ホットスパラウンド「よろこび脳」
ここまでの様々な考察を通じ、「開発プロセスにおけるよろこびの定着が生産性を向上させる」という仮説にいきついた。
この仮説に至るまでの視点をまとめると次の3点に集約出来る。
議論は次のステップで行われた。
�ー膣囘�判断について
�⊆膣僂竜�離感
�５�離感の近接化による「合意」
�ぜ�燃性の人間、可燃性の人間、不燃性の人間
�ゥ轡好謄牾�発に携わるきっかけ
�Φ�憶の階層
��良質なインプット
��探針
��感性の定義
以下、各フェーズ展開された議論を解説する。
�ー膣囘�判断について
モノへのこだわりは女性と男性でどのように違うのだろうか。そしてコミュニケーションはどのように違うのだろうか。一番身近な感性の話題として女性脳、男性脳について考えてみたい。
女性の服装や所持品へのこだわりに関しては「自分の主張を誰かに認められたい」という気持ちがあり、「主観」の同意を求めているところにコミュニケーションのきっかけがあるように思える。「それ、かわいいね」「どこで買ったの、すてきじゃない」という言葉を期待しているが、同じものを着たり持っていたりする人を見かけ、その人が自分の主張と異なっていると感じればそれまでの主張をあっさり捨てるという、割り切りと潔さも持ちあわせている。
一方、ハードウェアのスペックが、つまりは形状、機能、性能自慢が認められたときに「悦」に入るのが男性である。男性の場合には機能や性能、仕組みに興味が向けられるとは良く知られているが、まったくその通りだ。
ここで共通するのは、それぞれの主観は異なっても共通部分を見いだしていくというプロセスの中で、価値観の合意がコミュニケーションのマイルストーンになっているという点である。
しかし、コミュニケーションのアプローチは根本的に違う。女性には広範囲なコミュニケーションを可能にするスキルが備えられているのに対し、男性のコミュニケーションは限定的だ。女性が広範囲なコミュニケーションを可能にしているのは、男性よりも２倍から３倍の単語使用量と非言語コミュニケーションを使う能力に支えられている。女性は男性に比べて白目の面積が大きいので表情も豊かになるが、コミュニケーションという意味で男性の表情は全く無力である。女性のこうしたコミュニケーションスキルは右脳と左脳を結んでいる脳幹の太さによるものだと言われているが、そうであれば口で女性に勝とうということ自体が無意味な妄想ということになる。
男性は脳の構造が機能単位に特化しており同時に複数のことをこなすようには出来ていない。そうであれば増々女性にはかなわないことになる。しかし神は救い給うた。男性には複数の問題を広範囲な視点で解決するという能力が与えられた。車の運転に象徴されるように、常に変化し続ける景色や状況に即時に対応する能力は男性の方が上らしい。それと空間処理能力に優れているらしい。だから車庫入れや幅寄せが得意なのである。救われた。しかし車の運転をすることを生業にしていない多くの男性はハンドルを握らないと男性としてのスキルを主張出来ないのだろうか。それは悲しい。
仕組み、性能、機能、形状にこだわる男性と、女性のコミュニケーションスキルが加われば世の中うまくいきそうなのに、なぜ永遠にわかり合えないと思えるほどの隔たりができてしまうことがあるのだろう。
�⊆膣僂竜�離感
話しを戻そう。女性にしても男性にしても、もっと言えば人は誰でも主観にしたがって生きている。主観は個人の価値観の問題であるから、最初から他人と相容れることは少ない。だから、コミュニケーションは主観の主張を繰り返し、共通点を見いだしながら主観の距離感を詰めていくというプロセスであると言える。
「それは君の主観的な見方だよね。もっと客観的立場で物事を見なくちゃ」その”客観”ほど主観的な見方はない。主観を否定するのはその人の主観であり、その主観に立脚する客観は主観そのものである。客観的な立場が分かるのなら誰にも理解出来共感可能な絶対的価値観が存在することになる。だからカントの「人間の理性は原理的に客観それ自体と認識することは出来ない」という主張に賛同出来る。
�５�離感の近接化による「合意」
