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44-861

中学校の卒業式の日から暫く後。
なのはちゃんとフェイトちゃんとはやてちゃんが、あちらの世界に旅立つ日が訪れた。
三人とアリサちゃんと私は、月村の屋敷の庭に集まっていた。
転送魔法は人目のつかない場所が良いということだったので、ここを使うことを私が提案した。
なのはちゃんは家族との別れを既に済ませていたようだった。
見送りは友達同士でと気を遣ってくれたのだろうか。
なのはと初めて出会ったのはここだったんだと、フェイトちゃんが言った。
そうだったねとなのはちゃんが感慨深そうにすると、アリサちゃんが横から合いの手を入れる。
いつも通りの風景。
私達の世界は、最後まで何一つ変わることはなかった。

寂しくなるなあと、はやてちゃんに強く手を握られた。
手の握り方と私への視線に、若干の熱っぽさが籠められていたのは気のせいではないだろう。
嬉しくはあったが少し胸が痛む。
皆とあれこれ話しているうちに、そろそろ時間だとフェイトちゃんが告げた。
なのはちゃん達がキャリーケースを携えて横に並んだ。
私とアリサちゃんは少し距離をとって、向かい合うように並んだ。
すると地面に魔法陣が展開された。三人が光に包まれる。

「じゃあね、すずかちゃん」
なのはちゃんは、最後にそう言って消えた。
そして。
私と彼女の交際は、何の滞りもなく終わったのだった。


【僕と君の罪と罰】


なのはちゃん達がこちらの世界を去った後に、私はアリサちゃんを自室に招いていた。
ファリンにティーセットを持って来させた後、暫く二人にさせて頂戴と言い含めた。

「なのはちゃんと、付き合ってたんだ」
そう言うとアリサちゃんはそう、とだけ返した。
「驚かないんだね」
「何となく気付いていたけどね」
しれっとした口調だった。
「何で言わなかったんだ、とか」
「すずかならそうするだろうな、って」
見抜かれている。彼女はそのまま続けた。
「あたし達の関係を壊したくなかったんでしょ?」
「……そうだよ」
目の前の親友は、私の心などとうに見透かしていた。
「すずかって、昔からそういうところあったじゃない。
あたしとなのはが喧嘩したら、いつもすずかが間に入って仲直り。フェイトやはやてが来てからもそうだった」
それはなのはちゃんの一番でなくとも良かったから。
フェイトちゃんもはやてちゃんも、アリサちゃんのことも好きだったから。
「五人で笑っていられればそれで良かったんだよ。なのはちゃんの傍にいられればそれで」
「でも、今は違うんでしょ?」
なのはちゃんと告白するまではそうだった。
でもメールを交し合ってデートを繰り返すうちに、彼女の一番でありたいという渇望が私の中で鎌首をもたげた。
それはどんどん大きくなって、嫉妬や羨望を巻き起こし始めた。彼女への愛欲は日々深まる一方だった。
「そうだよ、なのはちゃんの一番になりたかった、なのはちゃんに私だけを愛して欲しかった!
でもそれで、もし皆がバラバラになっちゃったらどうしようもないじゃない!」
私は興奮のままに叫んでいた。それが私の罪だった。
なのはちゃんを手に入れるために、今までの世界を壊す覚悟がなかった臆病さがそれに他ならなかった。
だから私は、心を奪われたまま彼女を失うという罰を受けた。


するとアリサちゃんが大きく息を吐いた。
「やあっと吐き出したわね、この馬鹿ちん」
彼女の口元が少し吊り上がっているのが見える。
急激に頭が冷えた。最初から誘導されていたのか。
手元にあったティーカップに口をつける。紅茶はとうに生温くなっていた。

 ◆

「アリサちゃんはなのはちゃんを手に入れられるなら、皆の関係がどうなっても良かった?」
幾分落ち着いた私は、アリサちゃんに質問を投げかけた。少々意地の悪い聞き方ではあるが。
暫く間を置いて、彼女は答えた。
「そうね、良かったかも知れない。すずかとの仲ならちょっと迷うけどさ」
少し驚いた。私の存在は彼女の中でそこまで大きかったのか。
「すずかが告白した後のことを考えたなら、あたしはその前のことで悩んだのよ。
単純な話、なのはに拒絶されるのが怖かった」
「……それが普通なんじゃないかな」
「正確に言うなら、あたしがなのはの一番になれないってはっきり分かっちゃうのが怖かったのよ。
そこんところ、すずかはどうだったの?」
はて、どうだっただろうか。
でも告白する前の私は、なのはちゃんの一番でなくとも良かったと考えていたはずだ。
たとえ振られたとしても、その後も彼女の傍にいられただけで満足できただろう。
「多分、考えてなかった」
「そうよね、すずかならそう。あたしはそこが駄目だったのよ」
それがアリサちゃんの罪か。
彼女もまた臆病で、その罰に触れることもできずになのはちゃんを失った。

