25-905
904 名前:名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/05/07(木) 01:11:58 ID:yHTuMRoL
ふらーり、かねてからの予告どおりシリアス実験中篇いきますよぉ
なのフェイかつフェイなのです、クロスというか平行世界ものです
形式はけっこう悩みましたが、まあこんな感じで最後まで予定です
そこそこのポジションにユーノが配置されています、お気をつけください
世界観キャラ設定魔法その他に捏造てんこ盛りです、お気をつけください
三陸鉄道開業25周年記念ポスター通販受付中です、要チェックしてください
全8回予定
あそうそう、二人ほど死んでます
905 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:13:02 ID:yHTuMRoL
ただ、彼女の腕があった。
些細な理由で口論、ちょっとだけ気まずい時期が何日か続いて、
いつもの様に、これまでの様に、何かのきっかけで仲直り。
だからその、ちょっとした任務中の不注意も、良い契機だと。
私の名前を叫んだ彼女の言葉が聞こえたままに突き飛ばされて、
何がおきたのかを理解する間も無い惑乱の中で不安に襲われる。
頬に寄せられたのは、手の平の柔らかさ。
私は、何を今まで意地をはっていたのだろうか。
もう、たくさん謝ろう、たくさん甘えよう。
ああ、これで仲直りができる。
あのね、フェイトちゃん ――
引き寄せた腕は何の抵抗も無く
彼女の姿が見えなくても
繋いだ手は確かにここに
―― 唐突に、叫んでいる誰かが自分だと知った。
挽き潰された肉片を、割れ砕けたデバイスの欠片をいくら掻き集めても、
出来上がるのは不格好な、指の隙間か ら彼女が零れ落ち
フェイト・T・ハラオウン執務官の早逝を、彼女を知る誰もが深く悼んだ。
906 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:13:51 ID:yHTuMRoL
『セイドソウロング 〜#1 終われない世界』
たおやかな金髪が、風に揺れる。
ミッドチルダ西部エルセア地方、ポートフォールメモリアルガーデン。
穏やかに鎮魂の花碑を寄せる影はふたつ、故人と縁の深かった二人。
なのはが鬼籍に入ってから、一年が経とうとしていた。
「ヴィヴィオがね、こんど無限書庫の司書さんになったんだよ」
墓石は何も答えない。
仕方がないので、写真とかを取り出して見せびらかしてみる。
無限書庫の期待の新人、ヴィヴィオ・ハラオウン十歳。
どうにも反応が鈍いので、同伴していた無限書庫司書長からも口ぞえをしてもらった。
「期待の新人だよ、本当にいろいろと」
ようやくに墓石の艶が増した、気がする。
なのは・ハラオウン 56 - 77
今際の際に、故人の願いで誓いを交わした。
今もまだ、病に奪われていく彼女の感触が指の上に残っている。
忘れてと言っては泣き、忘れないでと言っては震えていた。
花のような笑顔を思い出せた、強く優しい声を思い出せた。
それなのに、気が付けばいつの間にか全体の記憶はおぼろになっている。
本当に、私は彼女を愛していたのだろうか。
最近はそんな事ばかりを頭に思い描く。
907 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:14:45 ID:yHTuMRoL
「あ、あのさフェイト、なんでもこの近くにパスタの美味しい店があるらしくてさ」
聞こえた誘いに意識が戻り、振り向けば、何か随分と不器用な人間がそこでうろたえて居る。
後ろ手に、ファイト、などと書いてあるカンニングペーパーが見えていて、ギンガの字だ。
人間、どこでどう繋がっているのかわからないものだなぁとか、しみじみと考えてしまう。
まあそれも良いかと顔を上げて、
顔を上げて見通した先に、居た。
「え?」
遅れて振り向いたユーノも、動きが止まる。
ありえない。
一人の魔導師が、霊場の入り口方向から、近づいてくる。
見忘れるはずもない、真白のバリアジャケットに、魔導師の杖。
だけど、なのはは既に死んだはずで、そんな駆け寄ってくるはずもなく、
咲き零れる花のような笑顔で、駆け寄ってきているのは誰だというのか。
何かがおかしい。
殺意。
反応が遅れて目の前には、魔力の障壁。
甲高く割れる音、目の前に飛び散る色は、朱。
撃たれたと気付いた時には、彼女との間に負傷したユーノ。
「おかしいな、私のフェイトちゃんの隣に」
楽しげな音色、鈴を鳴らしたような声。
ああそうだ、彼女はこんな声をしていた。
909 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:15:24 ID:yHTuMRoL
何が起こっているのか、理解できない。
突然の、おそらくは砲撃をユーノが防ぎ、何故。
石畳に鮮血が飛ぶ、殺傷設定、威力がおかしい、何故。
記憶に残る彼女よりも、速く、陰惨なそれは、
それでも間違えるはずもない魔力光が ――
「何でユーノ君なんかが居るのかな」
底冷えのする言葉だった。
穏やかとも言えるほどに、ゆっくりと紡がれたその一言は、
しかし隠し様の無いほどの怒気と殺意で塗り固められている。
とっさに魔法式をいくつかくみ上げ、バリアジャケットを、
バリアジャケットを、纏ってどうする気だろう。
討つ、誰を?
