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31-335

ViVidに至っても親友だと言い張るなのフェイに
自称凡人さんに突っ込みを入れさせてみたSSを投下します。
イチハチ禁。

長くなりすぎたからここに落とすのは諦めてtxtで。
と決めたら倍のサイズになっていたという冗長な文章ですが、時間があればどうぞ。

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org857163.txt.html
nanofei


これの続きを書きたくなったけれど再投下するのも難しいのでこっそり更新。
以前読めなかった人すみません。
あまりの反響の多さに自身慄いてしまいましたが、上手い文章ではありませんので、暇つぶしぐらいに考えていただけると……。



長期休暇恒例の無人世界での訓練&遊びのツアー初日の夜。
明日に備えてもう寝ようとなのはと一緒に部屋に向かった。
メガーヌさん達に決めてもらった部屋割りは私となのはは二人部屋。
ヴィヴィオを含む年少組は同じ部屋で。さっき覗いたら全員スヤスヤと寝ていた。

部屋に入ると、早々に明かりを消してダブルベッドに横たわる。

「フェイトちゃん、二人で寝るの結構久々だね」
「うん、いつ以来かな」

ヴィヴィオが高町の姓になってから二人だけで寝る機会は殆どなくなっていて、前回はすぐに思い出せないほどに久しぶりだった。
暗がりの中、隣に横になっているなのはを見ると、うずうずしたような顔をしている。

どうしたのかな?
聞こうとしたら、なのはが私の首筋に抱きつくようにギューッとしがみついてきた。

「な、なのは!?」
「んん〜〜、フェイトちゃんだ、フェイトちゃんだー」

私の感触を楽しむように頬ずりしてくるなのはに激しく動揺。
心臓が跳ね回りだす。

「ど、どうしたの?」
「にゃはは、甘えたい気分なのです」
「そ、そっか、それならどうぞ遠慮なく」
「ありがと♪このまま寝ちゃってもいい?」
「うん、いいよ」
「やった、おやすみ♪」

弾んだ声を出してなのはは頬にチュッと口づけてきた。

「お、おやすみっ」

一気に顔が熱くなりながらもなんとか返事を返す。
とその数秒後には寝息が聞こえてきた。
はやっ!?……子どもですか。
私の方は訓練で疲れているのに全然眠れない。
首筋に寝息がかかってゾワゾワするし……時々、寝言のような可愛い声もして……。

(ああ、失敗したなぁ……)
暗い天井を眺めながら声を出さずに独りごちる。
私は抱きつかれた時の勢いで仰向けに寝転がっていて、
なのははそれで収まりがよかったのかろくに動くこともなく安眠中。
従って私も動けない。
横向きになっておけばなのはの寝顔を見ていられたのに、
などと、どうでもいいようなことを考えながら、眠れない夜を過ごしていた。



結局、一睡もできないまま翌朝を迎えた。
なのはは小さく身動ぎをするとゆっくりと目を開く。

「ん〜、おはよー」
「おはよう、なのは」

挨拶を返すといつもの明るい笑顔、ではなく曇った表情。
マジマジと私の顔を眺めて。

「……フェイトちゃん、なんか顔色良くない。ごめん、私のせいで寝苦しかったのかな」
「そんなことないよ!」
「ごめんね、今日は別々に寝よう」
「駄目っ!大丈夫、大丈夫だから。ちょっと訓練の疲れが……」
「そうなの?それなら、まだ寝てた方が……」
「平気だって」

問答になる前に急いで身支度を整え、訓練メニューを考え直しているなのはに申し訳なく思いながらも部屋を出た。

(ああ、でもやっぱりふらふらするかも)

ボーッとする頭を振りつつ、朝食の準備をしようと台所に向かう途中、
ティアナを見かけて挨拶をすると、驚いた顔をされてティアナとスバルの部屋へと連行された。

「なのはさんと何かあったんですか?」
「何もないよ。ちょっと抱き枕にされたくらいで」
「抱き枕……まさか、ドキドキして眠れなかったなんてオチじゃないでしょうね?」
「凄いね、ティアナ」

どうして分かったんだろう?
アコース査察官みたいな思考捜査能力に目覚めたとか?
尊敬の眼差しで年下の執務官を見つめていると、は〜〜っと深い溜息をついた。

「まったくもうっ。なのはさん大好きなんですから」
「当たり前だよ。大事な友達なんだから」
「友達……普通の友達は……いい加減気づかせてあげた方がいいのかな……でも、なのはさんの方がよく分からないし……」

何事かぶつくさ呟いてからティアナは顔を上げる。

「朝食の準備はいいですから、その間寝てください。このままだと模擬戦で倒れますよ。ここ使っていいですから」
「あ、うん。ありがとう、ティアナ」

お言葉に甘えて少し寝かせてもらうことにする。
なのはにああ言った手前、部屋では眠れないから助かった。
こちらもダブルベッドだ。
横になると枕からいい匂いがした。
けれど、一晩中感じていたなのはのものではなくて、少し寂しく思いながらも眠りについた。


ティアナに起こしてもらったのは一時間と少し経ってから。
短い眠りだったけど、これなら訓練と模擬戦もなんとかなりそうだと話していたら、
満面の笑みを浮かべたスバルが部屋に飛び込んできた。

「ティアー!聞いてきたよー!」
「ご苦労様。……で?」
ティアナはこちらを気にしながらもスバルに促した。
出ていった方がいいのかな、とティアナを見ると首を横に振られたからそのままで。

「大好きだって♪」
「んなもん聞かなくても分かるわよ!」
「あたしのことも大好きだよって言ってもらっちゃったー!」
「なんで余計なことまで聞いてんのよ!?」
「あっ、ティアのことも大好きだって言ってたよ?」
「ああッ、もうあの人はーー!!」
「と言うか、ここにいるみんな大好きだってさ」
「だから、そんなのどうでもいいっての!ったくもー!あたしが聞いてくるしかないのか……」
「あたし、もっかい行ってこようか?」
「いいわよ。似たようなことの繰り返しになりそうだから。……はぁ、気が重い……」
「大丈夫だって。なのはさん優しいからちゃんと答えてくれるよ」
「そうかも知んないけど、恐れ多いのよ。こういう時ばかりはあんたみたいな怖いもの知らずが羨ましいわ」
「なのはの話?」

ポンポンとテンポよく交わされる、
けれども意味不明な会話の中に友達の名前が出てきて口を挟んでみた。

「ええまあ、みんなのことが大好きだそうで……」
「それはそうだろうね。私もティアナやスバル、ここのみんなが大好きだよ」
「はぁ、どうしてくれようか。この人達は……」
「ありがとうございます!あたしもフェイトさん大好きですよ!もちろん、ティアもね♪」
「はぁ……」

