ゴッドイーターでエロパロスレの保存庫です

「もう少し落ち着いたら……しばらくロシア支部に戻ろうと、思ってるんです」
その言葉を聞いたとき。ああ、また置いてかれるんだな、って諦めが全身に広がった。
胸の中をどろりと黒い何かが渦巻いて。まるで鉛でも飲まされたように。
それでも目の前の彼女が、嬉しそうにはにかむものだから。
「そうか」
一言頷いて、作り笑いを無理矢理に浮かべた。


フェンリル極東支部。通称アナグラ。
そのエントランスを通り過ぎようとしたら、任務帰りのコウタに声をかけられた。
「お、リーダー! 今から任務?」
「ああ。ちょっくら防衛班の手伝いにな」
なんでも居住区に大型のアラガミが複数侵入したとかで、防衛班の奴らだけでは手が足りないらしい。
新型が二人配属されたと言ってもあいつらはまだ新人だし、人手が苦しいのはあまり変わらないのだ。
さっさと背中を預けられるぐらいには、成長して貰いたいものである。
新婚のリンドウさんを、非番の時に何度も呼んでしまうのは申し訳ないしな。
というわけで、俺の方に任務が回ってくるのは今でもよくあることだった。

「そっか、頑張ってな。それよりリーダー、今週末空いてる?」
「ん? 何かやるのか?」
「いや、ほらアリサがロシア支部に転属になるじゃん? お別れパーティーやろうと思うんだ」
寂しくなるなー、とコウタが小さく笑って困ったように頭を掻く。それで思い出した。
もう彼女はここからいなくなってしまうんだと。
彼女――アリサ・イリーニチナ・アミエーラ。第一部隊配属のもう一人の新型神機使い。
あの話をされてから丁度一ヶ月ぐらい。来週の頭に彼女はロシア支部への転属が正式に決まったのだ。
「もちろん、リーダーも来るだろ?」
屈託のない笑顔を向けてくるコウタ。でもその明るさとは反対に、俺の心は暗く沈んでいく。
でもそれを表情に出さないようにして、取り繕うように告げた。

「あー、悪い。その日はどっさり任務があるんだ。俺に構わずお前らだけでやってくれ」
「え、リーダー来ねえの!?」
後ろでコウタが騒いでいるが、無視してゲートへ向かって。
もちろん任務があるなんて嘘。ただアリサとあまり会いたくない。理由はそれだけだった。
会ってしまったら、我慢できなくなりそうだから。
言ってはいけない言葉を、口から零してしまいそうだから。
言わなくていい事というのは往々にしてあるもので、俺が喰らって飲み込んじまえばそれで済む。それでいい。
人手が苦しい中、それでもアリサの意志を尊重してみんなが見送ると決めたなら俺も従うまでだ。
一番尾を引かないための方法。顔を合わせると、辛いこともある。

「……後悔は、したくねぇよなあ」
独りごちる。回想していたら、いつの間にか神機を手に出撃口まで来ていたようだ。
ああ。誤魔化すためにも後でヒバリさんに何とか理由付けて、ミッション回してもらわなくちゃな。
とりあえず今は目の前のことに集中しよう。この職場では一瞬たりとも油断はできない。
さあ、楽しいお仕事の時間だ。

そんなこんなで毎日のように任務を入れ続けて。アナグラに戻っているときは部屋に引きこもって。
アリサどころか、第一部隊の連中とも顔を合わせない。会ったら優しいあいつらのことだ、おせっかいするに決まっている。
任務にさえ出ていれば、少なくとも余計な心配はされない。俺が任務続きで忙しいのはよくあることだ。
それにアラガミを狩っているときだけは気が紛れる。嫌でも集中しなきゃならないから。
部屋にいるときは眠っていれば何も考えずに済んだ。
過酷な任務ばかり入れていたおかげで、あっさり眠れたのが僥倖だったかもしれない。
とは言っても。

「ウロヴォロスを単体で狩りに行くのは、やっぱり堪えたなあ……」
連日連戦で酷使した身体がバキバキと鳴る。静まりかえったアナグラに、俺の足音だけがコツンコツンと響いて。
帰りが遅くなるように遠隔地のミッションを回して貰ったら、本当に帰還が夜更けになっちまった。
けれどまあ、こんな時間ならお別れパーティーとやらも流石に終わっているだろう。
さっさと部屋に戻って、寝てしまいたい。明日の朝になればやっと通常任務に戻せる。
変わっていることと言えば、第一部隊に彼女が居なくなっている。たったのそれだけだ。
エレベーターを下って、ベテランの居住区域に止まる。ふらふらとした足取りで部屋へ向かって。
疲れのせいか、それとも緊張の糸が切れていたのか。
部屋まであと数メートル。はっきりと視線が合うまで、俺はその存在に気付かなかった。