私が、なのはを?
「逃げろフェイト!」
叫びが耳に響く、爆風に巻き上げられた小石が肌に当たる。
どうすれば、私は誰に、何をしてあげれば良いのだろう。
何も出来ないままにぐるぐると囁かれる言葉が脳裏に刻み込まれる
会いに来たよ
会いに来たんだよ、フェイトちゃん ――
貴女は、いったい誰ですか
910 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:16:48 ID:yHTuMRoL
(同時刻 時空管理局本局)
背後に流すようになった髪が、歩幅にあわせて左右に揺れる。
廊下を歩いて会議室へと向かう、私と八神部隊長、正確にはもう部隊長ではないのだけど、
呼びなれてしまったせいか、ついつい八神部隊長と呼んでしまう、なおすべきだろう。
「フェイトちゃん落ち込んどったで、自分の責任やって」
言われて軽く落ち込む、自分の不甲斐なさに。
マリアージュ事件、もしくはイクスヴェリア事件、それとも単純にルネッサ事件。
もしも起こっていたらそう呼ばれたであろう大事件の切っ掛けは、いくつもの偶然に味方され、
私とフェイトさんで未然に防ぐ事が出来たものの、引き換えに失ったものは私の執務官試験と、
はい、落ちましたよ、今年の執務官試験。
「まあ、大事がおこって試験に落ちるのは、師匠譲りって事やな」
「嫌ですよ、そんなジンクス」
来年こそは受かりますよ、とか言ってるとまた落ちそうな気になってきて、嫌だなぁ。
とか、そうこうしているうちに、話題が変わる。
なんだか急な任務が入ったとかで、フェイトさんのオフシフトも返上になり、
留守録に通達を送信したのは今から5分前、そのうち合流する事になるだろう。
「元素周期表みたいなもんでな、リチウム世界の横にはベリリウム世界がぁ、なんつうてな」
何の話題だかと、いぶかしむ。
911 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:17:31 ID:yHTuMRoL
今回の任務に何か関係があるのかと、よくよくに聞いてみれば次元世界の事を言いたいらしい。
すなわち次元航行技術、アルザスや97管理外世界のように、多種多様な次元世界を渡る技術。
「これが、机の上に置かれた周期表みたいなもんでな」
よくわからない比喩だ。
「隠匿されとるだけで、移動自体は技術的に難しくないそうなんやと」
会議室の扉を開けると、そこには先客が居た。
まず、何故に会議室の真ん中に鏡を置いているのかと間違い、悩み、
確かに存在する事を確かめ、自分とは階級章と目つきが違う事を発見する。
「つまりは、同位元素の世界や」
そこには普段、鏡を見れば見つける事の出来る姿が、静かに私をにらみつけていた。
次元航行部隊勤務、ティアナ・ランスター執務官から
八神はやて特別捜査官へと、捕縛任務への協力が要請される。
捕縛対象は、高町なのは三佐。
大規模砲撃戦による、ポートフォールメモリアルガーデンの壊滅と、
フェイト・T・ハラオウン執務官、並びにユーノ・スクライア司書長の
負傷の報が入るのはこれより半刻の後になる。
(続)
912 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:18:11 ID:yHTuMRoL
あとがきー
なの:会いに来たよフェイトちゃん!
フェイ:再婚旅行はATAMIにしようか!
《完(アビィ!!!)》
ユーノ:終わらしやがったあああぁぁッ!!