スバルはニコニコと笑っていたけれど、ティアナは溜息をつくばかりだった。



それから、どうにかこうにか訓練と模擬戦をこなして再び夜が来て。
根っからの教官気質でワーカーホリックが入っているなのはに付き合い、
訓練データをまとめて、みんなから少し遅れてお風呂に入る。

「は〜、なんかすごい贅沢だねー」
「うん……いいお湯……」

二人っきりで浸かる広い露天風呂。
温泉で疲労を解しながら満天の星空を満喫する。

「星が、綺麗だ……」

そうだね、と頷きかけて隣を見た瞬間。

「――ッ!」

空を見上げて、星よりもなお遠くを見ている、そんななのはの姿に刺すような痛みが胸に走る。
無意識のうちになのはの腕を掴んでいた。

「どう……」

私を見て、なのはは問おうとした言葉を止めた。
きっとひどく不安げに揺れている私の瞳に、申し訳なさそうに眉を下げる。

「大丈夫だよ。飛んで行ったりしないから」
「うん……」
「もー、おちおち空も見てられないにゃー。ほら、ここにいるから、ね」
「うんっ」

おどけた調子で笑って手を握ってきたなのはに、ほっと息をついて、手を握り返す。

空を愛していて、誰よりも空に愛されているなのはだから、
時々、空に囚われて帰ってこなくなるのではと不安になってしまう。
その度にこうして繋ぎとめているのは、なのはにとっては重荷なのかもしれない。
例えそうでも放すわけにはいかない。
私の……私たちの幸せはなのはとともにあるのだから、失うわけには、いかないんだ。



夜も更けて、ベッドに潜り込む。
なのはが遠い。
私との間の隙間が寒い。
ベッドの端ギリギリに横たわっていて、人一人は入れそうなくらいの空間がある。
どうやら、寝不足だったことを誤魔化し切れなかったようで、私がゆっくり眠れるようにとの配慮なのだろう。

「なのは……今日は、いいのかな?」
「うん」
「えっと、でも、ちょっと寂しいかなって」
「ん……それなら昨日と逆にしようか」
「え、あ……うん」

距離を詰めてきたなのはを今日は私が抱きかかえるようにする。

(うう……やっぱりドキドキする……)

「それじゃ、おやすみ。フェイトちゃん」
「おやすみ、なのは」

なのははやっぱりあっさりと眠りに落ちていった。
私はその日もしばらくは眠れなかったけれど、
大切な人が腕の中にいてくれる安心感が、緊張を上回った頃にスっと眠りに入った。




このツアーも今日で三日目。
昨日とは違い、血色の良い顔色のフェイトさんを見て安心する。
聞いてみると今度はなのはさんが抱き枕になったらしい。

……何なんだろう、この人達は。
フェイトさんのなのはさんへの想いは傍から見ていて明らかなのに、
自分では頑なに友達だと言っていて、実際にそう思っているらしいのが不思議なところだ。
普通は友達に対してそんなにドキドキしたり、常に目で追ってたりしません、と教えてしまいたい。
けれど、それで変に気づいて二人の仲に亀裂が入ってしまったら、
どう後悔していいか分からないから、何も言えないのがモヤモヤする。

(なのはさんの気持ちが分かればね……)
フェイトさんのことが好きなのはよく分かっている。
けれど、あたしの目にはそれが親友としてのものか、
それ以外のものが混ざっているかは判別がつかなかった。
スバルを偵察に出したり、それとなく観察してみたりしても結果は同じ。

やっぱり、直接なのはさんに聞いてみよう。
余計なお世話かもしれない。
友達のままでも全く問題ないのかもしれない。
でも、守り導いてくれた恩師二人に何か返したかったから決心する。

就寝前、ロッジから少し離れた丘の上からなのはさんに念話を送った。

――お話したいことがあります、と。

「来たよ、ティアナ」
「はい、呼び出してしまってすみません」
「いいよ。たまには二人で話したいしね。……風が、気持ちいいね」
「そうですね」

元部下のいきなりの呼び出しも全く嫌がっている様子はない。
過去に散々迷惑をかけた時も、こんな風に笑ってくれていたっけ。
風に吹かれて、髪を押さえる様がとても綺麗だと思う。
いつか、この人のように空を飛べるように、空が似合うようになりたいと強く憧れる。
そして、空と同じくらい似合っているのが、フェイトさんと肩を並べている姿だと、そう思う。


「…………フェイトさんのこと、どう思っていますか?」

ここへ至るまでに色々と考えてはみたけれど、黙ってこちらの言葉を
待っているなのはさんに、どう聞いていいか分からないまま切り出した。

「ああ、昨日のスバル、ティアナのさしがねだったんだ」
「す、すみませんっ」

お見通しだとクスっと笑うなのはさんに慌てて謝った。

「大好き、じゃ納得出来ないんだよね。どうしてそんなこと気にするのかな?」
「……すみません。今は詳しくは言えません。
 でも、いい加減な気持ちで聞いているわけじゃありませんから、出来れば答えていただけると」

下手な誤魔化しは通じない。
騙し通すだけの嘘をつく自信もない。
ただの野次馬根性で聞いているわけではない、という気持ちだけ込めて真っ直ぐ見つめる。

辺りに沈黙が落ちる。
なのはさんは何かに思いを馳せるように遠い目をして。
それから口を開いた。

「…………どう言えばいいのかな。
 フェイトちゃんは、ずっと私のことを見守ってくれていて、空を飛んでも必ず帰ってきたいって思わせてくれる人で、
 私が今生きて、ここに立っていられるのは、あの子のおかげだと思ってる」

ゆっくりと、いとおしむように語るなのはさんの姿から、
フェイトさんがどれほど大切な人かということは伝わってくる。

けれど、今日聞きたいのは少し違ったことだった。
思い切って核心に迫る。

「はい。……その……恋人になりたい、とか思ったことは」
「……フェイトちゃんが望めばなるかもしれないけど、そんなこと考えてなさそうだよね」
「そう、でしょうね」

確かに。恋心すら自覚していないのだから、考えているはずもない。
けど、こう言うってことはなのはさんも……好き、なんですよね?
これならフェイトさんが気づいても大丈夫なのかな、と少し安堵した。