「あ、リーダー。お疲れ様です」
俺の部屋のドアの前。ふわりとした灰白色の髪の少女が立っていた。主人の帰りを待つ子犬のように。
薄紫色の瞳が、心配そうに俺を見つめて。けれどその表情は俺が帰ってきたことに喜びを隠せないようだった。
一方俺はなんでこんな時間に彼女がこんな場所にいるのか理解できなくて。
何日かぶりに会った彼女を、ただ呆然と見つめることしか出来なかった。
「疲れているのにごめんなさい。でも、どうしても最後に会っておきたくて」
「もしかして、ずっと待ってたのか? ――アリサ」
名前を呼ばれて、アリサはこくんと小さく頷いた。
まさか待ち伏せされるだなんて思ってもみなくて。どうしたものかと頭を掻く。
こっちとしては会いたかったような、会いたくなかったような複雑な心境なのだ。
けれどこんな時間まで待たせて、すぐに追い返してしまうのも心苦しい。

「……あー、その。なんだ。立ち話も何だし……入るか?」
「じゃあ……あの、失礼します」
ドアのロックを解除して、部屋にアリサを招き入れる。
とりあえずソファーに座らせて、冷蔵庫から飲み物を引っ張り出す。ありゃ、お茶しかねえや。
まあ水よりはマシだろうとコップに注いで。俺もソファーに身体を投げ出した。
静寂に包まれる部屋。ぎこちない空気が重くて、お世辞にも居心地は良いとは言えない
アリサはコップに手を付けず、口を開いたり閉じたりして何を言おうか迷っているみたいだった。
指先で頬にかかっている髪を手持ちぶさたに弄っている。彼女の癖。
俺も俺で何を言えばいいのか分からなくて、ちびちびとコップに口を付けて誤魔化している。
こういうとき、どんな顔をしてやればいいんだろう。
ちらりと横目だけでアリサの表情を窺った。
僅かに俯いて、薄い紫色の視線がテーブルの上を頼り無く泳いでいる。
その柔らかそうな唇から、か細い呼吸が震えていて。緊張しているのは明白だった。
時折言葉を発そうと、すぅ、と小さく息を吸うのだが、結局は躊躇いがちに吐き出されてしまう。
このままじゃ埒があかない、か。諦めて息を深く吐いて。感情をなるべく腹の奥へと押し込んだ。

「……朝にはもう、行くんだってな」
「はい」
俺が話しかけると、ぴくんと身体を震わせて。それでも返事は返ってきた。
顔はまだ合わせていない。向こうは目を逸らしたままだ。
けれども俺が声をかけたことで切っ掛けが出来たのか。アリサはようやく口を開き始めた。

「最後に、お礼が言いたかったんです。今、私がこうしていられるのは貴方のおかげですから……」
照れ臭そうにはにかんで。左手をそっとさする。
目を細めて、思い出を噛み締めているように。
「あの時貴方が傍にいてくれなかったら。きっと私はあのまま壊れて、立ち直れなかった。
 それにアーク計画を止められたのも、リンドウさんを連れ戻せたのも、全部貴方がいたからなんです」
少し興奮したようにアリサが早口で言うけれど、俺の心は波立つばかりで。
じくじくと押し込めたはずの暗い何かが、少しずつ滲み出してくる。
理性の冷静な部分を侵蝕していくそれは、暴力的な本能に似ていた。

「だからその、本当にありがとうございました。貴方のおかげで私、これからも――」
「……で、また置いていくんだ。俺のこと」
口を滑った言葉は、自分が予想していた以上に冷え切っていた。
話を遮られて、アリサは驚いたように俺を見ている。その表情を見ていると、余計に黒い感情が溢れ出して。
鋭利な牙で、喰らい付くように。それは俺の内側をこじ開けて、アリサまで傷つけようとする。

