「憧れの男性(ひと)」Part2

2007/3/10放送「憧れの男性(ひと)」


出演:鈴木謙介、柳瀬博一、斎藤哲也、大西奈己(ゲスト)、高野麻結子(ゲスト)

※以下の発言まとめは、正確な番組での発言とは異なる場合があります。

MP3その4


鈴木:スタジオには放送から引き続きゲストとサブパーソナリティの皆さん。今日の放送を終えて感想どうですか大西さん。

大西:好みもそれぞれでリスナーは個性的でいいっすよね。

鈴木:もうちょっとベタなアイドルに偏るかと思ったら。

大西:ジャニーズ話とか出てこないなー。寂しいね。

鈴木:じゃああとでいっぱいしようか?

大西:いやそんな詳しいわけじゃないんですけど。

鈴木:あはは。じゃあ高野さん。

高野:大人の憧れはどうなのかなって。小さい頃の憧れは分かるけど、結婚したらとか、40代、50代になったらどうか。まだ見ぬものへの憧れがその人に重ねられてっていうのが、色々知識も増えてくるし、どうなるのかなって。

鈴木:それでいうとメール、57歳の方。椎名誠さん。大自然に吹く風のごとくごくごく自然で野武士のような人。
あのクラスまでいくと若人では太刀打ちできない。

斎藤:焚き火が似合う男。

鈴木:ジャック・ニコルソンみたいな?

柳瀬:彼が焚き火するとホラーになりますけどね。

大西:焚き火部でしたっけ、椎名さんがやってる活動。そういうのあるんでしょ?

斎藤:あるみたいですね。

柳瀬:斎藤さんもボーイスカウトだったら焚き火のひとつやふたつ、たちどころに。

斎藤:ま、火をおこすくらいだったら。

大西:マッチがなくても火をおこせる男。

斎藤:あれはなかなかできないんですよ。

鈴木:あれってすごい力いるんでしょ?

斎藤:そう、力業なんですよ。

鈴木:あれか、こういう知識が惹かれるのか。起こせる訳じゃないんだけど、起こせる知識を持っているっていう。

一同:あ〜。

鈴木:同意された、よかった。ちょっとみんな今から火のおこし方とか覚えようか。ちっちゃいおがくずから火つけんだぜ。

高野:あ、たとえばテントをたたむのがうまいとか。

大西:あるある。

鈴木:テントをたたむ前にテントを張らなきゃいけない状況っていうのは。

斎藤:アウトドアで活躍っていうのはポイントかもね。

鈴木:アウトドアでいうなら、料理。

高野:とか、魚釣るとか。

鈴木:魚釣りっすか。餌がダメな女子っているからね。メール、謙虚な人に憧れます、最近はカンニング竹山さん。人は心。
この一言がほしかった。

大西:すごいな、21歳でカンニング竹山の謙虚さを見抜く女。

鈴木:あれは見抜くものなんですか?

大西:だってまずは怒り芸でしょ。

鈴木:そっか。それは歳とともに見抜けるようになるものなのか。

大西:だって、竹山さんって謙虚なイメージです?

鈴木:んー。芸人の方は一般に謙虚だという印象ですけどね。あれはキレ芸でやってるんだと。そういうスキルとかも必要なのか。
メール、憧れの男性は仲居君が演じた「白い影」の直江先生。男性の「私にしか見せない顔」に弱い。PS:サイトの柳瀬さんの写真かっこいいですね。
柳瀬さんが吹いてるよw
どうすか、私にしか見せない顔。