でも良かったのですが、まあ仕方ないのでもう少し続きます
ぶっちゃけると、最後の2回を書きたいからはじめたわけで、
まいていきますよー、削り落としまくりますよー、本筋以外片っ端から
連画をSS形式でチャレーンジってノリですよぉ、とかとか
そんなわけで、補間妄想を皆様各自でご勝手に宜しくお願い致します
次回:セイドソウロング #2「幾何学模様の住人 ティアナ・ランスター」
ふらーり、かねてからの予告どおりシリアス実験中篇いきますよぉ
なのフェイかつフェイなのです、クロスというか平行世界ものです
形式はけっこう悩みましたが、まあこんな感じで最後まで予定です
そこそこのポジションにユーノが配置されています、お気をつけください
世界観キャラ設定魔法その他に捏造てんこ盛りです、お気をつけください
三陸鉄道開業25周年記念ポスター通販受付中です、要チェックしてください
全8回予定
あそうそう、二人ほど死んでます
905 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:13:02 ID:yHTuMRoL
ただ、彼女の腕があった。
些細な理由で口論、ちょっとだけ気まずい時期が何日か続いて、
いつもの様に、これまでの様に、何かのきっかけで仲直り。
だからその、ちょっとした任務中の不注意も、良い契機だと。
私の名前を叫んだ彼女の言葉が聞こえたままに突き飛ばされて、
何がおきたのかを理解する間も無い惑乱の中で不安に襲われる。
頬に寄せられたのは、手の平の柔らかさ。
私は、何を今まで意地をはっていたのだろうか。
もう、たくさん謝ろう、たくさん甘えよう。
ああ、これで仲直りができる。
あのね、フェイトちゃん ――
引き寄せた腕は何の抵抗も無く
彼女の姿が見えなくても
繋いだ手は確かにここに
―― 唐突に、叫んでいる誰かが自分だと知った。
挽き潰された肉片を、割れ砕けたデバイスの欠片をいくら掻き集めても、
出来上がるのは不格好な、指の隙間か ら彼女が零れ落ち
フェイト・T・ハラオウン執務官の早逝を、彼女を知る誰もが深く悼んだ。
906 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:13:51 ID:yHTuMRoL
『セイドソウロング 〜#1 終われない世界』
たおやかな金髪が、風に揺れる。
ミッドチルダ西部エルセア地方、ポートフォールメモリアルガーデン。
穏やかに鎮魂の花碑を寄せる影はふたつ、故人と縁の深かった二人。
なのはが鬼籍に入ってから、一年が経とうとしていた。
「ヴィヴィオがね、こんど無限書庫の司書さんになったんだよ」
墓石は何も答えない。
仕方がないので、写真とかを取り出して見せびらかしてみる。
無限書庫の期待の新人、ヴィヴィオ・ハラオウン十歳。
どうにも反応が鈍いので、同伴していた無限書庫司書長からも口ぞえをしてもらった。
「期待の新人だよ、本当にいろいろと」
ようやくに墓石の艶が増した、気がする。
なのは・ハラオウン 56 - 77
今際の際に、故人の願いで誓いを交わした。
今もまだ、病に奪われていく彼女の感触が指の上に残っている。
忘れてと言っては泣き、忘れないでと言っては震えていた。
花のような笑顔を思い出せた、強く優しい声を思い出せた。
それなのに、気が付けばいつの間にか全体の記憶はおぼろになっている。
本当に、私は彼女を愛していたのだろうか。
最近はそんな事ばかりを頭に思い描く。
907 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:14:45 ID:yHTuMRoL
「あ、あのさフェイト、なんでもこの近くにパスタの美味しい店があるらしくてさ」
聞こえた誘いに意識が戻り、振り向けば、何か随分と不器用な人間がそこでうろたえて居る。
後ろ手に、ファイト、などと書いてあるカンニングペーパーが見えていて、ギンガの字だ。
人間、どこでどう繋がっているのかわからないものだなぁとか、しみじみと考えてしまう。
まあそれも良いかと顔を上げて、
顔を上げて見通した先に、居た。
「え?」
遅れて振り向いたユーノも、動きが止まる。
ありえない。
一人の魔導師が、霊場の入り口方向から、近づいてくる。
見忘れるはずもない、真白のバリアジャケットに、魔導師の杖。
だけど、なのはは既に死んだはずで、そんな駆け寄ってくるはずもなく、
咲き零れる花のような笑顔で、駆け寄ってきているのは誰だというのか。
何かがおかしい。
殺意。
反応が遅れて目の前には、魔力の障壁。
甲高く割れる音、目の前に飛び散る色は、朱。
撃たれたと気付いた時には、彼女との間に負傷したユーノ。
「おかしいな、私のフェイトちゃんの隣に」
楽しげな音色、鈴を鳴らしたような声。
ああそうだ、彼女はこんな声をしていた。
909 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:15:24 ID:yHTuMRoL
何が起こっているのか、理解できない。
突然の、おそらくは砲撃をユーノが防ぎ、何故。
石畳に鮮血が飛ぶ、殺傷設定、威力がおかしい、何故。
記憶に残る彼女よりも、速く、陰惨なそれは、
それでも間違えるはずもない魔力光が ――
「何でユーノ君なんかが居るのかな」
底冷えのする言葉だった。
穏やかとも言えるほどに、ゆっくりと紡がれたその一言は、
しかし隠し様の無いほどの怒気と殺意で塗り固められている。
とっさに魔法式をいくつかくみ上げ、バリアジャケットを、
バリアジャケットを、纏ってどうする気だろう。
討つ、誰を?