「置いていくって……私、そんなつもりじゃ……それに『また』って?」
「エイジス計画の時も俺のこと置いていったじゃないか。何も言わずにさ」
そ、それは……と言い淀むアリサ。わかってる。あれは仕方ない事情だった。
でもだからと言って、まったく傷ついていないわけでもなかったのだ。
「……ロシア支部に戻るって言っても、ちゃんと最後にはこっちに帰ってきますよ。あの時みたいに」
「帰るっていつだよ。本当に帰ってこれるのか? いつどちらかが死ぬかわからないってのに」
このご時世だ。任務中にアラガミに襲われて行方不明……もとい、パクリとやられちまうことはしょっちゅうある。
今日会えたからって、明日会えるともわからない。次の瞬間には死んでるかもしれない。ここはそんな職場だ。
ましてや遠く離れた異国の地で、もし何かあったとしたら。
身体の芯がさあっと冷えて。ついよからぬ想像をしてしまう。

「勝手だよな、お前って。気付いたらいつの間にかいなくなってる」
「な……っ! それを言うならリーダーだって同じじゃないですか! リンドウさんの時も全部一人で抱え込んで!」
ああ、きっとアリサの言うとおりだ。勝手なのは俺の方。
拗ねて、ワガママ言って、アリサに何をさせたいって言うんだろう。
けれど我慢できずに決壊した感情は、無秩序に何もかもを喰らい尽くそうとして。

「ああそうだよ。俺は勝手だ」
「きゃっ……!?」
手首を掴んでそのまま壁に押しつける。身体の奥底から聞こえてくる『喰らえ』の声に従って。
ぱさり、と床に落ちる帽子。目を逸らしたままなのは俺の方。
このままじゃどうやっても尾を引きそうなら、きっと嫌われれるのが一番後腐れがない。
もう置いていかれるのは嫌だ。なら、いっそ帰ってこなくていいよ。
柔らかい髪を掻き分けて、耳元に口を寄せて囁いた。

「こんな夜更けに男の部屋にいるんだ、覚悟は出来てるんだろうな?」
舌なめずり。美味そうだ、早く喰わせろと身体がざわめいている。
それをなんとか押し殺して、アリサの表情を窺おうとした。彼女は今、どんな表情を浮かべているだろうか?
失望か、軽蔑か、それとも恐怖か。どっちにしろ、どんなに歪んだ顔を見せてくれるだろう。
そう思ってたのに。

「……?」
アリサはいつものように凛とした表情で、真っ直ぐ俺のことを見つめていた。
嫌がりも暴れもしない。ごくごく自然なままだ。それが少し気に入らない。

「……なに? 抵抗しないの、お前」
「しませんよ。だって、リーダー本気じゃないですから」
「なっ」
平然と言い返されて、一瞬頭にカッと血が上る。
けれど何をもって「本気じゃない」と断定するのかを聞きたくて。
「どうして、そう思うんだよ?」
尋ねればアリサは、クスリと少し呆れたように頬を緩めて。

「リーダー、お忘れですか? ――感応現象で、私は貴方の気持ちを知ることが出来るのを」
感応現象。新型同士で起きる、記憶や感情の交錯。
毎回起こるわけではないが、これのおかげで俺とアリサは言葉を超えた場所でたくさんのことを分かち合ったのだ。
今でこそ増えたものの、あの頃はたった二人しかいなかった新型。
不安や期待に押し潰されそうな中、唯一それを理解し合えた半身とでも言える存在。
彼女のおかげで俺は一人じゃなかった。ここまで潰れずに生きてこれた。
壊れかけの彼女を救ったんじゃない。その実、俺の方が救われていたんだ。

「その顔を見ると、やっぱり忘れてたみたいですね。たまに肝心なところで詰めが甘いですよ」
いつだったかのヴァジュラ戦とか。本気でぞっとしたんですからね。とアリサは苦笑する。
そうだ、どうしてさっきは忘れていたんだろう。感応現象は俺とアリサを繋ぐ、大事なものなのに。
「だから、わかります。リーダーが本気じゃないことぐらい。
 だって貴方から流れ込む気持ちは、あの時から変わらず優しくて温かかったから……」
俺に触れられると心地良いのだと、その薄紫の瞳が優しげにキュウと細くなる。
頬を少し赤らめて。ごく自然な笑顔を浮かべて。
それを見て胸が、息が、どうしようもなく苦しくなった。
押さえつけていた手を放す。その代わりに、力一杯その細い体を抱き締めた。
震えた声が我慢しきれずに、喰いきれなかった感情を吐き出した。