だからといって、主観を主張しあうだけではぶつかり合いが続きおよそ平和な世の中にはならない。だからこそ合意が必要なのである。
人と人との主観、組織の中にすり込まれている主観、自らの生活と身体の安全を守るための主観と様々であるが、ここでは組織内で主張される主観について検討したい。組織で最も身近な主観的判断基準として報酬があげられる。我々職業人にとっては報酬を得ることで生活を成り立たせているのであるから、誰もが関心事が高い。現在企業では目標管理制度を導入している企業も多いと思われるが、目標と成果の合意がこの制度の前提となっている。つまり組織目標と個人目標の合意点を納得して評価する制度であり、組織の主観と個人の主観の合意形成を評価という形で結びつけていると言える。小さな合意の積み重ねが主観のベクトルをあわせることにつながる。
�ぜ�燃性の人間、可燃性の人間、不燃性の人間
では合意さえ取れていれば、目標達成にむけてモチベーションが必ず向上するといえるのだろうか。ここで稲盛和夫氏の以下の主張を引用しよう。
「物事に対する熱意や情熱を燃性とする。自燃性の人間、可燃性の人間、不燃性の人間がいる。自燃性の人間とは、自分から率先して物事に取り組み影響力を発揮する人を指し、可燃性の人間とは自燃性の人や既に燃え上がっている可燃性の人の影響を受けて燃え上がる人を指し、不燃性の人間とは、周囲からエネルギーを与えられても燃え上がらず、むしろ周りの人から熱意や情熱を奪う人を指す。」
この論理で言うと、他燃性のメンバーが如何に「引火」するかがポイントと言える。組織構成の２：６：２の原理で言えば、自燃性が2割、他燃性が６割、不燃性が2割ということになる。他燃性のメンバーを「発火」させることが出来れば8割が燃性の高い人間になり文字通り「燃える集団」になるはずである。発火しても燃えるモノがなければたちまち鎮火してしまうから、燃える素材と風を送り続けることが必要になる。燃える素材は合意された目標であり、風は目標達成を励ます「言葉」になるのではないだろうか。
不燃性のメンバーはモチベーションキラーということになるが、8割の人間が燃えていれば2割の人間は延焼を免れないはずだ。
�ゥ轡好謄牾�発に携わるきっかけ
我々はなぜシステム開発を職業としているのであろう。中学生や高校生の頃にコンピュータに触れる機会があり、自分がつくったプログラムが動いたときの感動が非常に大きく、将来を決することになったのではないだろうか。そのときの感動を忘れずにどれだけの人間がＩＴ業界で働いているかわからないが、営業、スタッフ、ＳＥ関係なくこうしたきっかけを持っている人は多いのではないだろうか。
こうしたきっかけを礎にした記憶階層により、我々はモチベーションを維持出来ているのではないかと思われる。
しかし、趣味のプログラムから、組織で作るプログラムへ、職業としてつくるプログラムから、システム開発をマネジメントする立場へと変わる中で、どれだけの人間が最初の小さなプログラムが動いたときの感動を覚えているのだろうか。
�Φ�憶の階層
図「記憶の階層」に示されるように、５つの階層に分かれている。手続き記憶から意味記憶までは潜在意識、短期記憶とエピソード記憶は顕在意識と言われており、顕在記憶は記憶全体の3％と言われている。
記憶の階層をコミュニケーションに適用させると、人は意識されている記憶を頼り会話をしていると言えないだろうか。逆に言えば、意識していない記憶を頼りに会話をすることはないと言える。
会話スキルは潜在記憶に支えられているのは言うまでもないが、会話での話題については常に顕在記憶に絞られるはずである。
顧客の業務知識はどの記憶階層にいるのだろうか。経験により記憶されるのはエピソード記憶であるが、日々その業務に携わっている顧客は記憶の相乗効果により手続き記憶化していくことと考えられる。そうであれば、経験年数が長い顧客ほど手続き記憶化していると言える。「おたく、プロなんだから、うちの業務を理解してつくってよね」というが、実は顧客が自分の潜在意識化した業務知識は他人が聞き出すことは出来ないのである。