高野:思ったのは、ネクタイを緩めるとか。

鈴木:来た。帰ってきて、こうね、こうね。こうってラジオで言っても伝わらないけど。

高野:定番だけど、車のハンドルとか。

鈴木:後ろを見ながら車庫入れだ。

高野:それは自分からしか見えない角度だから。

鈴木:この横顔は私しか知らないと。でも単に帰ってネクタイとってるだけで、私にしか見せないと思ってるわけでは。。。

斎藤:ないですよね。

鈴木:っつか帰ったらネクタイ取るだろう!あれ、取り方とかコツがあるんですか大西さん。

大西:んー、多分、もともといいと思ってるから。

柳瀬:ポイントは、人差し指と中指を使って、人差し指を中に入れてぐぐっと。そのついでにさりげなくワイシャツの袖をまくり上げる。芸ですよね。

鈴木:何年か前の某局のクリスマス番組でSMAPが出たとき、木村君にそれやらせてましたよね。男の憧れる仕草ってことでネクタイを取るっていうのが出て、出演してた女性陣から「本気でやってくれ」って話になって。何が本気なのかわかんないんだけどw で、木村君がまずジャケットを脱いで、そこからネクタイをぐっと取りながら「今日どこ行く?」ってやった瞬間、ゲストの女性陣が、バンコランの眼力にやられるがごとく、ふわーっと崩れ落ちて。あるんだこういうのはって。ホントに崩れ落ちてましたから。『パタリロ!』のバンコラン以外で初めて見たよあんなの。

柳瀬:それは木村拓哉だからっていう。

大西:清潔でクラシックなスーツの着方をしている人が崩すとぐっとくるのかも。

鈴木:最初の着こなしの段階から、

柳瀬:最初からだらしない人もいますからねw

鈴木:それからメール、理想は0083のバニング大尉とか「コンバット」のサンダース軍曹。マッチョな上司に憧れ。
きました、マッチョ。柳瀬さん、マッチョについて語ってもらおうか。

柳瀬:これはサラリーマンの話なんですよね。さっきから聞いていて思ったのが、憧れ男子のパターンっていうのが二つあって、「独立した人」と「所属した人」。独立した人っていうは何かっていうと、村上春樹さんが新訳を出した『ロング・グッドバイ』のフィリップ・マーロウ。あれが完成された独立した男。ハードボイルドの中では珍しく、男女を問わず受ける人。椎名誠さんも高田純次さんもそうでしょう。あとは関根勤さん。お笑いとタレントの間でやってるひとにファンが付いてる。彼らは独立した人で、自分のひょうひょうたる面白さが商品になっている。誰にすり寄るわけでも、徒党を組むわけでもない。でも孤立はしてない。
あれはキャラクターとして理想なんだけど、実際にはそんな人そうそうはいない。じゃあ普通の人にとっての手近な存在っていうと、この、サンダース軍曹のような、組織に属する憧れの上司って構造。ただしここにも現実とのズレがあって、彼らは散ってしまうんですよ。散らないかっこよさっていうのは、仕事してみないとわからない。年を取ってから分かるかっこよさっていうのが、この辺りで一番変わってくる。かっこ悪さを飲み込んでいくことかっこよさっていうのは、ある程度仕事をしないと分からないですよね。

鈴木:頭では分かるし、大人の意見だーと思うんですけど、一方で、美学としての「散り際」っていうのはありますよね。僕もいいかげん30過ぎると、「滅びの美学」じゃなくて、いかにおめおめと生き抜くかっていうのは分からなくはない。けど、憧れの存在であるためには、ピークで死ななきゃいけないってのもある。ピークをどこに持ってくるかっていうのがポイントになってくるんじゃないかと。

柳瀬:ピークがね。若いときっていうのは、瞬間で消えていって、自分に継いでいただける。それがかっこいい。それがだんだん変わってくるんですよね。自分も憧れられるくらいの歳になっちゃったしね。