「だからちゃんと正面から告白したすずかが、なのはの一番近くにいたのは何の間違いもないのよ」
そうだろうか。
告白といっても、あの時の私は焦燥感で酷く動転していた。
例えるならあの真赤な夕陽に中てられたような。
「違うよ、なのはちゃんはただ泣いてる私をどうにかしたかっただけなんだ」
薄々とは気付いていた。彼女は私のことを特別に好きだったわけでも何でもない。
ただ泣きじゃくって駄々をこねる子供に手を差し伸べただけなのだ。
泣いてる子を助けたい、とは彼女の口癖だったから。
「私じゃなくても、アリサちゃんでもフェイトちゃんでも良かったんだ。
泣いて縋れば、きっとなのはちゃんは受け入れてくれた」
「……言ってて悲しくならない?」
「そうじゃなきゃ、期限付きでこっそり付き合ってだなんて条件、聞いてくれるわけないよ」
私の臆病さが作り上げた枷を、彼女は難なく引き受けてくれた。
結局それは私に返ってくるものだったのだが。
「それじゃあまるで、あたし達が馬鹿みたいじゃない」
「でも、そんななのはちゃんだから、私達は好きでいられたんじゃないかな」
「それは違いないわ。でもあたしが惚れたなのはは、私の頬をはたいたなのはだったのよ」
「私が好きになったなのはちゃんは、アリサちゃんと大喧嘩してるなのはちゃんだったな」
普通の女の子だった彼女は魔法という存在に出会って、今では雲の上のような存在になってしまった。
そこで彼女と一緒にいられるのは、同じく魔法を使える者だけだ。
フェイトちゃんとはやてちゃん。私達の居場所は彼女達に取って代わられた。


 ◆

「酷い女よねえ、なのはも」
「そうそう」
アリサちゃんの呟きについ便乗する。
口に含んだ紅茶は完全に冷め切っていた。新しくファリンに持ってこさせようか。
すると突然、アリサちゃんがぱんと手を叩いた。
「すずか、デートに行きましょう」
「へっ?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
「同じ女に振られたもの同士」
「……それは」
どうなのだろう。
「部屋でうじうじ未練がましく話してるよりかはよっぽど健全よ。分かったら立つ!」
「もう、アリサちゃんったら強引なんだから」
椅子から立ち上がって、ハンドバッグを手に取る。そのままアリサちゃんに引っ張られるような形で屋敷を出た。
紅茶の片付けは廊下にいたファリンに言い残しておいた。

扉をくぐると、真昼の眩しい日光が差し込んできた。
手を翳して、ふと空を見上げる。澄んだ青空の真ん中に、孤高に光り輝く太陽があった。
アリサちゃんが空を仰いだまま、遠いわねと呟く。
平等に地表を照らすそれには、どれだけ手を伸ばしても届くことはない。
そうだねと言葉を返す。何だか可笑しくなって、顔を向き合わせて二人で笑った。
そして。
私とアリサちゃんは手を繋いで、門の向こうへと駆け出していった。

 ◆

おしまい。
前回の続きっていうのはこういうのじゃなくて、デートをするうちに段々すずかちゃんに惹かれていった
なのはさんが最後のデートで告白して両想いとかいうハートフルでピュアな話にしようと思ったのです。
でも現実はこんなもんだろうなあ、と。
誰かあまあまでらぶらぶななのすずを書いてください。それだけが私の望みです。





【おまけ】

アリサちゃんとのデートが終わって、私が屋敷に帰ったのはとうに日が沈んだ後であった。
彼女に連れ回されてすっかりへとへとになってしまった。部屋に入るやいなや、ばたんとベッドに倒れ込む。
なのはちゃんとのデートでは、こんなに疲れることは一度もなかったのに。
でも私の心の中にあった、靄と言うべきか泥と言うべきか分からないものは綺麗さっぱりなくなっていた。
アリサちゃんはそれが分かっていて私を連れ出したのだろう。
それとも彼女も、私と同じような気持ちだったのだろうか。

すっと立ち上がって、机にある鍵付きの引き出しを開けた。
中にあったのは、なのはちゃんとの蜜月だった。
お揃いのつもりで買った桃色のリボン。髪を一つに縛った私を、可愛いと彼女は言ってくれた。
一緒に見た映画の半券。恋愛モノとSFモノが多かった。見た後は喫茶店であれこれ感想を言い合った。
一緒に組み立てた電子ラジオ。中を開けて回路を見ると、彼女がつけた少し不格好な半田が並んでいた。
全てが甘美な思い出だった。
あわよくば捨て去ろうと思って開けたが、そんなことは到底出来ようはずもなかった。

その引き出しの中でも、一つだけ異彩を放つものがあった。
小箱を手に取って開けると、中には美しい首飾りが入っている。
それはなのはちゃんからの最後の贈り物だった。
最後のデートでこれを渡されて、私と彼女はキスを交わした。それが私達の交際の幕切れだった。
最初から決まっていた最後なのに、何故それを盛り上げようとするのか。
後が余計惨めになるだけではないのか。彼女に悪意など全くないのだろうけど。
首飾りの宝石がきらりと光を反射した。それには彼女との愛おしい日々が全て刻み込まれていた。
気がつけば涙が溢れていた。そんなものはとうに枯れ果てたと思っていたのに。
青い鳥が逃げ出したって、空の籠を抱いて泣いていても戻って来やしない。
アリサちゃんならそう言うのだろうか。
それでも駄目だった。なのはちゃんのことがただ純粋に愛おしかった。
神様、どうして彼女と魔法を巡り会わせてしまったのですか。
どうして私に魔法の力を与えてくださらなかったのですか。
熱い雫が目から流れ頬を伝い、宝石の上へとこぼれ落ちた。
そのまま私は一晩中、涙を抑えることが出来なかった。

 ◆
2012年11月18日(日) 22:42:51 Modified by sforzato0




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