「なのはさん自身は……」
「私は…………私には大切にしたい人も、やりたいことも、たくさんあり過ぎて……望めない、かな。
 ……いつか、あの子だけを愛してくれる人が現れるかもしれないから」
「愛して、るんですか?」
「……うん、そうだね。愛してるよ」

静かななのはさんの言葉がストンと胸に落ちた。
少しだけ分かった気がする。
普通の恋愛感情なんて通り越したレベルの愛情を抱いているのだと。
それならば、あたしは口を出さない方がいいのかもしれない。
けれど、一つだけ。

「でも……あの人はきっと、なのはさん以外を選びませんよ」
「………………やっぱり、そうなのかな」
「――分かってたんですか!?」
「いや、なんとなくはね。でも、未来がどうなるかなんて分からないじゃない。
 普通にフェイトちゃんが結婚したりして、フェイトちゃんの子どもに会えたりするかもしれないし」
「ないと思います」
「そうかな。フェイトちゃんの子なら可愛いと思うんだけどな。エリオやキャロみたいな優しい子だろうし」
「それはそうでしょうけど……愛してるんですよね!?」
「うん。…………だから、幸せになって欲しいんだ」
「あなたといる時以上に幸せなフェイトさんなんて、見たことありません!!」

嘘のない瞳、けれど寂しさの混じった表情のなのはさんにムキになって怒鳴るように叫んでしまった。

どうして他の人と一緒になるのが幸せだ、なんて思えてしまうんだろう。
どうして、自分が幸せになることは考えないんだろう。
それは……きっと、あたしの知らないことも色々とあるんだろうけど、
こんなこと知ったらフェイトさんが悲しむってことぐらいは、あたしにだって分かるのに!

怒りに似た、それでいて泣きたいような気持ちになりながら、ほとんど睨むようにしてなのはさんと対峙する。

ひどい緊張。口の中がカラカラに乾く。
敵意や重圧なんて向けられてはいないのに。
刻々と気力が削り取られていく。
けれど、こればかりはなのはさんが正しいとは思えないから。
だから、逃げずにしっかりと立つ。


時間の感覚が消えて如何程か。

なのはさんはあたしの激情を受け流すように微笑んだ。

「そっか。それなら、私が幸せにするしかないのかな」
「ええ、それがいいと思います。……生意気言ってすみません」
「そんなことないよ。ありがとう、ティアナは優しい子だ」

嬉しそうに目を細めるとなのはさんはあたしの頭を撫でてきた。

「な、なっ!?子どもじゃないんですから!?」
「うん、大人びた良い顔するようになったね。
 でも、私にとっては何時まで経っても大事な教え子だから、なにかあったら相談においで。……恋愛関係はちょっと苦手だけど」
「苦手なのはよーっく分かりました。けど、ありがとうございます」
「今度会う時までにはもう少しましになっておくから、スバルのこと聞かせて欲しいな」
「なんであいつが出てくるんですか!?」
「……言って欲しい?」
「いいです!結構です!」

いたずらっぽく笑うなのはさんに慌てて否定する。
あーもうっ、この人には一生頭があがらないのだろうか。
その場に残ってロッジへと去っていく背中を溜息をつきながら見送った。




三日目の、ツアー最終日の夜。
今夜はすぐに寝るのももったいないな、とベッドに入りながらも思っていたら、
なのははジッと私の顔を見ながら何か考えている様子。
声を掛けづらい雰囲気に黙って見つめ返す。
夜の静けさの中、聞こえるのは段々と速度を上げて行く胸の鼓動だけ。
そうしてしばらく経つと、なのははすぐそばに寄り添って抱きしめてきた。

「なの、は……?」
「フェイトちゃんもギュってしてくれる?」
「うん」

よく分からないまま言われたとおりにする。
なのはは私の体温を確かめるようにピッタリとくっついている。

「……ここが、ね。フェイトちゃんの隣が私の居場所だと思うんだ。どこにいても、どこに飛んでいったって、ここに帰ってきたい」
「うん。私もなのはの側にいたいよ。これから先も、ずっと」
「ずっと?」
「うん、ずっと」
「誰かと、結婚したいとか思わないのかな?」

珍しいことを聞いてくる。
それに……ここが居場所だと言ってくれたのに、答えを誤ったら
遠くへ行ってしまいそうで、慎重に、誤解のないように言葉を選ぶ。

「……相手が、いないよ。ともに歩んでいきたい相手が、なのは以外に」
「そっか」

なのはの声が嬉しそうに響く。
でも、何かを諦めたように一つ息を吐いて。

「それなら……私と、恋人になる?」
「えっ」

予期していなかった提案に、一瞬、呼吸が止まる。
恋、人……?なのはは大切で大好きな…………友達。

「恋人って、友達とどう違うんだろう」
「あんまり変わらないのかも。多分、キスとかエッチなこととかもするんだろうけど」
「……心臓に悪そう」

なのはとそんなことをしたら、心臓が壊れるのではないかと少し不安になった。
今でさえ、ドキドキして仕方ないのに。

「そうだろうね。……だから、私は今のままでも構わないよ。フェイトちゃんが一番幸せでいられるようにしたいから」

幸せでいられる関係、としばし考える。
なのはと友達になってから私はずっと幸せだった。
大変なことも苦しいこともあったけれど、なのはが居てくれたらそれでよかった。
それは、きっとこれからもおんなじで。
だから……今まで通り、がいいのかな。
なのはの側で見守っていられる、今のまま。

でも、現状維持を選んで、なのはが他に恋人を作ったら……?
今までのように気軽に高町家に寝泊まりしたり、遊んだりも出来なくなるだろう。
それから、私以外の誰かと――思考を拒否したくなることが浮かんで口を開いていた。

「あの……私が、恋人になったら、他の人と、その……え、え、エッチなことしたりは」
「……浮気は禁止」
「あ、なる。なりたい。なります、恋人」

ほぼ反射的に答えていた。
まだ恋人という関係にピンとはこなかったけれど、なのはを誰にも渡したくない一心で。

「じゃあ、なろっか」
「うん」

頷くとなのははゆっくりと顔を近づけてくる。
あ、これって……と考える間もなく唇が重なった。
フワっとした柔らかな愛しい感触に一雫涙が零れた。
…………いと、しい?

