納得チームビルド〜感性TeamHack
「チームハックス」では人の管理能力のアテにならない理由を3つあげている。
まず「人はないものをあると思ったり、あるものをないと思ったりしてしまう」ことである。脳には補完機能があり、しばしばそれは正しく機能しない場合がある。視覚を例にいくつか考えて見よう。視神経は片目で100万本と言われているがデジカメで100万画素と言えば何世代も前の古い機種になる。しかし100万画素のデジカメのように斜めの線がギザギザになることもないし手振れもない。これは見えていない部分を補足する機能が働いている証拠である。視界の端では認識率が落ちるし、見えないスポットもある。それでも滑らかに映像を認識することが出来る。言葉においても会話の全ての言葉を記憶して理解しているわけではなく、特定の言葉で会話を理解しているに過ぎない。理解するためにピックアップした言葉が他の人と違うと誤解が生じる。「そんな意味で言ったじゃない」と言われても一々どの言葉をどのように理解したかなど確認はしない。だからシンプルな言葉で伝える人の話は分かりやすいのだ。
次は「現在の自分の状態を基準に、未来の自分の状態を予測する」である。これは、人は常に主観的に物事を捕らえ主観的に考えるというカントの主張に裏付けられるのではないか。また、予測や補完が意志とは関係なく行われるのも脳の本質的な働きである。予測は何もないところからは不可能であるし、補完するためには補完に足る経験が必要だ。プロジェクトの進捗管理においても、どんなツールや計算方法を使っても報告するときには現在の自分を基準にして補正するだろう。
さいごに、「過去の自分を合理化する」ことをあげている。やらなかったことをやったように記憶していたり、失敗したりしたことを忘れてしまう。これは精神の健康状態を保つためには必要なことであり、常に悲観的なら鬱病だということも出来る。一方で、人の脳は脳内に現実にはありえないもうひとつの現実を作り出してしまうことも知られている。
幽霊やUFOの目撃はこうした現象が背景にあるとも言われている。判断のつかないものを見たときに他の情報(空に浮かぶ怪しい光りのそれはUFOかもしれないという囁き)が虚像を作り出してしまうという。
写真業界では、記憶色というのがある。実際に眼で見える色ではなく、想像、脚色した色を人間は記憶するというものだ。例えば、青空、そして夕焼け空。見事な青い空や真っ赤にそまる色を思い出すだろう。しかし、実際にそれを記録し、再現して写真にすると、人にはそんなはずはない、と言う。
青空はより青く、そして夕焼けは真っ赤に。それが記憶色だ。これを写真業界は追い求めてきた。写真のプリントをみて、「ああ、あの時の景色だ」そう思われれば写真業界の脚色が、あなたの脚色と一致したということだ。
ソフトウェア業界ではどうだろう。その出来栄えは、お客様にとって想像したとおりだろうか。いろいろな利害関係の人たちはそれぞれの経験から主観的に判断する。あなたはそれを想像出来ただろうか。
プロジェクトを起こすとき、あるいは組織を築くとき、経験のみ、すなわち狭い範囲の知識のみで考えているとより大きな仕事をなすことは出来ない。自分の主観だけでなく、より広い視野で対象を見つめるべきだ。脳が疲れない、すなわち過去の記憶に頼っているだけではだめだ。人間の補完能力はすばらしいものがあるが、それが引き起こす主観の世界にとどまらず新たな旅に出ることが出来るのか。自分、そして脳にも新しい世界での刺激を与えたいものだ。
脚注)
しかし、映像に捉えたものはどう理解したらよいのだろう。教えて下さい>大槻教授
まず「人はないものをあると思ったり、あるものをないと思ったりしてしまう」ことである。脳には補完機能があり、しばしばそれは正しく機能しない場合がある。視覚を例にいくつか考えて見よう。視神経は片目で100万本と言われているがデジカメで100万画素と言えば何世代も前の古い機種になる。しかし100万画素のデジカメのように斜めの線がギザギザになることもないし手振れもない。これは見えていない部分を補足する機能が働いている証拠である。視界の端では認識率が落ちるし、見えないスポットもある。それでも滑らかに映像を認識することが出来る。言葉においても会話の全ての言葉を記憶して理解しているわけではなく、特定の言葉で会話を理解しているに過ぎない。理解するためにピックアップした言葉が他の人と違うと誤解が生じる。「そんな意味で言ったじゃない」と言われても一々どの言葉をどのように理解したかなど確認はしない。だからシンプルな言葉で伝える人の話は分かりやすいのだ。
次は「現在の自分の状態を基準に、未来の自分の状態を予測する」である。これは、人は常に主観的に物事を捕らえ主観的に考えるというカントの主張に裏付けられるのではないか。また、予測や補完が意志とは関係なく行われるのも脳の本質的な働きである。予測は何もないところからは不可能であるし、補完するためには補完に足る経験が必要だ。プロジェクトの進捗管理においても、どんなツールや計算方法を使っても報告するときには現在の自分を基準にして補正するだろう。
さいごに、「過去の自分を合理化する」ことをあげている。やらなかったことをやったように記憶していたり、失敗したりしたことを忘れてしまう。これは精神の健康状態を保つためには必要なことであり、常に悲観的なら鬱病だということも出来る。一方で、人の脳は脳内に現実にはありえないもうひとつの現実を作り出してしまうことも知られている。
幽霊やUFOの目撃はこうした現象が背景にあるとも言われている。判断のつかないものを見たときに他の情報(空に浮かぶ怪しい光りのそれはUFOかもしれないという囁き)が虚像を作り出してしまうという。
写真業界では、記憶色というのがある。実際に眼で見える色ではなく、想像、脚色した色を人間は記憶するというものだ。例えば、青空、そして夕焼け空。見事な青い空や真っ赤にそまる色を思い出すだろう。しかし、実際にそれを記録し、再現して写真にすると、人にはそんなはずはない、と言う。
青空はより青く、そして夕焼けは真っ赤に。それが記憶色だ。これを写真業界は追い求めてきた。写真のプリントをみて、「ああ、あの時の景色だ」そう思われれば写真業界の脚色が、あなたの脚色と一致したということだ。
ソフトウェア業界ではどうだろう。その出来栄えは、お客様にとって想像したとおりだろうか。いろいろな利害関係の人たちはそれぞれの経験から主観的に判断する。あなたはそれを想像出来ただろうか。
プロジェクトを起こすとき、あるいは組織を築くとき、経験のみ、すなわち狭い範囲の知識のみで考えているとより大きな仕事をなすことは出来ない。自分の主観だけでなく、より広い視野で対象を見つめるべきだ。脳が疲れない、すなわち過去の記憶に頼っているだけではだめだ。人間の補完能力はすばらしいものがあるが、それが引き起こす主観の世界にとどまらず新たな旅に出ることが出来るのか。自分、そして脳にも新しい世界での刺激を与えたいものだ。
脚注)
しかし、映像に捉えたものはどう理解したらよいのだろう。教えて下さい>大槻教授
2008年03月02日(日) 00:07:14 Modified by ko_teru