鈴木:そうねー。ああ、もう女性陣がふむふむって聞いてて。しまった、また柳瀬さんのポイントあげちゃったよ。

高野:いやいやw 憧れられる年齢になったときに、自分がどうあるのかっていう。

鈴木:それは考えますよね。僕、二十歳の頃、評論家の浅羽通明さんとお酒の席でご一緒する機会があって。そこで浅羽さんに言われたのは、自分が30になるまでの間にどういう人間になっていればいいかっていうのをすごく考えた。40手前にして、40になるためにどうすればいいかっていうのを今考えている、と。それはすごい実践に移したんですよ。20歳の自分が、30になるときにどういう人間になっていればいいかっていうのはすごく考えて。で、目標がいくつかあるんですけど、たとえば本を出すとか。ほとんど全部実現したんですよ。実現できなかったのは武道館でソロコンサートだけでw そういう目標の作り方として、「大人になること」でも出てきたけど、目標になる先輩っていうのがあると、男子としては生きやすい世の中になりますよね。でも今は若い女の子を上の人間と取り合ってるって構図だからw 残念だよ!
メール、男としては自分にないものに憧れます。筋肉に憧れます。
筋肉っていうね。ミスチルの桜井さんが一時期すっごい体鍛えてた時期がありましたね。ライブビデオとか見るとわかるんですけど、もっすごい腕が太くなってて。あと長渕さんとか。あと清原?自分の肉体を限界まで追い込むのに憧れるっていう。根性の問題だったりするので。
それから滅びの美学で言うと、メール、ロック好きとしては退廃的で自滅的なミュージシャン。死んじゃうと神格化される。カート・コバーン、シド・ヴィシャス、あとは『明日に向かって撃て!』か。遡るとジェームス・ディーンまでいっちゃう「早死にの美学」。どうですか、早死にの美学。

大西:いまは私は、しぶとく生きるじじいがいいですね。バンビってマンガがあるじゃないですか。あそこで殺し屋バンビを育てたじじいたちが、割と最後の方で、「年を取れば取るほど自由になっていくんだ」っていうので、かっこいーって。

鈴木:かっこいいーって思うんだ。

高野:憧れって崩れやすいものだって知ってるとおもうんです、経験していくと。でも人にとって憧れって大事だから、自分の憧れの気持ちとどう付き合っていくかっていうのが大事なのかなと。自分の中で憧れの気持ちを育て、どうキープしていくか。

斎藤:憧れの気持ちを失いたくないという。

高野:どちらかというと。斎藤さんは?

斎藤:僕も憧れていたいですよね。モチベーションになるじゃないですか。

鈴木:僕、憧れって存在があまりないんで。ないものに憧れるっていうのはありますよ。本編の裏でもかけてたけど、hiphopのアーティストって、声だけが勝負だから。それだけが個性になる。で、ZEEBRAさんとか、THA BLUE HERBのBOSS THE MCとか、あとNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのS-WORDとか。彼は日本人で唯一東京ドームでラップした男で。こういう自分にはぜったい出せない男の声っていうのを出せる男は、とにかく憧れますけど。自分の人生の目標になるような先にいる人として憧れる人がいるかっていうと、それはないんですよ。僕どっちかっていうと先行学習型なんで。自分の目の前にいる5歳、10歳くらい上の人の生き方を見て、そうか、こうやると失敗するのかっていうw そういうのを避けて避けて通るから。ろくな大人に出会ってないのかな。自分が憧れられるために何をしたらいいのかっていうのがすごい考えますけどね。
メール、『愛と幻想のファシズム』のトウジ、『コインロッカー・ベイビーズ』のキク。彼らは作者の中のヒーロー。
村上龍の作品について長いメールをいただいたんですけど、春樹さんと比べて言うと、彼がハードボイルド的なものに憧れているとすれば、龍さんは自分の中のヒーローを失わない人ですよね。

柳瀬:肉体的に形にしようっていう意志がありますよね。

鈴木:うんうん。あと『69 sixty nine』の妻夫木君。ある程度鍛えてはいるけど、あとIWGPでもヤクザの舎弟訳だったりして、いつも何かを目指してて、何かの途中にいる人。あれを描けるのはとてもいいのかなあと。
最後にじゃあこのメール、柳瀬さんが大好きです。低音ヴォイス。あんな素敵な声で囁かれたい!最初、チャーリーは気取った人かと思ったら意外とかわいい感じの人だった。そのギャップに一時期惚れてました。
俺ね、この番組やってて思ったけど、憧れられるとか貫禄を示すとかいうものには、一生なれないなw ムリだ。

高野:でもチャーリー好きって意見も来てたよね。

柳瀬:自分のは読まないっていうこの謙虚さね。

斎藤:大人ですよね。

鈴木:そんなところをよいしょされても困る。僕への憧れメールももらってますけど、大抵男子です。僕、昔も番組の感想見てたら、声がステキですねってメールは、大抵30代男子で。もしかすると俺ってむしろそっち系なんじゃないか。