「私………ずっと、なのはのこと好きだったのかな?」
「私に聞かれても。……他の人とこうすること考えてみれば分かるかも」

他の人、と?と考えてみようとしただけで背筋に寒気が走った。

「や、やだ!なのはじゃないとっ!………………あ、そうか。なのはが……好き、だったんだ」
「鈍感だな〜、フェイトちゃんは」
「だって、なのははなのはだもん……」
「ん……フェイトちゃんはフェイトちゃんだもんね。
 ただの好きって言葉じゃ括れないのはなんとなく分かるよ」
「うん。でもなのは、何か……あった?結構突然というか、今まで何も言わなかったのに」
「……さっきティアナとお話してね。教えてもらったんだ。私といるのがフェイトちゃんの幸せだって」
「ティアナは気づいてたんだ……」
「そうみたい。……私も、ね。多分気づいてた。フェイトちゃんが私しか見てないって。
 でも、私はいつもフェイトちゃんに心配掛けてばっかりだから駄目だって、
 気持ちに応える資格がないんだって……気づかないふり、してたんだと思う……」

無自覚な私の想いはなのはを苦しめていたのだろうか。
資格なんていらないのに。
なのはがなのはでいてくれるなら、それだけで、何もいらないのに。
友達でも、恋人でも、それは同じ。
声を震わせるなのはの髪を撫でて耳元でゆっくりと囁く。

「……違う。なのはじゃないと駄目なんだ。
 なのはが大切だから、側にいて欲しいから心配してるんだよ」
「うん、ありがとう……」
「心配掛けられるのはもう仕方ないから……それはいいから、離れて行ったりしないで。私の、側に居て」
「行かないよ、どこにも。私だってフェイトちゃんの側に居たいもの」

答えを聞いて、嬉しくて胸がいっぱいになってただ抱きしめる。

(……困った。どうしよう。私、この子が好きだ)

物凄く今更ながらはっきりと自覚した。
恋人を作ることも相手がなのはだとも考えていなかったから、どうしていいか分からない。
じゃれつくように耳元に頬をすり寄せていくと、なのははくすぐったそうに身を捩った。
でも、やめたくなくて、放したくなくて、しっかりと捕らえておく。

「んっ……あの……えっちなこと、したいの?」
「え……えっ!?」
「もし、したいなら……いいよ。フェイトちゃんのしたいことなら何だって」

な、何でもっ!?って何をすればいいんだろう!?
えっとえっと……とぐるんぐるんの頭で思い浮かべたところでプツッと意識が途切れた。



「………………あれ?………ゆめ…………?」

ベッドの上で身を起こしながら冴えない頭で考える。
ロッジの一室。カーテンから朝の光が漏れている。おそらくはツアー最終日の朝。
隣になのははいない。どこだろう、とキョロキョロしていたら部屋へと入ってきた。
もう既に普段着に着替えていて、いつものサイドポニーに結っている。

「あっ、おはよう、フェイトちゃん」
「…………おはよう、なのは」
「大丈夫……?」
「うん」

すぐ側に来て顔を覗き込んでくるなのはに頷くと、そっと口づけてきた。

………………ん?くちづけ、て?

寝ぼけ頭が理解する前になのはが話しかけてくる。

「フェイトちゃん、どんなエッチなこと考えてたの?」
「ええエッチなことなんて考えてませんよ!?」
「ほんとに……?」
「……ごめんなさい考えてました」

ああ、夢じゃなかったんだ。と胸をなでおろしつつ謝った。
上目づかいのなのはにドキドキしながら。
……もしかして、エッチな想像でオーバーヒートして気を失ったんだろうか。

「まあ、人様の家でするのも何だしね。それは帰ってからにしよっか」
「えっ!?」

昨夜想像したことが再び頭をよぎって、カァッと顔が熱くなる。
なのははそんな私を見て不安げな表情になった。

「……フェイトちゃん、もしかして凄くエッチ?」
「そそ、そんなこと、ないっ……と思うんだけど」

だって、こんなに可愛いなのはが何でもしていいなんて言うから、
エッチなことを考えちゃうのは仕方ないよね?と心の中で誰へともなしに同意を求めた。
私がエッチなせいじゃない、と思う。
嘘は、ついてないよね。うん。


その後、ティアナの部屋を訪れ部屋に入れてもらう。
二人揃って行くのは妙に恥ずかしいから、今は私だけで。
ティアナとスバルに挨拶をして、まずは御礼の言葉。

「ありがとうね、ティアナ。なのはから少し昨日のこと聞いたよ」
「どういたしまして。結局、どうなったんですか?上手くいったことは幸せオーラで分かりますけど」
「あはは、オーラって……えっと、こ、恋人になりました」
「おめ「おめでとうございます!フェイトさん!」

ティアナの言葉を遮ってスバルが私の手を両手で握ってきた。
そっか。スバルがなのはに聞いてたのって私が好きかってことか。

「ありがとう、スバル」
「ちょっとスバル、なに割り込んでんのよ!」
「だって、嬉しいんだもん。いいなー、恋人。あたしたちもなろうよ♪」
「ばばバカ言ってんじゃないわよ!」

軽くウインクをして言うスバルに真っ赤になって否定するティアナ。

「今度は私が協力した方がいいのかな?」
「遠慮します!あの、フェイトさん、一つ言っておきたいことがあるんですが」
「うん、何かな?」

いいですか?と見てくるティアナに頷くと、すうっと大きく息を吸って一息で。

「眠れなくなるぐらいドキドキするのが友達に対する好きのわけないでしょうが!!!」
「そ、そうだね」

言われてみれば極々普通のことだ。
友達になった時からずっとドキドキしてたから、
私がなのはにドキドキするのは当たり前だったんだけど……。

「は〜〜〜、すっきりしたー」

ようやく言いたいことが言えたと爽やかな笑顔。

「色々気を使わせちゃってごめんね」
「いいえ。大したことじゃありませんから」
「ティアは素直じゃないな〜。昨日なんて心p――もがっぐっ!?」
「黙りなさい」
「ティアナ……デバイスは可愛がってあげて」

クロスミラージュの銃口をスバルの口に突っ込んでいるティアナを諌めた。
魔力を集めていないからまだ危なくはないけど、見た目かなり恐ろしい。
スバルに優しく、と言っても素直に聞かないだろうからこんな台詞に。

「ええ、私とこの子は一心同体ですから」
「……はぁ……一心同体ってことはティアってばあたしとちゅ……何でもありません」

銃口を外された途端、懲りずに余計な一言を言おうとするスバルが睨まれて再び黙る。
まあ、この二人はこれでいいのかな。もし本当に喧嘩になったり、
困ったことがあったりしたら、今回のお礼も兼ねて必ず力になろうと心に決めて退室した。