要件定義のヒアリングの場面を想定すると、お互いにエピソード記憶レベルで会話することになるが、潜在意識で会話をすることがないので正しいコミュニケーションが行われているかどうかは非常に疑わしいことがわかる。
わずか数％の記憶を頼りに行われる会話を成功させるには、潜在記憶の助けが必要になるだろう。ユーザーは「意識している業務知識」で会話をする。自分でも意識していない業務ルールや業種の常識は潜在意識の中に存在する。ベンダーも明示的に意識出来る業務知識でヒアリングをする。
こうして、言葉上の意味は理解出来ても、実装したシステムが必ずしもユーザーの要件を満たすことが出来ないミゾが出来上がってしまうのはオレゴン大学の実験の中で挿絵として使われている有名なブランコの絵にも象徴される。潜在意識としての業務知識を共有出来ていないモデルをこれ以上に表現出来ている絵は他には知らない。
記憶の階層を要件の意識レベルのモデルとして適合出来るとしてもっと議論は掘り下げられる。顧客の潜在意識に踏み込むのは簡単なことではないが2つの方法が考えられる。
意識されていない業務知識に踏み込むための手段の一つが問題点の共有である。ユーザーの問題点、ベンダーの問題点を理解するための問題点を共有することで、階層モデルの下位層に踏み込めるのではないだろうか。お互いの立場を理解し共感できれば、少しずつでも引き出せる筈だが、これは高い信頼関係に裏付けられていることが前提となるので実現には時間がかかりそうである。
2点目として、顧客に潜在意識化した業務知識を書かせるのである。これも容易ではないが、一点目に比べれば非常に実現性は高いし、コンサルテーションやファシリテーションでもこうしたアプローチは採用されている。
��良質なインプット
潜在意識が良質なもので構成されると記憶階層も良質なものになるはずである。前項で触れた業務知識の記憶階層においても、ユーザーのニーズを正しく引き出すためにはヒアリングする側の記憶階層の質が試される。業種知識がなければ当然引き出すことも出来ないし、それが全て意識階層でまかなわれると効率が悪い。しかし、一般に手続き記憶などは幼少期から少年期に形成されると言われる。では、成人になってからは意識階層しか改造出来ないかというとそうでもない。エピソード記憶で蓄えられた記憶は、繰り返し使われたり、強い意識で記憶された、他の記憶と連携されたりすることで潜在記憶化されていく。
例えば、文献などで蓄えられた知識や記憶が現実の世界で同じことが起こったりすると「あの文献に記されていたことが今目の前で起こっている」という記憶の連携による「よろこび」が大きいと強い記憶になっていく。ペーパードライバーとは実践経験のなさを揶揄している言葉であるが、まさしく他の記憶との連携によって使われる記憶となっていくのである。こうした記憶の連携がたくさん発生するほど記憶は増大していく。その「連携」を多く発生させるためにも、良質なインプットを増やす必要がある。トレーニング、知識、情報、経験などが連携して自発的な気づきに繋がっていくのではないだろうかと考える。
��探針
TCP/IPプロトコルで相手のIPアドレスが有効かどうかを確認する方法の一つとして「ping」コマンドがあることはIT技術者であれば知っている筈である。このコマンドは元々潜水艦が何かを探すときに発信する探針音から来ている。
海戦における潜水艦は音によって様々な情報を収集して分析して敵艦船の一を捕捉する。そして最終的な位置確認としてこの探針音を発する。しかし無用意に発信すると相手から自分の位置を知られることになる。一方、相手が気づいていない場合には探針音が武器になり威嚇効果もある。
システム開発における要件定義も探針を注意深く繰り返して行う作業とも言える。不用意に探針音を発し続ければ情報量の少なさや経験の少なさを露呈することになる一方で、必要なポイントでの探針音（つまり適確な確認事項や指摘）はユーザー自信の気づきになり、システム開発上の問題点の突破口になる可能性もある。こうした探針音の効果を発揮するためには、探針音を発するだけの準備が必要である。こうして探針を繰り返すことによって合意に至れば要件定義はひとまずの決着を得られるのではないだろうか。
