「文化系大新年会 朝まで生Life Part2」

2007/1/1放送「文化系大新年会 朝まで生Life Part2」


出演:鈴木謙介、仲俣暁生、佐々木敦、斎藤哲也、柳瀬博一、津田大介(ゲスト)

※以下の発言まとめは、正確な番組での発言とは異なる場合があります。

MP3その3


鈴木:メール、RADWIMPS、共感を求めない自己愛。いいですね。
また電話が繋がっているそうです。もしもーし。

森山:もしもしー

鈴木:森山さんですね?まずなぜここにいないのか釈明していただきたい。

森山:一人くらい外から喋ってもいいかなーと思いまして。

鈴木:QJの編集が忙しいとかいうのはなしですよ。雑誌の世界に「年末進行」っていうのがあるの、僕知ってますからね。

森山:都内某所で、いま勝負の時間を送っております。

鈴木:えっとそれはー、あのー、あんまりー、プライベートな、、、

森山:あんまり広げないでいただきたい。

一同爆笑

鈴木:というわけで今日は事情があってご欠席という。夜遅くに済みません。

森山:聞いてましたよー

鈴木:聞いてたなら出てくださいよ!

佐々木:今から来ればいいじゃん。

鈴木:ウェルカムなんで。都内某所なら間に合うでしょ。で、お薦めなんですけど。

森山:セカイ系の話とは変わっちゃうんだけど、山田稔の『天野正随筆選』という。

鈴木:渋いなあ。

森山:10月に出たんですけど、電車の中でこれを読んで、その後いま人気の某舞台を見に行ったんですけど、なんか、その本の世界と舞台のあまりの世界観の次元の違いに悲しくなって。

鈴木:悲しくなったっていうのは、その舞台がつまり、、、

森山:いやもーいまシャンパン飲んでるんで。

鈴木:すごい飲んでる感じが伝わってるw

森山:そんなに刷ってる本じゃないんですよ、でもそこにあるどっしりとした感じがね、その後の舞台と、、、

佐々木:その舞台はなんなんだw

森山:ちょっと差し障りがw

鈴木:次の本は?

森山:荒川洋治「文芸時評という感想」。TBSでは森本さんの朝の番組でお馴染みの現代詩作家。この人が産経新聞の時評をまとめて、小林秀雄賞とかを取った本。僕も愛読している人で、回りくどい人が多い中で、誰にでも分かる言葉にしびれました。

鈴木:森山さんは言葉にしびれる人なんですね。次の本は。

森山:中島岳志さんの『中村屋のボーズ』。新宿の中村屋のカリーを作った、インドの革命家の話。

鈴木:大佛論壇賞も取った、僕といっこ違いの人。いま引っ張りだこの人。やっぱ渋いですねー。

森山:今年はあんまり読んでなかったなあと。仕事の合間で少しずつ読んだものから選びました。

鈴木:音楽では?

森山:衝撃だったのが、寺尾紗穂という若いシンガーソングライターとの出会い。多分一生聞き続けるんじゃないか。

鈴木:相変わらず熱いですねー。

森山:今年は熱くいこうかと。で、その人の「悲し日々」というアルバムから、「反骨の人」という曲を。東京都立大学が首都大学になるときに、反対した教授をモデルにした曲です。

〜曲〜

鈴木:寺尾紗穂、聞いていただいてるんですけど、確かにいい曲ですね。

森山:ユーミンみたいな、日本を代表するシンガーになるんじゃないかと。

鈴木:ホントに推してますね。

森山:大林宣彦の映画の主題歌にも抜擢されたそうです。

鈴木:おお、じゃあ2007年は大注目ですね。

森山:そうですね。

鈴木:今日は遅い時間にありがとうございました。なんかこの後「勝負」があるんですね。

森山:ほんと皆さんも、聞いてますんで頑張ってください。

鈴木:ホントね、次回来たら覚えてろ。どうもありがとうございましたー。

森山:どうもー。

鈴木:という森山さんだったんですけど。あてられるというかいいかげんにしろというか。

斎藤:おいしいですよねー。

佐々木:全部想像ですけどね。

鈴木:あ、ひとりでいるかもしれないんだ。

佐々木:邪推も甚だしいみたいな。

津田:ひとりでシャンパン開けててもかなり切ないですけどね。

鈴木:その可能性もあったか。メール、ラジオ聴いてます。2006年のベストは、講談社文芸文庫から出た「蝶が飛ぶ葉っぱが飛ぶ」。本を読んで宇宙を感じた。
メール、私のベストは「三日で運が上がるお掃除力」。捨てまくるというのが基本なので文化系には辛いかも。