斎藤:男からモテるってのが一番大事ですよ。

柳瀬:今日、ぜんぜん出てこなかったけど、たとえばブルース・リー。もともと女子の客なんていなかったんですよ。あと松田勇作。あれは男が萌える男だった。渋さで言うと僕なんかはあとはクリント・イーストウッド。アウトプットはその都度変わるんだけど、あのしぶとさ。彼ってスティーブ・マックイーンやジェームス・ディーンと同世代ですよね。1930年生まれ。ある意味で、青春スター、カリスマのアクションスターとして神格化された二人と、別の形で今まで行き続ける。あれはすげえなあと。イーストウッドは今でも圧倒的に男のお客さんだけど、何に憧れるかって、仕事に憧れてるんですよね。

鈴木:前回の「大人」とも重なるけど、寿命が延びてきて、「仕事」の人生に占める比率が高くなってくると、必然的に仕事で憧れる人っていうが重くなってくる。70代の俳優さんの人気が高いのと同じですよね。
男が憧れる男って話になると柳瀬さんが前のめりだw というわけでパート1はここまで。

MP3その5


鈴木:メール、憧れの男性は村上春樹の初期三部作の「ぼく」。男から見た春樹と女から見た春樹は違うと思う。
男から見た春樹って、ここに仲俣さんがいたら散々喋ると思うんですけど、仲俣さんみたいな人ですよ、僕からしたら。

柳瀬:鋭いなあw 仲俣さん聞いてますか?

鈴木:どうですか女子は。村上春樹の「ぼく」。

大西:私は苦手かなあ。

高野:それは出会ったときによるんだと思う。学生時代なのか社会人になってからなのか。もっと強いものが必要なときなのかそうじゃないのか。

鈴木:そうなんですよねー。印象に残ってるのは『AV女優』って本の中に、氷高小夜って女優さんが言ってたのは、村上春樹の書くセックスは「性交」だけど、村上龍の描くそれは「セックス」だと。

柳瀬:そうそう。彼女がストレートに、龍が好きで春樹はイヤだって話を書いてたんですよ。僕も小説としては春樹さんの方が好きですけど、そこを読んだときに、この子の感じ分かるわと。

鈴木:僕、氷高小夜大ファンだったんで。憧れの女性の時に名前が出てこなくてあげられなかったんですけど、大変お世話になりました。なんの話だw

柳瀬:でもあのインタビューは秀逸でしたよね。

鈴木:彼女のインテリジェンスをきちんと引き出してますよね。あれを名著にしているのは、AV女優達のそういう側面を引き出したところだと思う。
それからメール、僕が惚れる男はピッコロです。ナメック星人には性別はないけど、男気を感じるので。あとダイの大冒険でいうとヒュンケルやラーハルト。
分かるわ。分かるわじゃねえよ!俺しか反応できねえよ!アニキャラ、マンガのキャラでマニアックな方にいく人いますけど、その発想はなかったわ。

柳瀬:でもピッコロのキャラクターはさっき出したクリント・イーストウッドで言うと、初期のマカロニ・ウエスタンで、クリント・イーストウッドを育てる役を、リーバン・クリフがやってるんですね。『夕日のガンマン』の中で。最後は二人は対決しなきゃいけなくなるんですけど、ああいう敵になったりする奴、本当は付き合いたくない奴を蹴り飛ばしながら、そいつに憧れてしまうっていうのは何なんですかね。キャラクターとしては普遍的ですよね。

鈴木:こないだ話に出てたのは『鉄コン筋クリート』のネズミですよね。こういう人になりたいっていうよりは憧れかな。
理想の人物像なのですが、といっていただいたメール、15歳。戦国武将の真田幸村。
歴史小説ものの登場人物はありますよね。大分脚色されてるんでしょうけど。中高生だと一番通りますよ、男子は。

大西:女子でも通る人は通りますよ。

高野:たとえば?