��感性の定義について
客観的視点を否定したカントの「物事の本質は知ることが出来ず現象のみを認識出来る」という主張から発展したフッサールの現象学では、リトマス図式において人の意識は主観によるリトマス試験紙のようなものであるとしている。
リトマス試験紙は２値の結果を示すが、人は知識や経験分のたくさんの種類のリトマス試験紙を持っている。知識や経験が少なければ反応も薄かったりなかったりする。「感性がゆたか」とはリトマス試験紙がたくさんあり様々なものに反応出来、さらにリトマス試験紙も２値ではなくもっとたくさんの反応の仕方があるのではないだろうか。人にはないリトマス試験紙があるほどその人の感性が豊かに見える。
一方「ほとばしる感性」という言い方もある。もっともこの表現がぴったりとはまるのは岡本太郎ではないだろうか。彼は幼少期から激しくも自由な感情を育て上げ、両親からその感情を抑圧されることなく教育された。パリのカフェテラスで多くの芸術家と議論するには十分すぎるほどの感性を持ち合わせ、抑圧されることのない感性は自由にキャンバスに飛び散り染み付き、彫刻は圧倒的な存在感がある。
この芸術家は極端な例であるが、抑圧された心にはのびのびとした感性は芽生えないことの証明である。
以上のことから、感性とは今回の議論の内容を外界から捕らえたときの総称ではないかと考え。言葉で定義するならば「外界からの入力に対する反応の度合い」であると言える。最後に相馬氏の感性の定義を引用しよう。
「内外界の情報を感受性という一種のアンテナによって、直感的、瞬間的、無意識的に受取、それを取捨選択して判断し、場合によっては五感で認識出来る形を通して、自ら情報を発信するような一連の情報処理を行う働きを持つ。（後略）」
脚注）
この仮説に至るまでの視点をまとめると次の3点に集約出来る。
- システム開発における開発方法論、管理手法的視点
- 上記手法実施時に人間的側面に焦点をあてるための心理学、哲学的視点
- 脳科学による上記2点の主張を裏付ける視点
議論は次のステップで行われた。
�ー膣囘�判断について
�⊆膣僂竜�離感
�５�離感の近接化による「合意」
�ぜ�燃性の人間、可燃性の人間、不燃性の人間
�ゥ轡好謄牾�発に携わるきっかけ
�Φ�憶の階層
��良質なインプット
��探針
��感性の定義
以下、各フェーズ展開された議論を解説する。
�ー膣囘�判断について
モノへのこだわりは女性と男性でどのように違うのだろうか。そしてコミュニケーションはどのように違うのだろうか。一番身近な感性の話題として女性脳、男性脳について考えてみたい。
女性の服装や所持品へのこだわりに関しては「自分の主張を誰かに認められたい」という気持ちがあり、「主観」の同意を求めているところにコミュニケーションのきっかけがあるように思える。「それ、かわいいね」「どこで買ったの、すてきじゃない」という言葉を期待しているが、同じものを着たり持っていたりする人を見かけ、その人が自分の主張と異なっていると感じればそれまでの主張をあっさり捨てるという、割り切りと潔さも持ちあわせている。
一方、ハードウェアのスペックが、つまりは形状、機能、性能自慢が認められたときに「悦」に入るのが男性である。男性の場合には機能や性能、仕組みに興味が向けられるとは良く知られているが、まったくその通りだ。
ここで共通するのは、それぞれの主観は異なっても共通部分を見いだしていくというプロセスの中で、価値観の合意がコミュニケーションのマイルストーンになっているという点である。
しかし、コミュニケーションのアプローチは根本的に違う。女性には広範囲なコミュニケーションを可能にするスキルが備えられているのに対し、男性のコミュニケーションは限定的だ。女性が広範囲なコミュニケーションを可能にしているのは、男性よりも２倍から３倍の単語使用量と非言語コミュニケーションを使う能力に支えられている。女性は男性に比べて白目の面積が大きいので表情も豊かになるが、コミュニケーションという意味で男性の表情は全く無力である。女性のこうしたコミュニケーションスキルは右脳と左脳を結んでいる脳幹の太さによるものだと言われているが、そうであれば口で女性に勝とうということ自体が無意味な妄想ということになる。