直接の切っ掛けをくれたティアナへ最初に報告したけれど、
家族や友人にも知らせなければならないだろう。
中には、特に日本では、受け入れ難く拒否反応を起こす人もいるかもしれない、と
心に立ち込めかけた靄が、部屋に戻ってなのはの笑顔を見た瞬間に吹き飛んでしまった。

「おかえり。ティアナ何か――ふえっ!?フェイトちゃん?」

衝動を抑えきれずにぎゅぅーーっといとおしい人を抱きしめる。
慌てたような声を上げるなのはが可愛くてたまらない。
どうして気づかなかったんだ。鈍いにも程がある。
なのは以外に、こんな感情を抱く相手なんているはずもないのに。

「なのは、好きだよ」
「……うん、私も。大好きだよ、フェイトちゃん」

君が何度も言ってくれた言葉。私も何度か言った言葉。
同じ意味なのに今は違った響きで耳に届く。

(ああ、駄目だ。本当に、駄目だ……)

自覚してから頭がおかしい。
もう朝食も出来ている時分だ。
皆のところへ行かないとならないのになのはを手放せない。

「フェイトちゃん、ちょっと力抜いて欲しいな」
「……………やだ」
「ね、お願い」

ねだる声にしぶしぶながら力を抜くと、色々な意味で泣きそうな
私を見て、なのはは苦笑気味の優しい笑みを浮かべる。

「ん……そんなに強く抱きしめられてるとキスも出来ないよ」

軽く口づけられ、悲しい気持ちがあっさりと霧散する。
なのはの手のひらの上で転がされている気分だ。
でも、それが途轍もなく幸せで。

「それならこうするのは……?」

口づけて強く抱き寄せて、ちょっとだけ逆襲。
状況を悪化させてどうする、と自嘲しつつも止められない。
息が苦しい。口が塞がっているのとはほぼ関係なしに。

「は、ぁ……嬉しい、けど……ちょっと……こまる、かな。もう行かないと……」
「もうちょっ――」

熱い息を漏らすなのはの唇を啄みながら話していると、バァン!勢い良く扉が開いた。

「もー!!ママ達、遅っ……ぁ……」

入ってきたのは、呼びに来てくれたらしいヴィヴィオ。

……しまった。咄嗟に離れはしたけど、多分バレた。
きちんと伝える前にこんな形で知られてしまうのはよくない。
それにヴィヴィオはまだ子どもだから刺激が強すぎる。
どうやって説明しようかと頭を巡らせていると、ヴィヴィオは憤慨して声を上げる。

「まったく!ヴィヴィオさんは情けないです。親がイチャイチャしてて時間を忘れるなんて。
 何十年新婚気分でいれば気が済むんですか!」
「ご、ごめんなさい。……って結婚なんてしてないよ!?」
「んん〜?ヴィヴィオさんのリサーチによると、出会った頃からずっとラブラブだったということですが」
「あはは、確かにそうかも」
「や、でも……今までは友達で……えっと……今は……その……」
「何ですか!はっきりしてください!」
「は、はいっ!あのっ、なのはさんと恋人になったので正式に高町家の一員になりたいです!」
「はい。不束な母ですがよろしくお願いいたします」

怒った表情を引っ込め、ニコッと笑って深々と頭を下げるヴィヴィオ。
聞く前からおおよその答えは分かっていたみたいな顔をしていた。

「あれ?フェイトちゃん一緒に住むんだ?」
「だ、駄目ですか……?」

ヴィヴィオの勢いに押されて段階をすっ飛ばしてしまったか。
意外そうに問うなのはに心が揺れる。

「にゃはは、そんなわけないよー。おいでおいで」
「またそんな言い方してー。フェイトママに愛想尽かされても知らないからね」
「……尽かしちゃうの?」
「ううん、無理」
「よかった♪」

よしよし、と頬を撫でてくる手が暖かくて心地いい。
うん、無理だ。不可能だ。ヴィヴィオはなのはの言動に一喜一憂する私を気遣って
言ってくれたんだろうけど、なのはに愛想を尽かせる私なんて私じゃない。

「……幸せならいいんですけどね。とにかくもう行こっ!朝ごはん!」
「は〜い♪」
「うん」

ヴィヴィオに引っ張られるようにして三人で部屋を出た。
そして歩きながら会話をする。

「ヴィヴィオ、ありがとね。ママ達のこと認めてくれて」
「んー、別にお礼言われることじゃないよー。
 フェイトママと一緒に暮らせるのはわたしも嬉しいもん」
「うん、ありがとう。私もヴィヴィオと暮らせるの嬉しいよ」
「でもですね。過度のイチャつきは禁止です!年頃の娘がいることを忘れないでくださいね」
「クスッ、気をつけてね。フェイトママ」
「肝に銘じておきます……」
「人事じゃありません。どちらかと言えば、なのはママの方がたち悪いんだから」
「え〜、そうかなー。大丈夫だよ。フェイトママとだけじゃなくてヴィヴィオともイチャつくから」
「そ、そういう問題じゃ――にゃ〜!ヴィヴィオはいいですっ。もう、ちっちゃい子じゃないんですからー」

背中側からひょいとなのはに抱き上げられて、可愛らしくて手足をばたつかせるヴィヴィオ。
こういうことを普通にするからある意味たちが悪い、のかな?

「いくつになっても我が子を愛するのは親の務めですー♪」
「ふふっ、なら私も」

便乗してヴィヴィオの柔らかな髪をなでなでする。
ヴィヴィオは顔を赤くしながら「親馬鹿なんだから……」なんて呟いている。
素直に親に甘えるのが恥ずかしい年頃になってきたのは寂しいけれど、優しいところは変わらない。
このまま真っ直ぐに育ってくれるように努力しよう。

思わぬ形でヴィヴィオの許しを得られてほっとしながら食堂へ向かうと、ドアの前にアインハルトが立っているのが見えた。
私達を待ってくれていたようだ。

「……あ、ヴィヴィオさん。それにお母様方も」
「あ、アインハルトさん!?」
「ごめんね、アインハルトちゃん。遅くなっちゃって」
「いえ、問題ありません。……ふふ、親子で仲睦まじいですね」
「ち、違うんです!?うちの親が恋人になったからって浮かれちゃって!!いつもじゃないんですよ!?」
「……え……」

あたふたと弁解するヴィヴィオに表情を失うアインハルト。
私となのはの顔を交互に見つめ、眉根を寄せる。もしかして……

「女同士、だからおかしいかな」
「…………いえ、そうではなくて……てっきり御夫婦であられるのかと……」
「あっ!?ご、ごめんなさい!!ちゃんと説明してませんでしたっけ!?う、うちはちょっと複雑でして」
「ふふ、その辺は後でゆっくり聞かせてください。……とりあえず、おめでとうございます」
「ありがとう、アインハルトちゃん♪」
「ありがとう、アインハルト」

