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ふたりの道

160 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:27:05 ID:1CaCEeGO
>>153
個人的には読んでみたいな。
なのフェイ以外書けそうにないんで、どなたか書いて欲しいな。

修羅場SSでも結婚SSでもなくてすいませんが、
今回はちょっと短めのなのフェイを投下しようと思います
多分支援なしで最後までいけるはず。

161 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:28:10 ID:1CaCEeGO
目の前の机の上には真っ白な作文用紙が2枚。
5時間目にある国語の時間、私はどう書き始めるか迷っていた。
黒板に目を移すと、大きな文字で『将来の夢』と白いチョークで書かれていた。
将来の夢はもちろん執務官になることだ。だけど、この世界ではそんな職業は無い。
どうしよう、いっそ似た職業の警部とでも書くべきか。
題名を書く部分までシャーペンを運び、動きが止まる。
職業が具体的すぎて変かな?
それなら警察官と書いたほうがいいのかな。
なのはやはやてはどう書くんだろ。
チラっと、隣の席のなのはの様子を覗き込むと、なのはも白紙の用紙を悩むように眺めてた。
まだなのはも書いてないみたい…。
やっぱり同じことで悩んでるのかな。
悩んでる様子のなのはを尻目に考える。
なのはの夢は戦技教導官だと思うけど、はやてはなんだろ。
まだ決めてないみたいだけど管理局で働くのは決定かな。
遠くの席にいるはやてはペンを動かしてるみたいで、すでに書いてる様子が見て取れた。
時間もないし仕方ない、ちょっと嘘になるけど警察官って書こう。
ペンを走らせて、文字を綴り真っ白な用紙を黒く染めていく。
そして1枚目が終わって安堵のため息を漏らす。
後半分、もうちょっと頑張ろう。
「フェイトちゃん、フェイトちゃん」
「どうしたのなのは?」
二枚目に取り掛かろうとしたとこに声がかかり、手を止めてなのはのほうに顔を向けて、
机の上を見るとまだ白紙で何も書いてないみたいだった。
「なのは、まだ書いてなかったんだ」
「うん」
「なのはの夢ってやっぱり戦技教導官だよね?」
「うん、訓練とか好きだし、それに何より空を飛ぶのが好きだから。でね、戦技教導官ってこっちの世界じゃ何が当てはまるのかなって考えちゃって」
「そっか、うーん…何かぴったりなのあるかな」


162 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:28:47 ID:1CaCEeGO
戦技教導官に似てる職業って何かあるのかな。
普通に暮らしてると無さそうだし、
自衛隊とか入ればあるのかもしれないけど、なんかそれは違う気がする。
一緒になって悩んでると、思いついた様になのはが声を上げた。
「家業にしようかな。もし管理局で働かなかったら翠屋で働いてたと思うの」
「そうだね、なのはならぴったりだと思う」
「にゃはは、ありがとうフェイトちゃん」
お礼を言うなのはの笑顔にほんのり頬が染まってしまう。
煩悩を振り払う様に頭を振り、もう一度文を書き始めた。
なのはの笑顔が何度も脳裏にちらついて、少し遅くなったけどなんとか完成し、隣を見るとなのはももう半分以上書き終わってるのが分かった。
真剣な表情で作文を書き、途中何度か止まり悩む様子のなのはが可愛くて思わず見惚れてしまう。
「フェイトちゃん?」
「ふぇ!?」
気が付くと目の前になのはの顔がありびっくりしてしまった。
「もー何度も呼んだのに返事がないんだから」
「ご、ごめん…つい」
「つい?」
「ううん、なんでもない」
なのはの顔に見とれてたなんて、恥ずかしくて言えない。
「ほんとに?」
「う、うん。それよりなのは何か言おうとしたんじゃ?」
「うん、フェイトちゃんとこうして隣にいるけど、いつかフェイトちゃんとも別の道を進むことになるんだね。………そう思うと少し寂しいな」
なのはの寂しそうな笑顔と言葉に、鋭い痛みが胸に走った。
「えっと……そう、だね…」
何とか言葉を返しながら、既に意識は違うとこに行っていた。
なのはの夢と私の夢は方向が違う。
どうして今までそんな簡単な事に気が付かなかったんだろう。
ずっとなのはと一緒には居られないんだ。
私にとってなのはが隣にいるのが当たり前で、ずっとそうなんだと思ってた。
なのはがいつか隣から居なくなる。
そんなの嫌だ。