私が、なのはを?
「逃げろフェイト!」
叫びが耳に響く、爆風に巻き上げられた小石が肌に当たる。
どうすれば、私は誰に、何をしてあげれば良いのだろう。
何も出来ないままにぐるぐると囁かれる言葉が脳裏に刻み込まれる
会いに来たよ
会いに来たんだよ、フェイトちゃん ――
貴女は、いったい誰ですか
910 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:16:48 ID:yHTuMRoL
(同時刻 時空管理局本局)
背後に流すようになった髪が、歩幅にあわせて左右に揺れる。
廊下を歩いて会議室へと向かう、私と八神部隊長、正確にはもう部隊長ではないのだけど、
呼びなれてしまったせいか、ついつい八神部隊長と呼んでしまう、なおすべきだろう。
「フェイトちゃん落ち込んどったで、自分の責任やって」
言われて軽く落ち込む、自分の不甲斐なさに。
マリアージュ事件、もしくはイクスヴェリア事件、それとも単純にルネッサ事件。
もしも起こっていたらそう呼ばれたであろう大事件の切っ掛けは、いくつもの偶然に味方され、
私とフェイトさんで未然に防ぐ事が出来たものの、引き換えに失ったものは私の執務官試験と、
はい、落ちましたよ、今年の執務官試験。
「まあ、大事がおこって試験に落ちるのは、師匠譲りって事やな」
「嫌ですよ、そんなジンクス」
来年こそは受かりますよ、とか言ってるとまた落ちそうな気になってきて、嫌だなぁ。
とか、そうこうしているうちに、話題が変わる。
なんだか急な任務が入ったとかで、フェイトさんのオフシフトも返上になり、
留守録に通達を送信したのは今から5分前、そのうち合流する事になるだろう。
「元素周期表みたいなもんでな、リチウム世界の横にはベリリウム世界がぁ、なんつうてな」
何の話題だかと、いぶかしむ。
911 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:17:31 ID:yHTuMRoL
今回の任務に何か関係があるのかと、よくよくに聞いてみれば次元世界の事を言いたいらしい。
すなわち次元航行技術、アルザスや97管理外世界のように、多種多様な次元世界を渡る技術。
「これが、机の上に置かれた周期表みたいなもんでな」
よくわからない比喩だ。
「隠匿されとるだけで、移動自体は技術的に難しくないそうなんやと」
会議室の扉を開けると、そこには先客が居た。
まず、何故に会議室の真ん中に鏡を置いているのかと間違い、悩み、
確かに存在する事を確かめ、自分とは階級章と目つきが違う事を発見する。
「つまりは、同位元素の世界や」
そこには普段、鏡を見れば見つける事の出来る姿が、静かに私をにらみつけていた。
次元航行部隊勤務、ティアナ・ランスター執務官から
八神はやて特別捜査官へと、捕縛任務への協力が要請される。
捕縛対象は、高町なのは三佐。
大規模砲撃戦による、ポートフォールメモリアルガーデンの壊滅と、
フェイト・T・ハラオウン執務官、並びにユーノ・スクライア司書長の
負傷の報が入るのはこれより半刻の後になる。
(続)
912 名前:セイドソウロング:2009/05/07(木) 01:18:11 ID:yHTuMRoL
あとがきー
なの:会いに来たよフェイトちゃん!
フェイ:再婚旅行はATAMIにしようか!
《完(アビィ!!!)》
ユーノ:終わらしやがったあああぁぁッ!!
でも良かったのですが、まあ仕方ないのでもう少し続きます
ぶっちゃけると、最後の2回を書きたいからはじめたわけで、
まいていきますよー、削り落としまくりますよー、本筋以外片っ端から
連画をSS形式でチャレーンジってノリですよぉ、とかとか
そんなわけで、補間妄想を皆様各自でご勝手に宜しくお願い致します
次回:セイドソウロング #2「幾何学模様の住人 ティアナ・ランスター」
2010年02月27日(土) 05:48:56 Modified by ami_solger