Wiki内検索
メニューバーA
タグ
11-471 28-206 28-342 28-519 304 428 458 47 532 6-502 913 aa gbhs4w75 mspuqpiv pluto ピチピチ ◆1gx5q3ma8y ◆34ietljps6 ◆6gzt0d6rrc ◆8giervnano ◆9oq0gi8lfs ◆gtd5kcksn. ◆jhf0qdqssc ◆k1m2.fa0dm ◆nna2fui0zk ◆okpddn8iwc すいもう すずか すずか×アリサ なのは なのは×ティアナ なのは×フェイト なのはフェイトの娘 はやて はやて×すずか はやて×カリム アギト アクエリアス アリサ アリサ×すずか アリシア アルキメデス アルフ ウーノ ウェンディ エイミィ エリオ エロ オットー カリム キャロ キャロ×フェイト ギンガ ギンガ×フェイト クアットロ シグナム シグナム×ティアナ シャーリー シャッハ シャマル シャマル×キャロ スバル スピノザ セイン セッテ チンク ティアナ ティアナ×なのは ディード ディエチ デバイス トーレ トーレ×セッテ ドゥーエ ドクター ナカジマ家 ナンバーズ ノーヴェ バルディッシュ フェイト フェイト×なのは フェイト×ギンガ プレシア ヤンデレ ユーノ ユーノ×ロッサ ヨン◆h7y.esozi リインツヴァイ リイン初代 リンディ ルーテシア レイジングハート レティ ロッサ ヴィータ ヴィヴィオ ヴィヴィオ×なのは 或る捜査官 恭也 空気ブレイカー 高町家 鮫島 士郎 紫水 自作絵 修学旅行 宵月 八神家 非エロ 美由希 落ちはまだ未定 薔薇
最新コメント
最近更新したページ
フリーエリア

きせかえヴィータ

268 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/08/04(月) 13:37:56 ID:yg3yIWn1

流れぶった切りで申し訳ないが、ヴィータ分補給のため自家発電したので投下してみます。
時系列はA's終了してから少し後。
非エロ、微百合ですが・・・


『きせかえヴィータ』
休日の朝。
「げほっ!・・・ごほっ・・・ん」
高町家の朝食の席にて派手な咳をしているのは、恭也だった。
「あらら、恭ちゃんが風邪なんて珍しいね」
「うむ・・・体調管理は万全のつもりなんだが・・・どうやら忍のインフルエンザをもらってしまったみたいだ」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「大丈・・・げほっ!!」
ひときわ派手な咳を放ち、鼻をずずっとすする。
のろのろと朝食に手をつけてはいるものの食欲がないのは明らかだった。
いつもの刃物のように鋭い視線は、今は微妙に焦点が合っていない。
どう贔屓目に見てもかなり具合が悪そうだ。
「恭ちゃん、ご飯食べ終わったら寝てなよ。今、体温計とってくるよ」
「いや、そうはいかない。翠屋に・・・今日は父さんも母さんも・・・ごほっごほん」
なのはには恭也が何を言おうとしているのかは察しがついた。
高町家の両親は海鳴商店街の福引で当たった旅行に出かけている最中だった。
昼ごろに帰ってくる予定のため、今日の翠屋の開店準備は恭也と美由希に任されていた。
人一倍責任感の強い兄のことだ。
ほおって置けば這ってでも翠屋に行くに違いない。
そして人一倍高い体力と人一倍強い精神力で任された仕事をやってのけ、風邪を悪化させる・・・。
そんな悪循環が、なのはと美由希の目に即座に浮かんだ。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんの言うとおり、今日は寝てたほうが良いよ。代わりに私が手伝いにいくから・・・ね?」
体温計を口にくわえた恭也がもそもそと反論するが、頭が回っていないのかろくに言葉を紡げない。
「もご・・いや、そういうわけにも・・・ぷっ」
「あっちゃ〜39度もあるよ。かんっぜんにインフルエンザだね〜」
美由希は体温計を引っこ抜くと大げさな身振りで反論を遮る。
「恭ちゃん、ベッドへGOだよ。ウチは飲食店なんだから従業員が病気ってのはタブーだからね。別に絶望的に人手が足りないわけじゃないんだしさ」
「そうそう、お兄ちゃんは普段がんばりすぎだから、今日一日くらい寝たほうがいいよ」
「うむ・・・それも・・・そうか」
体のだるさに負けたのか、恭也はあっさり折れた。
「それじゃあ悪いが、今日は美由希となのはに任せるよ」
「うん、任せといて」
「私もがんばるよ」
言い終えると、恭也はふらふらとした足取りで自室に向かう。
「じゃあ私は恭ちゃんにお昼のおかゆ作ってから行くからさ、なのはは先に行っといて」
「うん、わかったよ」
美由希が投げてよこした翠屋の鍵をキャッチして、なのはは玄関に向かった。