「アリサ、好きだ。……だから頼む、行くな」
困らせるのを承知で、一番奥底に隠してた本音をぶちまける。
そう。どうしようもなく惚れていたんだ。たった一人、同じ新型だったってだけじゃない。
誰かを守れる強さを持っていても、その中身はとても脆いことを知っている。
だってまだ15歳だぜ? 俺も似たような歳だけど。細い肩に背負わせるにはあまりに重すぎるものをこいつは抱えている。
頑張って虚勢を張って立ってはいるものの、本当は弱々しくて脆い部分のある、ただの優しい小さな少女だ。
本来ならこんな場所で、戦うような存在じゃない。だから守らなくちゃ、守りたいと思ったのだ。

「心配なんだ。俺の知らないところで、いなくなっちまわないかって」
近くにいれば何かあったとき、なんとかすることも出来る。守れることもあるかもしれない。
けれど遠くに行かれたら、俺には何も出来ない。何があったのかすら知ることも出来ない可能性だって高い。
俺の知らないところで、またあの時みたいに壊れてしまったら。そんな不安が拭えなくて。
情けないことに、それだけで泣いて叫んでしまいそうになるんだ。

「リーダー。だからこそ、私はロシア支部に一旦行くことを決めたんです」
穏やかに。でもはっきりとした口調で、アリサは俺に告げた。
そっと背中に回る手。俺をしっかりと抱き締め返して。
「同じなんです。私も貴方が心配でたまらない。一人で無茶ばかりして、全部自分でなんとかしようとするから」
放っておいたら、置いてけぼりにされそうで。それがとても、怖いんです。と声が僅かに強張って。
抱き寄せた身体は、小さく震えていた。
「私だって守りたいんです。でも、ここにいたら貴方に守られるばっかりで。だから、もっと強くなりたいと思った」
俺のいる極東支部を一度離れ、ロシア支部に行くことで守れるだけの強さを手に入れる。
それは彼女なりの、精一杯の決意だったのだ。

「私も好きです、リーダー。だから頼ってください。ちゃんと帰ってきたら私にも貴方を、守らせてください」
至近距離でじっと見つめられる。純粋な瞳の奥に燃える、小さな決意。
ああ、そうか。似たもの同士だったんだな、と今更気付く。同じ気持ちだったんだ。
むしろどんなときも隣にいたからこそ、中身が似てきたんだろうか。
これ以上何を言っても、決意は揺るがないだろう。そのくらいの強い意志で、アリサは俺を守りたいと言ってくれた。
それなら俺に出来るのは、信じて見送ることだけなのだろう。
鼻先を灰白色の髪に埋めた。甘い匂いが鼻腔をくすぐる。

「……わかった。その代わり、絶対戻ってこいよ? これは命令だ」
「はい」
首筋に甘えるように頬を寄せて。アリサははっきりとそう、頷いた。
見つめ合って。言葉はいらない。多分きっと、伝わっている。

「ん、リーダー……」
子犬が甘えるような鼻にかかった声。薄紫の瞳が翳って濃い色に煮詰まる。
そのまま閉じられた目蓋が僅かに震えて。心持ち上を向くように。
朱に染まった頬を柔らかく撫でて、そっと唇を重ねた。
触れ合わせるだけじゃすぐに物足りなくなって、軽く啄んでみる。
食むようにして挟んで擦り合わせたら、腕の中のアリサが小さく身じろぎした。
一旦離れる。ほぅ、という熱の籠もった溜め息。くすぐったそうに笑って。

「キス、しちゃいましたね……」
「あ、ああ」
照れ臭そうに頬にかかる髪を弄って。その姿が愛くるしくてたまらない。
歯止めが利かずに、もう一度噛み付くようなキスをする。
唇を舌先でざらりと撫でたら、躊躇いがちに口が開く。
その僅かな隙間に舌先をねじ込んで。アリサの口腔を撫で回した。
奥で縮こまっていた小さな舌を見つけて、にゅるりと唾液ごと絡ませる。

「ふ……っ、んん……ぅ……」
初めてで慣れないキスはまだ下手くそで、時折歯がぶつかってしまったけれど。
掻き混ぜる度にぴちゃ、くちゅと水音がして。背筋がぞくっとした。
少し苦しそうに鼻を鳴らすアリサからも、だんだん力が抜けていって。