男性は脳の構造が機能単位に特化しており同時に複数のことをこなすようには出来ていない。そうであれば増々女性にはかなわないことになる。しかし神は救い給うた。男性には複数の問題を広範囲な視点で解決するという能力が与えられた。車の運転に象徴されるように、常に変化し続ける景色や状況に即時に対応する能力は男性の方が上らしい。それと空間処理能力に優れているらしい。だから車庫入れや幅寄せが得意なのである。救われた。しかし車の運転をすることを生業にしていない多くの男性はハンドルを握らないと男性としてのスキルを主張出来ないのだろうか。それは悲しい。
仕組み、性能、機能、形状にこだわる男性と、女性のコミュニケーションスキルが加われば世の中うまくいきそうなのに、なぜ永遠にわかり合えないと思えるほどの隔たりができてしまうことがあるのだろう。
�⊆膣僂竜�離感
話しを戻そう。女性にしても男性にしても、もっと言えば人は誰でも主観にしたがって生きている。主観は個人の価値観の問題であるから、最初から他人と相容れることは少ない。だから、コミュニケーションは主観の主張を繰り返し、共通点を見いだしながら主観の距離感を詰めていくというプロセスであると言える。
「それは君の主観的な見方だよね。もっと客観的立場で物事を見なくちゃ」その”客観”ほど主観的な見方はない。主観を否定するのはその人の主観であり、その主観に立脚する客観は主観そのものである。客観的な立場が分かるのなら誰にも理解出来共感可能な絶対的価値観が存在することになる。だからカントの「人間の理性は原理的に客観それ自体と認識することは出来ない」という主張に賛同出来る。
�５�離感の近接化による「合意」
だからといって、主観を主張しあうだけではぶつかり合いが続きおよそ平和な世の中にはならない。だからこそ合意が必要なのである。
人と人との主観、組織の中にすり込まれている主観、自らの生活と身体の安全を守るための主観と様々であるが、ここでは組織内で主張される主観について検討したい。組織で最も身近な主観的判断基準として報酬があげられる。我々職業人にとっては報酬を得ることで生活を成り立たせているのであるから、誰もが関心事が高い。現在企業では目標管理制度を導入している企業も多いと思われるが、目標と成果の合意がこの制度の前提となっている。つまり組織目標と個人目標の合意点を納得して評価する制度であり、組織の主観と個人の主観の合意形成を評価という形で結びつけていると言える。小さな合意の積み重ねが主観のベクトルをあわせることにつながる。
�ぜ�燃性の人間、可燃性の人間、不燃性の人間
では合意さえ取れていれば、目標達成にむけてモチベーションが必ず向上するといえるのだろうか。ここで稲盛和夫氏の以下の主張を引用しよう。
「物事に対する熱意や情熱を燃性とする。自燃性の人間、可燃性の人間、不燃性の人間がいる。自燃性の人間とは、自分から率先して物事に取り組み影響力を発揮する人を指し、可燃性の人間とは自燃性の人や既に燃え上がっている可燃性の人の影響を受けて燃え上がる人を指し、不燃性の人間とは、周囲からエネルギーを与えられても燃え上がらず、むしろ周りの人から熱意や情熱を奪う人を指す。」
この論理で言うと、他燃性のメンバーが如何に「引火」するかがポイントと言える。組織構成の２：６：２の原理で言えば、自燃性が2割、他燃性が６割、不燃性が2割ということになる。他燃性のメンバーを「発火」させることが出来れば8割が燃性の高い人間になり文字通り「燃える集団」になるはずである。発火しても燃えるモノがなければたちまち鎮火してしまうから、燃える素材と風を送り続けることが必要になる。燃える素材は合意された目標であり、風は目標達成を励ます「言葉」になるのではないだろうか。
不燃性のメンバーはモチベーションキラーということになるが、8割の人間が燃えていれば2割の人間は延焼を免れないはずだ。
�ゥ轡好謄牾�発に携わるきっかけ