269 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/08/04(月) 13:41:28 ID:yg3yIWn1

『きせかえヴィータ』2

「あ、なのはちゃん、おはよ〜」
翠屋に向かうなのはに声をかけたのは、はやてだった。
「はやてちゃん、おはよ〜。朝のお散歩?」
「うん、リハビリがてらにな。もう大分良おなったよ」
はやては軽く自分の太ももを叩くと小走りでなのはの周りをくるり。
「走っても全然平気やし、このままオリンピックも目指せる勢いやで」
こぶしを強く握り瞳の奥に炎を灯すはやて。
ボケなんだろうか、本気なんだろうか。
いずれにせよはやての足が快方に向かっているのはいいことだと思った。
「・・・いや、ツッこんでえな、なのはちゃん。それはいきすぎやろ〜って」
やっぱりボケだったのか。
「あはは・・・、ツッコミはアリサちゃんの専売だし・・・」
曖昧に笑ってごまかすなのは。
「あかんなあ、そんなんじゃあ関西では生きて行かれへんで。ところでなのはちゃんはどこ行くのん?」
「翠屋だよ。実はお兄ちゃんがね・・・」
「へぇ〜、恭也さんが風邪なんて珍しいなぁ」
「そうなの〜」
「よっしゃ、ほな夜天の主、はやて様が一肌脱いだろ!私も手伝いに行くわ」
「え!?いいの?」
「えぇよ〜、今日は特に予定もあらへんからな」
笑顔で向き合う二人。
「ありがと、はやてちゃん・・・いたっ!」
民家の前を横切ろうとしたとき突然門から出てきた人物にぶつかり、なのはは尻餅をついた。
「大丈夫?なのはちゃん」
「ぅう〜いたた・・・ごめんなさ・・・ヴィータちゃん?」




270 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/08/04(月) 13:43:13 ID:yg3yIWn1