大西:漫画化されたせいもありますけど、『花の慶次』の前田慶二。

斎藤:歌舞伎者w

鈴木:脚色のしかたによるのかなあ。

大西:新撰組とかね。

鈴木:ああ、脚色の方向がね。

柳瀬:ちょっと宝塚的な。

鈴木:つかこうへいさんの影響がありますよね、圧倒的に。ボーイッシュな女の子にやらせることでできたイメージ。

斎藤:滅びもありますもんね。

柳瀬:歴史物の萌えポイントは、実在の人物なのに滅んでいるところ。みんながそこにキュンとなる。あと平均年齢が低い時代に大人にならざるを得なくて、そこがぐっとくるんですかね。

鈴木:あと「不治の病」ですよ。歴史物で言うとそこが赤穂浪士との差ですよね。不治の病に冒されながらも歴史の荒波に立ち向かうというね。
それから次のメール、憧れの男性は知的に笑わせられるひと。人で言うと立川談志師匠。
メール、話芸の達人である入船亭扇橋師匠。場の空気が変わってしまう。
メール、笑福亭鶴瓶さん。面白いことが起きてそれをきちんと拾っていく。
お笑いと噺家さんは分けましょう。まず噺家さん。

柳瀬:笑福亭鶴瓶さんは、昔養老孟司さんとの対談を仕切らせていただいたことがあるんですが、すごいですね。落語の話をしてくれるんですけど、それがそのまま噺になっちゃうんですね。で、二人で生鶴瓶の落語を目の前で。あとでまとめるのに大変だったのは、養老さんがほとんど喋ってないというw
でもメールにもありますけど、彼がすごいのは、今日、局に入るまでにあった出来事で、ひとつ落語を作っちゃうんですね。これのすごさったらないんですけど、要するに観察力と見立てなんですよ。それができるだけのある種の知性がある。お笑いにしないといけないので、万人にうけるものにしないといけない。だから知性なんだけど、知識じゃないんですよ。知ってるから偉いというものじゃない。

鈴木:ちょっと来週のテーマ「教養」を先取りですね。

柳瀬:まさに本質的な教養のある人が憧れの人になるって部分で言うと、鶴瓶さんはホントに素敵な人。

鈴木:噺家さんは「タイガー&ドラゴン」以来、ブームが再燃してて。

柳瀬:噺家さんのある種の知性っていうのは、徹底的に訓練されたフォーマットと、新しい持ち込むところ。落語的な知性っていうは、養老さんの『バカの壁』のような、語りでできている新書のブームと通底している。あれは現代落語のひとつが生きずいてるんですよ。

鈴木:ああ確かに。タイトルですべてが分かって。

柳瀬:なおかつあれは話芸。文字化された話芸がたくさん出てきているのが今の新書ブームですよね。単純に今までの聞き書きと違うのは、その知性を理解したものが確実に売れているというところ。

鈴木:語りおろし本でいうと『国家の品格』とかね。あの人は喋りで稼ぐ人だから。

柳瀬:藤原さんも、誤解している人もいるけど、半分洒落でやってますよね。話芸として成立させているという意味ではきわめて落語的。さっき話し方とか声ってのがありましたけど、落語にポイントがあるっていうのは面白いなと思う。

鈴木:落語家も40、50近づいて貫禄が出てこないと。それを強く感じたのは林家正蔵さん。僕なんか圧倒的にこぶ平時代の方が長いわけですよ。でも襲名されてからすごい貫禄が出た。ああ、襲名っていうのはこういうことなのかと。名前をぼんぼんで背負って、ゴルフのCMやったり声優やってたりしても、きちんとやることやって、あのお年で襲名ができる。
それからお笑い男子。オリラジ慎吾君があがってましたけど、いまアイドル化してるじゃないですか。どうすか女子陣。

