マッチ売りのなのはさんを拾うフェイトさんの話
769 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/12/06(土) 21:13:08 ID:ED9lWX7o
スレの妄想を力に、試しに書いてみた。
マッチ売りのなのはさんを拾うフェイトさんの話。別ver。
女たちが、野に咲く花を無造作に束ねただけの貧相なブーケを手に、夜の街を行く男たちを呼んでいる。
ほんとうの商品は、花籠をさげた女たち本人だ。
ひとり、またひとりと人の流れから外れ、目当ての女の前で足をとめ、籠のなかのブーケを選ぶそぶりで、一夜の恋人の値段を交渉する。
フェイトはコートのポケットを探りながら、流れのままに歩いた。
ひとりで眠るのには、いかにも冷たい夜だった。
かじかんだ指の先に、愛用のライターが見つからない。
そうすると、火が点けられないままくわえているたばこも、淋しいような気になった。
暗い空を見上げて思わずもらした、溜息が白い。
「――やめてくださいっ!」
白くかすむ世界、花を売る媚びた声を貫き、凛として拒絶の声が響いた。
「なんだよ、ただおれは幾らか、ってきいただけだろ」
「手を離して」
「騒ぐなよ。あんただって、ここがどんなとこだか知ってるだろう。
その籠のなかみだけで商売するつもりじゃないだろうな」
「籠のなかみ、だけ…?」
「おいよせよ、まさか、あんた」
男に掴まれた華奢な手首。
栗色の後れ毛がこぼれた、なめらかな、白いうなじ。
臆せずに、男を見上げるその瞳は甘く薫るラヴェンダーの色。
足元にはマッチの小箱がこぼれている。
まだ、少女だった。
770 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/12/06(土) 21:14:33 ID:ED9lWX7o
「買うよ」
「…え」
「マッチを、くれる?」
対峙する男と少女のあいだに、するり、フェイトの身体が割り込んだ。
少女の手首を掴んだままの男の手に触れ、
「ね、この子。あなたの欲しいものは売れないよ」
フェイトの赤い瞳が、男の目を下から覗き込んで、光る。
毛深い手に触れた手に、少しずつ力をこめていく。
「わかるよね?」
「……あ、っああ、そうだ、な」
そそくさと背中を向け、足早に去っていく男を尻目に、フェイトは少女の足元に片膝をついた。
ばらまかれたマッチの小箱を拾い、少女の籠のなかに戻してやる。
「大丈夫?」
「はい…ありがとうございました、助かりました、ほんとうに」
「大変そうだね」
少女は目を細め、微笑んだ。
まつげが落とした影が、ほんのすこし、さみしそうだと思った。
「だけど頑張らなくちゃ。家族のためにも…」
「頑張る必要なんて、ないと思うけど。君をこんなところに寄越す人たちのためになんてね」
寒さのためにほんのり赤らんでいた少女の頬が強張る。
「知らなかったのかもしれないけど、いい加減気付いたよね? 早く帰ったほうがいい」
「だけど。わたしは」
771 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/12/06(土) 21:15:44 ID:ED9lWX7o
わたしは、籠を空っぽにするまで帰れないから。おばさんと、約束したから。
だから。
少女はフェイトを見つめて、気丈に微笑んでみせるのだ。
「…そうだ、マッチがお要りなんでしたね」
「うん」
フェイトは、籠のなかから小箱をつまみあげようとする、少女の指を取った。
細い指だ。水仕事でもしているのだろうか、あかぎれができていて痛々しい。
「籠のなか、全部」
「全部だなんて。だめです、そんなに良くしてもらったら」
「全部欲しいんだ」
戸惑う少女の指に、指を絡めて握りしめる。
フェイトの手よりちいさな手。短い指。
指の腹で撫でるようにすると、かさかさしていて、そして、あたたかかった。
「君の籠のなかを空っぽにして、そうしたら、君の時間を、私にくれないかな…?」
ひとりで眠るのには、冷たい夜だから。
「一晩でいいよ」
――友達になりたいんだ…
試しに書いてみた、が、拾うところより先に進まなかった…