『きせかえヴィータ』3

「お、はやてとなにょはじゃん。何やってんだ?こんなとこに座り込んで」
意地悪そうな微笑を浮かべなのはを見下ろす。
「ヴィ〜タ〜、その前に、人にぶつかったら言うことがあるやろ〜?」
「ちぇっ・・・悪かったな、なのは」
「ん、いいよ。私も前方不注意だったし」
「で、ヴィータのほうこそ何してるん?今日は早朝ゲートボール大会や言うてなかった?」
ヴィータが出てきた門にかかった表札を見る。
『山根』。
はやての知らない名前だった。
「それがさ〜開始早々、山根のじーちゃんが腰をやっちまってさ〜、丁度家まで運んでやったとこ」
小憎らしい口を利きながらも老人の世話を焼く。
そんなヴィータの優しい一面を垣間見て、その主はにっこりと笑った。
「あら、そやったの。大会のほうは?」
「大会の会長がイチ抜けしたから中止になった。それにしても年寄りってのは何でこんなに朝が早いんだ・・・」
付き合うこっちの身にもなれ、と猫のようなあくびをしながら言った。
「ふぅ〜ん、ほなヴィータは暇なんやな?」
「ん、ま〜なぁ〜」
「実は翠屋がかくかくしかじかでな・・・」
「へぇ〜なのはんとこの兄貴も風邪引くんだな〜」
「というわけでヴィータも手伝いにきい」
「えぇ〜?めんど・・・」
面倒くさい。
その台詞を言い切る前に、ヴィータの脳裏に翠屋のケーキが舞い踊る。
そういえばしばらくイチゴショート食べてないな。
生クリームに彩られたあの赤いつぼみ、考えただけで甘酸っぱい香りが広がる・・・。
あ〜チョコケーキも良いな〜、忘れちゃいけないのがモンブラン。
小ぶりだけどアイツにしかない深い甘みがあるんだよな、うん。
なにょはを手伝って恩を売れば、あわよくばケーキにたどり着けるかもしれない。
ダメだったらはやてにおねだりしてみるか・・・。
そんな邪な打算を一瞬で終えると、
「しょーがねーな。アタシも行ってやるよ、二人だけじゃ不安だからな」
「ヴィータちゃん、ありがと」
「お、おう・・・、ま、ど〜せひまだしな」
純真ななのはの言葉に多少の後ろめたさを感じながら、ヴィータは翠屋に向かうのだった。




271 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/08/04(月) 13:45:42 ID:yg3yIWn1

『きせかえヴィータ』4

二時間後、翠屋の開店準備は順調に進んでいた。
厨房にはなのはとはやて。
ヴィータは表の歩道とテラスの掃除を終えて店内に戻るところだった。
「なのは、表は終わったぞ」
「こっちの下ごしらえも出来たで」
「うん、じゃあ次は・・・」
自分の作業を滞りなく進めながらもはやてとヴィータの作業状況を把握し、てきぱきと指示を出すなのは。
複数作業の同時進行、こんなところでも砲撃や射撃の誘導操作を得意とする魔導師の能力が見え隠れする。
それに比べてアタシはどうなんだ、とヴィータは思う。
翠屋について早々、はやてに厨房を追い出されたのはちょっと不満だったけどそれは仕方のないことだ。
アタシは料理に向いてない。
それで与えられたのが力仕事。
「私は厨房はなれられないし、はやてちゃんに力仕事任せるのはちょっと不安だから、ね?ヴィータちゃんお願い!」
などとなのはに小声で言われ、
「おう、グラーフアイゼン振り回してるのは伊達じゃないってとこ、見せてやるぜ」
テラスに設置するテーブルやパラソルは結構な重さで、小学生の女の子には少々荷が重い。
ましてや足がほぼ完治したとはいえ、まだ病み上がり同然のはやてに任せられるはずもない。
なのはにうまく乗せられた気がしないでもないが、頼られるのは悪くない気分だった。
適材適所という言葉を自覚してしまったのは少々悲しかったが・・・。
「お〜ちゃんとやってるね〜」
美由希がそう声をかけながら店内に入ってきた。
「あ、おじゃましてます〜」
とはやて。
「あら、はやてちゃん。手伝ってくれてるの?ありがとね〜。え・・・と、この子は?」
ヴィータに視線を送る美由希。
「その子はウチで一緒に暮らしてるヴィータっていいます。そういえば美由希さんと会うのは初めてやったね」
「ああ、この子がなのはといい勝負したって言う・・・?」
「は・・・はじめまして・・・です。ヴィータっす」
はやての手前、精一杯の余所行きの声で言ってみる。
「ん〜ちょっと恥ずかしがりやさんなのかな?私は美由希、よろしくね」
美由希の手が、ヴィータの髪に触れる。
くしゅくしゅと頭を撫でられた。
はやてよりも大きくて、でもやさしい暖かさを感じる手。
ヴィータは不覚にも、猫があごの下を撫でられたような顔をしてしまった。
「お兄ちゃんの調子は・・・・やあぁぁ!!」




272 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/08/04(月) 13:47:33 ID:yg3yIWn1

『きせかえヴィータ』5

その時、管理局の白い悪魔の前に、黒い悪魔が降臨した。
「ゴ、ゴキ・・・!!」

「グラァアーフアイゼェーン!!」

想像するのもおぞましい黒光りする体。
古今東西、あらゆる次元世界に巣食う最凶の生命力と繁殖力を持つ害虫。
その名もゴキブリ。
この紅の鉄騎様の前に現れるとはいい度胸だ。
存分に駆逐してやるぜ!!