高野:あれは、憧れの対象が変わってきているということだと思う。ヒーロー的な人から、身近に感じる人にっていうのがあるからかな。

大西:あと、お笑い人気って、何かができる人がいいのかなと。

鈴木:二つ要素があると僕は思ってて、自分に近い人ですよね。80年代バンドブームから、90年代のアイドル追っかけっていうのがあって、今は下積みからずっと追いかけられる存在が、お笑いとジャニーズになってるんだと思うんですよ。僕はこの感覚、分かるような分からないような。男のアイドルファンでも、売れる前から目を付けてたよっていうのがあって。女性の場合でも、下積み時代から支えてたっていうのがステータスになると同時に、その登っているプロセスがいいっていう。だからメジャーにいったらまた小さい人を追いかけるって人もいるし。その近い存在ってのがお笑いになってる。それがお笑いにとっていいことだったかどうかは保留だけど。つまり、お笑いってのが、笑わせるエンターテイメントの外側の青春群像になっちゃうんで。
もうひとつ、冒頭で「かっこいい」と「かっこつける」って話をしましたけど、やっぱりかっこつける男子ってのが受け容れられてこなかった。かっこつけるの系譜が、ビジュアル系とかホストみたいな傍流、すごくハードコアにかっこつける方向に向かってしまう。で、男の子全体の傾向としては、きめきめにしないのがかっこいいということになった。そのかっこつけないかっこよさを体現してるのがお笑いなのかなと。
女性陣には「かっこつける」と「かっこいい」の差って僕は大事だと思うんだけど、どうなのかなって。

大西:正しいと思う。かっこつける男子でも努力が見えていいって人もいるしね。

鈴木:でもそれはかっこつけてかっこいいわけじゃなくて、

大西:姿勢がかっこいい。かっこつけないっていうのが行きすぎて、単にゆるい方向にいっちゃうのもどうかと。

鈴木:メールだと、最近の若者男子にもの申させて、周囲の男子が「年上がいい」っていう。甘えられるから。ダメです!男性は甘えん坊なのは分かってるけど、それを公言しちゃダメです!

大西:そうそう。男の人の少年性がいいってのがありまして、でも「俺って少年だから」っていうのはダメですね。少年の部分を大事にしているのはいいんですけど、それをムリにアピろうすると失敗するという。

柳瀬:面白いなと思うのは、女性は少年っぽい人が好きとはいうけど、マザコンは嫌いなんだよね。

鈴木:やー、マザコンと少年の間には大きな溝が。

柳瀬:でもそのアウトプットを間違ってる奴等はけっこういるよね。

大西:アウトプットの間違いってたとえば?

柳瀬:お前が演出する少年性ってただの甘ったれだろうっていう。それはマザコンに繋がる幼稚さでしかない。

大西:そう。

斎藤:大人げなさっていうのは巧く使わないと脆いんですよね。

鈴木:いまのトピックって一番、うちの黒幕にとって痛い話のような気がw じゃあちょっとだけ話題を広げると、憧れ男子と外れちゃうけど、女性に対する向き合い方として、息子になるか父親になるかってスタンスがあるじゃないですか。どっちでもいいんですけど、で、それは需要と供給の関係だったりするから。

柳瀬:あと「アニキ」ですよね。

鈴木:きた、お兄ちゃん。いやそれ違うよw

高野:聞きたかったのは、憧れって今日のテーマで、男性がどうしたら憧れられるかっていうのが大きかったけど、男子の側で、憧れを向けられたときに、どういう受け入れ態勢ができるか。それは相手に教養はできないですよね。そういう人たちに対応ができるか。

斎藤:それは大切な問題ですね。

柳瀬:じゃあ経験者に語っていただきましょう。

斎藤:男って突っ込まれると弱いじゃん。

柳瀬:攻めに強いが守りに弱い。

鈴木:守りに弱いから攻めてるわけですよ。

大西:攻撃は最大の防御的な。

斎藤:別にエッチな意味じゃなくてね。

鈴木:おい酔っぱらい。

斎藤:女の子がボケてる時に突っ込むのは強いんですよ。でも女の子から褒められたりとか、そういうのってどう対応していいかあたふたしてしまう。

鈴木:すでに斎藤さんがあたふたしてますけどw だいたいここにいる三人は、完全にあたふたきゃらですよね。

大西:でもあたふたしてるのが一番いいと思うよ。

鈴木:いや、あの、その、こうやってあたふたするんですけど。

高野:そういう思いって常にあるから、そこで人としての器を期待されちゃう。

鈴木:受け入れ態勢ね。でもそれだけじゃなくて、何を求めているのかをきちんと把握して、それに応えることができるかですよね。相手が受け容れたい人だったという前提でね。そういうお手本がないですよね。自分が受け容れたい人についてのお手本はあるけど、自分が好むと好まざるとに関わらず、こういう憧れとして見られましたっていうときに、どういうリアクションを取れるか。そのバイブルになるようなマンガ・小説・アニメって、聞いたことないですよね。すごく好きな人なんだけど、自分としてはプライドが高くてどうしても上に立ちたい。でも相手も母性的な人で、できれば私に甘えてほしいみたいな。そのミスマッチが生じたときに、自分にそういう部分があるって認められるか。