斎藤:お掃除については、柳瀬さんに語らせるとすごいですよ。こないだいっぱい語ってくれたじゃないですか。

柳瀬:いやーお掃除は思想ですよね。

一同:えー!

柳瀬:お掃除っていうのは、一番分かりやすい、何かをなした気になれるものなんですよ。お掃除の話でよく出てくるのは経営者の話なんですけど、レストランだとかコンビニだとか、チェーン系の店で必ず言われるのは、トイレを必ずきれいにしろと。で、社長自らやるっていうのが伸びる会社なんですよね。トイレをきれいにするのが一番お客さんに近いところであり、達成感があるところなんですよ。そこが掃除力の一番分かりやすいところ。
この種のもの、環境問題の先生なんかに聞いても、一番きくのはゴミ拾いをさせること。強烈なんですね。ビフォーアフターがあんなに見えるものないんですよ。色んな意味で政治的であり、イデオロギー的にきくんです。牽強付会に言っちゃうと、ナチ的にきこえるくらい、ものをきれいにするっていうのはきくんです。ものが溢れているときに、掃除をしようってメッセージがきくっていうのは、非常に今だなと。

鈴木:昔は情報をどう足していくかだったけど、今は引き算の話になっている。

柳瀬:『捨てる技術』あたりからずっときてる話ね。人間が接種できて解釈できる情報のサイズから明らかにオーバーフローした状態から整理するには捨てるしかない。それはファクトだと思うんです。

鈴木:さっきネットの話をするっつってしてないんですけど、津田さん、情報を引くってことで言うと、SNSとか、友達関係を引くってことがずっと問題になってましたよね。誰を友達に入れるか・はずすか。あんなのも情報の整理と関わってるんですかね。

津田:マイミクだけれど友達未満みたいな人がいたり、色んなことを思うことは多くなった。日記も公開する範囲を選べると、友達にはかけるけど、そうじゃない人には伝えたくないみたいなのがあったり。そこを考えなしに全体公開しちゃったら炎上しちゃったり。その辺面白いよなと。
柳瀬さんの話で思ったのは、お掃除が受けるってことで、ウェブ進化論の話にも繋がってくるんだけど、お掃除は確かにうけると。でも、ウェブ2.0とかグーグルとかの時代になったら、そんなの機械に全部任せればいいんじゃないの?っていうのが、ウェブ進化論のひとつの骨子。そのお掃除って、目に見えるレベルのものしかできない。ネットの情報って幾何級数的に大きすぎるから、そうすると整理すらできない。でも毎日情報が入ってくる。フィルタリングができる人はいいけど、できないひとはどうするかっていうと、グーグル先生がやってくれますとか、タグ付けとか、協調フィルタリング(Amazonのおすすめ)とかである程度幸せになれるんじゃないの?っていう。そこで失われるものもあるかもしれないけど。

鈴木:今後、情報を整理していくって話で、引かれたものに大事なものがあったんじゃないかっていうのは、よく考えてみたら、アナログからデジタルに変わるときに音楽で言ってた話だよね。

柳瀬:あえて釘を一つ刺しておくと、音楽の話と徹底的に違うのは、自分の関わる肉体性が消えていくんですよね。実際に体を動かすことの快感、不快っていうのはある。

佐々木:それ分かるわ。こないだ10年ぶりくらいに事務所の掃除をしたんだけど、机が周りがものすごくきれいに。

柳瀬:私もおとといやったんですけど、達成感ありますよねー。

鈴木:いいのかこんなオヤジ化したLifeで。メール、お薦めの本、『東京タワー』。バカにしてたんだけど、よく考えて読んだら泣いた。
メール、『失恋論』。奇妙な本だけど、あまりの真剣さに釣られてしまう。
メール、浅野いにおの『虹が原ホログラフ』、別のメールで『ソラニン』。就職活動してて内定がもらえた日、Lifeが始まる。
就職は2006年大きく変わった問題だったね。昔からひとつの通過儀礼としての部分はあったけど、それすらもらえなかった世代が上にたまってる時代に、どうなんだっていう。
交通情報の時間です。