「シュワルベフリーゲン!!」

ヴィータはなのはが黒い悪魔の名を告げ終わるよりも速くデバイスを起動。
瞬時に球状の魔力を形成し、鉄槌を叩きつける。

ゴオォォーーーン!!

思い知ったか、この茶羽野郎!
心の中で勝ち鬨をあげると、グラーフアイゼンをくるりと器用に回してから待機状態に戻した。
ここでふと、ヴィータは冷静に戻った。
      • ・・・・マズイ。
勢いに任せて厨房で魔法をぶっぱなしてしまった。
おまけに事情をある程度知っているとはいえ、一般人である美由希の前で。
      • マズイ、マズイぞ、はやてに怒られる!
数秒後に訪れるであろうはやての怒声を想像してみる。
「こおら!ヴィ〜タ〜!こんなところでそんなモン振り回したら危ないやろ!!悪い子は晩御飯抜きやでっ!!!」
これで済めばかわいいものだ。
下手をすればもう2ランクほど上の折檻を食らうハメになる。
ゆっくりと、はやての様子をうかがおうとしたその時・・・。
背後に気配、そして脊髄を走り抜ける悪寒。
殺気・・・ではない。
ではないはずなのに、数千年にわたる戦闘経験によって培われた生存本能が、激しく警鐘を鳴らす。
例えるなら、高町なのはの全力全開、ピンク色の悪夢を目の当たりにしたような・・・。
重ねて言うが、殺気ではない。
なのになんだ、一秒後には自分の首が床に転がっている、そんな想像をさせるこの威圧感は!?
ほんの一瞬ではやてを狙う敵が忍び込んだのだろうか?
      • 敵が何かを振り下ろすような気配。
グラーフアイゼンの起動は間に合わない。
      • ダメだ、やられる・・・。




273 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/08/04(月) 13:49:40 ID:yg3yIWn1