163 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:30:08 ID:1CaCEeGO
作文を書いた日から数日がたった。
空は晴れて雲一つない青空なのに私の心は曇っている。
あれからずっとずっと考えていた。
隣からなのはが居なくなる日なんて来て欲しくない。
プレシア母さんがアリシアしか見なかったみたいに、なのはも私は置いて行ってしまうのか…。
あの日以来なのはと会うたびに、目に焼き付ける様になのはだけをずっと見詰め続けた。
隣に居すぎて忘れてしまっていた。
私にとってなのはがどれぐらい大事で、尊い存在か。
みんなが最近の私が変だって心配するけど、変じゃないんだよ。
今までが変だったんだ。
失うことの怖さを忘れていた。
どうして忘れてたのか、自分でも解らない。もう一度忘れてしまえば平気になるのかもしれない。
きっと忘れれば楽になるんだと思う、けれどもう忘れてしまいたくは無い。
そして、なのはといつか別れてしまうかもしれないと思ううちに、自分の気持ちにも気が付いてしまった。
私はおかしいのかも知れない。
なのはは女の子なのに。
私も女の子なのに。
それなのになのはの事が好きだ。友達としてじゃない、なのはに恋してる。
初めは信じられなかった、けれどなのはをみつめるだけで、想うだけで、胸が痛くて苦しくて変になりそう。
なのはに頼まれたらなんだってしてあげたい、なんでもしてあげるから好きになって欲しい。
友達としてじゃなく、私と同じ気持ちで。
この気持ちをどうすればいいのか解らない。
何も手に付かなくて魔法の練習もさぼりがちになってる。
今までのどんな魔法のプログラムを考えるよりも難しかった。
男の子が女の子に告白したりして、付き合ったり振られたりとかクラスメートの話の中でだけは知っていた。
けれど、女の子が女の子に告白したなんて話は聞いたことが無かった。
なのはに告白なんて出来るはずない。
もし告白したら、優しいなのはのことだからきっと一生懸命傷つけない言葉を選んで断ると思う。
なのはの負担になるのは嫌だ、それに断られるのはもっと嫌だ。
もし振られたら生きていけない。

164 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:30:49 ID:1CaCEeGO
どうすればいいんだろう……告白をするべきじゃない?
ううん、一生友達として生きてくなんてのも嫌だ。
なのはが誰か自分とは違う人と付き合って、いつか結婚するのなんて見たくない。
もしなのはの隣に自分ではなく、別の誰かが居るようになったら?自分の居場所がなくなったら?と考えるだけで夜も眠れなくて、
涙が溢れて枕を濡らした。
どうしたらいいのか解らないのに独占欲ばかり増えていく。
お願いなのは、こんな私を嫌わないで。



「最近のフェイトちゃん、変だよ?」
学校からの帰り道、みんなとは別れなのはと二人っきりになっていた。
どうも私の様子がおかしいからなのはに任せたほうがいいって事らしい。
ごめんねみんな。言えないよ…。
「そんなこと無いよ。」
「わたしじゃ頼りにならないかな?」
「そんな!そんな事ないよ。なのははいつもすごく頼りになるから。…ただこれは私の問題だから、ごめんね」
私の態度がなのはを不安にさせてる。
不安そうな顔をしたなのはを少しでも安心させてあげたくて、だから優しくゆっくりと言葉を紡いだ。
「わたしにも言えない?」
「なのは………本当にたいしたことじゃないから」
精一杯の笑顔で告げた。
今の私にはこれぐらいしかできないから。
本当は好きって告げたい。
けれど、振られた時困る。
私だけじゃない、いつものグループだってギクシャクしちゃうかもしれない。
だから言えない。
ううん、それは唯の建前。ただ私に勇気が無いだけだ。