〜交通情報〜

鈴木:就職問題って話題になったけど、斎藤さん、あなたのフィールドですよ。2006年、フリーター、ニート問題が大きくなって、どう見てました。

斎藤:景気がよくなって、就職状況が改善されたじゃないですか。

鈴木:高卒でも大卒でもだいぶよくなったみたいですね。

斎藤:その中で気になったのは、専門学校の人気が下がってしまった。

鈴木:資格取ったりするようなのも含めて。

斎藤:中でも情報処理とかが人気が下がっていて、そこを全部大学が吸収して、資格予備校化しちゃってるんです。

鈴木:だったら大学進んだ方がいいじゃんという。

斎藤:採用の話とはずれるけど、ちょっと気になるなと。

鈴木:僕も大学の就職情報とか見ますけど、情報とか、福祉の資格とかはすごい人気があって、人が足りないんだけど、学生が集まるからってことで募集してる。大学に行って、資格を取って、ついでに大卒の資格も手にはいるという。ただ、大学全入時代になると、大卒っていうだけでは、っていうね。

斎藤:大学ってテーマもやりたいですよね。

鈴木:大学は、僕を除いてこの番組高学歴な番組だからなあ。就職問題から派生して、教育問題に波及して、若い奴は農村に行かせろとか、どこの文化大革命ですかみたいな話が飛び出したりとか、さっきの話じゃないけど、子供なんか体で叩き込めみたいな。13歳とかの時点で、どうやって稼いでいくか、カタログの中から決めなさいみたいな。それ自体が果たしてどうなんだっていう。文化系っていうくくり自体がモラトリアム。それが13歳で終わっちゃう。

津田:ませてるなあって思いますよね。僕の個人的な体験で、お受験雑誌とか売れてるんですけど、そういうところで将来、どういう職業につくのかっていうのでインタビューを受けたことがあった。あと中学生が学校のレポートで音楽業界ってどうなのかというのを、僕の本を読んで書いてきて、取材して欲しいって。僕のところに話を聞きに来た。

鈴木:僕の周りでもそういう話けっこう聞きます。なんかモラトリアムが前倒しされてるなあと。

斎藤:授業に職業見学があるんですよね。

柳瀬:ネットみたいなオールメディア化の弊害っていうか、先にそんな情報なかったじゃないですか。

鈴木:「大人になる」っていうのもテーマになるかもしれないですね。メール、2006年のベスト、クラムボンのカバーアルバムから、岡村靖幸の『カルアミルク』のカバー。岡村ちゃんこそ永遠のモラトリアム。

MP3その4


鈴木:それぞれのお薦め。斎藤さん、書籍をどうぞ。

斎藤:苅部直『丸山真男』、『ヤバい経済学』、『「精神分析的子ども」の誕生』、イッセー尾形の「人生コーチング」。最後は僕が渾身の一冊として編集した本。ここで紹介したいのは『「精神分析的子ども」の誕生』

鈴木:『子供の誕生』って本がありますよね。子どもって概念は、近代に入ってからできたものだっていう。それに近い?

斎藤:近いっていうと怒られそうだけど。若い研究者の人を探して紹介したいんですけど、この著者の人も僕と同じくらいで、博士論文を元にした本。高い。8300円。何部刷ってるんだろう。

柳瀬:一回そういう値付けの本作ってみたいw

鈴木:8300円はきますねえ。

斎藤:献本していただいたんで。裏のテーマとしては「心の教育」批判だと思うんですね。

鈴木:ああ。最近は教育言説として「心を大事に」みたいなのってどうなんだって言われてますね。

斎藤:で、その系譜を辿っていくとフロイトにたどり着くんじゃないかっていう。でもフロイトが子どもを心の枠組みで理解していくべきだなんて言ってたわけじゃない。なのにいつの間にかそうなってしまった。それはどうしてなんだろうっていう本。