「くぅ、ん……ぷは、っ、リーダー、えっ……!」
「ベッド連れてくぞ。ごめん、我慢できない」
息が苦しくなって離れるなり、アリサを抱き上げてベッドに連れ込んだ。
優しく横たえて、上から覆い被さる。嬉しいことに抵抗はされなかった。

「リーダー……あの、私……」
不安げに見上げてくるその瞳の奥には、僅かな期待。子犬みたいで可愛くて。
目元にキスを落として、頬をぺろりと舐めた。髪の合間から覗いている耳が、赤く染まっている。
「耳、真っ赤」
「なっ、そ、そんなこと言わないで下さいよ! ――ひぁっ!?」
引き寄せられてなんとなく耳たぶを甘噛みしてみた。ぴくんと身体が跳ねて、可愛らしい声が漏れる。
耳は弱いらしいと判断して、舌先を尖らせてくすぐった。むずがるように顔を逸らそうとする。
わざと耳元で大きく水音を立ててやったら、恥ずかしいのか顔を真っ赤にして肩を震わせていた。
首筋を舌で辿って、吸ってみる。軽くのつもりだったのに、そこには赤く痕が残っていて。
これはまずいと舐めるだけに切り替える。バレたら怒られそうだしな。

「ふぁ、ぁ……ぅう、リーダー、なんだか手慣れてません……? どん引きです……」
「馬鹿言うな。これでも自慢じゃないが初めてだ」
熱っぽく潤んだ目が、非難するようにじっと睨んでいるが無視だ無視。
ごくりと唾を呑んで。服の上からそっと、15歳にしては豊かな胸を撫でてみる。
指先に僅かに力を込めれば、むにゅ、と心地よい弾力が伝わってきた。
とろけそうな柔らかさに感動すら覚える。布越しなのにふにふに、ぷにぷにしていた。
その感触をもっと味わいたくて、やわやわと揉み続ける。

「はっ……ぁ、んん……、っ、っふ……」
少し荒く乱れた呼吸。恥ずかしそうに伏し目がちに視線を泳がせて。
その弱々しい表情がいつもとのギャップで色っぽくて、頭が真っ白になりそうなほど興奮する。
じわりと唾液が溢れて零れそうになる。喰らいたい、でもまだ焦らしていたい。
先に進みたいような、このまま続けていたいような。熱に浮かされた思考が迷う。
脱がせるのもまだ惜しくて、服の隙間から手を差し入れた。

「っ! やぁ、あ……ひぅ……ぁ……」
直に触れるとすべすべの肌や、温かさが伝わってくる。触り心地抜群だ。
手に余るボリュームの柔らかさを、思う存分捏ねくり回して。服の下で手の動きの通りに形を変える。
尖った突起が指に引っかかって、充分にとろけた声が漏れた。

「リーダー……あ、駄目……っひゃう、服、擦れて……」
アリサがもどかしげに身を捩る。もうそろそろ頃合いかと、その頼り無い布地の前を開いた。
まろび出た胸がぷるんと揺れる。綺麗で艶めかしい二つの山の曲線。
首筋から鎖骨、肩にかけて。胸から脇を通って腰のくびれに繋がるラインは滑らかだ。
いつもは白い肌も、今は仄かに桜色に染まって。しっとりと汗で濡れていた。
先端の少し色素が濃い部分が、触れて欲しいと言わんばかりにぴんと自己主張している。
その色っぽさと、美しさとが混ざり合った姿に、思わず溜め息が零れてしまう。

「綺麗、だ……」
「あ、あの……その、あ、あまり見ないで、ください……」
「駄目、無理だ」
恥ずかしそうに腕で隠そうとするのを、片手で上に押さえつけて。
喰いたいという欲求に逆らわず、口を寄せてその双丘に吸い付いた。

「やあっ! っ……! あ、ぅ……」
唇をキュッと噛み締めて、意地でも声を出すまいと耐えている。無理しなくていいのにな。
可愛い声が聞けた方が、やっぱ興奮するってのに。恥ずかしいのはわかるけれど。
余った手で健康的な肉付きの太ももを撫でさすりながら、一応提案してみる。