柳瀬:それで思ったのは、日本のメディアに出てるコンテンツって、憧れの男子と女性の構図っていうのは、そこを保ちながら終わらせないといけないと思われてて。でも実際はそうじゃない。アメリカ映画は違いますよね。たとえばヘップバーンでいうと、ローマの休日やシャレード。ローマの休日だと王女だし、シャレードだと未亡人。男女の歳が10歳以上離れている。世界で一番ヘップバーンを好きなのは日本の女性なんですよ。それは、王女という立場で、憧れられる男性がいるという構図。でもきちんと映画を見ると、ちゃんと恋愛関係になってるというか、一回は夜を共にしている。見せてないだけ。そこが日本人独特の距離感として読み替えている気がする。その需要のされ方に、男性の物語のひな形があるんだと思う。それはヒッチコックの影響があったからだと思う。

鈴木:憧れ男子っていうときに、男女関係の理想型がどういう形であり続けてきたか。今日は二つの軸があって、男女関係って話と、成長していく男の先にある、目標としての男が絡まっていて、今のは前者の話から

柳瀬:後者の話に転換していくというね。

鈴木:そのダイナミズムが面白いんだと思う。憧れ男子の究極系って話で言うと、メール、僕は宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を読むと、古谷実作品に通じる者を感じる。自己中でありながら誰かのためになりたいと思っている伊沢や前野に通じる。
そんな読み方してるのはお前だけだよ!
こう思われたいという醜い自意識を捨てて、人のために尽くせる人に憧れる。
もうひとつメール、夏目房之介先生。年取ったことを認めようって言ってる。ムリに若さを保つ努力をしなくていい。大人になりたいけど、世間の大人の多くは年齢を重ねることを否定して若さに固執してる。大人を楽しんでいる夏目先生は希望の光。若さがなくなれば終わりだっていうプレッシャーがあるけど、その一瞬じゃないとだめっていうのがあると思う。子どものままじゃ面白くない。
大人子ども問題ですか。憧れ男子になりたいって煩悩から脱したい!っていう。あと到達点というだけじゃなくて、いつまでも「生きていたい」ってことかな。すごく覚えてるのが、あれも二十歳の頃かな、バスに乗ってると、病院に行くおじいちゃんおばあちゃんバスに出くわして。で、じいちゃんばあちゃんの話をぼーっと聞いてて、自分が80とかになったときに、バスの中で世話話できるおじいちゃんになってたいなあ、どうやったらなれんだろう、それって今考えている成長とかいうものの大分先にある話だよな。憧れられる「人」って、生きていくことでしか培われないものなのかなと思いました。
すごい、あんなに馬鹿話したのに綺麗にまとまったぞ。

柳瀬:最後の老人でバスに乗るでいうと、僕のベスト憧れ男子は田中小実昌さんなんですよ。

大西:あー、「バスに乗って」ですよね。

柳瀬:最高ですよね。一人で旅行するのがつまらなくなった後で、ふらりと一人でバスに乗っている。あれを最後まで楽しめた田中さんのかっこよさったら、だてにチャンドラー訳してないですよ。彼こそハードボイルド。

鈴木:年相応の憧れが出てきて、どんどん遠くなっていきますけど、前も出たけどそうやって憧れているということが人間にとって一番大事なのかな。「憧れ男子」「憧れ女子」にだって、そんな深遠な意図があってやってたんだよ。

一同:そうだったのか。。。

鈴木:というわけで次回は「教養」。みなさんありがとうございました。
2007年03月16日(金) 10:33:29 Modified by life_wiki




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