鈴木:知的好奇心をそそられますね。8300円出せる方は是非。次は柳瀬さん。

柳瀬:鈴木忠『クマムシ?!』、『憂鬱なハスビーン』、『ヨコハマ買い出し紀行』。科学読み物、小説、マンガ。

鈴木:柳瀬さんとマンガって言うのもなんか意外ですね。

柳瀬:じゃあその話をしましょうか。この本っていうのは知ってる人は知ってるマンガで。今日持ってきたのは個人的に関係のある本。『クマムシ?!』っていうのは、僕の出た大学の人が、校内で見つけたクマムシを研究した本。よくできた生き物読み物。『憂鬱なハスビーン』は勤めてる会社の後輩。リアルに仕事をしてる人たちの話。会社の世界が大きくなってるのに、リアルな仕事の中で起きていることを書いた小説がない。浅田哲也の博打の話とかね。で、これは今のキャリアウーマンの話を書いてて伸びるんじゃないか。

鈴木:『働きマン』とかもありましたしね。

柳瀬:最後が人型ロボットの近未来の話。地球温暖化で文明が衰退している時期を、ロボットと人間の日常生活として書いている。セカイ系といえばセカイ系だけど。12年かけて、ロボット以外の人間が年を取っている。それを淡々とした形で語っているのが気持ちのいいマンガ。もともと読んだのは、主人公の住んでいる場所が、環境保護運動に関わってたんだけど、そのエリアなんですよ。マンガ家の人も三浦から横浜にかけての地理をよく知ってる地元の人なんですよね。

佐々木:絵柄からは想像できないよね。

柳瀬:決して好きな絵柄ではないですけどね。でも12年で14冊しか出てないんですよ。

佐々木:そのくらいなら大人買いして読むしかないですよね。

鈴木:年を取っていくって問題は大きいですよね。僕、お薦めにするかどうか悩んで、持ってきたのが森美登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』。うる星やつらっぽいドタバタ小説で、妄想系の男の子が不思議ちゃんを追いかけるっていう。京都が舞台で、具体的な地名が多い。地元を書く小説家ってのが最近増えてて、そうすると、うる星やつらの舞台の友引町みたいな匿名の街だったら、永遠に時間がループしてても許されるんだけど、京都って言った瞬間に、何年には今の新駅舎がなかったとかいうことになる。具体的に年を取っていくっていう街の中で、永遠に終わらないドタバタをやっていると、いつかは成長の問題に突き当たらないといけなくなる。そういう成長の痛みの分かる終わらない日常の中のセカイ系っていうのが僕の読み方。僕らはここから成長しないといけないんだっていうことを分かるために、あえて具体的な地名を出してるんじゃないか。
仲俣さんも一冊しか出してないですね。

仲俣:今言ってくれた地方都市と成長というのは桜庭もそうですね。あと古川日出男さんの『僕たちは歩かない』。東京が舞台なんですけど、Lifeって番組をやってることもあって。26時間ある東京の話で、シェフ予備軍をモチーフにしている。オチがあるから言えないんだけど、村上の羊男がどうなったのって話に決着を付けようとしている。ホントは2006年の『すばる』に載ったものが面白いんだけどね。あとどうしても紹介したかったのは『わにとかげぎす』。「友達」がテーマ。友達のいない32歳の警備員が主人公で。コミュニケーションの問題が出てたけど、コミュニケーションが成り立たないからといって、人のことを考えないでいいわけではない。希望がありますよね。これは最後まで行くんじゃないかな。

鈴木:僕は『ヒミズ』も『シガテラ』も、あれしか終わりようがなかったと思っていて。逆にアレを書いたからこそ、今の「幸せになりそうな感じ」にはブレーキかけちゃう。幸せになりそうだって思うと、いつか落ちるはずだって思っちゃう。古谷って人はそれを書いていく人だと思う。

