務につけるようになっていた。
しかし、こうしてヴァジュラを単身撃破したあとだと言うのにどこかその表情はすぐれなかった。
今日、エリナは彼と共に任務に来ていた。
その彼の姿が見えないのだ。
もちろん、心配などしていない。
病人である自分を好き勝手にし、あげく病状を悪化させ現場復帰を数日伸ばし結果エリナが受けるはずだった任務をその間肩代わりして疲労困憊だった彼を連れ出したのは他ならぬ彼女自身である。
ヴァジュラを含めその上位種であるデウスピター、プリディンマータ、さらにはマルドゥークとすさまじい内容であろうとエリナは心配しない。
つまり、なぜかと言えば自分がヴァジュラを単身撃破した場面を見ていてくれなかったことが残念だったのだ。
暴論である。
しかし、エリナはそう思わない。

「おおー、すごいなエリナ。お前の歳でヴァジュラを一人でってのはたいしたもんだ」

彼は、こうゆう人間なのだから。

「……! 先輩、見ててくれたの!?」
「ああ、もちろん」

先ほどヴァジュラが貫いた建物の最上階、そこに腰掛けながら彼は漆黒のバスターソードを背もたれにくつろいでいた。禍ツ狐を単身撃破して手にしたというそれは、圧倒的な存在感と彼の実力を物語っていた。
荒れた地面に器用にも無音で降り立った彼に、エリナは笑顔で駆け寄った。

「ねぇねぇどうだった、私。ちょっとは先輩に追い付けたかなーって思うんだけどさ」
「おう、今日も白だった」
「…………」
「おっと」

ノーモーションでつき出された神器の柄は、ひょいとかわされた。

「変態」
「どうも」
「うわぁ……」
「おい待て」

閑話休題。

「うん、まぁ悪くなかったよ。チャージスピアは俺の専門外だが、前にお前と一緒にやった時に学んだ知識を基準にするならさっきの戦闘に俺がなにか口を出す必要はない。
前から癖だった相手すら見ずに突っ込む癖は直ってきてるし、盾や銃を使いながら様子をみることもちゃんとできてた。結合崩壊しやすい部分を重点的に狙い相手を効率的に弱らせるのなんて
俺よりうまいかもしれないな、普段からの努力がしっかり実践にも生かせている証拠だ。チャージスピアの最大の利点の瞬間加速も頼りきらずに、しかし使いどこを見極め的確に弱点に打ち込めていた。
ただ、間合いの取り方と空間把握がもう少しかもな。見るに怪我は少ないから反応速度でカバーしてるようだが、それは一対一の戦闘だから可能なだけだ。
荒神は親切じゃないからな、常に一匹だとは限らないし、こちらも複数人いたとしても統率力のある荒神も確認されている。今のお前なら囲まれたところで全部殺ってやるみたいな無茶はしないだろうし、
落ち着いて撤退するという対処もとれるだろう。しかし、それができない場合もある。たとえばさっきの俺みたいにな。マルドゥークいんのにデウスピターとプリディンマータ2匹とか聞いてねーよ。
死ぬぞさすがの俺も。まあそんなわけでヴァジュラ単身撃破について、今回のお前の点数は95点。初戦闘であれはすごいぜ、折角ピンチには助けに入ってやろうとしてたのに無駄だった。
後は暇な時に対複数戦闘のコツを教えてやろう。まぁ、それができたとしても俺に追い付くのはまだまだ不可能だろうがな」
「う、うん……わかんないけどわかった……多分」

回収を終え、ヘリが来るまでの待ち時間。戦闘後の感想を再び求めた結果がこれである。
普段の食前食後に挨拶しなさいとムツミちゃんに怒られるほどしゃべることを面倒がる彼だが、いざアドバイスを求めればこれである。
的確だが、いかせんまとめるのが下手なせいで長くなる彼に説明を求める際にはメモ帳が必須と言われていたりもする。
 

「わかってないだろ」
「しょ、しょうがないじゃない! 先輩の説明長いんだもん! そもそも、そんなに詳細に、いつから見てたの? ちゃんと先輩自分の分の荒神やってきたんでしょうね?」
「ああ、この頃無駄にまじめにやってたから癖でさっさと終わってな。かっこよく戦うお前をじっくり見てられたんだよ」
「うっ……」

ちなみに、悪化し看病が必要な時間が増えたとなれば当然彼はお見舞いにきていた。一秒でもおしいと毎回鬼気迫る様子で任務を終わらせていた、と同じ任務をこなしたゴッドイーターたちから聞いている。
そして、その長い時間でなにをしていたかと言えば、ナニである。
疲労困憊な彼が求めたのではなく、排尿の我慢、肛門弄りなど、嫌だ嫌だいいながらも実は少し気に入ったエリナがさりげなく求めていたのだが。
自制心があるとはいえ、病で弱っているエリナを好き勝手虐めるというシチュエーションがドストライクに気に入ったらしく疲れるのもいとわず誘いにのった彼も彼であるが。

「まぁ、まとめると……」

いつのまにか、ヘリが見えていた。
狐の刃を携え立ち上がり歩きだした彼に、エリナも並走する。

「強くなったな、エリナ」

ぽす、っと頭を撫でられる。
えへへ、と笑みが浮かぶ。

(お兄ちゃん、私は元気です)

彼の手を取って、幼い頃同じように自分を撫でてくれた兄を想う。

(私はこの人をずっと守って、守られて生きて行こうと思います。だから、そっちにいくのはずーっと先になると思う。ごめんね)

心の中の兄は、ニコリと微笑んだ。
ありがとう、呟いて。

「先輩、帰ろ!」

今日も彼女は強く生きていく。

このページへのコメント

プリデヴィンマータもいたぞw

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Posted by とある神機使いS 2014年12月23日(火) 16:36:08 返信

知らないアラガミがいた件

デウスピターって誰だよ

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Posted by 神奈川県警 2014年12月01日(月) 13:50:41 返信

↓操作ミスです m(_ _)m

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Posted by Gespenst 2014年03月12日(水) 15:37:32 返信

素晴らしいです。
もしや「アイアンハート」の方ですか?
違っていたならごめんなさい。

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Posted by Gespenst 2014年03月12日(水) 15:36:30 返信

素晴らしいです。
もしや「アイアンハート」の方ですか?
違っていたならごめんなさい。

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Posted by Gespenst 2014年03月12日(水) 15:36:27 返信

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