「声、我慢しなくても良いのに。……あ、いやまずいか? 誰かに聞かれるか?」
「どっちなんですかっ!? 恥ずかしいから無理ですってば……ひぁんっ!」
「お、そうそう。可愛い。……まあ、こんな時間ならみんな寝てるだろ。大丈夫だって」
「だ、だめです……あんっ、ん、んぅ、ふぁあ……っ!」
甘く喘ぐ声が、耳をくすぐって心地よい。可愛くてもっと聞きたくなる。
太ももを撫でていた手はスカートの中へ。丸みを帯びたお尻を撫で回したり、揉んでみたり。
交互にふわふわな胸に吸い付いて、舌先で硬くなった蕾を転がした。甘い匂いが頭を麻痺させる。
下着の縁を指先で伝って、頑なに閉じられた脚の間に手を差し込んだ。

「ひゃうぅっ!?」
水気を吸った布の感触。その部分をなぞってみれば、指に染み出た液体が絡みつく。
とろりと粘性を持ったそれは、指を滑らせれば滑らせるほど溢れてくるようだ。
羞恥に真っ赤に染まった目元に涙を浮かべて、いやいやと首を横に振る。
荒く忙しない呼吸で胸が上下して。時折身体をぴくんと痙攣させて。
それが可愛いから、つい意地悪だってしたくなる。

「濡れてる」
「や……あ……っ、言わないで、はぅっ、あっ……んん……」
「そんなに気持ちいいのか? アリサはえっちだなぁ」
「ちっ、ちが……んっ、違うの……っぁ、ううぅ……」
目をぎゅっと閉じて、泣きそうにしゃくり上げる。ちょっと苛めすぎただろうか。
いつものアリサが強気な分、落差が可愛くてついやりすぎてしまったようだ。
ごめんと謝って抱き締めて、髪をとかすように頭を撫でる。啄むだけのキスをする。

「うぅ、リーダーは変態です、どん引きです……」
まだ拗ねたように睨んではいたが、少しは機嫌を直してもらえたらしい。
宥めるように何度もキスを繰り返して落ち着かせたところで、そろそろ俺も我慢の限界が近いことに気付く。
熱で張り詰めている下半身を、ズボン越しに押し当てて問う。

「……なあ、もういいか?」
質問の意図を理解したのか、アリサは頬を染めて小さく頷いた。
お尻を撫でるようにして下着を脱がし、自分のズボンも脱ぎ散らかす。
濡れた粘膜同士を擦りつけ合わせて馴染ませて、照準を合わせて押し当てた。

「アリサ、力抜いて。……行くぞ?」
「あ、あの……リーダー」
「ん?」
「その……手を、握ってくれませんか……?」
期待と不安が綯い交ぜになった顔で懇願される。左手をアリサの右手と絡み合わせるように繋いだ。
小さく震えていた身体が、少し安心したように力が抜ける。押し当てたその部分が待ちわびるようにひくついて。
優しくしようと覚悟を決めて腰を前に突き出した。

「うあ、ぁ……はいって、くる……っ」
つぷり、と音を立てて先端が飲み込まれる。中を押し広げて少しずつ奥へと向かっていく。
身を引き裂かれる痛みに、アリサの身体に力が篭もる。ギュウと爪が刺さるぐらいに手が握られて。
やがて膜に先端が到達して。ゆっくりよりは一瞬の方が辛くないだろうと、ぐっと腰を一気に押し込めた。

「――ッ!」
それは呆気なく。本当に一瞬にして破られた。
こっちとしては何か引っかかったかな、ぐらいの。けれどその意味はとても重い。
最奥まで繋がったものの、ぎちぎちとした締め付けは痛みによる拒絶に近かった。

「……ごめん、痛いか?」
頬を伝う涙を指で拭ってやることしかできない。この痛みは俺には一生分からないものだ。
自分と別のモノが入ってくるという意味では、オラクル細胞を埋め込まれたあの時の感覚に似ているらしいけれど。
あの時も背筋がゾッとするような痛みを感じたのだから、これはもっとなのだろう。
それでもアリサは、気丈に笑ってみせようとする。泣きながらも、どこか幸せそうに笑う。

「大丈夫、です。大丈夫ですから……」
「アリサ、無理してないか? 泣いてるしさ。痛いなら痛いって言ってくれ」
「確かに痛いですけど……でも、それ以上に嬉しいんです。貴方と繋がれたことが」
子犬が褒めて貰いたがってるみたいにキスをせがまれる。応じると、嬉しそうな顔をした。
ああもう、可愛くて仕方ない。理性が吹き飛んでしまいそう。
ギリギリで耐えて、ゆっくりと腰を引く。分身に吸い付いた肉が、放さないとばかりに締まって。
う、と思わず声が漏れた。背骨を通って頭まで快感が突き抜ける。やばい、気持ちいい。
アリサの表情はまだ苦痛の方が多くて申し訳ない気分になるけれど、もう止められそうにはなくて。
せめてと暴走しそうな気持ちを抑えて、ゆっくりを心がけた動きを繰り返す。
少しずつ角度を変えて、なるべく良さそうな場所を探り当てようとする。