佐々木:柳瀬さん「わにとかげぎす」を見たことがあるとか。

柳瀬:これって魚の名前なんですよ。

鈴木:ヒミズがモグラでシガテラがフグの毒ですよね。

柳瀬:僕、ダイビングで見たことがあるんだけど、面妖な顔をした深海魚系の魚なんですよ。古谷の動物系タイトルシリーズですよね。

鈴木:マンガだと他はどうでしょう。僕は圧倒的にボーイズ・オン・ザ・ランなんですけど。『ルサンチマン』って非モテマンガがあって、リアルの女の子に向かう誠実さに惹かれた。

佐々木:マンガ世界的には『デトロイト・メタル・シティ』でしょ。この番組のプロデューサーが主人公なんじゃないかっていう。

一同爆笑

鈴木:実はあの格好で夜な夜な繰り出してるんじゃないか。サブカルブームだけど、2ちゃん的なコピペにもなるもの、久しぶりに来ましたね。

佐々木:渋谷系10年っていうのと関係してますよね。

鈴木:あとは、津田さん。

津田:本を持ってきたんですけど、IT関係の本。『ウェブ進化論』と『ヤバいぜっ!デジタル日本』。どっちも解説書ではある。ウェブ進化論とか40代50代に読まれてる。現場の開発の人とかが上に説明してもよく分からないときに、上司の人に渡して読んでもらう。ようやく理解してもらえるとか。高城さんの本も、国会の知財系の上の人たちが蒙を啓かれる本。最先端ではどういうことが起きているかという。
でも僕は違った感想を持ってて、どっちも思想書だと思ってる。裏のテーマっていうのが、既得権益を守る人たちは、新しいことを妨害しかしない。だからエスタブリッシュメント、ファック!っていう。

鈴木:僕まったく逆の感想を持ったんですよ。既得権益、会社の上の人っていうのを「こちら側」って読んでる。「あちら側」が楽しそうだから、お金投資すると楽しいですよ、という宣伝本だと思った。

津田:僕の個人的な印象だけど、そこは梅田さんは諦めてると思う。社会が変わるのには15年は必要。上の世代との断絶を分かった上で、そこはあえて解説書にしていると思う。

柳瀬:僕も梅田さんとは仕事したことあるんだけど、彼らをずっと見てて、彼ら自身がその狭間で苦労したり得したりしてきた。だから二人とも内容が重層構造化しているんだと思うんですよ。どっちにも読めますよっていうのがヒットに結びついた。

鈴木:経営者が読んでも開発の人が読んでも、自分に引きつけて読めちゃうっていう。

柳瀬:あの二人はいい意味でポジショントークしてる。その二枚腰の、腰が強い。彼らはビジネスマンなんですよ。

佐々木:最近梅田さんが平野啓一郎と『ウェブ人間論』って出したじゃないですか。あれを読んでると、一読者としては梅田さんの言説は、意図的に楽観的になってると思う。反発する人も賛成する人もいると思うけど。

津田:梅田本を解説書だと思って細かいところに突っ込みを入れる人もいるけど、思想書だと思えば、書き方の問題。

柳瀬:思想書というかオルグですよね。

津田:ネット時代の共産党宣言なんですよ。

鈴木:そこまで言い切るか。

仲俣:あれのヒットを支えた層は、顕教と密教みたいに二つあって、たくさん買った人は、ビジネスでも思想でもなくて、ロングテールの人として安心した人。でもそれは読み方として一番違う部分ですよね。

鈴木:ベストセラーってそういうものですよね。ネットは2006年を彩ったな。メール、リクエスト。チェッカーズの「レボリューション2007」。聞いてください。

MP3その5


鈴木:時刻は三時半を回って、寝かけている人もいるという噂。メール、映画のベスト、『ゆれる』。西川監督の脚本が素晴らしい。『ゆれる』にはもう一通。『ヘビイチゴ』のときから注目していたが、今回はよかった。
話題になりましたよねーって話を誰に振ればいいんだ。誰も見てないのか。

佐々木:映画美学校が生んだ才能ですよね。

鈴木:テイストとしてはこれまでの日本映画をきちんと踏襲してるんだけど、見た後の感じは斬新でしたね。
メール、『地下鉄に乗って』。協賛会社の製品が随所に登場したせいで台無し、、、
ありますよねこういうのは。