『きせかえヴィータ』6

ぽすん、という気の抜けた音。

「こ〜ら!ダメでしょ、厨房でそんなの振り回しちゃ〜」
予想に反して、ヴィータの背後にいたのは美由希だった。
さらに予想に反して、頭に振り下ろされたのはデバイスでなければ刃物でもない、ただの棒状に丸めた新聞紙だった。
「それにさ、ゴキちゃんだって生きてるんだからむやみやたらに殺せばいいってモンじゃないでしょ〜」
せやったらその丸めた新聞紙は何に使うつもりやったんですか?
というツッコミを、はやてはかろうじて飲み込んだ。
さっきのヴィータちゃん、私と戦ったときと同じノリだったよ?
というツッコミを、なのははかろうじて飲み込んだ。
ヴィータは柄にもなく呆然として、必死に状況を飲み込もうとした。
今の威圧感の主は誰だ?
いや、それはわかりきっている、美由希しかいない。
しかし、こんな人の良さそうな女があんな気配を?
「あぁ〜、ごめんなさい。ウチの子はゴキブリ見ると我を失ってまうんです。ほら、ヴィータも謝りなさい」
「ご、ごめ・・・」
「ん〜いや、その必要はないかもね。なのは、そこ、よ〜く見て」
美由希が指差したのは、粉砕された黒い悪魔。
「よ〜くって・・・そんな・・・」
虫の死骸を見るのはあまり気分のいいものではない。
それも惨殺死体となればなおさらだ。
「・・・ほえ、これって・・・チョコレート??」
よくよく見れば、そこにはゴキブリのゴの字も存在しない。
あるのは粉々になったチョコレートの破片だけだ。
「え・・・と、つまり?」
「そこの細工菓子の飾り付け用のチョコを何かの拍子に落としちゃって、なのはがそれを見間違えただけ・・・ってとこかな」
美由希は一つため息をついて続ける。
「だいたいね、うちは飲食店なんだからゴキ対策は万全だよ。ゴキなんているわけないでしょ」
その台詞を聞いたヴィータは、取り乱した(脳内で好戦的な台詞をはいて誤魔化したが)ことに恥ずかしくなった。
同時にやり場のない怒りが沸々とこみ上げてくる。
「・・・こんのぉ〜なにょは〜!驚かせやがって〜このこのぉ〜!」
なのはの頭にぐりぐりとこぶしを押し付ける。
「あぅ〜、お騒がせしました〜・・・ってイタイイタイ!ヴィータちゃん痛いってば!」
「もぉやめなさい、ヴィータ。今月はヴィータ、魔法禁止!」
「えぇ!?元はと言えばこいつが悪いんじゃん」
「そうやったとしても、あれくらいのことでぽんぽん魔法使うのはヴォルケンリッター失格や!」
「うぅ〜・・・」
「それに焦って魔力制御失敗してたらどうするの?シュワルベフリーゲンやったら家の壁くらい簡単に壊れてしまうんやで!」
「ふん、そんなドジふまね〜ですよ」
そこでようやく美由希が仲裁に入った。
「まあまあまあ、今回は厨房もお菓子も無事だったしさ、そのくらいでいいでしょ?でもヴィータちゃん、今後うちの店の中では魔法禁止ね」
「はぁ〜い・・・」
美由希の瞳の奥に、さっきの威圧感を察知したヴィータは、素直に返事をしておいた。
「よーし、いいこいいこ」
またくしゅくしゅとヴィータの頭を撫でる美由希。
その手からは威圧感を微塵も感じなかった。
子供扱いすんな、と反射的に言ってしまいそうになったがそれ以上に美由希の手が心地よくて、結局ヴィータは何も言い返さなかった。
「仮にホントにゴキが出てきたら、私が退治してあげるから・・・ね?」

「・・・怖かったり優しかったり・・・、よくわかんない女だぜ」

「ん?何か言った?」
「なんでもねーです」
「そう?じゃあ、準備にもどろっか」



274 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/08/04(月) 13:55:55 ID:yg3yIWn1

『きせかえヴィータ』7

さらに2時間後、翠屋は無事に開店していた。
昼には予定通り、高町夫妻が帰ってきたためなのはたちは一安心だった。
なのは、はやて、ヴィータの三人は、窓際の席に座り談笑していた。
エプロンをつけて接客していた美由希は、仕事がひと段落ついた頃を見計らって厨房のほうへと引っ込んだ。
五分後、ケーキ4つと紅茶4つをトレイに乗せてなのはたちの席に現れる。
「はいはーい、今日はごくろうさま。これはお姉さんのおごりだよ」
「あ、ええんですか?」
「マジ!?やったぁ〜」
各々にケーキと紅茶を配り終えると、美由希も席に着いた。
「お姉ちゃん、休憩時間?」
「うん、そうだよ。30分だけど」
当初の目論見どおりケーキにありつけたが、ヴィータ自身、実はその目論見をすっかり忘れていた。
美由希に頭を撫でられるのがうれしくて、途中からケーキの事なんかどうでもよくなって・・・。
気が付けば夢中で手伝いをしていた。
「三人とも、ありがとね」
「いえいえ、翠屋のケーキがただになるんやったらあれくらい安いもんです」
「あぁ、はやてのいうとおりだぜ〜。困ったことがあったらいつでも呼べよな!」
「ふふ、頼もしいな。でもそのたびにケーキおごってたらお姉さん、破産しちゃいます」
「あはは、美由希さん覚悟しといてくださいよ、うちのヴィータの胃袋は底なしやで〜」
「なんだよはやて、人をブタみたい〜」
そんな調子で話をしているうちに時間はあっという間に過ぎる。
なのはとはやての学校のこと、翠屋のケーキのおいしさの秘密、ゲートボールの醍醐味、秘密の恋バナ・・・。