165 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:31:22 ID:1CaCEeGO
「そっか」
残念そうに諦めた様につぶやくなのはと一緒に帰り道を歩く。
ごめんね、なのは。
なのはを騙し、自分の心も騙している。
私はなのはの事が好き。誰よりも愛している。きっと私にはなのは以上の存在なんて現れないと思う。
なのは…好きになってごめんね。
別れ道に差し掛かり、
今まで繋いでいた手を離した。
「それじゃあ。…ばいばいなのは」
「フェイトちゃん?…またね」



「母さん、我がままいってごめんね」
「いいのよフェイト。でも本当にいいの?」
「うん、もちろん学校も好きだったけど仕事頑張りたいんだ」
「そう」


166 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:32:14 ID:1CaCEeGO
時空航行艦に乗り込み、ロストロギア関連の事件調査に向かっていた。
学校を辞め、休暇もとらず仕事と勉強をひたすらして孤独感を埋め続けた。
何かをしていないと考えてしまうから。
何も余計なことを考えたくなかったから。
お陰でずっと予定より早く執務官には成れた。
ピピッ…。
通信音が鳴った。
もたれていた椅子から身を起こし、通信画面をONに切り替えた。
通信の相手はアルフだった。
久しぶりで少し懐かしく、お互いの近況を報告しあった。
30分ほど話、忙しいことを理由に通信を切った。
本当は違う、アルフからなのはの事を言われ、気持ちが押さえられそうに無くて顔に出てしまいそうだったから。
なのはに会いたい、もうあの日からもう二年も会っていない。なのはは何度も連絡を取ろうとしてくれたけど全部断って避け続けている。
今でも私にずっと諦めず連絡と取ろうとしてくれてることをアルフは教えてくれた。
なのはがまだ私を友達だと思ってくれてる事が嬉しくて、辛い思いをさせてることが悲しかった。
そして怖くて自分から手を離したくせに浅ましくも喜びを感じていることに汚らしさを感じた。
この二年何度か告白みたいなのをされたことがあったけど、誰とも付き合う気はしなかった。
距離を置いたはずなのに、ずっと忘れられないから。
以前よりもずっとなのはを求めていた。
きっと今なのはと会えば、もう気持ちは抑えられない。
だから私はなのはの傍には居られない。
せめてこの気持ちが無くなり、いつかなのはの隣に誰が居ても平気になって祝って挙げられる様になるまでは。



167 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:33:19 ID:1CaCEeGO
そう思っているのに。
それなのに私はどうして――。
「んっ…」
柔らかな椅子に深く座り込んで、スカートの中に手を入れてショーツの上から大事な所をなぞる様に動かす。
なのはの居ない寂しさを紛らわすために覚えてしまった一人遊び。
なのはを思い出すたびにいつの間にか繰り返し行っていた。
(フェイトちゃん大好きだよ)
(私もなのはが好き)
想像の中のなのはを抱きしめて、体を重ねる。
もう何度同じ様に想像したのか分からない。
この時だけ……想像の中のなのはだけが私を満たしてくれる。
なのはが好き。
触るとさらさらと透き通る綺麗な栗色の髪が、温かな陽だまりみたいな笑顔が、蒼く澄み切った空を思わせる瞳が、
優しさを秘めて、真っ直ぐに向き合ってくれる強い眼差しが、甘くて柔らかい心を温かくしてくれる声が、桜を思わせ全てを包み込んでくれる暖かな匂いが―――。
なのはの全てが愛しい。
脳裏にちらつき、体を熱くする。
なのはの事忘れなきゃいけないのに、どうして。
こんなこといけないのに。
それなのに指の動きが止まらない。
「なのは…んんっ……なのはっ」
それどころか益々動きが激しくなり、唇からはなのはの名前が零れた。
どうしてもこの行為を辞められない。