柳瀬:プロダクトリプレースメントっていう。

鈴木:この話でいうと、2007年お薦め。初回のテーマが「バブル」だったんですけど、ホイチョイが久しぶりに映画を作りまして、『バブルへGO!』。広末涼子が1991年に戻ってバブル崩壊を食い止めるっていう。

斎藤:セカイ系ですかそれはw

鈴木:今度出る『STUDIO VOICE』で鼎談してるんです。91年当時に出た清涼飲料とかの缶を再現してるんですよね。当時を知っている人には、ああそうかもっていうのと、あれ違うかもっていうのが絶妙なバランスで入ってます。タイムスリップものが多かった06年ですけど、時代を感じるものが今度は出てくるんじゃないか。バブルというか、この番組の言葉で言うと「バブリー」ですね。Lifeは先取りしてた?

柳瀬:当時の女子の眉毛と肩パッドをどこまで再現したか見物ですね。

鈴木:メール、75本見た中で、「サラバンド」、「ホテル・ルワンダ」、「クラッシュ」。ホテル・ルワンダのmixiでの公開運動で知己が広がった。社会派ムービーもあったね。今かかってるのはボニーピンクってことは、嫌われ松子ですか。

佐々木:社会派ではないですね。

鈴木:TBS的には、、、あんまりいわないようにw海外の映画では社会派多かったね。

柳瀬:クリント・イーストウッドの今の2本とか。

佐々木:その前のミリオン・ダラー・ベイビーとか。

鈴木:ミリオン・ダラー・ベイビーでいえば安倍晋三ですか。あと気になったのは「マンダレイ」かな。ラース・フォン・トリアーが「ドッグヴィル」に続いて作ったアメリカ三部作の第二弾。

佐々木:そんなにアメリカ嫌いかっていう。

鈴木:面白いのが、ネットの批評とか見てても、ドッグヴィルは田舎の村、マンダレイは黒人奴隷と民主主義。みんな主人公のグレースが行く先にアメリカがあると思ってるみたいんだけど、グレース自身がアメリカでしょ、と。グレース自身が、宗教的なコミュニティの徳の問題とか、民主主義で、みんなで決めようっていう理想論と、アメリカの現実とのぶつかりなのかなと。ラース・フォン・トリアーはアメリカ行ったことないらしいんですけどね。
メール、『スティービー』。アメリカのビッグ・ブラザー制度。日本でも少年の凶悪犯罪とか注目されましたけど、あまり映画にならないですね。

柳瀬:実際にリアルに起きている話が小説になってないと思うのは、チーマーの話とかなんですよね。ウォーリアーズ的な。

佐々木:IWGPとかね。

柳瀬:テイクアンドギブ・ニーズの社長の野尻さんなんかは、チーマーの元祖なんですよね。彼のいたチームの周辺に、いま芸能界にいる人たちが何人もいて、彼に小説書かせると面白いだろうなっていう。マンガではあるんだけど、うまくできてないんですよね。『TOKYO TRIBE』くらいかな。小説とかノンフィクションでもない。

鈴木:経済小説とも絡むのかな。ライブドア絡みのルポとか、「闇の勢力」とかって言葉も流行りましたけど。あと『夜のオンナはいくら稼ぐ』とか、昔別冊宝島がやってた裏ものが本としていっぱい出ましたよね。
一本、映画のプレゼント告知。黒沢清の最新作『叫』。佐々木さん、どういう映画ですか?

佐々木:葉月里緒奈が怖い映画です。ホラーといえばホラー、社会派といえば社会派。くせものですがかなり面白いです。

鈴木:というわけでメールで応募してください。〆切は1月3日いっぱい。曲にいきましょう。ニール・ヤングで「After the Garden」。アメリカの動向も注目ですよね。

〜曲〜

鈴木:時刻は四時が見えてくる時間。ビールがいっぱい空いてますね。柳瀬さんが日本酒を開けようとしてるー。色々話してきたけど、話したりなかったところどう?