「ふぅ、ん、っく……はぁ、う……あっ、リーダー、そこ……んんっ……」
「ここ、か?」
「ふぁっ……あぅ、そこ、痛くないかも、です……ひ、ぁ……」
反応が良かった場所を重点的に攻めると、だんだん声に熱が戻ってきた。
少しずつとろけて甘くなっていく。繋いだ手がぎゅうと縋るように握られて。
快感の糸を掴めてきたのだろう。無駄な力も抜けてきて、強張っていた身体が柔らかくなっていく。
その快感の火種を大きくしてやりたくて、揺れる胸を揉んでみたり、鎖骨を吸ったりしてみた。

「や、あ……んぅ、あんっ! あ、あ、リーダー、ふぁあっ!」
ぎちぎちだった中もほぐれてきて、狭くてキツいけど柔らかく締め付けてくる。
潤った粘膜が絡みついて、ひくひくと蠢いて刺激して。
打ち付ける腰の動きがだんだん我慢できずに速くなっていってしまう。
混ざり合った体液が空気を含んで水音を立てて。肉と肉のぶつかる音が響く。

「あっ、あっ、ひぅっ! あ、そこ、だめ、へ、変に……ふぁ、はああ……っ!」
奥を突き上げれば、キュウと膣内が収縮して。高く啼いて、首を振って悶える。
もうただ奥へ突っ込みたい、喰らいたいという欲求だけが思考を支配して。
がむしゃらに突き上げて、打ち付ける。駄目だ、もう――ッ!

「ふああっ! リーダー、わた、私、んっ、も、もう……やぁぁあああっ!!」

一番深い場所を思いっ切り突き上げた瞬間、きゅううっと強く締め付けられて。
ビクビクと痙攣する身体を抱き締めて、奥に溜め込んでいたものを全部吐き出した。

射精後特有の心地よい気怠さが全身を包む。加えて元々疲れていたせいか、急激な眠気に襲われた。
けれどすぐに寝てしまうわけにもいかない。身体を起こして、まだ荒い息のアリサにキスをする。

「ん……ふぁ、リーダー……好き、です」
ふにゃっと顔を綻ばせて。もぞりとむずがるように身体を捩る。
名残惜しいがアリサの中から自身を引き抜けば、奥から赤と白の混ざった粘液がとろりと溢れて。
あー……中途半端に服を着せたままだったから、もしかすると汚してしまったかもしれない。
けれどアリサは幸せそうで。キスを反芻するように唇に指先を当てて言う。

「……ふふ、帰る前にいい思い出が出来ました」
「ふん、こういうのって世間では死亡フラグって言うらしいぞ。頼むからこれくらいで満足しないでくれ」
一回限りじゃ、さすがに色々と後悔しすぎる。
けれどそれは杞憂だったようだ。アリサはいつも通りの強気な笑みで即答した。

「当たり前ですよ。もっと貴方に抱き締めて貰ったりキスしたり、その……してもらったり、するんですから」
だから絶対死にませんし、必ず帰ります。貴方の元へ。
そう言って、俺の胸に甘えてくる。何も言い返せずにわしゃわしゃと頭を撫でた。
普通こういうセリフを言うのは男の役目じゃないだろうか。いや、まあいいけどさ。

残された時間はあと少し。もう少しで目の前の彼女はロシアへ帰ってしまうけれど。
きっと、また会える。アリサがああ言ったんだ、意地でも帰ってくるだろうさ。俺の元まで。
それにもし置いてかれそうになったら、追いかければいいだけの話なんだ。

とにかくさしあたっては。朝が来るまで、腕の中の温もりを抱き締めて目を閉じることにした。

このページへのコメント

いいなぁ

でもなんでだろフラグに見える・・・

0
Posted by 名無しのプレイヤー 2014年09月23日(火) 15:05:03 返信

実に素晴らしい。
愛に溢れてるね。

0
Posted by ユーク 2012年05月26日(土) 11:25:14 返信

ろまんちっく

0
Posted by ななしのおんなのこ 2012年03月10日(土) 19:03:26 返信

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