綺麗な姿勢で頭を下げ、祝ってくれたアインハルトにお礼を言って食堂に入る。
メガーヌさん作の朝食に舌鼓を打ちながら食事を取り、それから私の子ども達に声をかけた。

「エリオ、キャロ、大事な話があるんだ」

二人は不思議そうな顔をしながらも、真剣に言う私に頷いた。
外へ出て、並んで歩きながら話し始める。

「あの、ね。……私に、好きな人が出来たら、二人は……どう思うかな」
「え……」

こういった話は今までにしたことがない。
出来るだけこの子達を傷つけないように遠回しに切り出すと、
突然の話に驚いたのか、二人とも立ち止まり、呆然とした表情で互いに顔を見合わせた。

「好きな人ってお付き合いする相手って意味ですよね?……僕は、賛成出来ません」
「ごめんなさい、私も」

二人してはっきりと拒絶してきて二の句が継げなくなる。
なのはを好きな気持ちは変えられないけれど、
この子達が拒否するのであれば恋人としての付き合いなど出来ない。

「そんなこと言うってことは……何か、あるんですか?お見合いとかそういう……」

停滞した会話を進めるようにエリオがおずおずと聞いてくる。
質問をしながらもあまり聞きたくはなさそうに。

「ある、けど……お見合いじゃ、ないよ」
「はっきり言ってください。具体的な話をしてもらわないことには……」
「…………好きな人が、出来たんだ。出来れば一緒に暮らしたいと思ってる」
「冗談。なわけない、ですよね……」
「やっぱり、納得……出来ません、けど……どんな人なんですか?」

どんな人?キャロの質問に、白い服の魔導師……
大切な人の姿を思い浮かべながら、一番好きな、愛しい点を挙げる。

「……優しい人、かな」
「…………本当に好きなんだ」

私の表情を見て感じ取ったらしいキャロがショックを隠しきれない様子で呟く。
同じく落ち込んでいるエリオが続ける。

「一度、会わせてもらえませんか?」
「二人もよく知ってる人なんだけど……」
「誰ですか?」
「………………」

なのはに対して悪感情を抱かれてしまうかもしれないと逡巡するが、
言わないことには話が進まない。と覚悟を決めて告げる。

「なのは」

すると、二人とも「なぁんだ」と気が抜けたように肩を下げた。
重苦しかった空気が一気に緩む。
予想外の反応に戸惑って、ちゃんと伝わっていないのかな?と言い直す。

「冗談、じゃないよ?友達の高町なのはと恋人になったんだよ」
「分かってます。紛らわしいこと言わないでくださいよ、もう」
「そうですよ。びっくりしちゃいました」
「えっ、えっ?」

やはり緩い雰囲気のまま、軽く責めてくる子ども達を交互に見る。
何が何だかさっぱりだ。

「好きな人が出来た。なんて言うからてっきりなのはさん以外の人かと」
「ねえ、エリオ君」
「えっ?」
「出来たわけじゃなくて、なのはさんはずっと好きだった人じゃないですか」
「ど、どうして知ってるの!?」
「「見れば分かります」」
「そうですか……」
「そんなわけですから、なのはさんなら文句はないです」
「うんうんっ。家族が増えるならなのはさんとヴィヴィオがいいよね。ヴィヴィオ、私のことお姉ちゃんって思ってくれるかなぁ……」

「あの……本当にいいの?」

相手が判明した途端に打って変わって、一足飛びに
家族関係のことまで言及されて思わず確認してしまう。
明るい表情の二人だけれど、無理をさせてしまっているのではないかと。

「だって、フェイトさんにはなのはさんしかいないじゃないですか」
「他の人でもいいんですか?」
「そんなわけないけど……」
「だったら何も言えることはありませんし、フェイトさんが幸せならそれでいいんだと思います」
「私はなのはさんじゃない方が嫌ですよ……。お二人が一緒にいる時の空気が好きですもん」
「……ありがとう。エリオ、キャロ」

素直な瞳で私の幸せを願ってくれる大切な子達を両側から抱きかかえる。
二人ともさっきのヴィヴィオ以上に恥ずかしそうにしていたけれど、
嬉しいからその気持ちを伝えたくて、しばらくの間そうしていた。



「は〜、子ども達はみんな察しがいいと言うか理解が早いと言いますか」

帰りの次元船内で、隣に座っているなのはに
エリオとキャロとのやり取りを説明すると、嘆息の息を漏らした。

「うちのお父さん辺りの方が大変かも。実家の家族に言うのは……今度のお休みかな」
「そうだね。ゆっくり話さないといけないから、皆で集まれるように時間作ってもらおう。
 やっぱり最大の難関は士郎さんなのかな」
「多分……」
「なのはのこと可愛がってるもんね。でも、分かってもらえるように頑張るよ。
 一生かけて、なんとしてでも幸せにするように努力しますからって」
 
殴られたりするかもしれないけれど、子ども達に話すことに比べれば気が楽だった。
私が認めてもらえるだけの努力をすれば、なんとかなりそうだから。

「……嬉しいけど、説得はともかく幸せにする方はそんなに頑張らなくてもいいよ。
 私はフェイトちゃんが幸せでいてくれて、笑顔を見せてくれたら幸せだから」

なのはの笑顔と言葉に心臓が激しく高鳴って、
言葉を失いかけるけれど、想いを伝えようとなんとか声を搾り出す

「あう…………わ、私だって、なのはがそうやって笑いかけてくれたら……物凄く幸せなんだよ。
 だから、出来る限りなのはを幸せにしたいんだ」
 
やっとの思いで言い終えると、なのはは俯いてしまった。
顔を見ていたいのに良く見えない。
覗き込もうとしたら、私の肩に手を置いて身を乗り出してきた。

(こ、ここじゃまずいよ!?したいけど。してくれたら嬉しいけどっ)