275 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/08/04(月) 13:57:38 ID:yg3yIWn1

『きせかえヴィータ』8

「え〜、ユーノのヤツ、なのはにそんなこといったのかよ!?」
「それはいただけへんなぁ。なのはちゃんにはフェイトちゃんゆう婚約者がおるのに・・・。あの淫獣、そのうち毛皮剥いで襟巻きにしたろか」
「ちょっ!?なのはとフェイトちゃんってそういう関係だったの?っていうかはやてちゃんキャラ変わってきてる!」
「あれ?知らんかったんですか、美由希さん・・・これはもーうちのクラスでは公然の秘密ですよ、うっふっふっ・・・」
「や、やめてよはやてちゃん」
「ホント?なのは、ホント?」
「うぅ〜〜〜〜〜〜」
「おぉ〜否定せえへんところを見ると・・・これは両想いやな!!」
「ち〜が〜う〜よ〜〜〜もぉはやてちゃん!!」
「あはは、なにょは〜そんな赤い顔して言っても説得力ないぜ」
「ヴィ、ヴィータちゃんまで・・・」
はやて、ヴィータ、美由希の間でなのフェイ=ガチ、という客観的事実に基づいた共通認識を得たところで、めぐりめぐってファッションの話題へ。
ヴィータにとってはあまり興味のない話だったので聞き役に回っていると、急に矛先がこちらに向いた。
「ヴィータなんか、ドクロとか十字架とかいっつもそんなんばっかり着てるんですよ。美由希さん、どない思います?」
「うん、素材はいいからもっと女の子っぽい服も似合うと思う。ん〜もったいないな〜」
「いーんだよ、アタシはこういうのが好きなの」
「やっぱり美由希さんもそう思います?なぁヴィ〜タ〜、一回でえぇからフリフリレースの服着てみいひん?シグナムとシャマルはもうそんなん着れる歳ちゃうって頑なに拒むし」
はやてが猫なで声でヴィータに擦り寄る。
「フリフリ・・・っていうかアタシだってこの店にいる誰よりも年上だっての!」
赤毛を三つ編みにしたツリ目少女が鏡の前でふんだんにレースやらコサージュやらをあしらった可愛らしすぎる服を身にまとっている。
そんな姿を自分で想像しておいて、ヴィータは鳥肌が立った。
ダメだ、絶対に似合わない。
「勘弁してくれよ、はやて〜」
「あ、それいい。ヴィータちゃんなら絶対似合うよ」
「なにょは〜お前まで」
「そうだ、お姉ちゃんが小さい頃に買ってもらったっていうドレス!」
「あぁ、あれ?ちゃんととってあるよ」
「私が8歳のときに着てみたらちょっと大きかったから・・・今のヴィータちゃんならぴったりじゃないかな?」
美由希はおもむろに立ち上がると、ヴィータの後ろに回りひょいと抱き上げた。
「なにすんだ・・・!?くすぐったいって!」
無遠慮に腰や胸に手を回し、大体のサイズを測っているようだ。
「うん、いけるいける。この子なら充分着れるよ」
「だ〜か〜ら〜いいって言ってるだろ!!・・・お?」
美由希の腕の中でじたばたとしていたヴィータの視界の隅で、見覚えのある男が歩いていた。
その男はまっすぐにこちらへ歩み寄ってきて、無駄に爽やかな声で言った。
「待たせたな」




きせかえヴィータ続
2009年07月05日(日) 22:56:22 Modified by coyote2000




スマートフォン版で見る