168 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:34:04 ID:1CaCEeGO
行為が終わり、気だるげな身体に力を入れて乱れた服装をゆっくりと整える。
行為の最中に満たされていた気持ちは無くなり、
大切ななのはを汚してしまった気分に囚われ罪悪感と、現実ではありえない想像による空しさで胸が一杯になってしまう。
もうこんなこと辞めなきゃ。
そう思っていてもいつも同じ事を繰り返し行ってしまう。
机の引き出しに入っている貰った大事なビデオレターを取り出した。
ずっと以前友達になった頃に貰った大切な宝物。
家から持ってきた数少ない物の一つ。
学校まで辞めて、なんのために距離を置いたのか。
こんなもの持ってくるべきじゃなかった。
そんなこと分かってたのに。
なのはへの想いは消さなきゃいけないのに、相反した行動ばかりしてしまってる。
ピピッ…。
今日二度目の通信音が鳴り、ビデオレターを大事にしまい、通信画面にスイッチを入れた。
「フェイト!」
「ど、どうしたのアルフそんな慌てて」
「そんなのどうでもいいよ。それよりなのはが怪我して、なのはが大変なんだよ」
「えっ、なのはが怪我…?」
驚いて目を大きく見開き呆然と呟いた。
そんな、なのはが怪我なんて。
「アルフ、なのはは大丈夫なの?ねえどうなのアルフ?」
私は必死だった。
信じられない気持ちを抑え、冷静になるに自分に言い聞かせたが無駄だった。
今までなのはの話題が出ても必死に表情を変えない様にしてたのに、それなのにあっさりと崩れ、偽りの仮面を脱ぎ去っていた。
「なのはにもしもの事があったら私は…」
「フェイト…なのはは重症で病院に運ばれたけどなんとか一命は取り留めたみたい。ずっとなのはを避けていたみたいだけどフェイトもお見舞いにいくよね?」
「……………アルフ病院の住所お願い」


169 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:35:14 ID:1CaCEeGO
中央区画にある大きな総合病院になのはは運ばれていた。
容態は絶対安静で少なくとも全治数ヶ月の重症、悪ければもう歩くことなど出来ない。
アルフ、そして母さんたちにも連絡を取りいくつか手に入った現状での情報だった。
そして病院に運ばれてまだ7時間。状態も悪く、面会謝絶だった。
私は空からなのはが入院している病室の窓辺に立って、医療器具に接続され包帯だらけの姿になったなのはをガラス越しに眺めた。
二年ぶりに見た包帯に包まれ痛々しいはずのなのはに眠り姫の様な美しさを感じ、
眠るなのはに口付けをする想像をしてしまう。
こんな時にそんなこと考えるなんて最低だ。頭を振って不埒な妄想を追い払い、祈り続けた。
怪我が治り、またなのはが空を飛べる様に。
一日経ち面会謝絶は解かれ、二日目にはなのはの意識も回復した。
私は仕事の合間をぬって病院に行き、空からなのはの様子を見詰め続けていた。
なのはに会いたい、会って励ましてあげたい。
そう思っているのに、でも私はここから動けずにいた。
なのはのお見舞いには沢山の人が訪れ、私の知らない人も沢山いた。
仕事関係の人たちだろうか?すごく仲が良さそうで胸にざわめきを感じてしまう。
知らない人がなのはに話しかけて、なのはがそれに応えて笑うと胸に痛みを覚え、
なのはが私じゃない誰かに笑いかけるとこなんて見たくなくて思わず病室から視線を外していた。
いつか手が離されるかもしれない事に怯え、自分からなのはの手を離したくせに、
誰かがなのはと仲良くしてるのを見て嫉妬なんて。