我々はなぜシステム開発を職業としているのであろう。中学生や高校生の頃にコンピュータに触れる機会があり、自分がつくったプログラムが動いたときの感動が非常に大きく、将来を決することになったのではないだろうか。そのときの感動を忘れずにどれだけの人間がＩＴ業界で働いているかわからないが、営業、スタッフ、ＳＥ関係なくこうしたきっかけを持っている人は多いのではないだろうか。
こうしたきっかけを礎にした記憶階層により、我々はモチベーションを維持出来ているのではないかと思われる。
しかし、趣味のプログラムから、組織で作るプログラムへ、職業としてつくるプログラムから、システム開発をマネジメントする立場へと変わる中で、どれだけの人間が最初の小さなプログラムが動いたときの感動を覚えているのだろうか。
�Φ�憶の階層
図「記憶の階層」に示されるように、５つの階層に分かれている。手続き記憶から意味記憶までは潜在意識、短期記憶とエピソード記憶は顕在意識と言われており、顕在記憶は記憶全体の3％と言われている。
記憶の階層をコミュニケーションに適用させると、人は意識されている記憶を頼り会話をしていると言えないだろうか。逆に言えば、意識していない記憶を頼りに会話をすることはないと言える。
会話スキルは潜在記憶に支えられているのは言うまでもないが、会話での話題については常に顕在記憶に絞られるはずである。
顧客の業務知識はどの記憶階層にいるのだろうか。経験により記憶されるのはエピソード記憶であるが、日々その業務に携わっている顧客は記憶の相乗効果により手続き記憶化していくことと考えられる。そうであれば、経験年数が長い顧客ほど手続き記憶化していると言える。「おたく、プロなんだから、うちの業務を理解してつくってよね」というが、実は顧客が自分の潜在意識化した業務知識は他人が聞き出すことは出来ないのである。
要件定義のヒアリングの場面を想定すると、お互いにエピソード記憶レベルで会話することになるが、潜在意識で会話をすることがないので正しいコミュニケーションが行われているかどうかは非常に疑わしいことがわかる。
わずか数％の記憶を頼りに行われる会話を成功させるには、潜在記憶の助けが必要になるだろう。ユーザーは「意識している業務知識」で会話をする。自分でも意識していない業務ルールや業種の常識は潜在意識の中に存在する。ベンダーも明示的に意識出来る業務知識でヒアリングをする。
こうして、言葉上の意味は理解出来ても、実装したシステムが必ずしもユーザーの要件を満たすことが出来ないミゾが出来上がってしまうのはオレゴン大学の実験の中で挿絵として使われている有名なブランコの絵にも象徴される。潜在意識としての業務知識を共有出来ていないモデルをこれ以上に表現出来ている絵は他には知らない。
記憶の階層を要件の意識レベルのモデルとして適合出来るとしてもっと議論は掘り下げられる。顧客の潜在意識に踏み込むのは簡単なことではないが2つの方法が考えられる。
意識されていない業務知識に踏み込むための手段の一つが問題点の共有である。ユーザーの問題点、ベンダーの問題点を理解するための問題点を共有することで、階層モデルの下位層に踏み込めるのではないだろうか。お互いの立場を理解し共感できれば、少しずつでも引き出せる筈だが、これは高い信頼関係に裏付けられていることが前提となるので実現には時間がかかりそうである。
2点目として、顧客に潜在意識化した業務知識を書かせるのである。これも容易ではないが、一点目に比べれば非常に実現性は高いし、コンサルテーションやファシリテーションでもこうしたアプローチは採用されている。
��良質なインプット
潜在意識が良質なもので構成されると記憶階層も良質なものになるはずである。前項で触れた業務知識の記憶階層においても、ユーザーのニーズを正しく引き出すためにはヒアリングする側の記憶階層の質が試される。業種知識がなければ当然引き出すことも出来ないし、それが全て意識階層でまかなわれると効率が悪い。しかし、一般に手続き記憶などは幼少期から少年期に形成されると言われる。では、成人になってからは意識階層しか改造出来ないかというとそうでもない。エピソード記憶で蓄えられた記憶は、繰り返し使われたり、強い意識で記憶された、他の記憶と連携されたりすることで潜在記憶化されていく。