人目のあるところでキスなんてしちゃ駄目だ、と思いつつも身動きが取れない。
ぎゅっと目を瞑って待ち構えていると――額にコツンと軽い衝撃が走った。

……おでこ同士をくっつけただけだった。
目を開くと間近に見えるなのはの肌は赤く染まっている。
照れ隠し?と思い当たるとこちらもやたらと気恥ずかしくて。

二人でテレテレしていたら後ろからイエローカードが飛んできた。
振り向いた側の席には、顔を真っ赤にしたアインハルトと彼女を気にして困った様子のヴィヴィオ。

「あ、いえ、お気になさらず。……仲が良ろしくて素敵だと思います」

アインハルトは軽く手を振って言うがその目は泳いでいる。

「仲が良すぎるのも考えものです」
『ヴィヴィオ的にはわりと日常風景だけど、アインハルトさん免疫ないんだからね』
「あー、えっと……もうちょい控えます」

軽く肩をすくめて声と思念を飛ばすヴィヴィオになのはが答えて、私も頷き、前を向く。

これからのことをなのはと話す。
今日帰ってからの過ごし方だとか、引越しのことだとか。
気がつけば肩を寄せ合ういつもの距離感になっていた。
これくらいならセーフかな、と後ろを気にしながらも幸せを感じていると、段々となのはの返事が緩慢になってきて。
私の肩に頭を預けて眠ってしまった。

私より遅く寝て、早く起きていたのだから、眠いのも当たり前か。
……あんな状況で一人だけ眠って、よく怒られなかったものだと思う。
ヴィヴィオはああ言っていたけれど、散々みっともないところを
見られている私の方が、とっくに愛想を尽かされていてもおかしくない。
でも、なのはは変わらない。ずっと。

ああ、駄目だ。もう。なのはのことを考えると好きになる。
十年以上一緒にいた友達への恋心に今更気づいて、
一人ドキドキして顔を赤くしている図は傍から見たら間抜けに違いない。
けれど、胸の高鳴りはどうしようもないから、なのはの寝心地が悪くないように体から力だけ抜いた。



高町家へと帰宅したのは夕方過ぎ。
家事や旅行中に溜まった雑務に追われつつも親しい友達にメールを入れると、
返ってくるのは『ようやく』とか『やっぱり』とかそんな反応ばかり。
それでも、あっさりとは流せないニュースなのか、長電話や通信が続いて、
日付が変わった頃にようやく落ち着いてなのはと話せるようになった。

「……どうして、みんなして私がなのはのこと好きだって知ってるんだろう」

なのはが淹れてくれたキャラメルミルクを飲みながら呟く。
子ども達は見れば分かると言っていたけれど、知らなかったのは自分だけみたいで落ち込み気味。

「んっと、私の名前、呼んでみて」
「なのは」

言われるままにいつものように呼んでみる。
隣に座っている人の大好きな名前を。
それを聞いて浮かぶ大好きな笑顔。

「それだけでね、分かるよ。フェイトちゃんがどれだけ私を大切に思ってくれてるか」
「ぅ……」
「そうやって呼んでくれる度に嬉しくて、ドキドキして、どんどんフェイトちゃんのこと好きになっていったな……」
「ぅぅ……」

何か言いたいのにバクバクと心臓が鳴り響いてうるさくて。
呼吸もままならなくて。

「フェイトちゃん、顔真っ赤♪」

クスリと笑って揶揄してくるなのはの表情にもますます落ち着かなくなって、無理やり声を出す。

「な、なのはのせいでしょっ」
「私の……私が、好きだから?」
「そうだよっ。もう夕べからおかしくて……おかしくなるぐらい、なのはが好きで……」
「フェイトちゃん……」

必死で言葉を紡ぐ私の名を囁きながら、なのはの顔が近づいてくる。
触れたのは額ではなく唇同士。
胸の鼓動は相変わらず異常な速度。むしろ悪化。
けれど、こうしている時は狂おしく波立つ感情が静まる。
なのはの柔らかさと甘さを直に感じていられるこの時は。

「ん……なのは……」

もっと感じたくてキスを求めながら背中をかき寄せる。

「……フェイトちゃん、続き……しよっか」

つづき。……昨日の、続き、だ。
えっちな、こと。
何も考えず、熱暴走しかけている頭をコクコクと頷かせる。
と、なのはは私の背と膝の裏に手を回して抱き上げた。

「なななっ、なのはっ!?」
「ベッド、行こ?」
「こ、これっ、むしろ私っ!私の役目!身長とかっそのっ」
「いいじゃない。昔と一緒で」

――― 私の、勝ちだよね ―――

楽しげに見つめてくるなのはの姿に、昔の出来事がふっと頭に蘇った。
最初で最後の、本気の勝負。
まだ、君の名前も覚えていなかったあの頃の記憶。
何もかもが今とは違っていても、優しい瞳と暖かい手はそのままで。
なぜだか泣きそうになって、なのはの首筋にすがりついた。


ギシッと小さくベッドの軋む音。
そっと横たえられたのは、なのはの部屋のベッドの上。
これから、どうすればいいんだろう。
私がするのかと思っていたら、ここまではなのはのペース。
服を脱げばいいのかな。いや、脱がして?脱がされれば?
お風呂……もう一回入らなくて大丈夫かな。
夕食前に入ったけど、こういう時は直前じゃないと駄目だったりは……。
でも、今入ったら二時間ぐらい出てこられない気が。

思考が支離滅裂に飛び散ってアワアワしていると、なのはは髪を撫でてきた。

「大丈夫、かな?」
「…………うん。ごめん、なんかムードとか……全然で……」
「いいよ、変に飾らないで。さっきみたいに、
 名前を呼んで好きだって言ってくれたら、それだけで凄く嬉しいから」

髪に触れたままくれる本心からの笑顔にドキリとしながらも肩の力が抜ける。
ただ素直に愛せばいいんだ。
きっとそれで、なのはは喜んでくれるから。

「なのは……キス、したい」
「ん……」

ベッドに肘をついて、軽く身を起こす私に覆いかぶさるようになのはのキス。
唇を触れ合わせるだけで、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。
その感触に夢中になっていると、口の中にスルッと柔らかなものが入ってきて反射的にびくっと震える。
……舌だ。なのはの。数瞬遅れてディープキスだと理解。
口腔を撫でてくるなのはにそろっと自分のそれを絡めてみる。
どうしたら気持ちよくなるかなんて分からないけれど、なのはの一部だから、大切に、大切に触れる。
互いにぎこちない動き。
でも気持ちよくて。
ピチャっと唾液の混じり合う音がいやらしくて。
なのはと交わっていると深く意識させられる行為が私を蕩かしていく。

「はぁ……。あ、はは……えっちだね、これ」

なのはは顔を離して照れくさそうな笑みを浮かべた。
上気した頬に昂奮が見える。
私も鏡写しのように、おそらくそれ以上に熱にやられてぼーっとしている。
けれど、すぐに先に進む事はせずなのはの手はまた髪に。