いまはこれが精一杯。
スレ汚し失礼しました。
スレの妄想を力に、試しに書いてみた。
マッチ売りのなのはさんを拾うフェイトさんの話。別ver。
女たちが、野に咲く花を無造作に束ねただけの貧相なブーケを手に、夜の街を行く男たちを呼んでいる。
ほんとうの商品は、花籠をさげた女たち本人だ。
ひとり、またひとりと人の流れから外れ、目当ての女の前で足をとめ、籠のなかのブーケを選ぶそぶりで、一夜の恋人の値段を交渉する。
フェイトはコートのポケットを探りながら、流れのままに歩いた。
ひとりで眠るのには、いかにも冷たい夜だった。
かじかんだ指の先に、愛用のライターが見つからない。
そうすると、火が点けられないままくわえているたばこも、淋しいような気になった。
暗い空を見上げて思わずもらした、溜息が白い。
「――やめてくださいっ!」
白くかすむ世界、花を売る媚びた声を貫き、凛として拒絶の声が響いた。
「なんだよ、ただおれは幾らか、ってきいただけだろ」
「手を離して」
「騒ぐなよ。あんただって、ここがどんなとこだか知ってるだろう。
その籠のなかみだけで商売するつもりじゃないだろうな」
「籠のなかみ、だけ…?」
「おいよせよ、まさか、あんた」
男に掴まれた華奢な手首。
栗色の後れ毛がこぼれた、なめらかな、白いうなじ。
臆せずに、男を見上げるその瞳は甘く薫るラヴェンダーの色。
足元にはマッチの小箱がこぼれている。
まだ、少女だった。
770 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/12/06(土) 21:14:33 ID:ED9lWX7o
「買うよ」
「…え」
「マッチを、くれる?」
対峙する男と少女のあいだに、するり、フェイトの身体が割り込んだ。
少女の手首を掴んだままの男の手に触れ、
「ね、この子。あなたの欲しいものは売れないよ」
フェイトの赤い瞳が、男の目を下から覗き込んで、光る。
毛深い手に触れた手に、少しずつ力をこめていく。
「わかるよね?」
「……あ、っああ、そうだ、な」
そそくさと背中を向け、足早に去っていく男を尻目に、フェイトは少女の足元に片膝をついた。
ばらまかれたマッチの小箱を拾い、少女の籠のなかに戻してやる。
「大丈夫?」
「はい…ありがとうございました、助かりました、ほんとうに」
「大変そうだね」
少女は目を細め、微笑んだ。
まつげが落とした影が、ほんのすこし、さみしそうだと思った。
「だけど頑張らなくちゃ。家族のためにも…」
「頑張る必要なんて、ないと思うけど。君をこんなところに寄越す人たちのためになんてね」
寒さのためにほんのり赤らんでいた少女の頬が強張る。
「知らなかったのかもしれないけど、いい加減気付いたよね? 早く帰ったほうがいい」
「だけど。わたしは」
771 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/12/06(土) 21:15:44 ID:ED9lWX7o
わたしは、籠を空っぽにするまで帰れないから。おばさんと、約束したから。
だから。
少女はフェイトを見つめて、気丈に微笑んでみせるのだ。
「…そうだ、マッチがお要りなんでしたね」
「うん」
フェイトは、籠のなかから小箱をつまみあげようとする、少女の指を取った。
細い指だ。水仕事でもしているのだろうか、あかぎれができていて痛々しい。
「籠のなか、全部」
「全部だなんて。だめです、そんなに良くしてもらったら」
「全部欲しいんだ」
戸惑う少女の指に、指を絡めて握りしめる。
フェイトの手よりちいさな手。短い指。
指の腹で撫でるようにすると、かさかさしていて、そして、あたたかかった。
「君の籠のなかを空っぽにして、そうしたら、君の時間を、私にくれないかな…?」
ひとりで眠るのには、冷たい夜だから。
「一晩でいいよ」
――友達になりたいんだ…
試しに書いてみた、が、拾うところより先に進まなかった…
いまはこれが精一杯。
スレ汚し失礼しました。
2009年08月30日(日) 21:34:31 Modified by coyote2000