170 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:36:34 ID:1CaCEeGO
一ヶ月、二ヶ月…そして三ヶ月が過ぎた。
ずっと空からなのはを見守っていた。
出来る限り毎日、晴れの日も、雨の日も、雪の日も。
なのはの怪我が少しずつ良くなり、包帯は取れ、リハビリを開始していた。
なのはは何度も床に転び、諦めず棒を握り立ち上がろうとする。けれどまた立つことが出来ず転んでしまう。
リハビリは上手くいっていないみたいだった。
なのはの苦しみも分からず、悲しみも分からず、どんな言葉を掛ければいいか分からず、何をすればいいか分からなかった。
それでもなのはの元へ行かなきゃいけない。
夜に人知れずなのはが涙を流していたから。
私は暗い病院の廊下を見つからない様に走っていた。
誰にも気づいて欲しくなかったと思う、本当は行くべきじゃないのかもしれない。
けれど、こんな私でもなのはの痛みを少しでも和らげてあげることは出来るかもしれないから。
なのはの病室に近づき足音を忍ばせて部屋の前で立った。
開けるのに逡巡してしまう。
此処まで来たのに私はまだ踏ん切りがついてなかった。
壁越しに呻く様な声が聞こえ、はっとして耳を澄ませると中から、か細く不安そうな泣き声がはっきりと聞こえた。
「…うっ、ひっく……」
扉に手をかけた。
自分のなのはへの想いと別離できずにいる今、またなのはと会ってしまえばきっと離れる決心が揺らいでしまう。
なんのために離れることを選んだのか解らない、思わず顔に苦い笑みが浮かぶ。
それでも今はなのはの苦しみを少しでも救えるなら、私の後の事なんてどうでもいい。
手に力を入れ、ゆっくりと開いた。
「なのは、大丈夫?」
「うっ…くっ……ふぇ、ふぇいとちゃん?」
驚き、涙を流しながら固まるなのはの傍にゆっくりと近づいていく。
「本当に……フェイトちゃんなの?」
「うん、私だよ。なのは」
「夢じゃないよね?」
「夢じゃないよ、ごめんねなのは。来るのが遅くなった」
ベッドに腰掛け、涙で濡れた頬を優しく拭いた。
二年ぶりに間近くで見たなのはは以前よりずっと綺麗で鼓動の音が激しく鳴り、嬉しさと不安を秘めた涙声は、心を暖かく溶かして行く。
「本当に、遅いよフェイトちゃん。待ってたんだから、フェイトちゃんが来てくれるかもしれないって、ずっと待ってたんだからね」

171 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:37:44 ID:1CaCEeGO
「なのは」
「どうしていなくなっちゃったの?」
「なのは…母さん達から聞いたとおり、仕事を頑張るために学校を辞めたんだよ」
「嘘だよフェイトちゃんっ!それならどうしてわたしに会ってくれないの?ずっと会いたかったんだから」
「ごめんね、…なのは」
なのはに好きだって伝えてしまいたい、けれど今のなのはにそんなこと言っちゃ駄目だ。
負担を掛けるわけにはいかない。
もう一度なのはの頬を拭うと、腰掛けていたベッド立ち上がる。
やっぱり来るべきじゃなかったのかもしれない。
避けてたのは本当だし、誤魔化せる都合のいい理由なんてなかった。
だから私はなのはにまた何も告げず離れるしか出来ない。
「いっちゃやだっ。何処にも行かないで……お願い。なのはを一人にしないで」
さっきの泣き声よりも悲痛な声で叫ぶなのはに構わず、
部屋を出るつもりで歩こうとした。
左手が弱く引っ張られ、足が止まった。
手が繋がれていた。
繋がれた小さな手は、弱く儚く力もほとんど入ってなかった。
軽く手を振るだけで振り払えたと思う。
きっとこれが力強い手なら振り払っていたと思う、そして逃げだしていた。
だけど、私は握り返していた、
こんななのはを手を私は知らなかった。
この手を振り払うことなんて出来ない。
誰かに弱いって言わてしまってもいい。
「なのはが傍に居て欲しいならずっと居る。もう何処にも行かないよ」
大切に、背中に手をまわして抱きしめた。
安心させる様に何度も優しく撫でると、なのはは声を上げて泣いた。
なのはが傍に居て欲しいと思うなら、その間ずっと居よう。
私の想いなんて、なのはの事を思えば我慢できるはずだ。
告白しないと決めた私の想いは、ずっと私を苦しめ続けると思う。
だけどそれでもいい、なのはが元気になれば…それでいいんだ。