「……えっと……気、使ってる?」
「ん?……ああ、これ?」

私の髪をかきあげて聞くなのはにコクリと頷いた。

「気を使ってるんじゃなくて、フェイトちゃんが可愛いから、つい。いやかな?」
「ううん、嬉しい」

即答。
なのはが触れてくれるなら嫌なはずがない。
触れたいと思ってくれているのなら、尚更。

手を取って、そのひらにそっと口づける。
恋人になってよかった、と思う。
愛情を表現する方法が格段に増えたから。

でも、足りない。
まだまだ、全然足りない。
溢れ出す愛しさを持て余している。

面映ゆそうにしているなのはの首に手を回して、自分の方へ引き寄せる。
抵抗なくもたれかかってくる体を抱きとめて。
首筋に顔を埋める。
なのはの甘やかな香りで鼻腔を埋めながら唇を這わせる。

「んっ、フェイトちゃん……」

くすぐったそうな高い声を漏らすなのは。
もっと聞きたい、触れていたい。
パジャマの前ボタンを外していく。
手が震える。昂奮と緊張で。
それでも、なのはは待ってくれるから焦らず続ける。

全て外し終えて、柔らかな膨らみを手で包んでみる。

「ふぁ……は、ぁ……フェイト、ちゃん……」

耳元で控えめな喘ぎ声と熱い息。
ぞくんと震えが走る。
息、が苦しい。

「……なの、は……すきだよ……」

酸素を取り込む代わりに愛を囁く。
こうして感情を吐き出さないと狂ってしまいそうだった。

「うんっ、私も……」

感極まった声がして耳に意識を集中していたら、そこをペロッと舐められた。

「ひゃっ!な、なのはっ!」
「……耳、気持いいの?」
「く、くすぐったっ――や、んんっ」

半分本当。
けどそれだけじゃなくて、声を抑えられない。
それが分かっているのか、なのはは耳への責めをやめない。

「はぁ、すごい……フェイトちゃん、可愛い」

熱に浮かされたように響く声にぞくぞくする。
体を密着させたまま、なのはは手を下の方に伸ばしてきた。
ショーツの上からなぞられて。
くちゅりという音が耳を塞ぎたくなるほど恥ずかしい。

「あっ、ふあっ、あああ!なの、はぁっ……」
「ぐしょぐしょ、だ……直接、の方がいい、かな」

下着をずらしてなのはの指が、触れた。
その瞬間。

「や、はあっ、あぁっ、あああぁあ!!」

体が跳ねる。
制御出来ずにビクビクと震えて。
あっさりとイッてしまった。

でも――終わらない。終わらせてくれない。

「まだ、だよね」

絶頂を迎えて敏感になった秘所につぷりと指を埋められる。

「なのはっ!や、だめっ!あっ、ああっ、またっ!!」
「んっ、イッて。もっと、気持ちよくなって……」

膣内を掻き回されて。
反応を確かめるように探ってきて。
そして、手前側の感じる部分を強く、擦られて。

「はっ、あっ!なのはっ、なの、はぁ……ひぅ、あっ!やぁあああ!」

全く抵抗出来ずに、また震える。
力が抜ける。

けど、まだ。
今度は私が、したい。

「なの、は……私も……」

荒く息をつきながら、なのはに触れる。
大事な、ところに。

「ぁ……なのはも……」

触れたところはぐっしょりと濡れていて。
その事実に思考が灼ききれそうになる。

「だってフェイト、ちゃんが……」

私が、何だと言うのだろう。止まった言葉が少し気になる。
でも、聞かなくても昂奮していることは分かったから。
だから、熱くヌルついた愛液を指に絡めて。
割れ目に沿ってなぞってみる。

「んんっ!ふぇいとちゃっ……」

一段と高い声。
脳髄が蕩けそうで。
これだけで、またイキそうで。
でも、今度は。
なのはによくなって欲しかったから、続ける。
くちゅくちゅと音を立てながら。
手を動かす。

「なの、は。もう少し、かな……」
「んっ、うん……すぐっ、んぁっ」

ふるふる揺れる体が予兆を感じさせる。
唇を重ねられて、舌を吸い上げる。

「ん!んくっ、ふぁっ!!あ、ああっ!」

私にしがみついたまま大きくブルリと震えた。
ひくひくと襞の動く感覚で分かった。
絶頂に至ったのだと。

「ちゅ、ん……なのは……」

キスをしたまま体を預けているなのはの唇を啄む。
なのはが感じてくれたから満足して。
ひたすら嬉しく思いながら、そうしていた。


「う〜〜、やっぱ、恥ずかしいね」

私の腕を枕にしてなのはが言う。
まだ熱は冷めやらぬけれど、先程の行為を
思い返して恥ずかしくなる程度には落ち着いたらしい。

「うん。でも、嬉しかった」
「そう、だね。……また、今度しようね」
「うん……」

今度っていつだろう。と漠然と考えていると、急激に眠気が襲ってきた。
ねむ、い……。
寝て、いいのかな。
あまり、よくないような……。
なのはが何か言っていたけど、もう……だめ、だ……。



「……ちゃん。フェイトちゃーん、朝だよ」

ゆさゆさと揺さぶられて目を覚ます。
ゆっくりと身を起こしながら声のする方を見て。

「なのは、おは―――!?」

応えようとして、自分が何も身につけていないことに気づく。
慌てて布団をかぶる。
混乱する。
私は、脱いでいなかった……はず。
衣服ははだけていたぐらいだった……はず。
顔半分、掛け布団から覗かせてなのはを見る。

「あの……ふく……」
「フェイトちゃん、汗とかそのままで寝ちゃうんだから……。風邪引かないように脱がしました」
「あ、あう。すみません。……えっと、それで、なのはさん、着替えが欲しいのですが」
「取って欲しいの?」
「出来れば……」

衣装棚の上に乗っている服は私の物に見える。
なのはが用意してくれたのだろう。
裸で歩いていくのも恥ずかしいからお願いしてみると、なのははイタズラっ子の笑みを浮かべた。

「おはようのちゅーしてくれたら、いいよ」
「うぁ……は、はい。側に、来て頂けますか」
「くすっ、どうして敬語なのかな?」
「恥ずかしくて……」

笑いながらベッドに腰掛けるなのはに答え、軽く口づけた。

「ありがと♪」

眩い笑顔のなのはに見惚れる。
お礼を言いたいのはむしろこっちだったけれど、言葉にならない。

だから、感謝と愛を込めて、最愛の人を抱きしめた。
2010年10月04日(月) 07:49:54 Modified by nanofeisuki




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