例えば、文献などで蓄えられた知識や記憶が現実の世界で同じことが起こったりすると「あの文献に記されていたことが今目の前で起こっている」という記憶の連携による「よろこび」が大きいと強い記憶になっていく。ペーパードライバーとは実践経験のなさを揶揄している言葉であるが、まさしく他の記憶との連携によって使われる記憶となっていくのである。こうした記憶の連携がたくさん発生するほど記憶は増大していく。その「連携」を多く発生させるためにも、良質なインプットを増やす必要がある。トレーニング、知識、情報、経験などが連携して自発的な気づきに繋がっていくのではないだろうかと考える。
��探針
TCP/IPプロトコルで相手のIPアドレスが有効かどうかを確認する方法の一つとして「ping」コマンドがあることはIT技術者であれば知っている筈である。このコマンドは元々潜水艦が何かを探すときに発信する探針音から来ている。
海戦における潜水艦は音によって様々な情報を収集して分析して敵艦船の一を捕捉する。そして最終的な位置確認としてこの探針音を発する。しかし無用意に発信すると相手から自分の位置を知られることになる。一方、相手が気づいていない場合には探針音が武器になり威嚇効果もある。
システム開発における要件定義も探針を注意深く繰り返して行う作業とも言える。不用意に探針音を発し続ければ情報量の少なさや経験の少なさを露呈することになる一方で、必要なポイントでの探針音（つまり適確な確認事項や指摘）はユーザー自信の気づきになり、システム開発上の問題点の突破口になる可能性もある。こうした探針音の効果を発揮するためには、探針音を発するだけの準備が必要である。こうして探針を繰り返すことによって合意に至れば要件定義はひとまずの決着を得られるのではないだろうか。
��感性の定義について
客観的視点を否定したカントの「物事の本質は知ることが出来ず現象のみを認識出来る」という主張から発展したフッサールの現象学では、リトマス図式において人の意識は主観によるリトマス試験紙のようなものであるとしている。
リトマス試験紙は２値の結果を示すが、人は知識や経験分のたくさんの種類のリトマス試験紙を持っている。知識や経験が少なければ反応も薄かったりなかったりする。「感性がゆたか」とはリトマス試験紙がたくさんあり様々なものに反応出来、さらにリトマス試験紙も２値ではなくもっとたくさんの反応の仕方があるのではないだろうか。人にはないリトマス試験紙があるほどその人の感性が豊かに見える。
一方「ほとばしる感性」という言い方もある。もっともこの表現がぴったりとはまるのは岡本太郎ではないだろうか。彼は幼少期から激しくも自由な感情を育て上げ、両親からその感情を抑圧されることなく教育された。パリのカフェテラスで多くの芸術家と議論するには十分すぎるほどの感性を持ち合わせ、抑圧されることのない感性は自由にキャンバスに飛び散り染み付き、彫刻は圧倒的な存在感がある。
この芸術家は極端な例であるが、抑圧された心にはのびのびとした感性は芽生えないことの証明である。
以上のことから、感性とは今回の議論の内容を外界から捕らえたときの総称ではないかと考え。言葉で定義するならば「外界からの入力に対する反応の度合い」であると言える。最後に相馬氏の感性の定義を引用しよう。
「内外界の情報を感受性という一種のアンテナによって、直感的、瞬間的、無意識的に受取、それを取捨選択して判断し、場合によっては五感で認識出来る形を通して、自ら情報を発信するような一連の情報処理を行う働きを持つ。（後略）」
脚注）
- （ウィキペディアより）http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%B2%E7%9B%9B%E5...
- 2割は水か、GABAか。
- （感性教育学会 相馬氏の講演よりhttp://www3.omn.ne.jp/~michiko3/kameoka.html）
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2008年03月02日(日) 00:20:25 Modified by ko_teru