津田:教育って大事な問題ですよね。ITと教育とか。

鈴木:リテラシーの問題とか。どこまで教えたらいいのかとか。

津田:PowerPointの使い方くらいですもんね。

鈴木:A、B、Cってあって、Aがホームページの作り方とか、Bがネットワークの基礎、Cが計算機みたいなことをやる。これが高校で、どれかが必修になってるはず。あといじめが外にしみ出す問題と情報は絡んでるし。

佐々木:今までよく出てきたけど、「運動」ね。68年ブームでしょ。運動的なものの有効性を問うみたいな。

鈴木:津田さんがいらしていた前回に、世代の三年違いで、そこに期待が持てるか持てないかってのがありましたね。

津田:ネットを使えば、運動もスマートにできるんじゃないかって期待があるんですよ。あと最近の言葉で言えばCGMとかを使って、これにどこまで可能性があるのかって議論も尽くされていない。今年はそれが強大になっていくと思う。

鈴木:ネットのいい面も悪い面も注目された。PSE、著作権、オリコン。全部津田さんが関わってますね。

津田:ウェブ時代の言論の自由、表現の自由ってなんだろうっていうのも聞きたいですね。

鈴木:あとモテ問題。この番組のこの女っ気のなさはなんなんだっていう。女人禁制なのかこの番組は。なぜ我々はこんなに女性と話せないのか問題。

一同大爆笑

鈴木:みんな笑ってるけど、俺とかまじ無理だから。一時期俺以外のゲストをみんな女性にしようとかって提案があったけど、そんなことされたらホントに喋れないから。

柳瀬:一人ずつ女子に入れ替えていくのはどうだろう。

鈴木:耐性付けないとね。

津田:サブパーソナリティが女装してくってのはどうですか。

鈴木:それ違う趣旨!

柳瀬:ラジオじゃ見えないし!

鈴木:ここで交通情報。

〜交通情報〜

鈴木:サブパーソナリティはみんな飲んでるんですけど、僕は一滴も飲んでません。お水をペットボトルで3センチくらい飲んだだけ。ドライバーの皆さんも安全運転でお願いします。
深夜の生放送は初めてだったんですけど、眠りかけてた仲俣さんどうですか。

仲俣:いや目が覚めました。

鈴木:どのへんで?

仲俣:どのへんですかねー。

鈴木:寝てたんじゃん!

佐々木:じゃあこのあとPodcasting用の奴録りますか。

鈴木:いやもう絶対やだ。10月からスタートした本当に素人だけの喋り番組をなぜ俺が一人で3時間も仕切ったのだっていう。
メールもたくさんきました。メール、家に引きこもっててYouTube中毒だった。津田さん?

津田:YouTubeは話題になりましたよね。

鈴木:合法のものでも結構話題を呼んだものもありますよね。

津田:え?

鈴木:えっていわないwプライベートな日記の人がプロフィール詐称してたとかってのがアメリカであったし。

津田:あとメントスとペプシコーラとか。

鈴木:混ぜると噴き上がる奴ね。映像が共有されていくというのも新しかったな。

津田:金稼ぐシステムさえできればね、やっぱり全然違ってくる。

佐々木:MTVで公開とかしてるもんね。

鈴木:海外ではABCが提携したり、注目されてるんだけど、日本だとさっきのウェブ進化論問題じゃないけど、この国だと偉い人が認めてくれないと先に進めない。遅れちゃうって危機感を持っている人はアメリカに流出しちゃう。でも若い人だけのわがままだけで話が通るほど世の中簡単じゃないし。

津田:だからウェブ進化論は静かに革命を起こそうっていう思想書なんですよ。

鈴木:津田大介への影響は大きかったという。

佐々木:今後の革命の担い手として。

鈴木:実際、革命起こしかけてるんじゃないかっていう。今年は津田さん一番活躍しましたよね。

津田:そうですかね。

鈴木:朝日新聞に名前出てましたよー。

津田:オリコンのプレスリリースで、僕のブログも「一部報道」扱いされたし。

鈴木:ブログもね、今後は報道の世界に入ってきますよね。最初宮台さんと話したときに、90年代からの繰り返しってのもいわれてたけど、2006年から始まったこともあると思うんで、そういうことで昔を知ってる人が話せることがあれば、話していければいいなと思います。
次回のテーマは「ラジオ」。そもそもLifeがラジオでやってることってどうなんだっていう、そういうのも話せればなと。
2007年01月05日(金) 09:51:48 Modified by life_wiki




スマートフォン版で見る