172 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:39:55 ID:1CaCEeGO
「………もう飛べないかもしれないって聞いて怖かった。リハビリもうまくいかなくて、不安で苦しかったの。でも怪我しても悪いことばかりじゃないね」
「えっ」
「またフェイトちゃんと会えたから」
どんな言葉を返せばいいか分からなかった、私の行動がなのはを傷つけていたから。
「ねえフェイトちゃん、そこの棚の引き出しにある箱とってほしいな」
「これのこと?」
引き出しを開くと、元は綺麗に包装してあったと思わせる小さな箱があった。
私の言葉になのはが頷いた。
手に取って、箱をなのはに渡そうすると拒否されて怪訝に思い、
なのはを見ると少し恥ずかしげに頬を赤く染めたなのはが居てた。
思わず可愛くて強く抱きしめてしまいたくなる。
「えっとね、それはフェイトちゃんへのプレゼントなの」
「私に?」
「うん、前にねフェイトちゃんの誕生日プレゼントで買ってたの。少し薄汚れて所々へこんじゃってるけど、ごめんね」
「開けていいかな」
「うん」
包装を解き、ずっと開けられる事がなかった箱の封を切った。
箱の中を見ると私好みの黒いリボンがあった。
「フェイトちゃん付けていいかな?」
「うん」
「背中向けて」
なのはの言葉に従い、なのはに背を向けて座った。
なのはが私の髪の毛を手に取りリボンを付けていく。
「ずっとフェイトちゃんに会えなくて、いつ会えるか分からなかったから。
だから何時でも渡せるように思っていつも持ってたの。
フェイトちゃんがわたしの傍に居られなくても、
そのリボンならきっとフェイトちゃんとずっと一緒に居てくれると思ったから……出来たよフェイトちゃん」


173 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:41:00 ID:1CaCEeGO
寂しげに話すなのはの姿に、切なさで胸が苦しくなる。
ずっとなのはを傷つけてたのに、それなのになのははずっと私を探して…。
どうして―――。
もう何も考えられず、ただ切なさと愛おしさで胸が一杯になった。
我慢しようとしても瞳から涙が溢れ、頬を伝い、雫がこぼれベッドのシーツに染みが出来る。
視界が滲んでしまう。
駄目だ、そう思ってるのはずなのに勝手に口を開く。
「好き…」
なのはに背を向けたまま告げた。
私はおかしい。
言っちゃ駄目なのに、隣にいてもずっと我慢しようって決めたばかりなのに。
なのはの想いであっさりと崩れ去ってしまった。
口を止めないといけないって思っても心も体も言うことを聞かなかった。
「なのはが好きなんだ。……どうしようもないぐらい、頭がおかしくなりそうなぐらい…なのはが愛しいんだ」
ずっと心の奥に仕舞っていた想いが涙と一緒に溢れ出てしまった。
「本当はずっと一緒に居たかった。でも怖かったんだ、なのはが好きで、
好きだって知られて変に思われたくなくて、迷惑かけたくなくて。
これ以上なのはを好きになって言ってしまわないように……。
近くに居てなのはが私以外の誰かを好きになるのを見たくなくて離れたんだ。
最低だよね、自分勝手で残されたなのはの気持ちも全然考えずに」
言わないって決めたのに。
あふれ出した言葉は止まらなかった。
こんな私の想いをなのははどう思っただろう。
恐ろしくて後ろを振り返れなかった。


174 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:41:53 ID:1CaCEeGO
「聞いてフェイトちゃん。ずっと前にね、将来の夢の事でいつかフェイトちゃんとも別の道を進むことになって寂しいって言ったの覚えてる?」
拒絶の言葉が来ると思っていたのに、予想外の言葉に戸惑ってしまう。
「…うん、もちろん覚えてるよ」
なのはとの思い出はとても大事なものだから出来る限り覚えている。
それにあの会話は私にとって自分の気持ちに気がつくきっかけだったから。
良い意味でも悪い意味でも大切な思い出だった。
「よかった。わたしね、フェイトちゃんが居なくなったら寂しいってのは分かってた。
でもね、実際どういうことか分かってなかったんだ。
本当にフェイトちゃんがいなくなって気がついたの、フェイトちゃんが好きだって、居なくちゃ駄目だって。
フェイトちゃんは女の子だからそんなことないって、寂しいだけで違うかもしれないって自分の気持ち誤魔化そうとしたの。
でも全然誤魔化せなかったの。フェイトちゃんの居ない空は飛んでも楽しくなくて、フェイトちゃんと一緒だから楽しかったんだよ」
「本当に?」
涙を拭って、背後を振り返りなのはをみつめると、傷ついた動物を労わる様な優しげな笑顔で微笑んでくれた。
なのはの言葉が信じられないんじゃない。
今まで考えない様にしてたから、そんな自分の都合のいい展開。
だからなのはの言葉で、もう一度聞かせて欲しかった。
ありえないと思ってたことが現実だったんだって。



175 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:42:32 ID:1CaCEeGO
「本当だよ」
「私はなのはが思ってる様な子じゃないかもしれないよ?
卑怯だしなのはが誰かと仲良く話してたら嫉妬しちゃうし、勝手に逃げちゃったりするずるい子なんだよ?それでもいいの?」
「いいよ、そんなフェイトちゃんが好きなの。
あ、でも遠くに勝手にいっちゃうのは困るかな、置いて行かないで連れて行って欲しいな」
「ふふっ」
「にゃはは」
さっきまで泣いてたのに、少し可笑しくなり思わずお互いに笑ってしまう。
「今日から恋人なんだね、なのは」
「そうだよ、フェイトちゃん。もしかしたらわたし達のこと変だって言う人も居るかもしれないけど、でもそれでもいいの。フェイトちゃんと一緒なら」
「私もなのはとなら。なのはが隣に居てくれればどんなことがあっても後悔しないよ」
なのはが隣に居てくれるのならどんな茨の道でもいい。誰よりも大好きで、なのはの想いに応えたいから。
優しく抱き寄せ、目を閉じて唇を重ねた。
初めてのキスは柔らかく甘く、ほんの少し涙の味がした。
「初めてのキスだね、なのは」
「よかった、フェイトちゃんも初めてだったんだ。本当はね、わたしも怖かったんだよ。
フェイトちゃんが遠く行っちゃって知らない誰かと付き合うんじゃないかって。
わたしよりもずっと仲のいい人が出来てるんじゃないかって、怖かったんだからね」
「なのは以外考えられないよ、ずっと遠くにいてもなのはの事ずっと考えてた。
忘れようって何度も思ったけど忘れなれなくて、想いは強くなる一方だったんだ」
「フェイトちゃん、もう少し強く抱きしめて」
「でも、身体は平気?」
「いいから、お願い」
応える代わりに、もう少しなのはに近づきほんの少しだけ抱きしめる力を強めて言った。
「なのはがいやだって言っても、これからはずっと一緒にいるからね」


176 名前:ふたりの道[sage] 投稿日:2007/12/02(日) 19:44:00 ID:1CaCEeGO
これで終わりです。
途中フェイトの片思いに路線変更しようか迷ったりしたけど、やっぱりらぶらぶが好きなんで。
2007年12月03日(月) 05:06:11 Modified by nanohayuri




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